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カスタマーサクセスにおける顧客ライフサイクルとは?フェーズごとの施策例を紹介

カスタマーサクセスには多様な施策の種類があり、顧客が置かれている立場によって実施すべき施策やその成果が大きく異なります。そのため、「さまざまな施策に手を広げ過ぎて、思うような成果が出ない」と悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。このようなケースでは、顧客ライフサイクルが明確になっていない可能性が考えられます。

顧客ライフサイクルとは、サービス契約から解約までの一連のプロセスを指し、4つのフェーズに分かれています。フェーズごとに顧客の課題やニーズが異なるため、成果の高いカスタマーサクセスを実現するには、それぞれの顧客が置かれている立場を理解することが重要です。顧客ライフサイクルを理解すれば、各フェーズに合う適切なアクションプランを策定できるでしょう。本記事では、顧客ライフサイクルにおける各フェーズの位置付けや代表的な施策について詳しく解説します。

 

顧客ライフサイクルを構成する4つのフェーズ

 

質の高いカスタマーサクセスを実現するには、顧客一人ひとりの置かれている状況を明確にし、それぞれのニーズに合った施策を実施することが重要です。そして、顧客の現状を把握するために活用されるのが顧客ライフサイクルです。ここでは、顧客ライフサイクルを構成する4つのフェーズをご紹介します。

 

  1. オンボーディングフェーズ(Onboarding)
  2. アダプションフェーズ(Adoption)
  3. エクスパンションフェーズ(Expansion)
  4. チャーンフェーズ(Churn)

 

オンボーディングフェーズ(Onboarding)

顧客が自社サービスを利用するなかで、導入直後の段階にあたるフェーズです。サービスを導入した直後は、各種機能の使い方や初期設定の方法などがわからず、顧客からの不満が発生するケースも珍しくありません。このような状態を放置すると、サービスの解約リスクが高まってしまいます。

オンボーディングフェーズで顧客の疑問や悩みを解消すれば、その後のサービス定着へとスムーズな導線を構築できるでしょう。オンボーディングフェーズの対応次第で、サービスの継続または解約のどちらに進むかが大きく変わるため、顧客ライフサイクルのなかでも重要な位置付けにあります。カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの重要性や事例などを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事|オンボーディングとは?SaaSにおける重要性や事例、おすすめツールを紹介

 

アダプションフェーズ(Adoption)

サービス導入後の本格的かつ継続的な運用を支援するフェーズです。オンボーディングフェーズでサービスを導入した顧客が、徐々に各種機能の操作やユーザーインターフェースに慣れてくると、今度はその価値に着目します。サービスを活用して自社要件に見合う成果が上がるのか、自社の課題解決につながるのかといった点を、顧客がより重要視する段階だといえるでしょう。そのため、アダプションフェーズの施策は契約更新の可否に直結します。アダプションフェーズでは特に、顧客へのヒアリングやアンケート調査などで、サービスの利用状況や現状の課題を明確にすることが重要です。

 

エクスパンションフェーズ(Expansion)

顧客が自社サービスを活用し、事業の拡大へと移行を進めるフェーズです。アダプションフェーズを経た顧客は、サービスに対してある程度価値を感じており、各種機能を最大限に活用したいと望んでいる可能性が高いといえます。だからこそ、サービスを利用するうえで新たに生まれた顧客の課題や目標を洗い出し、企業側から積極的な提案を行うと良いでしょう。既存機能で不足する箇所を補う代用プランやオプションを提案すれば、顧客単価の向上につながります。

 

チャーンフェーズ(Churn)

顧客が自社サービスの解約を検討するフェーズです。特に、サブスクリプションモデルを採用するSaaSでは、サービスに満足しているように見えた顧客が、突然解約するケースも考えられます。この原因は、顧客がサービスの価値を実感したアダプションフェーズやエクスパンションフェーズを経由していることから、導入直後に起こりがちな「機能が使いづらい」「組織に馴染まない」といった理由とは性質が異なります。

チャーンフェーズでの解約理由は、より便利で低価格な他社サービスが登場したといった外的要因や、組織体制の変更で予算確保が難しくなった社内環境などの原因が想定できるでしょう。そのため、提案方法次第では、同フェーズでのチャーンレート(解約率)を引き下げることも十分に可能です。具体的な施策例は、後述する「顧客ライフサイクルにおけるフェーズごとの施策例」でご紹介します。

