カスタマーサクセス(CS)の重要なKPI 8選!設定理由とポイントを解説
山田理絵
2024.10.15
「カスタマーサクセスのKPIは何を設定すべきなのか分からない」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
本記事では、カスタマーサクセスのKPIについて解説します。
この記事を読めば、カスタマーサクセスを実現する上で必要なKPIのヒントを得ることができます。
カスタマーサクセスを実施する人は、今回紹介するKPIを設定してみましょう。
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは「顧客の成功」という意味で、自社の商品やサービスを利用した顧客が成長や成功することです。カスタマーサクセス部門は、情報発信や導入・運用支援などを通じて、顧客の成功を導き伴走する役割を担います。
その際、顧客の成功に近づいているのか、また、それが自社の収益につながっているのかを評価するためにKPI設定は重要です。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
そもそも巷で良く言うカスタマーサクセスは、カスタマーサポートとどう異なるのでしょうか。
両者は顧客への対応や支援を行う点で共通しますが、果たす役割が異なります。
カスタマーサクセスは顧客を成功に導くことを目的としており、顧客に最善策を提案するなど企業の方から能動的に働きかけます。
一方、カスタマーサポートは顧客の抱える課題を解決することを目的としており、顧客から問い合わせがきた時点からサポートを行うため受動的であるのが特徴的です。お問い合わせ窓口やヘルプデスクはカスタマーサポートの代表例だと言えます。
カスタマーサクセスがKPIを設定しなければならない理由
カスタマーサクセスは、なぜKPIを設定して目標管理をしなければならないのでしょうか。その理由を解説します。
そもそもKPIとは
そもそもKPIとは、「Key Performance Indicator」の略称で「重要業績評価指標」と訳されます。ビジネスの最終的な目標であるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)の達成度を測る指標で、定量的に評価できる指標を採用します。たとえば「今期の売上〇万円」というKGIがあれば、KPIは「毎月の受注率〇%」「毎月の商談数〇件」などが設定されます。
最適な施策か判断するため
カスタマーサクセスがKPIを設定すべき理由の一つが、最適な施策か判断するためです。カスタマーサクセスは、顧客が成功するようにさまざまな施策を打ち出します。それぞれの施策が有効に機能していれば成果につながりますが、効果がなければ成果として現れません。もし効果が出ていなければ施策を見直したり別の施策に変えたりする必要があるため、KPIを設定して達成しているか評価することで、各施策の効果を客観的に判断できるのです。
担当者の対応が適切か評価するため
カスタマーサクセス担当者が適切に対応しているか評価する際にも、KPIが役立ちます。たとえば、アップセル率やクロスセル率は、カスタマーサクセス担当者が顧客に提案していなければ伸びません。また、オンボーディングは担当者が適切にサポートしていなければ完了しないため、担当者が業務を怠っているとオンボーディング完了率が低い数値になるでしょう。このように、担当者の対応品質を評価するためにもKPI設定が必要です。
カスタマーサクセスで重要なKPI8選
数あるカスタマーサクセスのKPIの中でも、代表的なKPIは次の8つです。
- 解約率
- オンボーディング完了率
- アップセル/クロスセル率
- リテンションレート
- LTV
- NPS
- NRR
- アクティブユーザー率
ここでは、各KPIの特徴を解説します。
解約率(チャーンレート)
解約率はKPIの中でも特に重要な指標の1つです。なぜなら、解約率が把握できれば今後の見通しが立てやすくなるからです。
解約率が低い場合、顧客はサービスに満足していると判断でき、収益が安定していることを意味します。
一方、解約率が高いと、現状のままでは新規顧客が増えても、売上向上が鈍化してしまいます。その際、どうすれば既存顧客に契約中のサービスを継続してもらえるかと対策を考えることで、解約率の増加を抑えられるでしょう。
そんな解約率には、顧客数からみた解約率(カスタマーチャーン)と売上からみた解約率(レベニューチャーン)の2つがあります。
解約率を求める計算式はそれぞれ次の通りです。
- カスタマーチャーン=解約数÷契約顧客数(顧客数からみた解約率)
- レベニューチャーン=サービスの単価×解約数÷売上(売上からみた解約率)
カスタマーチャーンは「期間内にどのくらいの顧客が解約したか」を知ることができ、レベニューチャーンは「期間内にどのくらいの売上を失ったか」を知ることができる指標です。たとえば、期間内に大口の顧客が1人解約したとすると、カスタマーチャーンは低い数値ですが、レベニューチャーンは大きな数値となります。どちらも重要な指標のため、両方とも理解しておくことが重要です。
