カスタマーエフォートスコア(CES)とは?計算方法から改善方法まで解説!
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武田龍哉
2025.08.28

現代のビジネスにおいて、顧客体験(CX)の質がサービスの選定基準となる中で、「どれだけスムーズに顧客が目的を達成できたか」を数値化できる指標として注目されているのがカスタマーエフォートスコア(CES)です。
顧客が商品やサービスを利用する過程で「どれくらい手間がかかったか」を測定することで、企業は潜在的なストレス要因を明らかにし、より直感的で快適な体験へと改善する道筋を得られるとして、さまざまな企業がスコアを測定しています。今回は注目を浴びるカスタマーエフォートスコアについて詳しく解説します。
カスタマーエフォートスコア(CES)とは?
カスタマーエフォートスコア(CES)とは、お客様がサービスやサポートを利用する際にどれくらいの労力がかかったかを数値で表す指標です。
お客様が「簡単に使えた」「すぐに解決できた」と感じるほどCESは低くなり、顧客満足度や継続利用率が高まります。一方で「サービスの操作が分かりにくい」「情報が探しづらい」と感じるほどCESは高くなり、離脱や解約の原因になります。
顧客がストレスに感じるのは、次のような場面です。
- 直感的に操作できない
- 欲しい情報がすぐに見つからない
- マニュアルがわかりにくい
- カスタマーサポートの対応が遅い
- 初期設定が難しい
- 不具合やエラーが多い
顧客が解約する前に、ストレスを取り除くために CESを測定します。
CESとNPSの違い
CES | NPS | |
目的 | 顧客体験の改善点を見つける | 顧客ロイヤリティを測定する |
測定方法 | 7段階評価 | 11段階評価 |
評価方法 | スコア数値が低いほど良い | スコア数値が高いほど良い |
CESとNPSの違いは「目的」です。
CESは顧客体験の改善点を見つけるために、お客様がサービスやサポートを利用する際、どれくらいの労力がかかったかを調査します。顧客の負担となっている箇所を改善することで、商品・サービスを利用し続けてもらいます。
一方で、NPSは顧客ロイヤリティを測定するための指標です。家族や友人に商品・サービスをどれぐらい薦めたいかを尋ねて、どれぐらい愛着を持ってくれているかを把握します。自社にどれぐらいのファンがいるのかを把握して、どこに魅力を感じてもらえているかを知り、商品開発やプロモーションに役立てていきます。
関連記事:『NPSとは?顧客満足度との違いや算出方法について解説』
カスタマーエフォートスコア(CES)の重要性
カスタマーエフォートスコア(CES)は3つの観点から重要です。
サービスの問題点を発見できる
カスタマーエフォートスコアの調査を行えば、顧客体験の問題点を発見できます。なぜなら、アンケート調査で「サービスは利用しやすいと感じましたか?」「改善してほしい点があればご記入ください」と定量データと定性データを取得するためです。
たとえば、「サービスの初期設定が難しい」といった回答が多い場合は、早急に改善しなければなりません。このように、カスタマーエフォートスコアを測定することで、顧客が商品・サービスを問題なく使えているかを特定できて、どこを改善すべきかが理解できるようになります。
カスタマーエクスペリエンスを定量評価できる
カスタマーエフォートスコア(CES)を活用すれば、カスタマーエクスペリエンス(CX)を客観的に評価できるようになります。
「FAQで情報を探す際にどれだけ負担に感じましたか?」「初期設定はどれだけ負担に感じましたか?」といった設問に対して7段階で評価してもらえば、顧客が商品やサービスを認知してから購入、利用、そしてその後のフォローアップに至るまでの一連の体験でどこに問題があるのかを把握できるようになります。
関連記事:『カスタマーエクスペリエンス(CX)の意味とは?ジャーニーとの違いや事例を解説』
リピーター率が上がる
商品・サービスやカスタマーエクスペリエンスの問題点を正確に把握し改善していくことで、顧客満足度が向上し、リピーターの増加につながります。
なぜなら、顧客が商品・サービスを利用をしたあとに「スムーズで快適だった」「サポートが迅速だった」「期待以上の体験が得られた」と感じれば、リピートする確率が高まるためです。
近年は、商品の価格や機能だけでなく「体験の質」が選定基準として重視される傾向にあるため、CX(カスタマーエクスペリエンス)の改善は中長期的な関係構築に不可欠です。
新規顧客が獲得しづらくなってきていて、既存顧客を維持する重要性が増してきたため、カスタマーエフォートスコア(CES)を調査して問題点を改善する企業が増えてきました。
カスタマーエフォートスコア(CES)の測定方法
カスタマーエフォートスコア(CES)を測定する際は、顧客の負担感を数値で把握できるような設問を用意し、7段階評価で回答してもらうのが一般的です。
たとえば、「初期設定にどの程度の手間がかかりましたか?」「商品利用時の不明点は自力で解決できましたか?」といった質問が該当します。
評価結果は、次のように3つの区分に分類します。
- 「1」「2」を上位区分(ポジティブ評価)、
- 「3」「4」を中位区分(中立評価)、
- 「5」「6」「7」を下位区分(ネガティブ評価)、
とし上位区分の割合から下位区分の割合を差し引いた値が、CESスコアとなります。
たとえば、上位区分が60%、下位区分が20%であれば、スコアは「60-20=40」となります。数値が高いほど、顧客が少ない労力で目的を達成できたことを示します。
【テンプレート】カスタマーエフォートスコア調査アンケート
Q1. サービスを利用して目的を達成するのに、どの程度の努力が必要でしたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q2. 初期設定(オンボーディング)はスムーズに完了できましたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q3. 必要な機能や設定方法をすぐに見つけることができましたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q4. FAQやヘルプドキュメントは問題解決に役立ちましたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q5. サポートへの問い合わせはスムーズでしたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q6. サービスの操作でストレスを感じることはありましたか?(7段階評価)
- 非常に簡単だった
- 簡単だった
- やや簡単だった
- どちらともいえない
- やや難しかった
- 難しかった
- 非常に難しかった
Q7. 改善してほしい点があれば、自由にご記入ください(任意)
Q8. このサービスを今後も継続的に利用したいと思いますか?(任意)
- はい
- いいえ
- わからない
ご協力ありがとうございました!
