【翻訳】カスタマーディライトとは?究極のガイド

Custify
2025.08.04

この記事は著作権を有する Custifyの許可を得て翻訳したものです。
Original article:https://www.custify.com/blog/customer-delight/
顧客はすべてのビジネスの中心です。そのため、SaaSを含む多くのブランドは、顧客を維持するためにあらゆる努力を払います。
SaaSブランドにとって、顧客を喜ばせることは当然のことです。そうしなければ、顧客を競合他社に奪われることになります。しかし、「カスタマーディライト」(Customer Delight)を実現することによって顧客の離脱を防ぐことができ、さらには口コミによるマーケティング効果も期待できます。
では、どのようにしてカスタマーディライトを実現するのでしょうか?
カスタマーディライトとは?
カスタマーディライトとは、意図的に顧客の期待を超えることで、ポジティブな体験を提供することを指します。単に顧客のニーズを優先するだけでなく、顧客を喜ばせるためにさらにその上を目指すことで顧客の感動を生み出します。感動は、顧客がブランドと関わる際に感じる感情です。それは、機能的な製品、優れたサービス、思いやりのあるスタッフの対応などから生まれます。
例えば、ギフトやプロモーション、割引を提供することで顧客を感動させることができます。また、顧客のニーズに心から関心を示し、積極的にサポートを提供することなど、目に見えない方法で喜ばせることもできます。
フライホイールモデルによると、顧客対応チームは、顧客中心のビジネスの実現に向けて重要な役割を果たします。
ソース:
https://atlassianblog.wpengine.com/wp-content/uploads/2021/08/flywheel-business-model@2x-400x400.png
初期段階では、マーケティングチームとサービススタッフが協力し、顧客を「引きつける(attract)」役割を担います。その後、マーケティングチームと営業チームが連携して「関与(engage)」し、リードを顧客へと転換します。そして最終的に、営業チームとサービスチームが優れたサービスを提供することで、顧客を「感動させる(delight)」ことを目指します。
しかし、本当に成功している企業では、各チームがこの役割分担に厳密に縛られることはありません。営業やサービスチーム以外の部署であっても、すべてのチームが顧客の期待を超える努力をしています。その結果、顧客はマーケティングメールを読むときも、SaaSツールを試すときも、常に満足感を得られる体験ができるのです。
カスタマーディライトがなぜ重要なのか?
カスタマーディライトは、ビジネスの成長に直接影響を与えます。カスタマーディライトを高める事で、以下のようなメリットがもたらされます。
- 顧客ロイヤリティの向上:感動した顧客の80%以上が、企業の製品やサービスをアップグレードしたり、追加購入する可能性が高くなります。つまり、顧客を喜ばせることで、さらに誠実な顧客基盤を築くことができます。
- ROIの向上:顧客の満足により、アップグレードやリピート購入の確率が高くなり、 ROI(投資利益率)が向上します。顧客維持率が5%向上すると、企業の収益は25~95%増加する というデータがあります。
- 口コミマーケティングの促進:感動した顧客は、自社ブランドについて周囲に広める可能性が高くなります。 約50%の顧客が、企業とのポジティブな体験(喜びを感じた体験を含む)を他の人と共有する という調査結果があります。
最終的に、顧客を喜ばせることで、普通の顧客がブランドのアンバサダー(支持者) へと変わります。彼らは単に継続的に購入するだけでなく、ブランドと積極的に関わり、新しい顧客を呼び込んでくれます。その新しい顧客もまた喜びを感じ、さらに別の新規顧客を引き寄せます。このリード獲得のサイクルによって最終的に持続的なビジネス成長と成功を達成することができるのです。
カスタマー・ディライトを実現する方法
顧客を感動させる方法は数多くあります。ここでは、SaaSブランドが実践すべきカスタマー・ディライト戦略を紹介します。
1. 迅速なサポートを提供する
顧客の最大40% は、企業がカスタマーサポートの問い合わせに4時間以内に返信することを期待しています。そのため、顧客を喜ばせるには、それよりも短い応答時間を目指しましょう。 理想では、即時対応が望ましいです。顧客が異なるタイムゾーンにいる場合や、営業時間外に問い合わせた場合でも、すぐに回答できる体制を整えることで、顧客に「この企業は本当に自分たちのことを考えている」と感じさせることができます。
問題を解決するだけでなく、最短時間で解決することで、付加価値を提供し、ネガティブな体験をポジティブなものに変えることができます。