オンボーディング完了率
オンボーディングとは、自社の商品・サービスを利用し始めた顧客が、使い方を理解し定着するまでの期間のことです。いわば、サービスを利用する準備が整った状態だと言えます。
オンボーディングが完了している状態とは、商品・サービスに関してある程度理解している顧客が、サービスを継続的に利用してくれていることにつながりやすい状態を指します。
オンボーディングが完了していない顧客ほど、使い方がわかっていなかったり社内で定着していなかったりするため解約リスクが高いと言えます。顧客に解約されないためにも、まずは商品やサービスに対する理解を深めてもらうことから始めましょう。
そんなオンボーディング完了率を求める計算式は以下の通りです。
オンボーディング完了率=完了した企業の数÷オンボーディング期間のすべての企業の数
オンボーディング完了率が低い場合は、個別にフォローしたり勉強会を開催したりするなどのサポートが必要です。
アップセル/クロスセル率
アップセルとは複数プランがある場合に、契約中のサービスから、より単価の高いサービスへと乗り換えてもらうことです。サービスを利用する頻度が高い顧客には、プランのアップグレードを促してみましょう。
クロスセルとは、契約中のサービスに加えて、他のサービスや商材を追加で購入してもらったり、オプションを追加してもらったりすることです。関連性の高いサービスやオプションなどを提案することで、クロスセル率を高められます。
このように、アップセル/クロスセルは売上を伸ばすのに効果的な手法であり、カスタマーサクセスの適切な働きかけによって向上するため、KPI指標として有効です。
リテンションレート(維持率)
リテンションレートとは、顧客が契約中のサービスを継続する割合を意味します。高いに越したことはない指標です。
すべての契約を1とおくと、以下の計算式が成り立ちます。
リテンションレート=1-解約率
もしくは、以下の計算式もよく使われています。
リテンションレート=継続顧客数÷新規顧客数×100
リテンションレートを求めることで、どのくらいの顧客を維持できているか判断できます。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value)とは、1人の顧客が取引を始めてから終えるまでに企業にもたらす利益のことで、顧客生涯価値とも呼ばれます。
サブスクリプションサービスで売り上げを向上させたい場合は、契約数よりも、顧客から獲得できる収益の和が重要です。そのため、LTVはカスタマーサクセスのKPIの中でも重要視されています。
計算式は次の通りです。
LTV = 顧客単価×購買頻度×継続期間
つまり「顧客単価を高める」「リピート購入を促す」「継続して契約してもらう」といったことからLTVが向上するため、LTV改善にはカスタマーサクセスの適切な提案やフォローが必要となるのです。
NPS
NPS(Net Promoter Score)とは、自社の商品・サービスを他の人にどれぐらい勧めたいかを表す指標のことで、顧客推奨度とも呼ばれます。いわば、サービスに対する顧客ロイヤリティ(愛着度・信頼度)を数値化したものだと言えます。
顧客に対して「この商品・サービスを、どのくらい人に勧めたいですか」という質問をして、0~10の11段階で回答してもらい、その回答から顧客を以下の3つに分類します。
- 0~6点:批判者
- 7、8点:中立者
- 9、10点:推奨者
そして、以下の計算式からNPSを求めます。
NPS=推奨者の割合-批判者の割合
カスタマーサクセスが適切に働きかけていれば顧客は商品・サービスに満足して推奨してくれる可能性が高いため、NPSが高いということはカスタマーサクセスが有効に機能していると評価できます。
NRR(売上継続率)
NRR(Net Revenue Retention)とは、既存顧客による売り上げが維持あるいは向上しているかどうかを示す指標です。
NRRは、MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)を基に計算します。
NRR=(月初のMRR+アップセルによって増えたMRR-ダウングレードによって減ったMRR-解約によって減ったMRR)÷月初のMRR×100
NRRが100%以上だと、ダウングレードや解約を抑えられていることになるため、既存顧客との関係性が良好だと判断できます。
アクティブユーザー率
アクティブユーザー率とは、サービスに契約している顧客のうち、サービスを利用している顧客の割合を指します。
サービスを契約している顧客のなかには「利用していないが解約が面倒」「解約を忘れている」といった顧客も含まれています。こうした顧客は、きっかけがあれば解約のリスクが高いと言えるでしょう。そのためアクティブユーザー率を算出することで、サービスを能動的に利用してくれている=サービスを継続してくれる可能性が高い顧客の割合を算出できます。
カスタマーサクセスのKPIを設定する3つの手順
カスタマーサクセスのKPIを設定するには、次の3つの手順を踏む必要があります。
手順1.KGI(重要目標達成指標)を設定する
