カスタマーセールスとは?freeeやSmartHR、ログラスで導入されている営業手法を解説
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武田龍哉
2025.09.10

企業が安定的に成長していくためには、新規顧客の獲得をはじめ、既存顧客と継続的に取引していくことが欠かせません。既存顧客に商品、サービスを販売する役割を担う職種が「カスタマーセールス」です。
近年、既存顧客から継続的な収益を得ることを重視する企業が増えており、カスタマーセールスが注目を浴びています。
freeeやSmartHR、ログラスなどスタートアップ企業では、カスタマーセールスの募集が始まりました。そこで、今回はカスタマーセールスについて詳しく解説します。
カスタマーセールスとは?
カスタマーセールス(Customer Sales)とは、既存顧客に対して営業活動する人や組織をいいます。
顧客により長く、より多くサービスを利用してもらうために、アップセルやクロスセルを提案して売上の拡大を図ります。
従来のルート営業に似ていますが、定期訪問して顧客と信頼関係を構築するだけでなく、売上の拡大を図る戦略的な営業活動であることが大きな特徴です。
カスタマーサクセスとの違い
カスタマーセールスとカスタマーサクセスは、どちらも既存顧客と関わりますが「目的」が違います。
- カスタマーサクセス=顧客が実現したいことを支援すること
- カスタマーセールス=顧客に対して営業活動を行い、売上を伸ばすこと
上記のように目的が異なるため、KPIも違います。
- カスタマーサクセス=解約率、オンボーディング完了率、NPS、NRRなど
- カスタマーセールス=アプローチ数、接触数、商談数、契約数など
近年、カスタマーサクセス部門を立ち上げる企業が増えてきましたが、顧客の支援と提案を並行することは想像以上に大変です。そのため、カスタマーサクセスが支援をし、カスタマーセールスが提案するといった分業化が始まっています。
関連記事:「カスタマーサクセスとは?仕事内容や成功事例や導入メリットをわかりやすく解説!」
カスタマーセールスの仕事内容
カスタマーセールスの仕事内容は主に4つです。
ヒアリング
自社サービスを利用している顧客でも状況は変化します。顧客の状況を理解して、最適な提案をするためにヒアリングを行いましょう。
大切なことは、顧客が気づいていない潜在的なニーズを引き出すことです。「他社ではこんな悩みを聞くことが多いですが、御社では課題に感じていませんか?」などオープンクエスチョンを使用して、ニーズを引き出していきます。
提案
顧客ニーズを聞き出したら、課題を解決するためのアップセル・クロスセルを提案します。
アップセル | 現在のプランより上位のプランに切り替えるように提案すること (例)上位プランに切り替えていただくと、高度なデータ分析ができますが、いかがでしょうか? |
クロスセル | 現在利用中のサービスに加えて、関連商品を提案すること (例)スマートフォンのバッテリーも購入していただくと、外出時でも安心してご利用できますが、いかがでしょうか? |
関連記事:「アップセル・クロスセルとは?意味や事例、成功させるポイントを解説」
クロージング
クロージングとは、商談を契約に結びつけることをいいます。ただ契約を締結するだけではなく、顧客の合意を得ることが信頼関係を維持する上で大切です。
そのため、「価格面」「導入負担」「運用負担」など何らかの不安を抱えている場合は、その懸念点を解消してあげる必要があります。そして、顧客に安心してもらい、契約内容に合意してもらった上で契約を締結します。
関連記事:「クロージングとは?営業活動で成約率を上げるテクニック13個を紹介」
売上、実績管理
カスタマーセールスは「アプローチ数」「商談数」「契約数」「売上額」などで評価されるため、これらの数値を管理する必要があります。CRMやSFAに営業データを登録して、売上・実績を管理します。
また、営業データを参考にしながら営業活動を振り返り「どこか改善できることはないか?」と改善することも大切です。
関連記事:「売上管理とは?|目的や方法、ポイントを理解して適切な管理を実現」
カスタマーセールスに求められるスキル
カスタマーセールスでは「営業スキル」「リーダーシップ」「CRM・SFA・MA」が求められます。
営業スキル
営業スキルとは、顧客の課題を見つけて解決策を提案し、良好な関係を築きながら契約を獲得するためのスキル全般をいいます。次のようなスキルが含まれています。
スキル名 | 説明 |
コミュニケーション能力・交渉力 | 自社の利益と相手の要求を踏まえ、双方が満足する着地点を見つけて合意に導く力 |
ヒアリング能力 | 言葉の裏にある意図や感情、本質的なニーズを正確に汲み取る力 |
課題発見力 | ヒアリングで得た情報から顧客の課題を見つけ出す力 |
プレゼンテーション能力 | 相手に分かりやすく伝え、共感・納得を得て行動を促す力 |
ロジカルシンキング | 論理的に情報を整理し、矛盾なく答えを導く力 |
トラブル対応力 | 予期せぬトラブルに対し、迅速かつ適切に対応する力 |
ストレス耐性 | ストレスをコントロールし、安定した成果を発揮する力 |
タイムマネジメント能力 | 適切にプロジェクトを進行し、期限内に成果を出す力 |
リーダーシップ
リーダーシップとは、チームを牽引して成果を創出する力をいいます。
カスタマーセールスにおいては、顧客がより良い成果を得られるように、関係者を巻き込みながら推進していきます。
つまり、社内の関係部署を巻き込み、協力して取り組んでいかなければなりません。そのため、社内の関係部署に方針を伝え、信頼関係を築きながら取り組んでいく必要があり、リーダーシップ能力が求められます。
CRM・SFA・MA
カスタマーセールスは「CRM」「SFA」「MA」の活用スキルも求められます。顧客情報や営業活動履歴を蓄積して可視化することで、戦略的なアプローチができるようになります。
CRM | 顧客情報を管理するためのシステム |
SFA | 営業活動履歴を管理するためのシステム |
