MRRとは?計算方法、重要視する背景や改善方法を解説!
MRR(Monthly Recurring Revenue)とは「月次経常収益」のことで、1カ月間に決まって得られる収益を指します。
本記事では、MRRとは何か、どのように計算するのか、といった基本的なことから、ARRとの違いや改善・向上するための方法まで解説します。
MRRとは?
MRRとは「Monthly Recurring Revenue」の略称で、日本語では「月次経常収益」と言われます。まずはMRRの概要や種類、ARRとの違いなどを紹介します。
MRRとは「月次経常収益」
MRRとは「月次経常収益」を意味し、一カ月間で決まって得られる収益のことです。初期費用やスポットコンサルなど、一時的な収益は含めずに計算します。
月単位の定期的な収益を算出するため、サブスクリプションサービスを展開するSaaSビジネスにおいて重要な評価指標となります。ARRを毎月算出していくことで、ビジネスの成長度合いを判断できるのです。
MRRの4つの種類
MRRには、主に以下の4つの種類があります。
- New MRR
- Expansion MRR
- Downgrade MRR
- Churn MRR
それぞれどのようなMRRなのか見ていきましょう。
New MRR
New MRRとは、新規顧客から得られる収益です。たとえば、1カ月の間に30人の新規顧客が月額1万円のプランに契約したら、New MRRは「30万円」となります。
ビジネスの成長には「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持」のどちらも欠かせない要素です。どちらか一方に偏っていないか、バランスよく施策を行えているか、を評価するために、新規顧客と既存顧客を分けて見ていく必要があります。
Expansion MRR
Expansion MRRは、既存顧客のアップグレードによって新たに増加した収益です。下位プランから上位プランへ乗り換えたり、オプションを追加したりすることなどがあります。
たとえば、その月に5人の顧客が1万円のプランから3万円のプランにアップグレードした場合、新たに発生した収益の2万円に5人をかけ合わせた「10万円」がExpansion MRRとなります。
Downgrade MRR
Downgrade MRRは、既存顧客が上位プランから下位プランへダウングレードしたことによって失った収益です。
たとえば、3人の顧客が3万円のプランから1万円のプランにダウングレードし、5人の顧客が2万円のプランから1万円のプランにダウングレードした場合、「2万円×3人=6万円」と、「1万円×5人=5万円」の合計「11万円」がDowngrade MRRになります。
Churn MRR
Churn MRRは、既存顧客の解約によって損失した収益です。1カ月のうち、3人の顧客が月額3万円のプランを解約し、3人の顧客が月額1万円のプランを解約した場合、「3万円×3人=9万円」と「1万円×3人=3万円」の合計となる「12万円」がChurn MRRの数値となります。
MRRの計算方法
シンプルに1カ月間の収益を計算するには「月額料金×顧客数」で求められます。しかしサブスクリプションサービスの場合は、前述の通り「新規獲得」「解約」などの複数の要素から計算することでも正確な数値を計算できます。MRRの計算方法は、以下の式となります。
MRR=前月MRR+(New MRR+Expansion MRR-Downgrade MRR-Churn MRR)
ARRとの違い
MRRと混同されやすい言葉に「ARR」があります。
ARR(Annual Recurring Revenue)とは「年間経常収益」のことで、1年間に決まって得られる収益を意味します。
どちらもサブスクリプションサービスのSaaSビジネスのKPI指標ではありますが、「月間」と「年間」の部分で異なります。そのため、月単位の契約が多いBtoCビジネスではMRR、年単位の契約が多いBtoBビジネスではARRを用いられることが多いようです。
ARRの計算方法
ARRの計算方法は非常にシンプルで、MRRに12カ月をかけ合わせた数値となります。ただし、新規事業やスタートアップの場合はMRRの変動が激しいため、月によってARRの数値が大きく変わる場合もあり注意が必要です。
SaaSビジネスにおいてMRRを重視する理由
SaaSビジネスでは、ARRと同様にMRRも重要な指標となります。なぜ重要視されるのか、その理由を解説します。
