カスタマーマーケティングとは?注目される理由や施策、成功事例を紹介!
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武田龍哉
2025.12.22
「新規顧客の獲得が年々難しくなっている」「広告費のCPA(顧客獲得単価)が下がらない」といった課題をお持ちではありませんか?
市場が成熟し、類似商品が溢れる現代で、企業の持続的な成長のカギを握るのは既存顧客との関係構築です。そのため、新たなマーケティング戦略としてカスタマーマーケティングが注目を浴びています。
今回はカスタマーマーケティングについて詳しく解説します。具体的な進め方や施策、成功事例までご紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
カスタマーマーケティングとは

カスタマーマーケティングとは、既存顧客に対して行うマーケティング活動を指します。
主な目的は、顧客ロイヤルティを醸成し、顧客生涯価値(LTV)を向上させることです。
具体的な取り組みとしては、オンボーディングやコミュニティ運用(イベント開催)、サービス改善などが挙げられます。
この概念自体は目新しいものではありませんが、昨今は新規顧客の獲得コストが高騰しているため、既存顧客に自社製品を長く使い続けてもらう重要性が改めて注目されています。
カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの関係性
カスタマーマーケティングとよく似た言葉にカスタマーサクセスがあります。両者は密接に関係していますが役割が異なります。
カスタマーサクセスの役割は、顧客を成功へ導いて信頼関係を構築し、売上の拡大を目指すことです。一方で、カスタマーマーケティングの役割は顧客に対してアプローチしてファン化を目指すことです。
カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスを連携させることで、より相乗効果が期待できます。
関連記事:『カスタマーサクセスとは?仕事内容や成功事例や導入メリットをわかりやすく解説!』
カスタマーマーケティングが注目される理由

カスタマーマーケティングが注目される理由は3つあります。
既存顧客の維持が安定収益に繋がるため
企業が安定収益を確保するためには、既存顧客の維持が必要不可欠です。
類似の製品やサービスが市場に溢れ、新規顧客の獲得は年々難易度を増しています。新規獲得には広告費だけでなく、時間や人的リソースも必要となり、そのコストは既存顧客維持にかかる費用の5倍に及ぶと言われています(1:5の法則)。
売上が同じ場合でも、獲得コストが嵩んでしまえば利益率は低下し、事業成長の鈍化を招きかねません。
一方で、既存顧客への働きかけはクロスセルやアップセルに繋がりやすく、高い費用対効果(ROI)が期待できます。このような背景から、顧客維持に注力する企業が増えています。
サブスクリプションサービスが普及したため
音楽や動画配信サービスの普及を皮切りに、サブスクリプション市場は急拡大しています。
消費者向けサービスだけでなく法人向けサービスも登場し、ビジネスモデルは売り切り型からサブスクリプション型へとシフトしてきました。
ビジネスモデルが変化する中で安定収益を確保するには、既存顧客にサービスを継続的に利用してもらわなければなりません。そのため、顧客の利用状況を的確に把握し、適切なタイミングでフォローするなどのカスタマーマーケティングの重要性が増してきました。
既存顧客の口コミで新規顧客が獲得できるため
SNSの普及により、顧客が製品やサービスへの感想を気軽に発信できるようになりました。こうした口コミはフォロワーに瞬時に届き、かつ拡散力が高いため、影響力のある人の投稿がきっかけで多くの人に認知されることがあります。
実際に利用している顧客の声は、広告よりも「本当の使い心地」を伝えるため、検討段階にあるユーザーに対して強い説得力を持ちます。結果として、新規顧客の獲得もしやすくなります。
カスタマーマーケティングのメリット

