チャーンレートの重要性とは?計算方法と解約率を下げる施策を解説
山田理絵
2024.01.31
「チャーンレートとはなに?」
「チャーンレートの活用方法を知りたい」
Saasサービスを提供している方の中には、上記のような悩みを抱いている人も多いのではないでしょうか。
本記事ではチャーンレートの概要を踏まえつつ、重要性と計算方法を解説します。
また記事の後半では、解約率を下げるための3つの施策も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
チャーンレートとは?
チャーンレートとは、サービスの「解約率」を意味する用語です。
一般的にはサービスを退会・解約した割合を表しますが、有料プランから無料プランへのダウングレードを含む場合もあります。
チャーンレートの値が高いほど、測定した一定期間で多くのユーザーが解約していることを表します。
一方、値が低ければ、ユーザーの解約が少なく、継続的にサービスを利用していることが分かります。
チャーンレートとLTV(顧客生涯価値)の関係
チャーンレートは様々な指標と関係しています。中でも関係が深い指標は、LTVです。
LTVとは、Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略で、日本では「顧客生涯価値」と訳されます。
ユーザーがサービスを利用してから解約するまでの間に、自社へもたらす利益を表す用語です。
チャーンレートの数値が高い場合、LTVも比例して悪くなり、企業の売り上げが伸びません。
その他にもチャーンレートやLTVは、ユーザーが自社のサービスに対する信頼や愛着を表す「ユーザーロイヤリティ」とも関連しており、ブランド戦略に関連している指標とも言えるでしょう。
チャーンレートの種類
ひとえにチャーンレートといっても、使用目的や計算方法が異なるいくつかの種類に分類されます。
中でも、SaaSビジネスで頻繁に用いられるチャーンレートは、以下の3種類です。
・カスタマーチャーンレート
・アカウントチャーンレート
・レベニューチャーンレート
上記3つのチャーンレートは業種やサービスの性質によって、活用方法が異なるため、特徴について確認していきましょう。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレート(Customer Churn Rate)は、自社のサービスやサイトに登録している「ユーザー数」を基準にした割合です。
測定する一定期間に、自社のサービスやサイトの利用を辞めたユーザー数や、有料プランから無料プランにダウングレードしたユーザー数を解約数の対象とします。
主に、NetflixやAmazonプライムなど、ユーザー数が収益に結びつく商材の解約率を計算する場合に活用されます。
またカスタマーチャーンレートは、頻繁に活用されることが多く、「カスタマーチャーン」や「チャーンレート」と表現されることもあります。
アカウントチャーンレート
アカウントチャーンレート(Account Churn Rate)とは、自社のサービスに登録されているアカウント数をもとに計算します。
先ほどのカスタマーチャーンレートとは異なり、1つのアカウントを複数人で共有する場合も、1とカウントします。
そのためアカウントチャーンレートでは、厳密な解約人数を推し量ることはできません。これは利用人数ではなく、契約数と収益が結びつく商材の解約率を計算する場合に活用されます。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレート(Revenue Churn Rate)とは、ユーザーがもたらした利益をもとに計算する割合です。
レベニューチャーンレートを活用することで、料金が異なるプランごとの収益増減や解約率を把握できます。
また、レベニューチャーンレートは、以下の2種類に分類されます。
- グロスレベニューチャーンレート
- ネットレベニューチャーンレート
【グロスレベニューチャーンレート(Gross Revenue Churn Rate)】
サービスの解約やダウングレードによる損失額をベースに算出するチャーンレートです。あくまで既存顧客から発生した損失が対象であることがポイントです。
対象期間で、どれだけのマイナスがあったのかを、知りたい時に利用します。
【ネットレベニューチャーンレート(Net Revenue Churn Rate)】
サービスの解約やダウングレードによる損失額と、アップセルやクロスセルにより獲得した収益額の合算金額をベースに算出するチャーンレートです。
(サービスの解約やダウングレードによる損失額) - (アップセルやクロスセルにより獲得した収益額)で計算されるため、損失額よりも収益額の方が上回ると、値がマイナスになります。
