サービスエクセレンスとは?顧客満足度を高める組織の実現方法
顧客は商品やサービスに満足できるだけでは、熱狂的なファンにはなりません。コモディティ化が進む中で、企業は顧客の期待を超える「感動」を提供してロイヤルカスタマーを獲得していく必要があることから、サービスエクセレンスが注目を浴びています。
今回はサービスエクセレンスについて解説します。顧客の期待を上回る感動を提供するための組織づくりに興味がある方は、ぜひ最後まで記事を読んでみてください。
サービスエクセレンスとは

サービスエクセレンスとは、顧客の期待を上回るサービスを提供できる組織の力を意味します。顧客から驚きや感動といった感情を引き出し、ロイヤルカスタマーになってもらうことをゴールとする概念です。
顧客の期待を上回るサービスが提供できる特定の部署や個人に依存することなく、組織全体で感動体験を提供できるようにマネジメントを行います。市場競争力を高め、業界を牽引するために欠かせない力です。
サービスエクセレンスのレベルは4段階に分けられます。
<サービスエクセレンスのレベル>
| レベル1 | コアとなるサービスの提案 (Core service proposition) |
顧客満足 |
| レベル2 | 顧客からのフィードバックのマネジメント (Customer feedback management) | 顧客満足 |
| レベル3 | 個別の優れたサービスの提供 (Individual excellent service provision) |
カスタマーデライト |
| レベル4 | 驚きのある優れたサービスの提供 (Surprisingly excellent service provision) | カスタマーデライト |
顧客満足とカスタマーデライトとの違い
サービスエクセレンスは4つのレベルに分類できますが、どのようなサービスを提供するかで顧客が抱く感情が変わります。
レベル1、2では、顧客にサービスを提供して顧客満足を生み出します。お客様の期待通りの価値を提供することで信頼関係を築くことがゴールです。
一方で、レベル3、4ではお客様の期待を超えるサービスを提供し、喜びや感動(カスタマーデライト)を生み出します。喜びや感動を生み出すことで、顧客に選ばれ続け、安定した収益が見込める状態にすることをゴールとします。
サービスエクセレンスの必要性
競争が激しい市場で企業が勝ち残り、成長し続けるためにはサービスエクセレンスが不可欠です。
商品が溢れる時代「製品」「機能」「価格」だけでは顧客をつなぎ止めることが難しくなってきました。その結果、感動体験を提供することが、企業価値を高める手段となりつつあります。
感動体験が顧客をロイヤルカスタマー(企業やブランドに強い信頼を寄せる顧客)に変えます。
ロイヤルカスタマーはサービスを利用し続けてくれて、ポジティブな口コミを発信してくれたり、家族や友人にサービスを薦めてくれたりする貴重な存在です。ロイヤルカスタマーを獲得できれば売上が安定します。そのため、サービスエクセレンスを意識する企業が増えてきました。
サービスエクセレンスを構成する3要素
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サービスエクセレンスは「組織文化・ビジョン」「従業員の能力と権限」「顧客体験を重視した業務プロセス」で構成されています。
組織文化・ビジョン
サービスエクセレンスを実現するためには、共通のビジョンと企業文化が必要不可欠です。これは、「良いサービスをしよう」というスローガンに留まるものではありません。
経営者や事業責任者がサービスエクセレンスの戦略とビジョンを打ち出し、全従業員が「お客様を深く感動させること」の価値観として共有することが大切です。
例えば、リッツ・カールトンは、「Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen」を作成して、従業員が顧客のために行動できるようにしています。
従業員の能力と権限
サービスエクセレンスを実現するためには、従業員の能力向上と適切な権限付与も欠かせません。なぜなら、カスタマーデライト(顧客感動)は、マニュアル通りに対応するのではなく、顧客の状況や感情を理解し、柔軟に対応する必要があるためです。
従業員に対して、高いレベルのサービスを提供するための知識やスキルを習得させて、顧客の状況に応じて迅速に判断し、マニュアルを超えた特別なサービスを提供できる裁量権を与えることが必要不可欠です。
従業員が「自分は顧客に感動を与えることができる」という自信を持ち、オーナーシップを発揮することで、エクセレントサービスが向上します。
顧客体験を重視した業務プロセス
サービスエクセレンスを実現するためには、顧客体験を重視した業務プロセスも欠かせません。顧客との接点を可視化するためにカスタマージャーニーを作成して、どのタイミングでどのようなニーズを抱えるかを考えてみましょう。
そして、サービスに反映します。このように、顧客体験を重視して、業務プロセスを改善することで顧客に感動が与えられるようになります。
関連記事:『CX(顧客体験)とは?重要性とCXを向上させる方法を解説!』
サービスエクセレンスを向上させる方法