カスタマーマーケティングのメリットは5つあります。
顧客ロイヤルティが向上する
カスタマーマーケティングに取り組むことで、顧客ロイヤルティ(忠誠心)を高めることができます。 顧客が製品を利用して「課題を解決できた」「導入して良かった」という成功体験を深く実感したとき、ブランドに対する愛着が深まるからです。
ブランドへの愛着が育てば、競合他社へ乗り換えられるリスクは大幅に減ります。
さらに、「この会社の他の製品も試してみたい」という意欲も湧きやすくなるため、LTV(顧客生涯価値)の向上も期待できます。
関連記事:『顧客ロイヤルティとは?顧客ロイヤルティを高める施策や成功事例を紹介!』
クロスセルやアップセルの機会に恵まれる
カスタマーマーケティングは、アップセルやクロスセルによる売上の増加にも大きく貢献します。 その理由は、日々の活動を通じて既存顧客との間に強固な信頼関係が築かれるからです。
顧客とのコミュニケーションを深めることで、潜在的なニーズや課題を正確に把握でき、最適なタイミングで商品やサービスを提案できるようになります。すでに信頼関係が構築されているため、提案を前向きに受け入れてもらいやすく、結果として顧客単価のアップが期待できます。
既存顧客の口コミで新規顧客を獲得できる
カスタマーマーケティングによって顧客ロイヤルティが醸成されると、顧客はブランドに対してポジティブな感情を抱くようになります。 その結果、知人にサービスを推奨したり、SNSで好意的な口コミを発信したりといった行動が自然に生まれます。
昨今は、企業発信の情報よりも利用者の声を信頼する消費者が増えており、口コミ活用は新規顧客の獲得に欠かせないものです。そのため、カスタマーマーケティングの重要性が増してきました。
販売コストの適正化を図れる
カスタマーマーケティングに取り組めば、販売コストの適正化を図れます。 まず、顧客ロイヤルティが向上すれば顧客維持のコストを抑えられます。
さらに、ロイヤルティの高い顧客が「使ってよかった」「おすすめしたい」とポジティブな口コミを拡散してくれるようになり、新規顧客が獲得しやすくなるでしょう。
新規顧客を獲得するための広告宣伝、セミナー、展示会といった活動を行わずに済み、新規獲得コストも抑えられます。つまり、販売コストの最適化が図れます。
顧客の声をサービス改善に活かせる
カスタマーマーケティングを通じて顧客ロイヤルティを醸成することは、顧客との強固な信頼関係の構築につながります。
企業への信頼が厚い顧客は、アンケートやインタビューにも協力的で、建前ではない本音を話してくれるようになります。 こうして集まった質の高い顧客の声(VOC)は、企業が気づいていなかった課題や新たな発見をもたらすものです。
顧客の声をサービス改善や新製品開発に反映させることで、顧客の真のニーズに応えることができ、市場における競争優位性を確立しやすくなります。
カスタマーマーケティングのデメリット