では、どうすれば迅速なサポートを提供できるでしょうか?ウェブサイトにチャットソリューションを追加しましょう。HubSpotではカスタマーサポート戦略の一環としてAIチャットボットを導入しており、顧客の質問に即座に回答できます。
チャットボットだけでなく、専用の有人カスタマーサポート(https://www.vonage.com/call-center-service/)も用意し、複雑な問い合わせにはオペレーターが対応できるようにするのが良いでしょう。
もう一つの方法は、FAQ、チュートリアルなどのセルフサービスリソースを充実させることで、問い合わせ前に自己解決できる環境を提供することです。それらのセルフサービス内のテキストを作成する時間がない場合は生成AIを活用し、効率的にカスタマーサポートコンテンツを作成するのも有効です。
2. コミュニティを構築する
顧客を感動させたいなら、単なるサポートリソースの提供にとどまらず、強固なコミュニティを構築することも検討しましょう。
コミュニティは、基本的なサポートだけでなく、顧客に帰属意識を与えると同時に、同じ興味・関心を持つ人々とネットワークを築きます。
66%の消費者が上記のネットワークを築くことが好きであり「オンラインコミュニティを通じた感情的なつながり」を求めている、と答えています。
以上が、企業がオンラインコミュニティのトレンドに乗ろうとしている理由であり実際に、60%の企業がブランド独自のオンラインコミュニティを構築しています。
一例として、Zapierのコミュニティがあります。
Zapierでは、顧客同士が会話できるだけでなく、ベストアンサーにはバッジを付与したり、マイルストーンを設定・投稿したりすることで、フォーラムの活性化を図っています。
コミュニティの構築では、Zapierのようにコミュニティマネージャーを雇用し、会話を促進させることも戦略として有効なはずです。
コミュニティを構築するうえでのメリットは、顧客感動度を高める以外にもユーザーからのフィードバックを収集し、より向上した製品・サービスを提供できる点があります。
70%以上の消費者が「企業に自分のニーズを理解してほしい」と期待しています。コミュニティを構築してユーザーの要望を反映したプロダクト開発を行うことで、よりユーザーに沿った商品・サービスを提供して感動を引き起こします。
3. 顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供する
約80%の顧客が「パーソナライズされたメッセージによって、ブランドに対する好感度が上がった」と回答しています。
カスタマイズされた体験を顧客に提供する事で、顧客の期待を超えたエンゲージメント(つながり)を生み出すことができます。
そして、そのためには顧客データを分析する事が不可欠です。
分析ツールの一例として、Google Analyticsがあります。顧客がよく訪れるページや、購入履歴を分析し、行動パターンに基づいたマーケティングメールを送信してみましょう。
また、Leadpagesなどのツールを利用すれば、訪問者ごとに最適化されたランディングページを作成できます。このツールが予算と比べて合わないと感じた人のために、Leadpagesの代替手段を利用できます。
(https://launchspace.net/software-comparison/leadpages-alternatives/)
もう一つの発想としては、顧客のSaaSプロダクトの利用傾向を調べて、彼らごとの統計を提供する方法があります。
Grammarlyは、ユーザーのライティングデータを基に、個別の統計データを提供し、利用体験をパーソナライズしています。
「あなたは今月、○○ワードを修正しました」「あなたの文章の明瞭度は○○%向上しました」など、ユーザーごとに異なる統計を表示することでSaaSツールを再度利用することを楽しんでもらう意図があります。
4. 企業の連絡先情報を複数のチャネルに掲載する
顧客は、企業の連絡先情報を知りたがっています。単に「掲載する」だけではなく複数のチャネル(経路、方法)で簡単にアクセスできるようにすることで、その顧客の期待を超えることができます。
なぜ連絡先情報のマルチチャネル掲載が重要なのでしょうか?顧客があなたに連絡したいと思った時、顧客の側はどのプラットフォームを利用しているか分かりません。例えば無料トライアルのサポートが必要になった時に、顧客はそのサポートを探してあなたのWebサイトを覗くかもしれません。また、SNSで広告を見て、新しいSaaSツールについて問い合わせしたいと思ったら、顧客はあなたのSNSアカウントを探すかもしれません。
もし、複数のチャネルで連絡先を掲載していれば、顧客はいつでも好きな方法で問い合わせができるため、ストレスなくコミュニケーションが取れます。
顧客が好むプラットフォームを確保することで、「どのプラットフォームにいても、すぐに企業とつながれる」という利便性を提供することで、顧客を喜ばせられます。
カスタマーディライトの実例
顧客を感動させる準備はできていますか?