ビジネスの成長度合いを評価できる
MRRは月単位で推移を分析できるため、ビジネスがどのくらい成長しているのか客観的に評価できます。
また、MRRの各要素を見ていくことで、MRR全体が増えているのは「新規獲得」が原因なのか「既存顧客のアップグレード」が原因なのか、MRR全体が減っているのは「ダウングレード」と「解約」のどちらが原因なのかが把握できます。それぞれの要素を分析することで、自社の収益に影響を与えている原因を見極め、適切な対策を取れるのです。
投資家の判断材料になる
投資家の判断材料としてMRRが活用されるため、資金調達の際に大きな影響を与えかねません。
投資家は、将来的な予測を立てたうえで投資する価値があるかどうか判断します。そのとき、「New MRR」や「Expansion MRR」が安定して伸びていると、成長の見込みがあると評価されるでしょう。一方、「Downgrade MRR」や「Churn MRR」が改善される様子が見られなければ、成長が見込めないと判断され、投資対象とはならない可能性があります。
MRRを改善・向上するには
ここからは、MRRを改善していく方法を紹介していきます。
New MRRを向上する方法
「New MRR」は新規顧客から発生した収益であるため、新規顧客の獲得を強化することで向上できます。セミナーや展示会などのオフライン施策、WebサイトのSEO対策やSNSなどのオンライン施策などを併用しましょう。
ただし、「1:5の法則」にあるように、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍もかかると言われており、新規顧客の獲得ばかりに注力するとコストがかかりすぎて赤字になることもあるため、注意が必要です。
Expansion MRRを向上する方法
「Expansion MRR」を向上させるには、既存顧客からの収益を増やすことが重要です。シンプルに料金を引き上げする方法がありますが、上げ幅が大きすぎると解約につながりかねません。
そのため、上位プランへアップグレードしてもらう「アップセル」や、オプションや関連サービスも契約してもらう「クロスセル」を促しましょう。
アップセルやクロスセルを実現するには、顧客のサービス利用状況を分析して、適切なタイミングで提案しなければなりません。しかし営業担当者がそこまでの業務を担当するのは負担が大きくなるため、既存顧客対応を専任で行うカスタマーサクセス部門を設立し、既存顧客へのフォローを手厚くしましょう。
Downgrade MRRを改善する方法
「Downgrade MRR」を改善するためには、顧客がなぜダウングレードするのかという理由を明確にすることから始めます。
上位プランの機能を使いこなせていなかったり、利用料金が高すぎたりすると、顧客は不満を感じてダウングレードにつながります。また、プランごとの機能面にそれほど違いがなければ、顧客は「下位プランでも変わらず利用できるのではないか」と思い、ダウングレードを検討するかもしれません。
自社の料金体系やプラン内容などを見直し、ダウングレードにつながる要因を改善しましょう。
また、機能を使いこなせていない顧客をフォローしたり、顧客の不満をキャッチアップしたりするために、カスタマーサクセスを導入して既存顧客のサポートを行うことも重要です。
Churn MRRを向上する方法
サービスへの不満が大きいと解約をしてしまう顧客もいるため、解約を防ぐ取り組みが必要となります。
顧客の利用状況を分析し、機能を使いこなせていない顧客をサポートしたり、より利用を活性化するように活用事例などの情報を提供したりしましょう。また、既存顧客向けの講習会や勉強会を開催や、定期的な1on1ミーティングの実施なども効果的です。
Churn MRRを改善するときにも、カスタマーサクセスの取り組みが重要となります。
最後に
MRRは月間に決まって得られる収益のことで、サブスクリプションサービスのSaaSビジネスの成長度合いを見極める際に活用できる指標です。MRRには、以下の4種類があります。
- New MRR
- Expansion MRR
- Contraction MRR
- Churn MRR
それぞれのMRRを改善・向上することで、MRR全体の数値も向上していくでしょう。そのためには、マーケティングや営業の強化だけでなく、カスタマーサクセスによる既存顧客フォローが非常に重要になります。
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