アップセル・クロスセルとは?意味や事例、成功させるポイントを解説
マーケティングの世界で有名な1:5の法則が示す通り、限られたリソースで収益を最大化させるには、既存顧客との関係性をいかに深めるかが重要です。その中核を担うのがアップセルとクロスセルです。
しかし、「高いものを売る」「ついでに買わせる」といった売り手都合のアプローチでは、築き上げた信頼を損ない、解約を招くリスクもあります。大切なことは、顧客を第一に考えた、納得感のある提案です。
そこで、本記事ではアップセル・クロスセルについて詳しく解説します。意味や違いなど基礎知識から、押し売りにならないためのコツまで交えてご紹介するため、ぜひ参考にしてください。
アップセルとは?

アップセルとは、顧客が検討(または利用)している商品よりも上位のモデルを提案することで、顧客単価を向上させる営業手法です。
単に高額なモデルを勧めるだけでは、押し売りというネガティブな印象を与えかねません。そのため、「上位モデルを選んだ方が結果的にお得になる」「より高い成果が得られる」といった、顧客にとっての付加価値を実感してもらう提案が不可欠です。
<具体的な事例>
- より豊富な機能を備えた上位モデルのサービスを提案する
- 追加ライセンスの検討時に、ボリュームディスカウントを適用してお得感を出す
- 月額支払いから、トータルコストが安くなる年一括払いへの切り替えを提案する
クロスセルとは?

クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品に加え、関連商品を組み合わせることで利便性が高まる商品を提案し、顧客単価を向上させる営業手法です。
強引な提案は、押し売りというネガティブな印象を与え、築いてきた信頼関係を損なうリスクがあります。そのため、あわせて使用することで活用の幅が広がるといった、顧客のメリットに直結する提案が不可欠です。
商品の利用シーンをイメージしてもらうことで心理的なハードルは下がり、興味を持ってもらいやすくなります。
<クロスセルの具体的な事例>
- ノートパソコンの購入者に対し、マウスや専用ケースを提案する
- サンクスメールにて、購入商品と相性の良い商品を案内する
- 単品で購入するよりも、お得なセット価格の商品を用意する
アップセルとクロスセルの違い
アップセルとクロスセルは、どちらも顧客単価の向上を目的としていますが、アプローチの向きやタイミング、管理すべき指標などには違いがあります。
アプローチ方法
アップセルは、顧客が検討(または利用)している商品のグレードを引き上げる提案です。
例えば、「スタータープランは経費精算のみですが、スタンダードプランなら給与連携や経営分析も行えるようになります。会社の規模であれば、ワンランク上のスタンダードプランの方がより価値を発揮できると考えております」といったように、上位モデルによるメリットを提示することで納得感が得られやすくなります。
一方、クロスセルは購入を検討している商品に関連商品を組み合わせる提案を指します。
「スマートフォンは画面が割れやすく修理も高いため、保護シートやケースを付けておくと安心ですよ」といった、リスク回避を強調すると受け入れてもらいやすくなります。
アプローチのタイミング
アップセルは比較検討の段階、あるいは既存のサービスに限界を感じているタイミングでの提案が最適です。
例えば、オンラインストレージを利用中のお客様のデータ容量が上限に達する際、「アドバンスプランなら容量が3倍に増えます」と提案すれば、不便を感じている直後なので喜ばれるでしょう。
また、検討段階のお客様に対しては「プラス1,000円でAI仕訳機能も利用可能になりますが、いかがでしょうか?」と、わずかな差額で得られるメリットを提示するのも効果的です。
一方、クロスセルは、商品を購入した直後が最も成約しやすいタイミングです。「こちらの商品をご購入いただいた方の多くが、こちらのアクセサリーもセットで購入していますが、いかがですか?」と、ついで買いの心理を促すアプローチが基本となります。
アプローチのコツ
アップセルを成功させるには、「上位モデルを選んだほうが結果的にお得になる」「より高い成果が得られる」といった、顧客に付加価値を実感してもらうことが大切です。
また、将来の状況を予測した先回りのアドバイスも信頼の獲得に繋がります。
例えば、「もし、通年での利用をご検討であれば、月払いよりも年払いのほうがお得ですが、いかがでしょうか?」といった提案は長期契約のきっかけとなります。
一方でクロスセルは、ついで買いの心理的ハードルを下げると成功しやすくなります。
例えば、関連商品の価格を購入商品の価格の20%以下に抑えることで、ついで買いしてもらいやすくなるでしょう。また、「この保護フィルムを貼っておかないと、スマホ画面が割れてしまいます」など、セットで買わないことによるリスクを伝えると購入してもらいやすくなります。
KPI
アップセルとクロスセルは、最終目標であるKGI(重要目標達成指標)において「LTV」や「ARPU」を目指す点は共通していますが、KPIは違います。
アップセルでは、上位プランへの移行が順調に進んでいるかを測定するため「アップグレード率」「プラン継続率」「平均契約単価」「アップセル成功率」の指標を重視します。アップセルの成功は、提供しているプロダクトが高く評価されている証拠です。
一方で、クロスセルでは、メイン商品に関連商品がどれだけ購入してもらえたかを測定するため「セット率」「平均購入商品数」「クロスセル成功率」の指標を重視します。クロスセルの成功は、顧客が抱える多様な悩みに対する解決策があることを示しています。
データ活用方法
アップセルやクロスセルを成功させるためには、客観的なデータ活用が不可欠です。適切にデータを分析することで、顧客の状況に即したパーソナライズされた提案が可能になります。
アップセルでは、顧客の製品活用度を示すヘルススコアを注視しましょう。
例えば、データ容量・ユーザー数・処理件数などの利用ログを分析し、上限の80%に達した顧客に対して上位プランを案内することで切り替えを促せます。
クロスセルを成功させるには、購買履歴とデモグラフィックデータを掛け合わせ、「商品Aを購入した人は、高確率で商品Bも購入している」といった相関関係を特定することが大切です。このデータに基づいたレコメンドを行うことで、顧客にとって関連性の高い商品を最適なタイミングで提示できて成約につなげやすくなります。
アップセルとクロスセルに取り組む目的
企業がアップセルやクロスセルに取り組む主な目的は、既存顧客へのアプローチを通じて「収益性の向上」と「顧客との信頼関係の強化」を両立させることにあります。
一般的に、新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍に達すると言われています(1:5の法則)。そのため、既に接点があり信頼関係を築けている既存顧客に対し、いかに付加価値を提案できるかの重要性が増してきました。
顧客のサービス利用状況を的確に把握し、最適なタイミングでフォローを行うことで、上位モデルへの移行や関連商品の追加購入を促し収益の拡大を図ります。こうした丁寧な提案は、顧客側に「自分を深く理解してくれている」という安心感を与え、さらなる信頼の獲得にもつながります。
アップセル・クロスセルを成功させるコツ