MA | データを活用してメルマガを自動配信するなどマーケティングを自動化するためのシステム |
各ツールについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:「【2025年最新版】CRMツールとは?おすすめのCRMツール12選」
関連記事:「SFA(営業支援システム)とは?主な機能や効果的な使い方を解説」
関連記事:「カスタマーサクセスで導入すべきMAとは?実現できるテックタッチ支援や成功させるコツを徹底解説!」
カスタマーセールスで実現できること
カスタマーセールスを採用すると、次のようなことを実現できます。
顧客満足度の向上
カスタマーセールスを採用すれば、顧客との信頼関係を深められて、顧客満足度を向上させられます。その理由は、顧客と接点を持ち続けて、課題や要望を把握し、適切な提案を行うことで安心感を与えられるためです。
例えば、顧客の状況を把握し、適切なサポートをすれば「自社を理解し、支援してくれている」と感じます。このように頼れるパートナーの存在により顧客満足度が向上します。
顧客満足度の調査方法を知りたい方は、下記の記事を併せてお読みください。
関連記事:「顧客満足度(CS)とは?調査方法や向上させる方法、成功事例を解説!」
売上の拡大
カスタマーセールスを採用することで、売上の拡大を図れます。その理由は、顧客に上位プランへ切り替えてもらったり、関連商品を購入してもらえれば売上を伸ばせるためです。
また、既存顧客との信頼関係を築いておけば、新規顧客の紹介をしてもらえるようになります。つまり、売上が継続的に見込みやすくなります。
LTV最大化
カスタマーセールスを採用すれば、顧客生涯価値(LTV)を最大化させていけます。その理由は、自社の商品、サービスを契約した後も関係が終わることなく、サービス利用状況や顧客ニーズの変化に応じて、新たなビジネス機会が得られるようになるためです。
例えば、サービス利用期間が長い顧客に対してアップセルやクロスセルを提案し、成立すれば、1社あたりの契約金額を引き上げることができます。
LTVの計算方法について知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:「LTVとは?意味や計算式、向上させるための施策まで徹底解説!」
新規顧客の獲得
カスタマーセールスは既存顧客との関係を起点に、新規顧客を獲得することもできます。なぜなら、既存顧客が自社サービスを他の人に薦めてくれるためです。
グループ会社や取引先への紹介があれば、ゼロから関係を築く必要がなく、短期間で契約に至ることがあります。また、紹介は既存顧客の体験に基づく説得力を持つため、契約につながります。
自社で営業活動を行わなくても、既存顧客からの紹介を得ることができれば、 企業の成長スピードを加速させることができるのです。
カスタマーセールスの立ち上げ方
カスタマーセールス組織は4STEPで立ち上げます。
- カスタマーサクセスとの役割分担
- 顧客情報を管理する仕組みづくり
- KGI、KPIを設定する
- 施策の実行と改善
ここでは、各STEPについて詳しく解説します。
1.カスタマーサクセスとの役割分担
カスタマーセールスを新たに立ち上げる際には、カスタマーサクセスと役割分担します。
多くの企業では、カスタマーサクセスが導入支援、顧客フォロー、クロスセルやアップセルの提案を行ってきました。ただし、支援と営業の両立が大変なため分業制にする必要が出てきたのです。
カスタマーセールスを立ち上げると「カスタマーサクセスが営業をかけてもよいのか?」「カスタマーセールスが営業をかけて問題ないか?」といった混乱を招きます。そのため、どの段階からカスタマーセールスが関与すべきなのかを明確にしておきましょう。
2.顧客情報を管理する仕組みづくり
カスタマーセールスを立ち上げる際には、顧客情報を適切に管理する仕組みづくりが欠かせません。
(1)顧客を分類でき、営業活動の優先順位が付けられるもの
(2)営業活動の履歴を残して、次回の提案に活かせることを満たしたデータベースを構築しましょう。
また、顧客情報にグループ会社があるのか、過去に顧客を紹介してもらえたかなどの情報を入れておくと営業活動に活かせます。
3.KGI、KPIを設定する
カスタマーセールスを立ち上げる際には、成果を正しく測定できる指標設計が欠かせません。そのため、KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。下記の例を参考にしながら指標を設計してみてください。
KGI(重要目標達成指標) | 受注件数 受注金額 |
KPI(重要業績評価指標) | アプローチ件数 接触件数 商談件数 契約件数 |
4.施策の実行と改善
カスタマーセールスの立ち上げ時に複数の施策に取り組むと、どれが効果的かわからなくなります。そのため、全ての施策に取り組むのではなく、優先順位をつけて取り組みましょう。
カスタマーセールスの施策は多岐にわたり、アウトバウンド営業、メールマガジン、交流会の開催などがあります。これら施策を実施した後は、効果測定して改善していきましょう。
まとめ
カスタマーセールスとは、既存顧客に対して営業活動する人や組織をいいます。顧客により長く、より多くサービスを利用してもらうために、アップセルやクロスセルを提案して売上の拡大を図ります。
カスタマーセールスの活動は、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得などの波及効果も生み出し、企業全体の成長に大きく寄与します。
近年、スタートアップ企業を中心にカスタマーセールス組織を立ち上げる企業が増えてきました。そのため、興味を持った方は、これを機会にカスタマーセールス組織をつくってみてください。
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この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。