スムーズにドメイン知識を習得する5つの方法

笠松 ゆい
2025.11.25
新しい業界に身を置く際、ドメイン知識の習得は欠かせないステップです。
特に、私たちアディッシュのメンバーは、クライアント先に常駐する形でカスタマーサクセスを支援しており、その環境に応じた専門知識の習得が日々求められています。
ドメイン知識を迅速に習得し、クライアントの事業や顧客理解を深めることで、真の価値を提供できるようになります。
例えば、単にプロダクトの操作方法を覚えるだけでなく、そのプロダクトがクライアントの顧客のビジネスにおいて、どのような役割を担い、どのような課題を解決しているのかまで踏み込むことで、より本質的なサポートができるようになります。
本記事では、日々クライアントのカスタマーサクセスを支援する私たちが、いかにして効率的かつスムーズにドメイン知識を習得しているのか、その具体的な方法とポイントをご紹介します。
徹底した企業・業界リサーチを行う
クライアントの事業を成功に導くために、基本的な情報収集を怠らないことが重要です。
クライアント企業の事業内容を徹底的に調べる
企業のWebサイト、IR情報、プレスリリース、採用ページなどをくまなく読み込み、事業の全体像を把握します。特に、企業理念やビジョンは、その企業が何を目指しているのかを理解する上で欠かせません。
業界の専門書やニュースを読む
特定の業界に特化した専門書や、業界紙、業界ニュースサイトを購読しましょう。これにより、クライアント企業を客観的に評価する視点や、業界全体の共通言語を身につけることができます。
顧客の声を聞く
企業の製品やサービスに対する顧客の生の声をリサーチします。企業の公式レビュー、SNSでの言及、口コミサイト、顧客インタビューなどを通じて、製品の強み・弱み、顧客の満足度、未充足のニーズなどを把握します。これにより、企業が提供する価値を市場がどのように評価しているかを理解できます。
顧客理解と市場動向の把握は、事業の成功に欠かせない要素です。
クライアントの公開情報だけでなく、競合や顧客の動向もあわせて分析することで、より多角的な視点から課題を発見できます。
企業がどのような背景で、どのような価値を顧客に提供しているのか。
そして、その価値が市場でどのように評価されているのかを深く理解しましょう。
業界の最新トレンドをキャッチアップする
業界の動向を把握することで、競合他社に先手を打つことができます。
また、新しい法律や規制が施行されることを事前に知っていれば、コンプライアンス違反の対策を講じることができ、リスク回避につながります。
業界の最新トレンドや技術動向を把握するためには、展示会やセミナーに参加するのが有効です。
展示会に参加する
競合他社がどのような製品やサービスを提供しているか、どのような顧客層をターゲットにしているかを肌で感じることができます。実際に製品に触れたり、開発担当者と話したりすることで、Webサイトだけでは得られない深い洞察が得られます。
オンラインセミナーやウェビナーを活用する
場所を選ばずに参加できるため、多忙な中でも最新の情報をキャッチアップしやすいです。質疑応答の時間があれば積極的に参加し、疑問を解消しましょう。
業界専門誌やニュースサイトを購読する
業界特有の専門用語や動向を日常的にインプットすることで、知識の土台を固めることができます。
オンラインコミュニティやSNSを活用する
例えば、SlackやDiscord、SNSなど、特定の業界や技術に関わるオンラインコミュニティを活用するのも効果的です。リアルタイムで交わされる議論や情報交換を通じて、最新の話題や課題をいち早く知ることができます。また、質問を投げかけることで、専門家から直接意見を聞く機会にもつながります。
競合他社の動向を定期的にチェックする
競合他社がどのような新製品やサービスを投入しているか、どのようなマーケティング戦略をとっているかを定期的に調査することも重要です。競合のプレスリリース、ウェブサイト、SNS、決算資料などをチェックすることで、市場の主要なプレイヤーがどのような方向に向かっているのか、その動向からトレンドを把握することができます。
特に、オンラインコミュニティやSNSでの議論は、最新の課題や動向をいち早く知るための貴重な情報源であり、時にはビジネスの変革を促すようなアイデアの種を見つけることができる可能性もあります。
これらの取り組みを複合的に行って最新情報を多角的にキャッチアップし、クライアントの事業戦略に適切に反映させることで、結果としてクライアントの事業の持続的な成功に貢献することができるでしょう。
積極的に質問し、キーパーソンから生の声を聞く
その業界で長く経験を積んでいるキーパーソンから直接話を聞くことも効果的です。
クライアントの経営層や、業務を深く理解している担当者など、知識を持つ人々に積極的にアプローチしましょう。
1on1ミーティングを設定する
定期的にミーティングの機会を設け、業界の歴史、市場の動向、競合他社の情報、そしてクライアント企業独自の強みや課題について質問します。
ペアで作業する
キーパーソンと一緒に、実際の業務やプロジェクトにペアで取り組みます。単なる観察にとどまらず、手を動かしながら知識を共有することで、より実践的なドメイン知識を習得できます。プログラミングにおけるペアプログラミングなどが良い例です。これにより、手順やロジックだけでなく、思考プロセスも学ぶことができます。
インタビューを実施する