ここでは、カスタマーディライトの実現に成功しているSaaSブランドの例を紹介します。
1. HubSpot
HubSpotの顧客は、プラットフォームの基本的なサポートを期待しています。しかし、HubSpotはその期待に応えるだけでなく、HubSpot Academyを通じて認定コースを無料で提供しています。
このアカデミーでは、ユーザーがプラットフォームを最大限に活用するために必要なスキルを学ぶことができます。こうした取り組みにより、単に製品を提供するだけでなく、顧客の成長を支援し、より感動できる体験を提供しています。
2. Salesforce
Salesforceもまた、基本的なカスタマーサポートの枠を超えた施策を展開しています。その代表例が、Trailblazerという活発なコミュニティの提供です。
このコミュニティでは、ユーザー同士がSalesforceの使い方について学び合うだけでなく、同じ興味や価値観を持つ仲間と交流することができるため、帰属意識を高める効果もあります。ユーザー同士のつながりを生み出すことで、顧客体験をより豊かなものにしています。
3. Canva
Canvaは、パーソナライゼーションのレベルを引き上げた顧客体験を提供 しています。ユーザーの製品利用データを活用し、カスタマイズされたポジティブな体験を保証しています。特に注目すべきは、ユーザーがデザインを一定数作成するごとに賞状を発行する機能です。
このシンプルな施策によって、ユーザーは自分の進歩を実感し、さらにCanvaを使いたいというモチベーションが高まります。これにより、ロイヤリティ(愛着を持ったユーザー)の育成にもつながっています。
4. Spotify
Spotifyのユーザーは、幅広い音楽が聴けるストリーミングサービスを求めています。しかし、Spotifyは単なる音楽提供だけでなく、個々のリスニング習慣に基づいたパーソナライズされたプレイリストを作成することで、ユーザーとのつながりを深めています。
ユーザーは年末に公開される「Wrapped」機能を利用し、一年間の視聴履歴を振り返ります。それによりユーザーの感情を動かし、ブランドとのつながりをより強固なものにしています。
5. Netflix
Netflixの加入者は、豊富な映画やドラマのラインナップを期待しています。
しかし、Netflixは期待に応えるだけでなく、AIアルゴリズムを活用して、ユーザーの視聴履歴や嗜好に基づいたパーソナライズされた視聴体験を提供しています。
各ユーザーに最適なコンテンツをレコメンドし、より快適な視聴環境を実現することによって顧客の期待を上回り、エンゲージメントを生み出します。
カスタマーディライトとカスタマーサティスファクションの違い
カスタマーディライト(顧客感動)とカスタマーサティスファクション(顧客満足)は、しばしば混同されますが、実際には異なる概念です。
カスタマーディライトとは、顧客の期待を超えた体験を提供し、ポジティブな感情(驚きや喜び)を引き出すことを意味します。一方、カスタマーサティスファクションは顧客の期待に応えることを意味します。
競争が激化する市場において、単に顧客を満足させるだけでは不十分です。なぜなら満足した顧客は、競合他社の同様のサービスに移行する可能性があります。しかし、感動を感じた顧客は、ブランドに対する強いロイヤリティ(帰属意識)を持ち、ブランドの熱心な支持者(アンバサダー)になる可能性が高まります。
カスタマーディライトにおける一般的な課題と解決策
1. 顧客の期待を誤解する
SaaS企業はしばしば、「自社の顧客が何を求めているか分かっている」と思い込みがちですが、それは大きな間違いです。顧客が本当に何を期待しているのかを把握するために、アンケートやインタビューを活用し、直接フィードバックを収集することが重要です。また、カスタマーデータ分析を活用することで、より正確なインサイトを得ることも可能です。
2. 過剰な約束をして、実現できない
企業が期待を超えようとするあまり、実現不可能な約束をしてしまうことがあります。しかし、これによって顧客は失望し、信頼を失ってしまいます。
この問題を回避するためには、現実的かつ透明性のあるコミュニケーションを行うことが重要です。具体的には、「控えめな約束をして、それを上回る価値を提供する」というアプローチのほうが、長期では効果的です。
3. フィードバックを無視する
一部のSaaS企業は顧客からのフィードバックを収集するものの、その情報に基づいて行動しないというミスを犯します。フィードバックを適切に活用しなければ、改善の機会を逃してしまいます。
この課題を克服するためにはフィードバックを定期的にレビューするシステムを構築し、製品やサービスの改善に活かすことが不可欠です。
4. イノベーションの欠如
顧客の期待は日々変化しており、今日満足していたものが、明日には陳腐化してしまうかもしれません。そのため、企業は常に市場の動向を監視し、トレンドを把握する必要があります。
具体的には、Google Analyticsやソーシャルリスニングツール(https://brand24.com/blog/social-listening-tools/)を活用し、顧客のニーズや市場の変化をリアルタイムで分析することが重要です。
結論
カスタマーディライトの鍵は、あらゆるタッチポイントで期待を上回る体験を提供することにあります。ただの満足ではなく、驚きや喜びといった感情を引き出すことが求められています。
競合企業より一歩先を行くには、顧客を360度の視点で見渡す必要があります。期待は変化するものである為、継続的にデータを収集・分析し、トレンドの変化に対応することが不可欠です。テクノロジーの進化に伴い、顧客行動や嗜好をより正確に予測できるようになっていきます。こうしたデータを最大限に活用することで、より積極的なアプローチが行え、カスタマーディライトを実現できます。
カスタマーディライトの実現に向けた第一歩を踏み出し、顧客の期待を超えてみましょう。無料のデモをスケジュールして、Custifyがどのように役立つかを検討してみてください。

この記事を書いたライター
Custify
本記事は、ヨーロッパのカスタマーサクセスベンダー「Custify」が運営する「The Custify Blog」(https://www.custify.com/blog/)にて作成された記事です。 アディッシュはCustifyに許諾を得て、翻訳記事を作成・掲載しています。