これは「ネガティブチャーン」と呼ばれ、良好な状態と言えます。
チャーンレートの重要性
続いてチャーンレートの重要性について確認していきましょう。
チャーンレートが近年注目を浴びている背景として、以下3つの要因が挙げられます。
- サブスクリプションサービスの普及
- LTVの向上に繋がる
- ユーザーのニーズが分析できる
それぞれ順番に解説していきます。
サブスクリプションサービスの普及
1つ目はスマートフォン普及や通信技術の進歩に伴い、SaaSを中心としたサブスクリプション型サービスの普及が関連しています。
サブスクリプションサービスは、多くのユーザーに長く利用してもらうことで、コストを回収します。
万が一、獲得した新規ユーザーがすぐに解約したり、有料会員から無料会員などにダウングレードしたりすると、企業の利益が減少します。
そのため、チャーンレートをビジネスのKPIに設定している企業も少なくありません。
LTVの向上に繋がる
2つ目はLTVの向上に繋がることです。SaaSビジネスは、売り切りではないため、売れた時点だけでなく、解約までに獲得できる収益(=LTV)が大事です。
一般的に「新規ユーザーの獲得は、既存ユーザーのリピートを獲得するためのコストより5倍かかる」と言われ、「1:5の法則」とも呼ばれています。
そのため、多くの企業が既存ユーザーにサービスを継続してもらうよう、LTVの向上を図るため、阻害要因であるチャーンレートの目標値を定めています。
前述したようにチャーンレートとLTVは関連した数値で、チャーンレートの数値が下がれば下がるほど、LTVは向上して企業の利益が高くなります。
ユーザーのニーズが分析できる
3つ目はユーザーのニーズが分析できることです。
チャーンレートはユーザー数だけでなく、価格別のプランの解約率や損失額などの数値別に算出できます。
そのため、自社のサービスのチャーンレートを分析することでユーザーのニーズを把握することができます。
例えば3段制のプランを扱っているサービスで、最も高い料金プランの解約率が著しく高い場合は、提供しているサービスに対して価格が適切ではない可能性が考えられます。
このように、チャーンレートの数値を分析することでユーザーのニーズが把握でき、サービスの改善点や新しいサービスのヒントを見つけることができるでしょう。
チャーンレートの計算方法
チャーンレートの計算方法は、算出したい種類によって計算方法が異なるので注意しましょう。
本記事では前述したチャーンレートの計算方法について解説していきます。
カスタマーチャーンレートの計算方法
カスタマーチャーンレートは、測定したい期間に自社のサービスやサイトを解約したユーザーの人数を元に算出することで、割り出せます。
計算方法は、測定する期間にサービスや自社のサイトを解約したユーザーの人数を、元々登録されていたユーザーの母数で割り、100(%)を掛けます。
カスタマーチャーンレート = (期間内の解約顧客数 ÷ 期初顧客数)× 100
例えば対象期間に自社のサービスを350人のユーザーが解約し、元々の登録していたユーザーの人数が7,000人だった場合、カスタマーチャーンレートは5%となります。
(350 ÷ 7,000)× 100 = 5%
アカウントチャーンレートの計算方法
アカウントチャーンレートは、数値を測定したい期間に解約したアカウントの数をベースに計算することで割り出せます。
計算方法は、数値を測定したい期間に自社のサービスやサイトを解約したアカウントの数 を、元々登録されていたアカウントの母数で割り、100(%)を掛けます。
アカウントチャーンレート = (期間内の解約アカウント数 ÷ 期初アカウント数)× 100
例えば、期間内で45アカウントがサービスや自社のサイトを解約し、元々の登録されていたアカウント数が1,500だった場合、アカウントチャーンレートは3%です。
(45 ÷ 1,500) × 100 = 3%
レベニューチャーンレートの計算方法
レベニューチャーンレートでは、新規ユーザーは含まず、既存のユーザーの損失額や収益額をベースに計算されています。
グロスレベニューチャーンレートの計算方法は、ユーザーがサービスやサイトを解約することによって生じた損失額 を月初の収益額で割り、その数値に100(%)を掛けます。
グロスレベニューチャーンレート = (期間内の損失額 ÷ 期初の収益額)× 100
一方ネットレベニューチャーンレートの計算方法は、サービスやサイトを解約することで生じた損失額から、アップセルやクロスセルなどで得た収益額を差し引き、前月までの収益額で割り100(%)を掛けます。
ネットレベニューチャーンレート = (期間内の損失額 - 期間内の増収額)÷ 期初の収益額 × 100
平均的なチャーンレートの数値とは?
