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顧客の「なぜ?」に寄り添い続ける──スマレジが挑む“真の課題解決”のカスタマーサクセス【株式会社スマレジ様】

株式会社スマレジ 執行役員 カスタマーサクセス部 部長 竹村 大様
聞き手:アディッシュ株式会社  執行役員 経営戦略本部長 小原 良太郎

はじめに


「お問い合わせを受けてマニュアル通りに答える」だけが、カスタマーサポートの役割ではない。顧客の本質的な課題を見極め、最適な方法でサポートする。そんな姿勢を徹底して貫くのが、クラウド型POSレジを提供する株式会社スマレジ(https://corp.smaregi.jp/)のカスタマーサクセス部門です。

今回、お話を伺ったのは、カスタマーサポート未経験で入社し、現在ではカスタマーサクセス部の部門長およびタイムカード事業を執り仕切る竹村大様。システムトラブルが即「店舗の営業リスク」に直結する業界で、どのようにカスタマーサクセス組織を築き、質を保っているのか。社内に“カスタマーサクセスの価値”を伝えるための仕組みづくりや、解約率 0.46%(※FY2025 3Q実績)という驚異的な実績の背景に迫ります。

「営業から始まったキャリア」──サポート専任部署がなかった創業期


──竹村様のこれまでのご経歴を教えていただけますか。

スマレジには2013年の夏頃に営業職で入社しました。当時は、サポート専任部署はなくて、営業が商談だけでなく、お客様からのメール問い合わせも対応していました。そのうち私が顧客からの質問への対応など全般を担当するようになり、そのままサポート専任となりました。

――カスタマーサポートのご経験は、それまでなかったんですね。

はい。全くの未経験でした。以前は塾講師をやったり、飲食店で働いたりと、BtoCの接客業はしていたのですが、カスタマーサポートのような業務は初めてでした。

「今すぐ使えない」は“店が回らない”という現実


──POSレジや勤怠管理というサービスの性質上、お客様の問い合わせの緊急度が高いケースも多いのではないでしょうか?

その通りです。特にPOSレジに関しては、お客様の目の前で支払いが発生するサービスです。
レジが動かない、決済ができないというのは、店舗の営業そのものが止まってしまう状態を意味します。だからこそ、「明日までに対応します」ではなく、「即時解決します!」というスピード感が求められます。技術的なサポートだけではなく、店舗運営の滞らない安心感を提供するつもりで対応しています。

――たしかに、お客様の温度感も自然と高くなりそうですね。

クレームというよりは、「とにかく今どうにかしてほしい!」という切実な声ですね。怒っているというより焦っている。その“焦り”に真摯に向き合いながら、冷静かつ的確に問題解決まで導く必要があります。

スマレジ

年中無休──店舗の"営業時間"に合わせるサポート体制


──カスタマーサポートの対応時間も、業界に合わせた特別な体制になっているのでしょうか?

はい。コールセンターは、朝9時から夜22時まで、365日体制で稼働しています。

──一般的なBtoBサービスだと、18時で終業という会社も多い中で、かなり手厚い体制ですね。

お客様の多くが飲食店や小売店ですから、夕方以降の営業中にトラブルが起こることも当然あります。一方で、勤怠管理の「スマレジ・タイムカード」に関しては、ユーザーが経理や人事の方という事情もあり、対応時間は17時までとしています。

スマレジのカスタマーサクセスチーム構成と役割分担

 

──現在のカスタマーサクセス部門は、具体的にどのようなチームで構成されていますか?

お客様対応に直接関わる部分では、大きく分けると2つのチームがあります。

 

  1. カスタマーサクセスチーム:新規契約者に対するオンボーディングを担当します。POSレジやタイムカードの導入初期におけるサポートを通じて、利用定着を促します。

  2. カスタマーサポートチーム:導入後のお客様からの問い合わせに、電話・メール・チャットで対応します。

     

またチーム内には階層のようなものがあります。スーパーバイザー(SV)が各チームのリーダーとなり、担当者はTier1、Tier2と分かれています。Tier1で対応が難しい問い合わせは、Tier2へエスカレーションする体制です。SVは、お客様の問い合わせへの同席や、エスカレーションの判断、メンバーのフォローなども担当します。


サポートからサクセスへ──定着支援を目的とした進化

チームはどう進化してきたのか? サポートからサクセスへの分化

 

──スマレジのカスタマーサクセス部門は、現在いくつかのチームに分かれているとのことですが、それは最初からあった体制なのでしょうか?

