ヘルススコアとは?重要性やメリット、指標と設計方法まで解説
武田龍哉
2024.11.14
「顧客のサービス利用状況を数値で可視化したい…」「どのようなサポートを行えば顧客満足度は上げられるのだろうか…」とお悩みを抱えていませんか?
このような悩みは、ヘルススコアを測定することで解決できます。顧客のサービス利用状況を把握してサポートするためにも、ヘルススコアについて理解を深めておきましょう。
今回はヘルススコアについて詳しく解説します。ぜひ、カスタマーサクセス支援を見直す際にお役立てください。
ヘルススコアとは
ヘルススコア(health score)とは、顧客がサービスを継続して利用してくれるか判断するための指標です。
ヘルススコアの数値が高い場合はサービスを継続して利用してもらえます。
一方で、ヘルススコアの数値が低い場合はサービスを解約されてしまうかもしれません。
つまり、「ヘルススコアが高い場合はクロスセルやアップセルを提案しよう」「ヘルススコアが低い場合はフォローをしよう」と、どのような支援をすべきか判断しやすくなります。そのため、カスタマーサクセスではヘルススコアを測定します。
ヘルススコアの重要性
ヘルススコアが重要な理由は3つあります。
既存顧客を維持するため
1つ目は既存顧客を維持して経営を安定させるためです。毎月売り上げを計上するためには、既存顧客を維持することが大切です。
既存顧客と継続的な取引を行えれば、安定した経営ができます。
ヘルススコアは商品・サービスの顧客満足度や顧客ロイヤリティを可視化するものです。
ヘルススコアを測定した上で「どのようなサポートをすべきか」「どのような点を改善すべきか」を判断して行動すれば、既存顧客がリピートしてくれるようになります。
サブスクリプションモデルが台頭したため
2つ目はサブスクリプションモデルが台頭したためです。
サブスクリプションモデルの登場で、モノを所有するのではなく、必要なタイミングでモノを利用するようになりました。
便利なサービスですが、サービスを継続して利用してもらわなければなりません。そのため、サブスクリプションモデルでは、ヘルススコアを測定して顧客の変化を検知し、適切なタイミングでフォローする必要があります。
さまざまな業界でサブスクリプションモデルのサービスが登場してきており、ヘルススコアの測定が重要だと注目を浴びるようになりました。
データによる意思決定を行うため
3つ目がデータによる意思決定を行うためです。ヘルススコアを測定することで、顧客ニーズをより深く理解できるようになります。
例えば、ITツールのログイン頻度は高いけれど、利用時間が短い場合は操作方法が躓いている可能性があるため、オンボーディングを実施してあげると喜ばれるでしょう。
このようにヘルススコアを測定すれば、どのようなサポートをすべきか判断できるようになります。
データを根拠にしているため、周囲からの同意も得られ、素早く行動に移せます。
カスタマーサクセスにおけるヘルススコアの重要性について詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『カスタマーサクセスにおけるヘルススコアの重要性│作り方の手順も解説』
ヘルススコアを測定するメリット
ヘルススコアを測定するメリットは3つあります。
アクションプランを策定できる
ヘルススコアを測定すれば、顧客の状態を把握できて、どのようなサポートをすべきかアクションプランを策定できるようになります。
1人1人の顧客に対してアクションプランを策定するのは現実的ではありませんが、ヘルススコアの点数別にアクションプランを策定すれば手厚いサポートが行えるようになります。
解約の兆候を発見できる
ヘルススコアを測定すれば、商品・サービスの解約の兆候を発見できるようになります。
例えば、サービスの利用時間が減少した場合「サービスの使い方が難しい」または「サービスが不要になった」などが考えられます。
このような場合、サービスの利用時間が減少したタイミングでヒアリングして、必要なフォローをすることで解約を防ぐことができます。
アップセル・クロスセルのタイミングが掴める
ヘルススコアを測定すれば、アップセルやクロスセルのベストタイミングを掴むことができます。
