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顧客継続率99.9%の秘訣とは?保険業界特化SaaS、株式会社hokanのカスタマーサクセスに迫る【株式会社hokan】

はじめに

今回は、保険代理店向け顧客・契約管理システム「hokan®︎」を提供する株式会社hokan(以下、hokan)のカスタマーサクセス(CS)チームで活躍されている、湊様と梅澤様にお話を伺いました。

業界特化のバーティカルSaaSとして、約420社への導入実績と99.9%という驚異的な顧客継続率*を誇る同社。その裏側にあるCSチームの体制、顧客との向き合い方、そしてチーム立ち上げ期の苦労から今後の展望まで、多岐にわたるテーマでお話しいただきました。

*いずれも2025年10月時点の実績に基づく

インタビュー担当者のご紹介

湊様(写真左)
スタマーサクセス統括マネージャー
前職は経営コンサルティングに従事。2022年4月に株式会社hokanへ入社。主に規模の大きい保険代理店(エンタープライズ領域)を担当し、現在はCSチームの責任者を務める。

梅澤様(写真右)
カスタマーサクセスリーダー
前職はプログラマーとして10年以上にわたりSIer業界で活躍。2023年10月に株式会社hokanへ入社。エンジニアとしての知見を活かし、開発が伴う案件などを中心に担当している。

聞き手
アディッシュ株式会社 カスタマーサクセス 安田

 異色の経歴からCSへ──入社のきっかけと第一印象 


──本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人がhokanに入社された経緯について教えてください。お二人とも、CS職は初めて就かれたそうですね。 

湊様:前職の経営コンサルから転職する際、「次のキャリアの選択肢が広がる道」を選びたいと考えていました。その中で、最も広がりがありそうだと感じたのがベンチャーでした。hokanは当時シリーズAの段階で、自身のバリューを発揮しやすく、事業の伸びしろも大きいと感じたのが決め手です。また、SaaSやITの領域で知見を深め、会社と一緒に大きく成長したいという気持ちもありました。

梅澤様:私は知人からの紹介がきっかけです。前職の待遇面で少し悩んでいた時期に、hokanの人事担当者である知人に相談したところ、「うちは大丈夫だ」と声をかけてもらいました。選考過程で湊さんをはじめ多くの方と話したり、オフィス見学をさせてもらったりする中で、「良い会社だな」と確信し、入社を決めました。

――お二人が入社前に会われた時の、お互いの第一印象はいかがでしたか?

湊様:SIer出身の方が来ると聞いて、当時のCSチームには全くなかったスキルセットだったので、「これからどうなるんだろう」という面白さと期待感があったのを覚えています。

梅澤様:オンラインでお会いして、「良い人そうだな」というのが第一印象でした。

「和」のテイストと業界特化──事業と文化の特徴

──事業概要について教えてください。

湊様:私たちは保険業界に完全に特化したサービスを展開しています。2025年2月にグループ化し、現在はプロダクト開発を行う「hokan」、コンサルティングなどプロフェッショナルサービスを提供する「CIEN」、独自の補償サービスと運営プラットフォームを開発する「Frich」の3社体制で、業界への貢献を目指しています。

──事業に加えて、社風や文化の面でもユニークだと伺いました。イベントで法被(はっぴ)を着用されているのも、その一例でしょうか?

湊様:そうですね。会社が日本橋・茅場町に構えており、代表が土地の歴史など、物事の発祥や成り立ちを重んじ、「和」のテイストを好んでいることもあり、ブランディングに反映されています。法被は展示会などのイベントで登壇する際や、ユーザー会ではお客様にも着ていただき、一体感を出すために使っています。

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──社内で法被以外にも「和」のテイストが採用されているコーポレートグッズや制作物はあるのでしょうか?

湊様:例えば、シリーズBの資金調達を発表した際には” 過去に立ち返りながら、未来に向けて前進していこう”という意味を込めてサイトデザインに「のれん」のモチーフを取り入れたり、2025年上半期の標語「ノリノリうなぎ登り」といったコンセプトから、山本海苔店さんとコラボしたノベルティでおつまみ“のり”の詰め合わせを作ったりもしました。

視覚的なインパクトや遊び心がありつつも、hokanが大切にしている「先進性」や「堅実性」といった文化を象徴するクリエイティブであると感じます。

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情報分散と属人化からの脱却──保険代理店の「悩み」に寄り添うhokanの価値

──メインサービス「hokan®︎ 」について教えてください。

湊様:保険代理店様向けの顧客/契約管理・営業支援(CRM)システムです。
保険業界は法規制が厳しく、「何を・いつ・どのように行ったか」という活動履歴の管理が非常に重要になります。私たちのシステムは、複数の保険会社にまたがる顧客情報や契約情報、対応履歴などを一元管理し、代理店様のコンプライアンス遵守と業務効率化を支援するものです。 


──お客様である保険代理店様は、具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか?