カスタマーマーケティングにはデメリットが3つあります。
成果が出るまで時間がかかる
カスタマーマーケティングは中長期的な施策であり、即効性は期待できません。 顧客との信頼関係やブランドへの愛着は、一朝一夕に築けるものではないからです。
コミュニティ運営やセミナーなどを通じて継続的に接点を持ち続ける必要があり、定量的な成果として現れるまでには、数ヶ月から年単位の時間を要することを覚悟しなければなりません。
コストがかかる
施策の実行には相応のコストがかかります。また、リソースの確保も課題となりがちです。 例えば、コミュニティ運営やアンケート分析を行うには、専門スキルを持った人材の採用や教育が必要です。
さらに、顧客データを管理するためのCRMツールなどの導入・運用費用も必要となります。
部門間連携が必要になる
成果を出すためには、マーケティング部門だけでなく全社的な取り組みが必要です。 顧客にとっては、営業、サポート、開発など、どの部門との接点もすべて「顧客体験」として認識されるからです。
たとえマーケティング部門が良い施策を行っても、サポート対応が悪ければ顧客は離れてしまいます。一貫した顧客体験を提供するためには、部門の壁を越えた協力体制が不可欠です。
関連記事:『CX(顧客体験)とは?重要性とCXを向上させる方法を解説!』
カスタマーマーケティングの施策
カスタマーマーケティングの進め方は以下の通りです。
- 現状の分析
- KPIの設定
- 顧客セグメンテーションの設定
- 施策の選定、実行
- 効果測定
- 改善
ここでは、カスタマーマーケティングの主な施策をご紹介します。
オンボーディング
オンボーディングとは、顧客が製品・サービスの価値を実感し、定着できるよう支援する一連のプロセスを指します。
解約の多くは、導入直後の「使い方がわからない」「機能のメリットを感じられない」といったつまずきが原因です。そのため、この段階での不満を解消し、早期の成功体験を提供することが、解約防止の鍵となります。
顧客の習熟度やセグメント(ハイタッチ・ロータッチなど)に合わせて、適切な手法を組み合わせることが大切です。
【具体的な活動内容】
- 導入支援(キックオフミーティング)
- 定着支援セミナー(ウェビナー)
- FAQサイトやチュートリアル動画の提供
- カスタマーサポート窓口の設置
関連記事:『オンボーディングとは?目的や手順、実施する際のポイントを紹介!』
コミュニティ運営
コミュニティ運営は、コアファンの育成と顧客エンゲージメントの強化に有効な施策です。 ユーザー同士が課題解決やナレッジ共有を行える場を提供することで、自走的なファン化を促進します。
また、オンラインの交流だけでなく、オフライン(リアル)イベントを組み合わせることで、顧客同士や企業との結びつきをより強固にすることが重要です。
【主な活動内容】
- ユーザー同士の交流・相互扶助(Q&A)の促進
- 顧客の意見(要望)の集約
- 新商品・試作品の先行モニター体験
- 開発秘話などの情報発信
サービス改善(VOC収集)
VOC(顧客の声)を、迅速に製品やサービスへ反映させるプロセスです。 顧客が抱える「使いにくさ」や「機能不足」といった不満を放置することは、解約の直接的な原因となります。
VOCを起点とした改善サイクルを回すことで、顧客満足度を維持し、長期的な利用を促します。
【主な活動内容】
- 定期的な顧客アンケート(NPS調査など)の実施
- 要望に基づいた新機能の追加・改修
- 顧客ニーズに合わせた新料金プランの策定
- 改善内容(リリースノート)の積極的な告知
関連記事:『VoC分析とは何か?収集方法や分析方法、手順を解説!』
利用促進
顧客に対し、製品・サービスの継続的な利用を促す(リテンション)ための施策です。
単なる機能紹介にとどまらず、クーポンなどの「特典」や、他社の活用方法がわかる成功事例を提供することで、顧客の利用意欲を刺激し、定着化を図ります。
【主な活動内容】
- パーソナライズされたリコメンド
- インセンティブの提供
- コンテンツ提供
カスタマーマーケティングの成功事例

最後にカスタマーマーケティングに取り組み成果を出している企業の事例をご紹介します。
ユーザーコミュニティによるファン化
クラウド人事労務ソフトを提供する企業では、サービスに関する問い合わせだけでなく、人事労務の業務知識に関する質問が殺到し、サポート部門の負担が増加するという課題を抱えていました。
そこでユーザー同士が悩みやノウハウを共有できるオンラインコミュニティを開設するとともに、活用事例を発表するユーザー会を定期的に開催しました。
その結果、掲示板などを通じたユーザー同士の相互解決が進み、カスタマーサポートへの問い合わせ件数が減少しました。
さらに、コミュニティ活動を通じて顧客エンゲージメントが高まったことで、サービスの継続利用意向が向上し、解約率が改善しました。
ロイヤルティプログラムによるLTV向上
あるアパレルブランドでは、新規顧客の獲得コストが高騰する一方で、2回目以降の購入に繋がらない離脱が課題となっていました。
同社は購入金額や頻度に応じて特典が変わる「ロイヤルティプログラム(会員ランク制度)」の刷新を行いました。
具体的には、単なる購入実績だけでなく、SNSでのシェアやレビュー投稿などの応援活動も評価ポイントとして加算しました。
また、ランク上位者には限定イベントへの招待や先行販売権といった特別な体験価値を付与することで、差別化を図りました。
その結果、「ランクを上げたい」という顧客心理が醸成されて購入頻度が向上しました。さらに、顧客がSNSでブランドを推奨するようになったことで、口コミをきっかけとした新規顧客の獲得にも成功しています。
まとめ
人口減少や市場の成熟化が進む中、新規顧客の獲得だけに頼るビジネスモデルは限界を迎えつつあります。今後は、既存顧客一人ひとりと向き合い、信頼関係を深め、LTVを最大化させるカスタマーマーケティングへの取り組みが、企業の生存戦略として不可欠になるでしょう。
成果が出るまでには時間とコストがかかりますが、築き上げた「顧客との信頼関係」や「ファンコミュニティ」は、競合他社が容易に模倣できない資産となります。 そのため、これを機会にカスタマーマーケティングに取り組んでみてください。
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この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。