この調査結果は、サービスの改善に役立てさせていただきます。
カスタマーエフォートスコア(CES)の改善方法
カスタマーエフォートスコアは、顧客維持や売上に直結するものです。そのため、カスタマーエフォートスコアを改善していきましょう。カスタマーエフォートスコアを改善するための施策には、次のようなものがあります。
UI/UXを改善する
カスタマーエフォートスコア(CES)の改善において、もっとも基本かつ重要な施策の一つが、サイトやプロダクトのUI/UXを最適化することです。顧客が直感的に操作でき、目的にスムーズに到達できる設計になっているかどうかが、顧客の負担感を大きく左右します。
たとえば、複雑なナビゲーション構造を見直して導線を整理すれば、迷うことなく次のアクションへ進めるようになります。入力フォームの項目数を最小限に抑えたり、手順ごとにガイドを表示することで、操作途中でのつまずきを防ぐことも可能です。
このような工夫によって、ユーザーは「分かりやすい」「ストレスなく使える」と感じるようになり、結果的にCESのスコアを改善できます。
FAQを充実させる
FAQの充実は、カスタマーエフォートスコア(CES)の改善において非常に有効な施策です。顧客が疑問を感じた際、サポートに頼らず自身で問題を解決できる仕組みが整っていれば、サービス利用時の負担を大幅に軽減できます。
たとえば、「初期設定の方法が分からない」「特定の機能がどこにあるのか見つけられない」「表示されたエラーメッセージの意味が理解できない」といった状況でも、具体的な手順や図解を用意しておけば、顧客は迷うことなく操作できることでしょう。
こうした情報があらかじめ整理されていれば、顧客は「このサービスはわかりやすい」と感じやすくなります。その結果、行動コストの低減につながり、CESのスコアを改善できます。
オンボーディングを導入する
オンボーディングの導入は、カスタマーエフォートスコア(CES)の改善に効果的です。顧客が初期段階でつまずかずに商品やサービスを利用できるようになれば、全体の負担感が軽減され、スムーズな体験につながります。
特にSaaSなどのデジタルサービスにおいては、初回ログイン時にステップバイステップのチュートリアルを設けることで、操作方法や設定の理解を助けることが可能です。実際に、こうした導線を整備したことで、サポートへの問い合わせ件数が減少し、CESスコアが向上した事例も見られます。
このように、オンボーディングにより顧客の初期体験をサポートすれば、心理的・時間的な負担が抑えられ、「使いやすい」と感じてもらえる環境が整い、結果としてスコアの向上につながります。
問い合わせ方法を見直す
問い合わせ方法の見直しは、カスタマーエフォートスコア(CES)の改善に直結します。顧客が困ったとき、すぐにサポートへアクセスできる環境が整っていれば、それだけで心理的・時間的負担が大きく軽減されるためです。
たとえば、従来は電話のみの対応だったものを、「チャット」「メール」「問い合わせフォーム」「LINE」など、複数のチャネルを用意した企業では、連絡のしやすさが向上し、実際にCESスコアの上昇が確認されています。問い合わせ手段の柔軟性が高まることで、顧客は自身の都合に合った方法を選べるようになり、不満を抱えにくくなります。
このように、サポートへのアクセスハードルを下げる工夫が、顧客体験の質を高め、結果として「使いやすい」「頼りになる」という評価へとつながっていきます。
オペレーターの対応を改善する
カスタマーエフォートスコア(CES)を向上させるうえで、オペレーターの対応力を見直すことは非常に重要です。対応の質が高ければ、顧客は最小限の説明でスムーズに問題を解消でき、「労力をかけずに済んだ」という印象を持ちやすくなります。
実際にある企業では、サポートスタッフに対してトラブル対応フローの再教育や定期的なロールプレイ研修を導入し、応対品質の底上げを図りました。その結果、同顧客からは「一度で意図が伝わるようになった」との声が寄せられ、CESスコアも20%向上しています。
このように、オペレーターのスキルや対応体制を整備することで、顧客のストレスや手間を大幅に削減でき、結果としてサービス全体の体験価値を高めることが可能となります。
まとめ
カスタマーエフォートスコア(CES)は、顧客がサービスを利用する際に感じる“手間”を数値化できる指標であり、顧客満足度や継続利用意向に大きく影響します。スコアの改善には、UI/UXの最適化、FAQの充実、オンボーディングの整備、問い合わせ手段の見直し、さらにはオペレーター対応の品質向上といった施策が有効です。
これらの取り組みを通じて、顧客の負担を軽減し、スムーズでストレスのない体験を提供することが、CES向上と顧客ロイヤルティの強化につながります。継続的に改善を行うことで、企業にとっても顧客維持率やLTVの向上といった成果が期待できるでしょう。
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この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。