ARPU とは?意味・計算方法、改善施策までを徹底解説!
企業が継続的に成長していくためには、新規ユーザーの獲得だけでは不十分です。新規顧客数には限りがあるため、既存ユーザーに継続して利用してもらい、収益を安定的に伸ばしていく戦略が求められます。その戦略の成果指標となるのが「ARPU(Average Revenue Per User:ユーザー1人あたりの平均売上)」です。ARPUを正しく把握し、戦略を見直しましょう。
この記事では、ARPUの計算方法や、数値を改善するための具体的な施策について解説しています。ぜひ参考にしてください。
ARPUとは

ARPU(アープ)とは、「ユーザー1人あたりの平均売上」を示す指標です。既存ユーザーからどれだけ収益を得られているかを把握するために使われます。
企業の成長や継続的な収益向上には欠かせない指標であり、携帯電話会社やゲーム会社などで広く活用されています。たとえば、携帯電話会社では音声ARPUとパケットARPUに分けて、通話とデータ通信の利用状況を分析しています。ARPUを累積データとして半期や通期で追えば、ユーザーが課金するタイミングの傾向もつかめます。
また、投資家などのステークホルダーに経営状況を説明する際にも有効です。
ARPUの計算方法
ARPUは、「総売上高 ÷ 総ユーザー数(アクティブユーザー数)」で計算します。
例えば、ある月の売上が1,000万円でアクティブユーザーが5万人だった場合、ARPUは200円になります。
ただし、売上が一部のユーザーに偏っているケースでは、平均値だけでは実態を正確に把握できないこともあります。そのため、ユーザーをセグメントごとや期間ごとに分けてARPUを計算しましょう。
ARPU、ARPA 、ARPPUの違い

顧客1人あたりの売上金額を把握するための経営指標には、ARPUのほかにもARPAやARPPUといった指標があります。これらの指標を使い分けることで、収益性を分析しやすくなります。
ARPA
ARPA(アーパ)とは、1アカウントあたりの平均売上を示す指標で「ARPA=総売上高 ÷ アカウント数」で計算します。
近年では、スマートフォンを2台持ちしたり、スマホとタブレットを併用する人が増えています。そのため、1人で複数のデバイスを利用するケースも多く、より実態に近い収益を把握するためにサブスクリプション型のビジネスではARPAが活用されています。
ARPPU
ARPPU(アープピーユー)とは、課金ユーザー1人あたりの平均売上を示す指標で、「ARPPU=総売上高 ÷ 課金ユーザー数」で計算されます。
主にゲーム業界で用いられ、課金ユーザーと無課金ユーザーを区別して収益状況を把握するために活用されます。マーケティング施策を検討する際にも、より的確なターゲティングに役立つ指標です。
ARPUの重要性

ARPUは顧客1人あたりの売上金額を測定する指標であり、課金率や広告収益なども含めた事業全体の健全性を把握するのに役立ちます。
サービス利用者数が増えても、購入頻度や顧客単価が低ければ売上は伸びません。逆に、利用者数が横ばいでも、購入頻度や単価が高ければ売上は増加します。つまり、ARPUは「サービス利用者数」と「購入頻度・顧客単価」とのバランスを測る上で重要な指標です。
この数値をもとに、「課金率を高めるべきか」「平均単価を上げるべきか」といった具体的な戦略を立てることができます。
また、ARPUを活用すれば、同業他社のサービスと自社の収益性を比較・分析することも可能です。こうした理由から、ARPUは事業戦略を考える上で欠かせない指標といえます。
ARPUを活用した分析方法

ARPUを計算して現状を正しく把握するには、「ユーザーセグメント別」「期間別」「サービス別」に分けて分析することが効果的です。ここでは、ARPUを活用した具体的な分析方法をご紹介します。
ユーザーセグメント別で分析する
より深いインサイトを得るためには、ユーザーセグメント別にARPUを分析するのがおすすめです。
たとえば、年齢・性別・地域などの「属性別セグメント」で分析すれば、どのユーザー層が高い収益性を持っているかを把握できます。また、「利用状況別セグメント」で利用頻度やログイン日数をもとに分析することで、アクティブ度と売上との相関関係も見えてくるでしょう。
さらに、広告・SNS・既存顧客からの紹介など「流入チャネル別セグメント」で分析することで、どのチャネルからのユーザーがより収益につながっているかも明らかにできます。
期間別に分析する
季節ごとの売上変動を把握したい場合は、期間別にARPUを分析してみましょう。月ごとや週ごとにARPUを比較することで、売上の変動傾向が見えてきます。
また、新機能のリリースやプロモーション施策の前後でARPUを比較すれば、キャンペーンやイベントの効果を評価できます。外部要因による影響も把握しやすくなるため、事業戦略を見直す際にもおすすめです。
サービス別に分析する
どのサービスが最も売上に貢献しているかを把握したい場合は、サービス別にARPUを分析してみましょう。サービスごとにARPUを算出することで、収益構造の違いや強みが明らかになります。
また、複数のサービスを併用しているユーザーと、単一サービスのみを利用しているユーザーでARPUを比較することで、サービス間のシナジー効果も把握できます。こうした分析は、今後の投資配分やサービス強化の方針を決めるうえで有効です。
ARPUを向上させるための施策