例えば、顧客が目標達成できた場合に「上位プランにアップグレードしませんか?」「他部署でもサービスを利用しませんか?」と提案すれば前向きに検討してもらえるようになります。
また、新規顧客を紹介してくれる場合もあるでしょう。このような兆候もヘルススコアかた読み取ることができます。
アップセルやクロスセルについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事:『アップセル・クロスセルとは?意味や事例、成功させるポイントを解説』
ヘルススコアの主な指標
ヘルススコアにはさまざまな指標がありますが「DEARモデル」を活用すれば網羅できます。
- Deployment:ユーザーがプロダクトの操作方法を理解できているか
- Engagement:顧客と良好な関係を築けているか
- Adoption:プロダクトを上手く活用しているか
- ROI:プロダクトに価値を感じているか
ここでは、各項目について解説します。
Deployment
Deploymentとは、プロダクト導入後に初期設定やオンボーディングを無事に終えられたかを示す指標です。顧客がプロダクトを使用できている状態になっているのかを測定します。
- 初期設定完了率
- オンボーディング完了率
- チュートリアル完了率
- サポートへの問い合わせ件数
- 導入期間など
Engagement
Engagementとは、顧客との関係値を表す指標です。カスタマーサクセスが送付したメールに返信してもらえるか、イベントに案内したら参加してもらえるかなど反応を見て顧客との関係地を測定します。
- カスタマーサクセスとの接触頻度
- メルマガ開封率
- メール返信率
- イベント参加率
- コミュニティへの投稿数など
エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『顧客エンゲージメントとは?獲得メリットと方法について解説』
Adoption
Adoptionとは、顧客がプロダクトを上手く活用しているかを表す指標です。毎月、プロダクトを使用してくれているか、さまざまな機能を使いこなせているかを確認して利用頻度を確かめます。
- ログイン頻度
- アクティブ率
- 利用時間
- 主要機能の利用率
- データ入力量など
Return on Investment
Return on Investmentとは、顧客がプロダクトで投資対効果が得られているかを表す指標です。
- KPI達成率
- 売上増加率
- コスト削減額
- 契約更新率
- アップセルやクロスセルの発生率
- NPSなど
ヘルススコア導入手順
ヘルススコアは5STEPで導入できます。
- ヘルススコアの健康状態を定義する
- ヘルススコアの指標を決める
- ヘルススコアの算出方法を決める
- 閾値と施策を決める
- ヘルススコアを改善する
ここでは、各手順について解説します。
1.ヘルススコアの健康状態を定義する
まずは、ヘルススコアの健康状態(どのような状態であればよいか)を定義します。自社で扱う商品やサービスにより、健康状態の定義は変わります。
例えば、業務効率化するために利用するITツールの場合は、毎日ログインされていて主要機能の利用率が高い状態が健康的だと言えるでしょう。
このように、ヘルススコアの健康状態を定義することで、どのような指標を測定すべきかを判断できるようになります。
2.ヘルススコアの指標を決める
次にヘルススコアの指標を決めます。DEARモデルを参考にすると網羅できます。
さまざまな指標を管理すると負担が重たくなるため、本当に必要な指標を絞り込み測定するようにしましょう。
Deployment | 初期設定完了率 オンボーディング完了率 チュートリアル完了率 サポートへの問い合わせ件数 導入期間など |
Engagement | カスタマーサクセスとの接触頻度 メルマガ開封率 メール返信率 イベント参加率 コミュニティへの投稿数など |
Adoption | ログイン頻度 アクティブ率 利用時間 主要機能の利用率 データ入力量など |
Return on Investment | KPI達成率 売上増加率 コスト削減額 契約更新率 アップセルやクロスセルの発生率 NPSなど |
3.ヘルススコアの算出方法を決める
次にスコアスコアの算出方法を決めます。スコアの算出方法に正解はありません。得点制度もあれば5段階評価もあります。下記にヘルススコアの算出例を載せたので、ぜひ参考にしてみてください。