関連記事|チャーンレートの重要性とは?計算方法と解約率を下げる施策を解説

 

顧客ライフサイクルを定義するのは収益効率を最適化するため

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カスタマーサクセスで顧客ライフサイクルを定義する目的は、顧客獲得から収益化までの流れを最適化するためです。顧客ライフサイクルでは、顧客とのファーストコンタクトを担うオンボーディングフェーズの位置付けが特に重要だといえます。しかし、いくらオンボーディングフェーズの顧客支援に注力しても、その後のアダプションフェーズやエクスパンションフェーズでの成果が悪ければ、最終的な収益アップにはつながりにくいでしょう。特にSaaSのようなサービスでは、顧客の継続的な利用こそが売上の最大化につながるからです。すべてのフェーズにおける顧客をカバーするためにも、顧客を獲得してから解約に至るまでの流れを統合的に管理することが大切です。

 

顧客ライフサイクルにおける顧客の分類方法

 

自社要件に則って顧客ライフサイクルを定義した後は、各フェーズに顧客を分類します。明確な定義のもと、顧客を分類することで、フェーズごとの顧客の課題やニーズを特定しやすくなります。ここでは、顧客ライフサイクルの各フェーズに顧客を分類する方法を2つの手順に分けて解説します。

 

カスタマージャーニーマップを作成

顧客ライフサイクルのプロセスを図式化したカスタマージャーニーマップを作成しましょう。カスタマーサクセスの一連の流れを可視化することで、フェーズごとに必要な施策が明確になり、適切なアクションプラン策定につながります。カスタマージャーニーマップには、横軸にフェーズ、縦軸にカスタマーサクセスにおけるゴールや顧客の行動などの項目を設定するのが一般的です。

  オンボーディングフェーズ アダプションフェーズ エクスパンションフェーズ チャーンフェーズ
フェーズの定義 サービス契約~初回契約後3ヶ月 初回契約後3ヶ月~6ヶ月 初回契約後6ヶ月~契約更新 契約更新~サービス解約
ゴール 伴走的な導入支援によるスムーズな実装完了 顧客組織へのサービス定着 新たな課題に対するサービス活用や利用拡大 将来的な再契約
顧客の行動 各種機能の使い方や初期設定の研修受講 既存サービスを最大限に活用して自社の課題を解決 既存サービスの機能のみで新規課題を実現するのが難しく、他サービスの調査・検討を開始 社内の方針変更でやむなくサービスを解約
課題 研修受講後の理解度が正確に把握できていない 問い合わせ対応における属人化 既存サービスの他プランやオプションの訴求が不十分 解約検討の理由を探り切れておらず、具体的な提案につながらない

 

フェーズ別の顧客分類とKPI策定

作成したカスタマージャーニーマップに沿って、フェーズごとの顧客属性を明確にします。各フェーズにおける自社が理想とする顧客像をイメージすると、顧客を分類しやすくなるでしょう。例えば、オンボーディングフェーズであれば、契約後10日以内に特定の設定を完了した顧客や、週に3回以上サービスにログインした顧客といったイメージです。このような分類を行うと、オンボーディング完了率やログイン回数など、フェーズごとの適切なKPIを策定できることがわかります。カスタマーサクセスでよく使用されるKPIを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事|カスタマーサクセスのKPI7選|設定の手順や達成するコツも解説

 

顧客ライフサイクルにおけるフェーズごとの施策例

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顧客ライフサイクルはフェーズごとに特性が異なるからこそ、それぞれの段階で実施すべき施策の種類にも違いがあります。ここでは、フェーズごとの具体的な施策例をご紹介します。

 

  1. オンボーディングフェーズ:徹底した伴走支援を実施
  2. アダプションフェーズ:VOC(顧客の声)を活用したフォローアップ
  3. エクスパンションフェーズ:アップセル・クロスセル
  4. チャーンフェーズ:再契約の促進・解決策の提案

 

