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リアクションの少ない顧客にも“届く”——オンライン時代のCS設計7つの視点

「リアクションの少ない顧客、どう接していいかわからない」——
カスタマーサクセス(以下CS)の現場で、よく聞く悩みのひとつです。

定例ミーティングでは、こちらが話しても「そうですね」で終わってしまう。
チャットやメールの返信も遅く、何を考えているのかつかみにくい。


何かに不満があるわけではなさそうだけど、かといって前向きなリアクションもない……。
こうしたケースでは「この人は無口なタイプだから」「こういう性格の人なんだ」と、相手の性格に原因を求めがちです。

でも本当に、性格の問題だけなのでしょうか?
もしかしたら、“伝わっていない”のではなく、“届くように設計されていない”だけかもしれません。

オンラインでのやりとりが主流になった今、関係性は自然に深まるものではなく、意図して設計するものです。


本記事では、リアクションが少ない顧客に対しても、きちんと関係性を築き、対話を前に進めていくための「設計視点」を7つ紹介します。


性格に振り回されず、誰にでも“届く”CSのあり方を一緒に考えていきましょう。

 

なぜ「伝えたつもり」が「伝わっていない」になるのか

CSの現場でよくある“伝わっていない”と感じる停滞の原因は、大きく分けて以下の3つのパターンに集約されます。

1. 「検討しておきます」で終わり、話が前に進まない

    • 顧客側での優先順位や意思決定プロセスが明確になっていない
    • 提案や説明に対して返答が曖昧で、具体的な次の行動が示されない

 

2. チャットやメールがスルーされる

    • リマインドやフォローをしても返信が遅い、または来ない
    • 顧客が忙しくて優先順位が低くなっていることが多い
    • 一方的に情報が届くだけで、先方の状況がつかめない

 

3. 定例MTGが“話すだけ”で終わる

    • 対話ではなく、一方的に共有する場になっている
    • 形式的になっていて、本音が引き出せない


これらのパターンに共通して言えるのは、単に「性格の違い」や「相手の態度」だけが問題なのではなく、こちら側のコミュニケーション設計が不十分であることが多いという点です。


つまり、伝える努力はしているものの、「届く仕組み」が整っていないために、相手に本当に伝わっていない可能性が高いのです。

 

顧客タイプ問わずに自然と対話が生まれる理想の関係

「この人は話すのが苦手なタイプだから仕方ない」「こういう会社だから盛り上がらないのは当然」と、顧客のリアクションが少ないことを“タイプ”で片づけてしまう場面は少なくありません。もちろん性格や文化的な特徴はありますが、それだけに頼った対応では、関係構築が進みにくくなります。


重要なのは、顧客タイプに左右されず自然に対話が生まれる“土台”を設計することです。たとえば質問の仕方や話の順序、沈黙への向き合い方などを見直すだけでも、会話の雰囲気は大きく変わります。


理想的なのは、顧客が「この人と話すと物事が整理される」「話すと前に進む」と感じてくれる関係性。リアクションが少ない顧客であっても、自分の言葉で意見を出したり、安心して悩みを話せたりする状態が生まれれば、それは“性格に合った対応”ではなく“設計の力”によってつくられた関係です。


次のセクションでは、そうした関係を生み出すためにCSが実際に取り入れられる、具体的な設計視点をご紹介します。

 

「リアクションの少ない顧客にも届く」7つの設計視点

日々の定例MTGやチャット・メール連絡といった場面ごとに、実践しやすい設計の視点を7つご紹介します。

“性格に合わせて対応を変える”のではなく、“誰にでも届く仕組みをつくる”という視点で、あなたのCSコミュニケーション設計にぜひ役立ててみてください。

 

1)定例MTG・打ち合わせ編

1. 定例MTGの冒頭に“明るく話せる余白”を設ける

いきなり本題に入るのではなく、会話の入り口に少しだけ“やわらかさ”を演出することで、場の空気がほぐれます。


「前回のご提案、社内ではどんな反応でしたか?」「◯◯の件、その後どうなりましたか?」と、直近のトピックに軽く触れるだけでも構いません。

 

ポイントは、笑顔や明るいトーンを意識すること。
こちらの雰囲気が伝染し、表情や声のトーンが変わることで、顧客の反応にも小さな変化が生まれます。リアクションが少ない顧客だからこそ、“最初の1分”で空気をつくる意識が、関係構築のカギとなります。