指標 | 得点配分 |
ログイン回数 | 0回:0点 5回未満:50点 5~10回:70点 11回以上:100点 |
利用時間 | 0分:0点 60分未満:50点 60分~90分未満:70点 90分以上:100点 |
NPS | 0~4点:0点 5~7点:50点 8~10点:100点 |
4.閾値と施策を決める
ヘルススコアの得点を調べられても閾値がなければ、健康なのか不健康なのかを判断できません。そのため、ヘルススコアの閾値と施策を決めましょう。ヘルススコアの等値と施策の決め方の参考例を載せておきます。
得点 |
閾値 | 施策 |
70~100点 | 健康 | アップセルやクロスセル |
40~69点 | 普通 | 成功事例を提供する |
0~39点 | 不健康 | 状況をヒアリングしてフォローする |
5.ヘルススコアを改善する
ヘルススコアを改善します。ヘルススコアの健康状態を定義から変更しなければならない場合もあります。ヘルススコアに正解はありません。製品やサービス、自社の体制、環境の変化に応じて改善しましょう。
ヘルススコアを測定する際の注意点
ヘルススコアを測定する際の注意点は3つあります。
ツール導入コストがかかる
ヘルススコアを測定するためには、ツールの導入が欠かせません。
例えば、Engagementのスコアを測定したい場合はMAを導入すると良いでしょう。
また、Return on Investmentのスコアを測定したい場合はアンケート調査ツールを導入をした方が良いです。つまり、ヘルススコアを測定する場合はツール導入コストが必要となります。
機密情報の取り扱いに注意する
ヘルススコアは機密情報です。機密情報が漏洩すると企業の信頼が失墜したり、損害賠償金が請求されたりなど莫大なダメージを及ぼす可能性があります。
そのため、ヘルススコアを測定する際は機密情報の取り扱いに注意しましょう。万全のセキュリティ対策した上で、情報収集するようにしましょう。
定性データも取得する
ヘルススコアは定量データとなりますが、定性データも併せて取得するようにしましょう。
なぜなら、顧客のプロダクトに対する想いや意見など数値化できないものを拾いあげることで、より良いサービスを提供できるようになります。
ヘルススコアはあくまで一つの指標です。顧客とのコミュニケーションを密に行い、生の声を聞きながら、総合的に判断することが大切です。
ヘルススコア導入の成功事例
食品ロスを削減するフードシェアリングサービスTABETEは、廃棄となる惣菜と食べてをつなぎ売り切ることを応援しているプラットフォームです。
以前は、サービスを利用する店舗数や出品量をKPIとしていました。
しかし、食品ロスを解決するためのサービスのため「出品量の増加=良いこと」とは言えません。このような悩みを抱き、アディッシュのCSブートキャンプを利用しました。
『CSブートキャンプ』では「カスタマーサクセスの成功の定義」「みるべき数字」「適切な運用」というように、CSの部門を立ち上げ業務を回していくプロセスに必要な観点で設計をサポートしてもらいヘルススコアを設定しました。
最適なカスタマーサクセスの業務設計は重大なテーマです。それを専門家の意見を取り入れながら進めることで、適切なKPI、ヘルススコアを設定でき、会社の取り組みの精度を高めています。
>>【導入事例】カスタマーサクセスの基礎固めをするためにアディッシュの「CSブートキャンプ」を導入。コークッキングが”顧客の成功”のために始めたこと
まとめ
ヘルススコアとは、顧客が自社の商品・サービスを継続して利用してくれるかを示す指標です。
サブスクリプションモデルが台頭し、既存顧客を維持やデータによる意思決定の必要性が謳われてヘルススコアが注目を浴びるようになりました。
ヘルススコアを測定することで、解約の兆候を発見できたり、アップセル・クロスセルの提案タイミングを特定できるようになります。
この記事では、ヘルススコアの設定方法までご紹介したため参考にしてみてください。
もし、ヘルススコアの設計方法に悩んだ場合はアディッシュにご相談ください。ヘルススコア設計のサポートをさせていただきます。
この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。