湊様:私が担当することが多い、個人のお客様を訪問して営業する「プロ代理店」様の場合、主に3つの課題があります。

  1. 情報が分散している
    複数の保険会社の商品を扱うため、各社のシステムにログインしないと情報が見られず、一元管理できていない。

  2. 活動が属人化している
    営業担当者個人の手帳や記憶に頼っており、組織として活動を把握・管理できていない。

  3. 監査対応が不十分
    適切な募集活動が行われているかという監査に対応できず、保険会社から受け取る手数料が減額されてしまうリスクがある。


梅澤様:私が担当する「企業内代理店」様(企業のグループ会社として、従業員向けなどに保険を販売する代理店)は、今の課題に加えて特有の悩みもあります。例えば、自社グループ向けの契約比率を一定以下に保つ規制への対応や、数が多い団体保険の更新手続きの煩雑さなどが挙げられます。


──セグメントによって課題が異なりますが、チーム内での情報共有はどのように行っているのですか?

梅澤様:チームはセグメントで分かれていないので、Slackなどを活用して密に連携しています。「こういう問い合わせがあったけど、良い事例はある?」といった形で、日々コミュニケーションを取りながら知見を蓄積し、お客様への回答に活かしています。

湊様:加えて、お客様の特性に応じた「パッケージ」を用意することで、属人化を防いでいます。例えば、「生命保険がメインの代理店様向け」「損害保険がメインの代理店様向け」「企業内代理店様向け」といった形で、CRMの推奨設定をパターン化しています。これにより、どの担当者でも一定の品質でご提案できる体制を整えています。

 

お客様に寄り添うCS──継続率99.9%を実現する仕組み

──貴社のサービスはお客様からの「改善が速い」という声も多いようですが、その秘訣は何でしょうか?

梅澤様:エンジニアと直接話すことを何よりも大事にしています。テキストコミュニケーションだけでなく、必要であればすぐにオンラインで会話します。単に「この機能が欲しい」と伝えるのではなく、「お客様は、こういう背景・理由があって、本質的にはこの業務に困っているんです」というレベルまで掘り下げて説明し、納得感を持ってもらうことを意識しています。納得してもらえると、開発のスピードも格段に上がりますね。

 

──お客様からのポジティブな声は、エンジニアチームにも共有されているのですか?

梅澤様:はい。Slackにはお客様の声を共有するチャンネルがあり、「この機能改善、ありがとうございました!」といった感謝の声を積極的に伝えるようにしています。これは社内の文化として根付いていますね。

──導入数や継続率の高さを維持するために、特に重視している取り組みはありますか?

湊様:現在、導入社数は420社ほどで、継続率は99.9%です。「オンボーディング」が全ての肝だと考えており、ここでの成功がその後の継続利用に直結します。

梅澤様:オンボーディングが上手くいっていないと、使いこなせなくて、解約に繋がってしまいます。なので、私たちのオンボーディングは、プラン・規模にもよりますがヘルススコアを確認しながらじっくり行います。

  1. 計画:hokan利用方針の設定
    まずは、hokanの基本的な操作方法や活用方針を固めていただきます。

  2. 検証:設定・活用方法の確定
    一部のユーザー様で実際にシステムを使い、「本当にこの運用でいけるか」を検証し、改善を繰り返します。

  3. 展開:全社展開・活用フォロー
    運用方法が固まったら、全ユーザー様への展開を進めます。

このステップをしっかり踏むことで、導入開始時点でお客様自身が主体的にシステムを運用できる「自走できる体制」を構築することを最も重視しています。

 

──導入後のアダプション(利活用促進)のフェーズでは、どのようなアプローチをされていますか?

湊様:まず前提として、私たちのプロダクトは業務の根幹となるCRMのため、一度導入されると解約されにくいという特性があります。加えて、保険業界は法改正が頻繁にあるので、私たちは3週間に1回のペースでアップデートを行い、常に最新の規制に対応し続けています。そのため、お客様が「業界の変化にシステムが対応できなくなった」という理由で解約されることは構造的に起きにくいんです。

その上で、CSとしてはハイタッチでの定期的な接点を大切にしています。お客様の規模に応じて、能動的にアプローチをし、関係性を維持しながら活用を促進しています。

──導入すると解約されにくいからこそ、最初の「導入」が非常に重要になるかと思います。オンボーディングで特に意識されていることは何ですか?

梅澤様: 私たちが最も大事にしているのは「Fit to Standard」という思想です。
レガシーな業界では「システムを自社の業務に合わせる」という考え方が根強いですが、私たちはSaaSとして「標準化されたベストプラクティスに業務をフィットさせる」ことを目指しています。

そのために、推奨される業務フローをまとめた「パッケージ」を用意し、お客様が多様な選択肢の中で迷うことなく、スムーズに導入を進められるよう導いています。もちろん、操作マニュアルやヘルプページといったコンテンツの整備も並行して行っています。

現場任せから脱却──CS教育体制の整備とチームの成長


──メンバー全員が同じ品質で顧客対応を行うために、社内の教育体制はどのように構築されていますか?