サービスエクセレンスを向上させる方法は以下の通りです。
- ビジョンと戦略を策定する
- 現状の組織力を評価する
- プロセスを再設計する
- 従業員を育成する
- 定期的に改善する
ここでは、各手順について詳しく解説します。
1.ビジョンと戦略を策定する
まず、経営者や事業責任者が顧客の期待を上回る感動につながる体験(カスタマーデライト)を実現するためのビジョンと戦略を策定することから着手すべきです。
サービスエクセレンスは全社的な取り組みのため、全従業員が共通の羅針盤を持っておくべきです。
自社の目指すべき姿(ビジョン)を「顧客にどのような感情を抱かせたいか」という視点から定義します。
次に、そのビジョンを達成するために、組織能力をどのように強化すべきか目標や行動計画に落とし込みましょう。これにより、組織全体の方向性が統一化されます。
2.現状の組織力を評価する
次に現状の組織力を客観的に評価しましょう。なぜなら、「組織が顧客満足とカスタマーデライトのどのレベルに到達できているか?」「組織文化、人材、業務プロセスのどこに課題があるか?」を把握しなければ改善策を打てないためです。
サービスエクセレンスのレベルを参照し、自社のサービス力がどのレベルまで到達できているかを診断します。特に、顧客感動を生むレベル3・4に達しているかどうかは顧客からのフィードバックを活用して評価しましょう。これにより、ボトルネックが特定できます。
3.プロセスを再設計する
次に顧客の期待を上回る感動につながる体験を生み出すために、顧客視点でプロセスを再設計します。組織全体が一貫した品質で、「期待を超える」レベルのサービスを提供し続けるためには、それを可能にする仕組みが大切です。
たとえば、苦情対応を単なる処理で終わらせず、感動的なリカバリーができるように業務プロセスを見直します。このように、業務プロセスを再設計することで感動を安定的に生み出せるようになります。
4.従業員を育成する
次に顧客感動を生み出せるように従業員の能力を育成し、適切な権限を与えましょう。なぜなら、顧客に感動を与えるサービスは、マニュアル通りではなく、現場の従業員が顧客の状況を察知し、柔軟に判断して行動することで実現するためです。
結局のところ、従業員一人ひとりの能力と意欲に集約されます。
従業員の育成では、接客スキルだけでなく、顧客を深く理解する力や感動を創出するマインドを醸成する研修を実施しましょう。
そして、従業員が顧客のために即座に判断・行動できるよう、裁量権と実行予算を付与します。これにより、従業員のエンゲージメントとオーナーシップが高まり、自律的にカスタマーデライトを提供できるようになります。
5.定期的に改善する
サービスエクセレンスを磨くために、データ測定して、定期的にプロセスを改善していきましょう。なぜなら、顧客の期待は変化し感動の体験も当たり前となるためです。
立ち止まらずに組織能力を開発していかなければ、競争優位性を失ってしまいます。そのため、顧客ロイヤルティや従業員エンゲージメントを測定して、改善の余地があるかを考えましょう。
サービスエクセレンスが高い企業事例

出典元:『常磐興産株式会社』
常磐興産株式会社はスパリゾートハワイアンズを運営している会社です。スパリゾートハワイアンズでは“きづなリゾート”宣言がされています。
スパリゾートハワイアンズは、家族や大切な人がつながる場所と時間をたくさんつくります。あたたかい温泉と、フラガールと、スタッフが一枚岩となって元気と感動をお届けします。
忘れられない思い出と、心がときめく新しい夢と希望を作り続け、日本一のワクワク楽園を目指すことを、いまここに宣言します。
同社は東日本大震災で施設が全館休館に追い込まれましたが、営業が再開できるまで、ダンシングチーム「フラガール」による全国キャラバンを敢行し、顧客の期待を超える感動と勇気、元気を提供し、顧客との強い絆を深めていきました。
“きづなリゾート”宣言通りの取り組みにより顧客と関係を深め、同社は早期の再建、コロナ後の業績のV字回復を達成しました。
まとめ
サービスエクセレンスは、組織全体で顧客満足を超える感動を提供し続けるための力です。
サービスエクセレンスは「組織文化・ビジョン」「従業員の能力と権限」「顧客体験を重視した業務プロセス」で構成されています。正しい手順で取り組めば、どの企業でも顧客に感動を提供することができます。
さまざまな商品、サービスが溢れる中で顧客に選ばれるために、感動体験が提供できることが必要不可欠となりました。そのため、ぜひサービスエクセレンスを磨いてみてください。

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