いえ、もともとはサポートチームとヘルプコンテンツチーム(FAQサイトやお知らせの更新を担当するチーム)しかありませんでした。


当時は、問い合わせに電話・メール・チャット・オンラインマニュアルで対応する体制のみで、「カスタマーサクセス」という考え方そのものがなかったんです。

サクセスチームが誕生したのは、世間的に「カスタマーサクセス」という言葉が注目され始めた5〜7年ほど前です。

──新たに部門を立ち上げるにあたって、当時はどのような課題意識があったのですか?

当時は特に専任チームもなく、部署の名前が変わっただけでした。役割も「能動的に顧客とコンタクトを取って離反防止と課題ヒアリングをしよう」くらい曖昧なものでした。

 

しかし会社が成長するにつれ、BtoB向けSaaSとして、解約率を下げることがミッションだという認識が強くなり、そこから「初期の利用定着を高めよう」という議論になりました。その結果、「導入初期のオンボーディングを専門に担当するチームを作ろう」という話に発展して、今の体制となりました。



サクセス活動が本格化し、チャーンレートが0.46%に

 

──実際、カスタマーサクセスの活動が本格化したことで、チャーンレートにはどのような変化がありましたか?

現在、チャーンレートは0.46%です。もともとサポート体制と営業・納品プロセスだけで解約率1%程度を維持できていたのですが、近年プロダクトの進化とともに機能追加や顧客サクセス活動を本格化した結果、解約率はさらに大きく低下し、今の水準に到達しました。

──解約率の改善は、サクセス活動が定着した成果だったのですね。

はい。サクセス活動だけが成功要因ではないですが、効果はあると捉えています。

特に、オンボーディングの強化が大きかったと思います。最初の設定でつまずくと、そのまま離脱してしまうお客様も多いんです。「使えなかった」ではなく「使わなかった」状態をいかに防ぐか。そこにフォーカスしてから、アクティブ率などの数字に効果が現れました。

 

「要件定義」ではなく「要求定義」がスマレジのカスタマーサクセスの軸



──スマレジのカスタマーサクセスの対応方針として「要求定義」というキーワードがあると聞いています。改めて、それがどういう考え方なのか教えていただけますか?

「要求定義」は、私たちスマレジのバリューのひとつでもあります。似た言葉に「要件定義」がありますが、一般的に「要件定義」は「何をしたいか」を明確にする作業ですよね。

それに対して、「要求定義」は、「なぜ、それをやりたいのか?」という“背景にある目的”を明らかにすることにフォーカスしています。お客様からの問い合わせに対して、表面的なリクエストだけで対応するのではなく、その背景にある意図をきちんと理解し、最適な提案に繋げる──私たちはこれを「要求定義」と呼んでいます。

 

──どのようなケースでその姿勢が活きるのでしょうか?

たとえば、「値引きをしたいのですが、どうすればいいですか?」という問い合わせがあったとします。そのまま「この画面で値引きできます」と案内するのは簡単です。でも、それだと本当にお客様がやりたかったことを実現できないこともあります。

だから、「どのような値引きをしたいのですか?」「キャンペーンですか?それともクーポン利用ですか?」と、こちらから深堀りしてお聞きするんです。すると、「実は期間限定のセールを実施したくて」といった具体的な目的が見えてきます。そうなれば、セール機能やレポート機能との組み合わせも含めた最適な運用方法をご案内できるわけです。

──目的に合わない案内をしてしまうと、お客様の満足度も下がってしまいそうですね。

まさにそうです。表面上の問い合わせだけに対応していると、「できるって言われたのに、実際には使えなかった」といった誤解や不満に繋がる可能性があります。結果的に、「このサービスは合わない」と判断されてしまうこともある。それってすごくもったいないですよね。

弊社のミッションは「お店を元気に、街を元気に!」です。
私たちカスタマーサクセスの役割は、これらの機能を「導入してもらう」ことではなく、「使いこなしていただく」ことです。店舗の運営が本当にラクになった、売上が伸びたという実感につながって初めて、カスタマーサクセスの価値が発揮されると考えています。

 

要求定義のための責任感あるチームづくり

 

──要求定義を実践するのはとても大変だと思います。どのように実現しているのですか?