梅澤様: 私や湊が入社した頃はまだ体制が整っておらず、正直「現場で学ぶ」という側面が強かったですね。
しかし最近では、新入社員向けのオンボーディングプログラムがしっかりと整備されてきました。CSの業務だけでなく、セールスなど関連部署の業務内容についても学ぶ機会を設け、プロダクトに関するレクチャー会も定期的に開催しています。新しく入った方が迷わず立ち上がれるような仕組みが、少しずつ出来上がってきています。

──湊様はCSチームの立ち上げに近い時期に入社されていますが、当時はどのような課題がありましたか?

湊様: 私が入社したのは、エンタープライズ領域へ本格的に展開し始めるタイミングでした。
当時はまだ確立されたプログラムが何もなく、まさに手探りで、がむしゃらに進めるしかありませんでした。導入の計画手順、お客様とのコミュニケーション方法、会議体の設計まで、すべてをゼロから作り上げていく日々でしたね。

──このような状況を乗り越えた経験は、現在のチームにどう活かされていますか?

湊様:様々なセグメントやデータの活用、お客様とのコミュニケーションまで、とにかく濃い1年を経験したので、今チーム全体をマネジメントする上で非常に役立っています。当時はお客様の業務を深くヒアリングする必要があったため、そこで得た現場感が今の提案の土台になっています。仕組みが整った今ではなかなか得られない、貴重な経験だったと感じています。

 

お客様と共に業界をアップデートする──理想の関係性とコミュニティ作り


──CSとしてお客様と接する中で、どのような関係性を理想とされていますか?

梅澤様: もちろんお客様ではあるのですが、「対等なパートナー」という意識を大事にしています。私たちの理念に「保険業界をアップデートする」という志を共有し、「一緒に業界を良くしていきましょう」というスタンスで向き合うことで、プロジェクトもスムーズに進みます。お客様の協力は不可欠ですので、そのための信頼関係構築は非常に重要ですね。

──ユーザー会やイベントも積極的に開催されていますが、どのような目的があるのでしょうか?

湊様: 既存のお客様に対しては、大きく2つの目的があります。
一つは「最新の業界情報の提供」、もう一つは「ユーザー同士の横の繋がりの創出」です。 プロダクトの話に限定せず、例えば弁護士の方をお招きして法改正に関するセミナーを開催することもあります。

私たちが中立的な第三者として有益な情報を提供することで、業界全体の発展に貢献したいと考えています。また、ユーザー様同士が繋がることで新たなシナジーが生まれ、業界全体が底上げされていく。そんなコミュニティ作りを目指しています。

 

成功体験と失敗から学んだこと──CS現場のリアル


──これまでの業務で、特に「これは上手くいった」と感じる成功体験があれば教えてください。

湊様:オンボーディングの段階でアップセル・クロスセルを意識した提案ができたことですね。私たちは「アダプション」だけでなく、契約拡大の「エクスパンション」もCSの重要な役割と捉えています。

お客様の業務フローがまだ固まっていないオンボーディングの段階で、「私たちのプロダクトを使えば、将来的にはここまで業務が効率化できますよ」という理想の姿を提示するんです。まだ柔軟に変化を受け入れられるタイミングだからこそ、私たちの提案を聞き入れてくださりやすく、結果としてクロスセルに繋がった経験は、大きな成功体験でした。

──逆に、失敗から学んだ経験はありますか?

梅澤様:新しい機能開発において、お客様の声を聞くバランスの難しさを痛感したことがあります。SaaSは特定のお客様のためでなく、業界標準のプロダクトを作るべきです。しかし、ある機能開発の際にお客様の要望を少し聞きすぎてしまい、結果としてニッチなシステムになりかけたことがありました。

この経験から、お客様の要望の本質を見極め、それが「他のお客様にとっても有益か」という視点を常に持つこと、そして個別の要望に対しては代替案を徹底的に考えてご納得いただくことの重要性を学びました。

 

CSチームが描くこれからの展望


──最後に、今後の目標についてお聞かせください。

湊様:私たちのCSチームの役割は、「CSの知見と経験をもって、事業目標達成に向けたレベニュードライバー(収益成長の牽引役)であること」と定義しています。今後はCSの領域にとどまらず、セールスやマーケティングといった他部署にも積極的に働きかけ、CSが主導して会社全体の成長を牽引できるような存在になりたいと考えています。

梅澤様:私は、開発部門との連携をさらに強化し、CSチームがより働きやすい環境を整備していきたいです。お客様の要望の背景を正確に伝え、プロダクトのロードマップを明確にすることで、「この機能はいつできるのか」といった問い合わせ対応の負荷を減らすことができます。そうすることで、CSメンバーがより本質的なお客様への価値提供に集中できる体制を作っていきたいです。

──本日は貴重なお話をありがとうございました! 


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