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「顧客起点」の本当の意味とは?元コーチが語る、要望の”奥”にある成功を導く技術

あなたの仕事は「プロダクト起点」?それとも「顧客起点」?

カスタマーサクセスのお仕事は、毎日お客様の「要望」を聞いて、それに応えていく場面が多いですよね。


しかし、それは本当に「顧客起点」になっているでしょうか?

気づかないうちに「どうすれば自社プロダクトを使ってもらえるか」に意識が寄ってしまっていませんか?それは「プロダクト起点」の罠です。

本当の「顧客起点」とは、ただ要望に応えることではなく、
お客様がその要望の裏で本当に叶えたい未来を起点に考え、その実現から逆算して支援を設計することです。

 

カスタマーサクセスに出会う前から実践していたこと

実は、私は「カスタマーサクセス」という言葉を知る前、フィットネスクラブのコーチ時代から自然とこの考え方を実践していました。


そして、SaaS業界に転職して初めて、「あの経験は、まさに顧客起点だったな」と気づきました。

この記事では、コーチ時代に実際にあったエピソードを通じて、「顧客起点」の考え方を3つのステップでご紹介していきます。

実例:「顧客起点」でお客様の成功を導く3つのステップ

 

ステップ1:「顧客起点」で聞く — 要望の奥にある「本当の目的(インパクト)」を見つける

価値提供のスタートは、お客様が「どうしてそれを望んでいるのか」を理解することです。

例えば、私がコーチ時代に出会った70代の女性。
最初は「膝の痛みを治したい」とだけおっしゃっていました。
プロダクト起点なら、すぐに「太ももの筋トレメニューを提案しますね」になりがちです。(※膝痛には太ももの筋肉強化が効果的です)

でも私は「どうして膝を治したいのですか?」と一歩踏み込んでお聞きしました。
そこで語られたのはこんなお話です。


「家族旅行中に膝の痛みでバスを降りられず、一人で待っていたのですが、夫が付き添ってくれて、かえって申し訳なかった」この経験の中に、真の願いが隠れていました。

さらに「どうなったら嬉しいですか?」と尋ねると、少し考え込んでからこう答えてくださったのです。

 

「次の旅行では、家族に気兼ねなく、一緒に思い出を作れるようになりたい」

これがまさにインパクトです。
数字では測れない、理想の未来の姿を指します

 

ステップ2:「顧客起点」で分解 — 理想を「成果(アウトカム)」と「行動(アウトプット)」に落とす

「家族と旅行を楽しむ」だけでは目標達成の状態の意味合いが大きすぎます。
そこで私は、まず「痛みなく10分歩けるようになること」を具体的な成果(アウトカム)として定めました。

そして、次に必要なのは「そのために今日からやれること」です。
ここで「レッグカールは10回目標で動かす」といった具体的な行動(アウトプット)を提示しました。(※レッグカールは太ももの筋肉を鍛えるマシンです)

こうしてゴールを細かく分解することで、お客様は「自分が何をすればいいか」が明確に見えてきます。


ステップ3:「顧客起点」で伴走 — 日常に寄り添ったサクセスプランを二人で作る

最後に大切なのは、これらを「サクセスプラン」としてまとめ、お客様と一緒に進めることです。

私は「週に何回なら来店できそうですか?」と生活リズムを聞きながら、お客様自身が“自分ごと”として納得できる計画を立てました。

しかし、サクセスプランをただのToDoリストにすると長続きしません。
これは「理想の自分になるためのワクワクプランだ」と感じてもらえるような声掛けが必要です。
トレーニング中は「この動きを続ければ、次の旅行でたくさん歩けますよ!」と、行動が理想に繋がっていることを伝え続けていました。

まとめ「顧客起点」はSaaSのあらゆるフェーズで活きる

まとめると、顧客起点は次の3ステップで構成されます。

ステップ1:お客様の背景からインパクトを理解する
ステップ2:インパクトをアウトカムとアウトプットに落とす
ステップ3:サクセスプランに落とし込み、伴走する

この考え方があるかないかで、顧客に届ける価値の深さはまったく違ってきます。

SaaSにも同じ法則が当てはまります。


例えば人事評価システムの導入で、「評価で使用する紙を電子化し効率を上げたい」という要望があったとします。ニーズに単に応えるだけなら、機能提案で終わってしまいます。


しかし「なぜ効率化したいのか?」と一歩踏み込むと、その先には「評価業務の時間を減らし、マネージャーが部下との面談により多くの時間を割けるようにしたい」といった背景が見えてくるかもしれません。


そしてさらに話を深めることで、「人材定着率を改善したい」という、より本質的なインパクトが浮かび上がるのです。


こうして顧客の真のゴールを共有できて初めて、私たちは“戦略的パートナー”として伴走できる立場に立てます。

オンボーディング、アダプション、解約防止、アップセルなど、SaaSのさまざまな顧客フェーズで、この考え方は応用できます。

これから、ぜひこんな質問を加えてみてください。
「もしこのサービスが完璧に機能したら、あなたのビジネス(あるいは部署)は最終的にどうなっていたいですか?」

この問いかけが、あなたの関わり方を「プロダクト起点」から「顧客起点」へと変える第一歩になると思います。


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