一般的に、チェーンレートの平均値は3~10%と言われています。
平均値に差があるのは、業種やサービス規模、企業の成長ステージなどによって大きく異なるためです。
例えば、プロジェクト管理ツールや勤怠管理ツールを提供するBtoBサービスの場合、約6%が目安です。
一方、前述したNetflixやAmazonプライムなどのBtoCサービスでは、7%を目安とします。
またサービスが成熟していないスタートアップ企業では、約3%を目標値に定めるのに対し、大手企業は1%以下と低めに設定します。
チェーンレートの平均値には企業・サービスの状況が色濃く反映されるため、競合他社の数値を分析することで、自社サービスの立ち位置を明確にできるでしょう。
チャーンレートが高くなる3つの原因
チャーンレートが高くなる原因として、以下の3つが挙げられます。
・サービスや商品の質が悪い
・ユーザーのニーズ分析が不十分
・業務形態や会社の方針によりサービスが不要になった
順番に確認していきましょう。
サービスや商品の質が悪い
提供しているサービスや商品の質が悪い場合、ユーザーは継続利用を辞めてしまうため、チャーンレートの数値が高くなってしまいます。
具体的には、以下に該当するサービスです。
- 提供しているサービスの内容が悪い
- サポートが不十分
- 価格が適切でない
競合他社の商品と比較して、自社のサービスや商品が劣っている場合は見直しが必要となるでしょう。
ユーザーのニーズ分析が不十分
ユーザーのニーズ分析の不足や、ニーズを満たせていない場合もチャーンレートが高くなってしまう原因の1つです。
ユーザーに商品やサービスを長く利用してもらうためには、自社の商品を利用してユーザーに感動や満足感を感じてもらう必要があります。
もしくは、不便さを感じさせないことが必要です。
サービスを利用しているユーザーに対してアンケートやアフターフォローの体制を構築することで、チャーンレートの数値の改善が期待できるでしょう。
業務形態や会社の方針によってサービスが不要になった
BtoBやBtoCのSaaSでは、ユーザーの業務形態や会社の方針によってサービスが不要になる場合があります。
ユーザーの環境に左右される項目にはなるので、サービスの提供側だけで対策するのは難しいと言えます。
しかし、解約理由やダウングレードの理由を分析することで、サービスの改善点や今後の施策、新規サービスに活かせる可能性もありうるのでアンケートなどを積極的に行いましょう。
チャーンレートの数値を改善する3つの施策
チャーンレートの数値を改善するのに効果的な施策は、以下の3つです。
・サービスや商品の品質の向上
・ユーザーと良好な関係を構築する
・カスタマーサクセスの強化
本章では、上記3つの施策の要点を解説します。
サービスや商品の品質の向上
サービスや商品の品質を向上し、ユーザーが満足感を感じることができればチャーンレートの改善が期待できます。
具体的な対策としては、ユーザーの声をアンケートやDMなどで収集し、ニーズを分析することです。
分析した結果をもとに、サービスや商品の改善などPDCAサイクルを回すことが重要です。
またサービスや製品の質だけでなく、価格設定やプラン内容が適切かを分析するのも同様に大切です。
その他にも、そもそも自社サービスに合わない顧客に無理に提供しない様に、セールスや広告内容も改善していきましょう。
ユーザーと良好な関係を構築する
チャーンレートの数値を改善するには「ユーザーと良好な関係」を構築することが効果的です。
ユーザーと良好な関係を構築するためには、ユーザーの満足度を高める必要があります。
具体的な対策としては、サポート面の強化や CRMの活用をすることでユーザー満足度の向上が期待できます。
ユーザーごとにあったアプローチやサポート体制を整えることでユーザー満足度の向上が期待できるでしょう。
カスタマーサクセスの強化
カスタマーサクセスの強化も、チャーンレートを改善するのに重要な対策と言えるでしょう。
そもそもカスタマーサクセスとは「ユーザーの成功」を意味し、能動的にユーザーに働きかけ成功体験を実感させることを目的としています。
そのため、一概に何かを強化するのではなく、ユーザーにまつわる全体の質を高める必要があります。
なかには業務効率を向上させるために、外部ツールを導入する企業も少なくありません。
チャーンレートを改善して売上を向上させよう
本記事ではチャーンレートの定義や重要性、数値を改善する方法について解説しました。
インターネットを取り巻く環境の変化に伴いSaaSを中心としたサブスクリプションサービスが普及しているなかで、チャーンレートの数値は多くの企業がKPIとして設定しています。
本記事で紹介した「チャーンレートの数字を改善させる方法」を参考にしてみてください。
この記事を書いたライター
山田理絵
不動産営業を経験後、アディッシュにて、カスタマーサクセス関連商材のインサイドセールスを担当し、初期接点から課題の顕在化をし機会創出を行う。 趣味はポールダンスと料理。