KPIはあくまでもゴールに至るまでの過程にすぎません。実施したカスタマーサクセスの途中経過を見るための指標であり、中間目標だと言えます。
そのため、KPIを設定するには、まずは企業の最終的な目標であるKGIを設定します。
KGIを設定する時には、「掲げた目標をいつまでに達成したいか」時期を明確化させることと、定量的に測定できる具体的な数値目標を設定することを意識しましょう。
手順2.過去のデータを踏まえ現状を把握する
次に、現状を把握しましょう。
KPIを設定する前に、現時点でのカスタマーサクセスの達成度合いを知っておかなければなりません。
自社に合ったKPIを設定するために、過去のデータをもとに現状を把握します。たとえば解約率やリテンションレートなどは、すぐに分析できる指標です。もとにできるようなデータが自社にない場合は、同じ業界の他の会社の事例を参考にしましょう。
手順3.KGIをもとにKPI(重要業績評価指標)を設定する
現状の把握をした後は、手順1で設定したKGIから逆算してKPIを設定します。業種やターゲット層などによって適切なKPI指標は異なるので、自社に合ったKPI指標を選択して数値を決めましょう。
その際、設定するKPIがSMARTに該当するかどうかをチェックすることをおすすめします。
- Specific:具体的
- Measurable:計測できる
- Achievable:現実的に達成可能な
- Relevant:経営目標に関連している
- Time-bound:期限が決められている
適切なKPIを設定することでカスタマーサクセスの効果を最大化できますが、上層部だけでKPIを設定すると現場との乖離が起きかねません。現場の意見もくみ取ってKPIを設定しましょう。
カスタマーサクセスのKPIにおける4つのポイント
「KPIを設定したが、達成できなかった」ということもあるでしょう。そうした方に向け、KPIにおけるポイントを4つ紹介いたします。
定量的に判断できる指標を設定する
KPIは、計測しやすい定量的な指標を設定しなければなりません。たとえば「顧客に満足してもらう」といった定性的なKPIでは、達成しているのかどうか判断できず、改善の余地もないからです。
PDCAを回していくためにも、定量的に判断できる指標を採用しましょう。
他部門と連携する
カスタマーサクセスのKPIは、カスタマーサクセスの取り組みだけでは達成できない指標もあります。たとえば「解約率」で言うと、いくらカスタマーサクセスが良好な関係を築いても、サービスの使い勝手が悪ければ解約につながってしまうでしょう。また、カスタマーサクセスがクロスセルの提案をして顧客が「詳しい話を聞きたい」となり営業部門に引き継いだ場合、営業部門の提案がうまくいかずに失注することもありえます。
このように、カスタマーサクセスは他部門と連携を取り合いながら、お互いに強化していくことでKPI達成が近づくのです。
達成可能な数値を設定する
KPIを設定する際には、達成可能な目標数値を設定することもポイントです。高い目標を持つことは大切ですが、目標値が高すぎると達成できないため、施策の妥当性や担当者のスキルなどを正確に評価できません。また、実現不可能な目標値だと、担当者のモチベーションが低下する恐れもあります。
PDCAサイクルを回す
KPIは設定して終わりではなく、PDCAサイクルを回して目標達成に近づいていくことが重要です。KPIの目標値と現状の数値がかけ離れている場合は、何らかの原因があるはずです。単に成果を出せていないだけでなく、目標値が適切ではなかったり、自社に適したKPI指標ではなかったりする場合もあるため、原因を見極めて改善しましょう。
まとめ:カスタマーサクセスを実施する人こそKPIを設定しましょう
今回はカスタマーサクセスを実施する人が設定すべきKPIについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
カスタマーサクセスとは「自社の商品やサービスを利用した顧客が成長や成功できるように行動すること」です。
混同されやすいカスタマーサポートとは顧客への支援を行う点で共通していますが、サポートが能動的か受動的かという決定的な違いがあります。
今回はカスタマーサクセス担当者が設定すべき代表的なKPIは次の8つをご紹介しました。
- 解約率(チャーンレート)
- オンボーディング完了率
- アップセル/クロスセル率
- リテンションレート(維持率)
- LTV(顧客生涯価値)
- NPS(顧客推奨度)
- NRR(売上継続率)
- アクティブユーザー率
実際にカスタマーサクセスのKPIを設定するときは、ただやみくもに行うのではなく、達成するコツを実践すれば目標達成に近づけられます。
カスタマーサクセスを実施する人は、今回紹介したKPIを設定してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いたライター
山田理絵
不動産営業を経験後、アディッシュにて、カスタマーサクセス関連商材のインサイドセールスを担当し、初期接点から課題の顕在化をし機会創出を行う。 趣味はポールダンスと料理。