2. YES/NOで答えられる選択肢型の質問を準備する

「どう思いますか?」「どのように進めたいですか?」といった抽象的な問いは、反応に時間がかかったり、「うーん…」と考え込ませてしまうこともあります。


そんなときは、「A案とB案だと、どちらが現状に近そうですか?」など、選びやすい問いに置き換えるのがおすすめです。


選択肢を提示することで、口数が少ないタイプの顧客でも返答のハードルがぐっと下がり、会話が自然と進みやすくなります。


これは「考えなくていいようにする」のではなく、「考えを整理しやすくするための設計」です。


3. 小さな前進を見える化して共有する

顧客が前向きなリアクションを示さない背景には、「何が進んでいるのか実感が持てない」というケースもあります。


だからこそ、「〇〇の対応ありがとうございます」といったように、変化や前進を言語化して示すことが大切です。


成果だけでなく「過程の進捗」を伝えることで、「ちゃんと進んでる」と、顧客にも“会話の価値”が伝わりやすくなります。


また、話しやすい空気が生まれ、次のステップに向けた相談も自然としやすくなるはずです。

 

2)チャット・メール・日常連絡編

4. 件名・冒頭で“締切・期待値”を明示する

メールやチャットで反応がないとき、「そもそも読まれていない」「読んでも内容を理解するのに時間がかかって後回しにされている」というケースが少なくありません。


そこで効果的なのが、件名や冒頭で“何を、いつまでに、どうすればいいか”を明確にすること。

 

    • 件名に:【要確認】【ご回答ください:◯月◯日まで】などを明記
    • 用件が一目でわかるように「◯◯について」などのキーワードを入れる


読み手にとって「考える前に伝わる」状態をつくることで、返信までのハードルが下がります。

 

5. チャットやメールでは“選択肢 or 一文回答”を意識する

「この内容で大丈夫でしょうか?」「ご確認お願いします」だけでは、返信のハードルが高くなるため、相手が忙しいときほど、“どう返せばいいのか”が明確であることが重要です。

 

    • 「①〜③の中で、ご希望はございますか?」のような選択肢形式
    • 「以下のような形式でご返信いただけると助かります」など、テンプレ型の返信例を添える


こうした”そのまま返せる構造”があると、相手は余計な思考をせずにアクションを起こしやすくなります。


また、こちらの伝えたいこともブレずに伝わり、結果としてやり取りがスムーズになります。

 

3)コミュニケーション全体の設計

6. 「定例や連絡の目的」を毎回セットで伝える

定例やメールのやり取りで、「今日の打ち合わせって何を話すんだっけ?」「これは何のための連絡?」と思われたら、関与度は下がってしまいます。


そこで大事なのが、“この時間/連絡は何のためか”を冒頭で明示すること。

 

    • 「本日は、◯◯の進め方について整理できればと思っています」
    • 「◯◯を進めるにあたってのご連絡となります」


こうした“目的のセット”があるだけで、顧客は「何をすればいいか」が分かり、コミュニケーションへの主体的な参加が促されます。


7. 性格に合わせるだけでなく“届く問い”と“動線”を設計する

「この顧客は反応が薄いから、そもそも難しい」と感じたときこそ、“反応しやすい構造を先に用意する”という設計が効果的です。

 

    • 打ち合わせ前に「ご質問シート」を送っておく
    • メールに「①〜③」など選択肢形式で返信できる工夫を入れる
    • 「この問いにだけ答えてもらえればOK」というシンプルな問いかけを設計する


こうした“問いの見せ方”や”返しやすい動線”があるだけで、相手の性格や文化に左右されず、スムーズなやり取りが可能となります。

 

まとめ:「伝える」だけでなく、「届かせる」設計を

オンラインでのコミュニケーションは、相手の反応が見えにくく、性格や温度感に左右されがちです。だからこそ、「伝えたつもり」で終わるのではなく、「本当に伝わっているかどうか」を意識することが、カスタマーサクセスにおいてますます重要になっています。


リアクションの少ない顧客に対しても、性格に合わせるだけではなく、“届く構造”を設計することです。


問いかけの形、進め方の順序、反応しやすい動線など、コミュニケーションの一つひとつを丁寧に設計していくことで、対話の質が大きく変わります。小さな工夫の積み重ねが、顧客との関係性を深め、成功へと導いていくのです。


「伝える」ではなく、「届かせる」へ


それが、誰にでも“きちんと響く”カスタマーサクセスを実現する第一歩です。


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