事前に質問項目を準備したうえで、キーパーソンの都合に合わせて、インタビューの機会を設けましょう。単なる情報収集だけでなく、相手の考え方や判断基準、経験談などを深く掘り下げて聞くことで、文書化されていない暗黙知を引き出しやすくなります。インタビューは、対面やオンライン会議など、相手が話しやすい形式を選びましょう。
ワークショップを開催する
複数のキーパーソンや関連部署のメンバーを集めて、特定のテーマについて議論するワークショップを開催します。多様な視点から意見を交換することで、より多角的なドメイン知識を短時間で得ることができます。ファシリテーターを立てて議論を円滑に進めたり、ホワイトボードや付箋を使って情報を可視化したりすると、活発な意見交換が促されます。
キーパーソンから生の声を聞く際は、「なぜ?」を繰り返すようにしましょう。
「なぜその戦略を取っているのか」「なぜそのルールがあるのか」と深掘りすることで、表面的な知識だけでなく、その背景にある意図や思考プロセスを理解できます。
また、キーパーソンから得た情報は、チーム内で共有しましょう。
共有し、議論する場を設けることで、個人の知識を組織全体の資産にすることができます。
顧客体験を疑似体験する
顧客が実際にサービスや製品とどのように接しているかを理解することは、ドメイン知識を深める上で非常に重要です。机上の空論ではなく、顧客の視点に立って物事を考えることが、より良い提案やサポートにつながります。
自らプロダクトを利用してみる
クライアントのプロダクトやサービスを、実際に顧客として使ってみましょう。ユーザー登録から利用、問い合わせまでの一連の流れを体験することで、顧客が感じるであろう使いやすさや不便さを肌で感じることができます。また、競合他社のプロダクトやサービスも利用することで、顧客がなぜ他社製品を選ぶのか、他社製品のどのような点が魅力的なのかを理解することができます。
ロールプレイングを実施する
クライアントの顧客になりきって、問い合わせやクレーム対応のシミュレーションを行います。これにより、顧客がどのような言葉で、どのような感情を持ってサービスに接しているかを肌で感じることができます。また、顧客の不満点やニーズを深く理解するのに役立ちます。
カスタマージャーニーマップを作成する
顧客が自社の製品やサービスと出会い、利用し、離脱するまでの一連のプロセスを可視化した「カスタマージャーニーマップ」を作成します。そのマップに沿って、自身が顧客になりきって各フェーズを追体験します。各接点での顧客の感情や思考、課題を具体的に把握できます。
ドメイン知識は、単なる情報の羅列ではありません。顧客が実際に何を感じ、何を求めているのかを深く理解することで、知識は生きたものになります。
自ら顧客体験を追体験したり、その行動を可視化したりすることで、数字やデータだけでは見えてこない本質的な課題やニーズに気づくことができます。
5.現場の業務を体験する
座学だけでは見えない課題や、顧客のリアルな声は、現場の業務を体験することで初めて見えてきます。現場に身を置くことで、より実践的なドメイン知識を身につけられます。
カスタマーサポートの業務体験
顧客からの問い合わせ対応を体験することで、どのような不満や要望があるのかを直接知ることができます。これは、顧客の課題を深く理解し、より良い改善提案につなげるための重要なステップです。
営業同行
営業担当者と一緒に顧客のもとを訪れることで、製品やサービスのどのような点が評価され、どのような課題に直面しているのかを理解できます。商談の進め方や、顧客とのコミュニケーション方法も学ぶ良い機会になります。
現場の定例会議への参加
現場の定例会議や朝礼、進捗共有会などにオブザーバーとして参加します。これにより、現場のメンバーがどのような課題を抱え、何を重要視しているのか、リアルタイムで議論されている内容を直接聞くことができます。また、部門間の連携や情報のやり取りの仕方についても把握できます。
短期プロジェクトへの参画
対象となる部署やチームの特定の短期プロジェクトにメンバーとして参加します。例えば、新製品の立ち上げ、業務改善のパイロットプロジェクトなどです。これにより、単なるルーチンワークではなく、問題解決や意思決定のプロセスを当事者として経験でき、現場の論理や判断基準を深く学ぶことができます。
現場での体験は、生きたドメイン知識を効率的に習得する最良の方法の一つです。
机上で情報をインプットするだけでは知り得ない、顧客のリアルな声や、現場特有の課題、そしてそこでの意思決定プロセスを肌で感じることができます。
こうした体験を通じて得た気づきは、表面的な知識を「なぜそうなのか」という深い理解に変え、より説得力のある、現実的な提案や問題解決能力を養う基盤となります。
さいごに
これらの方法を組み合わせれば、初めての業界でもドメイン知識を効率的かつ立体的に習得できます。
しかし、知識は一度学んで終わりではありません。
日々の業務を通じて実践的に知識を深め、定期的に振り返ることが重要です。
例えば、クライアントとの会議内容や、業務で得た知見、成功事例などを議事録や共有資料にまとめることで、知識は定着します。
さらに、チームミーティングや1on1で、「今週学んだこと」「分からなかったこと」などを話し合えば、個人の学びはチーム全体の財産となるでしょう。
新しい業界で活躍する上で、この記事が皆さんの指針となれば幸いです。

この記事を書いたライター
笠松 ゆい
前職では保険会社に勤め、営業から契約後の支援まで一貫して担当。アディッシュに入社し、カスタマーサポート・サクセス・エクスペリエンスを経験。課題を見つけ、改善策を模索しながら、日々顧客の事業の成功を支援している。