スマレジのカスタマーサクセス部は、ほとんど正社員で構成されています。以前は外注していたこともあったのですが、やはり品質面に課題がありました。

外注の場合、どうしても「マニュアル通りに答える」という対応になりがちで、お客様が本当に困っていることに寄り添いづらいんです。「その場をしのぐ」だけでは、根本解決には繋がりません。お客様の課題をしっかり理解し、納得のいく提案をするには、やはり責任感を持って業務に取り組めるインハウス体制が必要だと判断しました。

 

──そうなると採用が大変になってきますが、採用においてどんな点を重視されているのでしょうか?

採用では、大きく3つの点を重視しています。

1つ目は、「過去の経験がスマレジで活きるかどうか」
2つ目は、「カスタマーサクセス職に対する意欲があるか」
そして最後に、「明るく前向きな性格であるか」です。

コールセンター経験の有無だけでなく、たとえば接客・サポートの経験者や、店舗運営の現場経験がある方、BtoB営業の経験者など、お客様の気持ちが理解できるような視点を持った人材を採用しています。いくらスキルがあっても、仕事への意欲がなかったり、対人対応にストレスを感じるようなタイプだったりすると、早期離職に繋がりがちです。長期的に活躍してもらうには、やはり価値観のマッチングが重要だと考えています。

 

品質向上を仕組み化する「なぜを聞けたか」カウント

 

──現場での対応品質は、どのように維持・向上させているのですか?

対応品質を定量的に把握するために、「“なぜ”を聞けたか」をカウントする仕組みを導入しています。「背景を掘り下げられたか」をデータとして把握することで、メンバー一人ひとりの意識が変わってくるんです。

また、研修も重視しています。一般的なコールセンターでは、研修は1週間〜2週間程度だと思いますが、スマレジでは約1ヶ月半の研修期間を設けています。ロールプレイを通じて実践的に学んでもらい、配属後もすぐに独り立ちせず、段階的に習熟していくスタイルでやっています。

 

クロスセルとチーム分業──プロダクトごとの深耕戦略

顧客の声から「別サービス」の提案機会へ

 

──スマレジでは、POSレジやタイムカードだけでなく、さまざまなサービスを提供されていますが、カスタマーサクセスとしてクロスセルの提案もされているのですか?

はい、積極的に行っています。たとえば、タイムカードの新機能がリリースされた際には、POSレジを利用しているお客様に「こういう機能もあるのですが、ご興味はありますか?」「無料でお試しいただけますよ。」といったキャンペーンを開催しています。

また、お客様との日々のやり取りの中で、「このお客様は別の機能を使えばもっと便利になるのでは?」と気づく場面もあります。そういったときには、自然な形で他サービスをご紹介しています。“売り込み”のようにならないように注意しながら、必要としていそうな方に、必要なものを届けるという意識です。

──一方で、クロスセルには難しさもあるのではないでしょうか?

そうですね、たとえばPOSレジと決済サービス(PAYGATE)は比較的スムーズに提案できるんですが、POSレジと勤怠管理サービス(スマレジ・タイムカード)になると、途端にハードルが上がります。

理由は明確で、導入の担当者が異なることや、そもそもサービスの目的が異なるからです。POSレジは店舗運営の担当者、タイムカードは人事や経理の担当者。このように、部門が違うと話が通じにくくなりますし、提案の仕方も工夫が必要になります。

 

専門チーム制で知識を深める

 

──こうした複雑なプロダクト構成の中で、カスタマーサクセス部門としての体制はどうなっているのでしょうか?