アップセルやクロスセルを成功させるコツは3つあります。
顧客データを活用する
アップセルやクロスセルを成功させるには、勘に頼らず、CRMシステムに蓄積された顧客データを活用することが不可欠です。
まずは購入時期や購入頻度から優良顧客を特定するRFM分析や、商品の相関性を導き出すバスケット分析を行い、提案の精度を高めます。またデータに基づき、顧客がメリットを実感しやすいものを特定することも大切です。
KPIを設定する
アップセルとクロスセルの施策を評価するには、KGIであるLTVやARPUに直結するKPIの設定が不可欠です。
アップセルにおいては、顧客がより高い価値を求めているかを測るため、「アップグレード率」「平均契約単価」「プラン継続率」「アップセル成功率」を指標として管理しましょう。
一方でクロスセルでは、「セット率」「平均購入商品数」「クロスセル成功率」を重視します。各指標を定期的にモニタリングし、現場のアクションと連動させることで営業力の底上げができるようになります。
アプローチのタイミングを見極める
アップセルやクロスセルを成功させるためには、顧客が今、提案を求めているというタイミングの見極めが欠かせません。どんなに優れた提案でも、タイミングを誤れば押し売りという不信感を与えかねません。
アップセルの場合、利用中のサービスが限界に達し、不便を感じ始めた瞬間がチャンスです。
例えば、容量上限の警告が出た際や、事業拡大に伴い現在の機能では不十分になったタイミングでの提案は受け入れてもらいやすくなります。
一方でクロスセルは、商品購入の直後という心理的高揚感が維持されている時期が成約しやすいです。メイン商品の利便性を高める周辺機器や、リスクを回避する保証をセットで検討してもらうことで、受け入れてもらいやすくなります。
アップセルとクロスセルが押し売りにならない提案のコツ
アップセルとクロスセルは押し売りにならないように工夫しなければいけません。そのため、押し売りにならない3つの提案のコツを押さえておきましょう。
顧客視点を大切にする
アップセルやクロスセルを成功させるには、売り手側の都合ではなく、顧客がどのようなものを望んでいるかという視点を持つことが大切です。押し売りの原因は、顧客が望む商品とは異なるものを一方的に勧めることにあります。
一方で、顧客視点とは、現状に即した助言です。仮に成約に至らなくても、常に顧客のことを考えて動けば、信頼関係を築けるようになります。そして、信頼の積み重ねにより、無理な勧誘をせずとも顧客が自ら納得して選択してくれるようになります。
ヘルススコアからタイミングを狙う
ヘルススコアを基準に提案のタイミングを見極めることは、押し売りを防ぐ有効な手法です。ログイン頻度や処理頻度が高い時期に提案すれば、顧客も助言だと受け入れてくれます。
逆に、ログイン頻度が少ない時期は、売り手都合の勧誘と映り、強い拒絶反応を招くリスクがあります。このような場合は、なぜ利用頻度が下がっているのかを聞いてフォローすることが大切です。
データに基づき、顧客に最適なタイミングで最適な提案をすれば不快感を取り除くことができ、説得力のある提案ができるようになります。
ダウンセルの選択肢も持っておく
アップセルやクロスセルで顧客が難色を示した際、無理に説得せず安価なプランを提示するダウンセルの選択肢を持つことは、信頼関係を維持する上で不可欠です。
断る背景にはコスト不安やオーバースペックへの懸念があるため、「まずは限定的な範囲から始めましょう」と歩み寄る姿勢は、誠実さの証明となります。短期的には単価が下がったとしても、関係を継続することで、将来的な再提案の機会を残せます。
アップセルとクロスセルの成功事例
物流業界向けERP「ロジックス」を提供するアセンド株式会社は、利用状況レポートの活用によりアップセル・クロスセルを促進しています。
以前は顧客ごとの活用状況が可視化されておらず、追加提案の根拠が曖昧であるという課題を抱えていました。そこで利用状況レポートを整備したところ、顧客との対話が単なる現状確認から具体的な「意思決定」の場へと変化しました。
レポート導入からわずか1ヶ月でクロスセルの受注に至るなど、即効性のある成果を上げています。
客観的なデータで「何ができていて、何が不足しているか」を証明することは、顧客の納得感を高めるだけでなく、営業担当者が自信を持って提案するための強力な武器となります。
まとめ
アップセルとクロスセルは、単なる収益を向上させるための営業施策ではなく、顧客との信頼関係の構築にも役立つ施策です。売り手都合の提案を捨て、顧客視点に立って提案することで顧客と強固な信頼関係が築けるようになり、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつなげられます。
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