オンボーディングフェーズ:徹底した伴走支援を実施

オンボーディングフェーズは、各種機能の使い方や初期設定など、サービスの基本的な部分に関する悩みや疑問が発生しやすい段階です。そのため、企業による伴走的な顧客支援により、スムーズなサービス導入に結び付ける必要があります。オンボーディングフェーズで実施できる施策は次の通りです。

 

  • 定期的な研修や勉強会の実施
  • サービスの基本的な使い方に関する相談窓口の設置
  • FAQサイトやコミュニティフォーラムを導入
  • 技術スタッフによるサービス導入サポート
  • サービスの操作マニュアルやデモ動画を提供
  • ロードマップ作成やKPI策定のサポート
  • サービス内にチュートリアルやガイドツアーを実装

 

提供するサービスによっても異なりますが、顧客ライフサイクルのなかでオンボーディングフェーズは工数が増えやすい傾向にあります。十分なリソースが確保できないケースも考慮し、ICTツールの活用やシステム化によって効率性を重視することも重要です。

関連記事|【SaaS向け】10の事例から見るオンボーディング成功の秘訣|目的・用途別に解説

 

アダプションフェーズ:VOC(顧客の声)を活用したフォローアップ

自社サービスの価値が十分に伝わっていない段階で顧客が解約してしまうと、再契約を促すのは難しいものです。そこでアダプションフェーズでは、顧客が自社サービスの価値を実感できるよう、VOC(顧客の声)を活用したフォローアップを実施します。顧客に対するヒアリングの結果やアンケート調査データなどを活かして、顧客の状況やニーズに合わせた適切なアプローチを行うことが重要です。顧客へのフォローアップを行う際は、サービスの利用促進につながる次のような施策を実施すると良いでしょう。

 

  • 自社サービスを活用した他社の事例紹介
  • 定例ミーティングやQBR(四半期ごとのビジネスレビュー)による進捗確認
  • 現場視察による課題解決策の提案

 

エクスパンションフェーズ:アップセル・クロスセル

エクスパンションフェーズは、顧客が現在利用中のサービスを使って事業拡大を検討しているタイミングなので、アップセルやクロスセルの成功確率が高まります。アップセルとは、顧客が利用しているサービスの上位プランへの契約更新を促す方法です。一方のクロスセルでは、利用サービスの関連商材や機能拡充につながるオプションなどの提案を行います。いずれも顧客単価の向上に結び付く重要な施策です。アップセルやクロスセルを提案する際は、顧客満足度やロイヤルティをもとに契約の継続意思を確認し、不満があれば解決策を提示すると良いでしょう。顧客組織における決済ラインや部署間のパワーバランスの変化などを把握すれば、顧客の現状や新たなニーズを特定しやすくなります。

 

チャーンフェーズ:再契約の促進・解決策の提案

チャーンフェーズでは、顧客の将来的な再契約を見越し、最後まで誠意を持った対応を心がけましょう。迅速な解約手続きやサービス利用に対する丁寧なお礼は、企業へのイメージアップにつながります。また、再契約の促進や解決策の提案を行うのも方法の一つです。例えば、顧客がまだ使用していない機能や享受していないメリットがあれば、積極的な訴求によって再契約につながる可能性も考えられます。現状のサービスよりも価格の安いプランを提案する、ダウンセルを実施するのも良いでしょう。ただし、あまりにもしつこく再契約を促すと、かえって印象が悪くなるので注意が必要です。

関連記事|アップセルとダウンセルの違い|提案のタイミングや企業事例を紹介

 

まとめ:カスタマーサクセスの実現には顧客ライフサイクルへの理解が不可欠

 

顧客ライフサイクルは4つのフェーズに分かれており、それぞれ特性が異なります。

カスタマーサクセスを成功に導くには、各フェーズの違いを理解し、それぞれ適切な施策を実行することが大切です。顧客ライフサイクルを明確にするためにも、まずはカスタマージャーニーマップを作成しましょう。

そのうえで各フェーズに顧客属性やKPIを設定し、具体的なアクションプランの策定を進めます。顧客ライフサイクルを意識してカスタマーサクセスを実行することで、フェーズごとの顧客の課題やニーズが明確になります。

結果、顧客ごとに適切な施策を実施できるため、売上やLTVの向上につながるでしょう。


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