現在は、プロダクトごとに専任チームを設けています。もともとは全プロダクトの知識を習得するという体制にしていたのですが、やはり対応難易度が高く、担当者の負担が大きくなってしまうため、分業制に切り替えました。
分業制を敷いた後も、勉強会や知識テストを定期的に実施して、一定レベル以上の知識量を維持しています。

──テストの結果に応じて評価が変わったりするのでしょうか?

いえ、ペナルティのようなものはありません。テストの結果が悪ければ再研修を実施する、というスタンスです。学びのきっかけを与えるためのものであり、強制ではなく前向きに取り組めるような仕組みにしています。

 

カスタマーサクセスの価値を“収益”に変える──プロフィットセンター化への挑戦

“コストセンター”から“収益部門”へ

 

──これまでのお話を伺って、カスタマーサクセス部が事業に深く関わっていることが伝わってきました。社内での位置づけはどう捉えられているのでしょうか?

まだまだ課題はあるのですが、「カスタマーサクセスは、売上やLTVに貢献する部門である」という認識が広まりつつあるかなと思います。


従来、カスタマーサポートというと「コストセンター」として捉えられることが多かったと思います。でも、私たちの中では、「解約を防ぐ」「顧客満足度を向上させる」という活動が、間接的にも直接的にも売上に繋がっているという意識があります。

 

だからこそ、カスタマーサクセス部門を“プロフィットセンター”として、会社の成長に貢献できる存在にしていきたいという想いが強くあります。

 

KPIと収益を紐づけ、成果を“見える化”する

 

──カスタマーサクセスが事業にどう貢献しているかを、社内にどう伝えていますか?

まず、指標とKPIを明確に設定しています。チームによって異なるのですが、具体的にはサクセスがタッチした顧客の「解約率」「アクティブ率」「NRR(Net Revenue Retention)」「オンボーディング完了率」などですね。


そして、それぞれの指標がどのくらい改善されたかを社内で共有することで、「カスタマーサクセスがいたから、この数字がこれだけ変化した」と見える形で成果を示すようにしています。

 

社内発信の強化──カスタマーサクセスの価値を広く伝える努力

 

──カスタマーサクセスの価値を社内に理解してもらうために、他にも取り組んでいることはありますか?

社内勉強会と称して開発へフィードバックを行う会を開催したり、月次で活動報告を新聞としてまとめて展開したりと、発信の機会を意識的に増やしています。


たとえば、どんな問い合わせに対応し、どんな満足の声をいただいたのか。逆に、課題があった場合はどう解決に繋げたのか。そういったリアルな声や事例を伝えることで、カスタマーサクセスの仕事が「単なる受け身の対応」ではないことを知ってもらうようにしています。

 

メンバーにも「ビジネス視点」を──次世代の育成へ

 

──今後、カスタマーサクセス部門で力を入れていきたいことはありますか?

メンバー一人ひとりに「ビジネス視点」を持ってもらうことです。

今は、収益やLTV、コスト構造といった話を理解しているのは一部のリーダー層だけですが、本当は現場でお客様と向き合っている担当者こそ、「自分の仕事が会社にどう貢献しているのか」を知っているべきだと思うんです。


そのために、社内勉強会やKPIレビューの場をもっと増やしていきたいと思っています。目の前のお客様の課題を解決するだけでなく、その活動がどう売上に繋がるのかを理解しながら動ける組織にしていきたいです。

 

──竹村様、本日はありがとうございました。

 

おわりに:カスタマーサクセスを「攻めの部門」に──事業成長のパートナーとして


スマレジのカスタマーサクセス部門は、「ただのお客様対応」から脱却し、「顧客の成功を支援するプロフェッショナル集団」として進化を続けています。


お客様の「なぜ?」に丁寧に向き合い、真の課題を見極めて提案する。そして、解約率0.46%という成果を出しながらも、さらに上を目指して仕組みづくりと組織づくりを進める姿勢は、多くのカスタマーサクセス担当者や事業責任者にとってヒントになるはずです。


カスタマーサクセスが企業の“利益を生む部門”として認識される未来は、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。


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