サービスが普及すると、契約者数の増加が頭打ちになることがあります。しかし、ARPUを向上させることで、売上をさらに伸ばすことは可能です。ここでは、ARPUを高めるための具体的な施策をご紹介します。
アップセル
アップセルとは、既存顧客に対して上位プランや高価格帯のサービスを提案し、顧客単価の向上を図る施策です。新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に新たな価値を提供する方が効率的で、売上拡大につながりやすいため、多くの企業がアップセルに注力しています。
たとえば、動画配信サービスで「広告ありの基本プラン」を利用している顧客に対し、「広告なし・高画質で視聴可能なプレミアムプラン」への切り替えを提案するようなケースがアップセルに該当します。
関連記事:「アップセルを成功させる方法とは?注意点や役立つツールを紹介」
クロスセル
クロスセルとは、既存顧客に関連商品やサービスを追加で提案し、顧客単価を高める施策です。既に自社サービスに好感を持っている顧客に対して、ニーズに合った関連商品を提案することで、追加購入を促すことができます。
たとえば、クラウドストレージを契約している顧客に対して、セキュリティ強化オプションを提案するようなケースがクロスセルにあたります。
関連記事:「 クロスセルとは?メリット・デメリット、手順やポイントまで解説」
リテンション
リテンションとは、既存顧客の離脱を防ぎ、利用期間を延ばすための施策です。新規顧客の獲得には多くのコストがかかるため、既存顧客に継続してサービスを利用してもらう方が、効率的に売上を確保できます。そのため、顧客の離脱を防ぐことは非常に重要です。
具体的には、パーソナライズされた情報の提供や、離脱の兆候が見られる顧客に対するフォロー施策などがリテンションの代表例です。
価格の見直し
価格の見直しとは、プラン料金を適切に調整することを指します。サービスの価値は市場ともに変動するため、料金設定も見直さなければいけません。
料金が安すぎれば収益機会を逃し、高すぎれば顧客の離脱を招く可能性があります。適正な価格戦略をとることで、顧客満足度を維持しながら、利用期間や顧客単価の向上が期待できます。
価格を見直す際は、顧客が納得できる価値(バリュー)を明確に伝えることが重要です。
顧客満足度を高める
顧客満足度を高めることができれば、既存ユーザーのサービス利用期間を延ばすことが可能になります。そのためには、より使いやすく、快適に利用できるサービスへと継続的に改善していくことが重要です。
たとえば、カスタマーサポートの充実に加え、FAQを整備して顧客の疑問をすぐに解消できる環境を整えることが効果的です。また、サービス自体をより直感的に操作できるように改修することで、ユーザー体験の向上につながります。
さらに、ユーザーの行動データを活用して、一人ひとりに最適化された情報や提案を届けることで、満足度と信頼感を高めることができます。
関連記事:『顧客満足度を上げる具体例10選!成功企業の事例とともに解説』
ARPUの改善事例
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企業ではARPUを改善するために、どのような取り組みがされているのでしょうか?ここでは、一般的なARPUの改善事例をご紹介します。
モバイルゲーム
モバイルゲーム会社では、既存ユーザーからの収益を最大化するためにVIP制度を導入しました。 VIPランクに到達すると、アイテムボーナスや経験値アップ、ログインボーナスなどの特典が得られます。これらの特典を受け取るために課金するユーザーが増え、その結果として顧客単価が上昇し、ARPUの改善につながります。
プロモーション費用を早期に回収するためにVIP制度を設けるゲームが増加しており、実際に中国のモバイルゲーム市場では、VIP制度を取り入れたタイトルがランキング上位を占めています。
さらに、VIP制度はユーザーの継続率向上にも寄与し、ゲームに対するモチベーションを維持させる効果も見込めます。単なる課金促進だけでなく、ファン層の固定化にも効果がある施策です。
SaaSサービス
SaaSサービスでは複数の料金プランを用意し、ユーザーの利用状況を観察しながら上位プランへ誘導するのが一般的です。
利用量やユーザー数など、一定の基準を超えた顧客をプレミアムプランに移行させることで顧客単価を高めます。
さらに、使用量が基準値を超えた際に通知を行い、上位プランへの移行を促す仕組みを導入することで、ARPUを大幅に改善することが可能です。
加えて、プラン間の差別化を明確にし、サポート品質や追加機能など工夫することで、ユーザーは自然にアップグレードを検討しやすくなります。
携帯電話
モバイル通信業界では契約者数の伸びが鈍化し、ARPUを高める施策を積極的に導入してきました。例えば、データ容量の大きいプランを設定したり、音楽・動画配信サービスやクラウドストレージをセットにしたりすることで顧客単価を引き上げてきました。
最近では、5Gの普及を見据えて、大容量かつ高速通信を前提としたプレミアムプランを提供する通信会社が増えています。さらに、家族割や複数デバイスとの連携サービスなどを組み合わせ、ユーザーがより高い価値を感じるような仕組みを強化する動きも活発です。
単なる通信サービスにとどまらず、生活インフラ全体を支えるプラットフォームとしての立ち位置を確立しようとしています。
まとめ
ARPUは、顧客1人当たりの売上を示す重要な指標です。ARPAやARPPUと組み合わせて分析することで、収益の実態をより詳細に把握できます。
ユーザーセグメントや期間、サービス毎に分析すれば、どの顧客層や施策、サービスが売上に貢献しているかが明らかになります。また、アップセル・クロスセル・リテンション・価格見直し・顧客満足度向上などの施策を通じて、契約者数の伸びが停滞した場合でも売上拡大が可能です。モバイルゲームやSaaS、携帯電話業界でもARPUの改善は事業成長に不可欠とされています。そのため、これを機会にKPIにARPUを設定してみてください。

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