顧客接点とは?事例をもとに4つの強化策を解説
山田理絵
2024.10.15
多様化する顧客のニーズを正確に汲み取るため、顧客接点を強化したいと考えるマーケティング担当者の方も多いのではないでしょうか。
顧客接点の最適化をはかることで、集客や販売促進が期待できます。
また、顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)の向上とも密接に関係するため、カスタマーサクセスを行う上で、顧客接点は重要な要素だといえるでしょう。
本記事では、顧客接点の重要性や事例、強化をはかる際のポイントを詳しく解説します。
また、後半では顧客接点の強化に成功した事例を紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
顧客接点とは
顧客接点とは、企業が顧客と接する場所や手段を指します。「タッチポイント」や「コンタクトポイント」とも呼ばれています。
顧客接点には、店舗や展示会、営業担当者との面談といったアナログ接点のほか、Web広告やSNS、オウンドメディアをはじめとするデジタル接点の2種類があります。現在、アナログとデジタルを問わず数多くの顧客接点が存在します。
参考記事:顧客接点はデジタル化が必須?6つの具体策と事例を紹介
企業活動においては営業や販売だけではなく、マーケティング、カスタマーサポート、カスタマーサクセスなど、多様な領域で顧客接点の重要性が高まっています。
参考記事:カスタマーサクセスとは?意味・メリット・成功のポイントなどを解説!
顧客接点が重要な理由
顧客接点の重要性が高まっているのは、次のような理由があるためです。
- 新規顧客の獲得につながるため
- より適切なマーケティング施策を考案するため
- 購買行動の変化に対応する必要があるため
- カスタマーサクセスを成功に導くため
それぞれの理由を詳しく解説します。
新規顧客の獲得につながるため
顧客接点を拡充する大きな目的のひとつが、新規顧客を獲得することです。
従来とは異なる新たな顧客接点を持つことで、新規の見込み客にアプローチする機会が生まれます。
その結果、今までとは属性や行動傾向の異なる顧客を獲得できるでしょう。
対面営業やチラシ広告といったアナログ接点に加え、オウンドメディアやWeb広告などの接点を拡充すれば、デジタルに接する機会の多い顧客層へとリーチが広がります。
顧客層の幅が広がると販売機会の拡大や販売数の向上に結び付きます。
より適切なマーケティング施策を考案するため
効果的なマーケティングを実施するためには、カスタマージャーニー(購買までの一連の体験プロセス)に対する理解が欠かせません。
顧客の購買プロセスを可視化し、各フェーズにおける見込み客の行動や感情を分析することで、潜在層から顕在層へとスムーズな移行をはかれます。このカスタマージャーニーを考える上で必要不可欠なのが顧客接点です。
次の例のように、顧客は商品やサービスを購入するまでに複数の顧客接点を通過します。
- YouTubeで動画広告のサービスに興味を示す
- 公式サイトでそのサービスの詳細を確認する
- 他社サービスも検討しようと比較サイトで情報を集める
- 当初のサービスが気に入ったので、SNSで口コミを調べる
- より安く購入する方法についてクーポンサイトを調査する
- 公式サイトからサービスを購入する
上記のような具体的な顧客接点が理解できていれば、それに合う適切なマーケティング施策を考案できます。
各接点における顧客の行動 | マーケティング施策の一例 |
1.動画広告を見る | ・動画広告の配信 |
2.公式サイトで詳細を確認 | ・適切な広告の受け皿(公式サイトやLP)を用意 ・問い合わせフォームの最適化 ・見込み客情報のリスト化 |
3.比較サイトで情報収集 | ・比較記事を発信できるオウンドメディアを整備 ・比較可能なホワイトペーパーの掲載 |
4.SNSで口コミ調査 | ・UGC(ユーザー生成コンテンツ)の環境構築 ・SNS上で「お客様の声」が増える仕組み作り |
5.クーポンサイトを確認 | ・クーポンサイトに自社クーポンを登録 ・メールマガジンでクーポンを配布 |
6.公式サイトから購入 | ・リマーケティング広告 ・ショッピングカートや決済機能の整備 ・FAQや無料トライアルを導入 |
このように、まずはカスタマージャーニーをもとに顧客接点を浮き彫りにし、そこから適切な施策を考えることがマーケティングを成功へと導きます。
購買行動の変化に対応する必要があるため
顧客の購買行動が変わりつつある点も、顧客接点の重要性が高まっている理由のひとつです。
昨今比較的営業からの情報を重視していたBtoB商材であっても、インターネットを使って情報を収集したり、モバイルアプリ経由でコミュニケーションをとったりするケースが珍しくありません。
これまでアナログ接点を重点的に強化してきた企業にとっては、オフラインだけではなくオンラインの施策を補強するなど、多様化する顧客接点を的確にカバーする必要性が生まれたといえるでしょう。
また、新型コロナウイルスの感染拡大も購買行動に大きな変化を与えました。
例えば、企業が開催するイベントやセミナー、対面でのインタビューといったアナログ接点は、デジタル接点への移行を余儀なくされています。
時代の移り変わりによって変化する購買行動を捉えるためにも、顧客接点の強化が必要です。
カスタマーサクセスを成功に導くため
マーケティング以外にカスタマーサクセスの分野でも、顧客接点は重要な要素だといえます。
カスタマーサクセスは、企業のサービスを通じて顧客が自身の目標を達成できるよう、積極的にサポートすることが目的です。
特に、SaaSをはじめとするサブスクリプション型のビジネスでは、カスタマーサクセスの成否が事業継続の鍵を握ります。
カスタマーサクセスの成否は、顧客の定着率や解約率に大きく影響するからです。継続したサポートによって末永くサービスを利用してもらうためには、中長期的に顧客との接点を維持する必要があります。
電話やメールはもとより、LINE、チャットなど、顧客の属性や行動に合わせたチャネルを実装することが大切です。
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顧客接点の2つの種類
顧客接点は、「オフライン」と「オンライン」の2つの種類に分かれます。
それぞれのメリットとデメリットを理解しておくと、各接点に合わせた適切な施策を考案できるほか、後ほど解説するO2O・OMOマーケティングにも対応しやすくなります。
オフラインとオンライン、それぞれの顧客接点について詳しく解説します。
オフライン
オフラインの顧客接点は、インターネット上以外で顧客と接する場所や手段を指します。
現在はデジタルマーケティングやDXへの注目度が高まっているため、オンラインの顧客接点に目を向けがちですが、オフラインならではのメリットも存在します。
例えば、対面で接するからこそ信頼関係を築きやすく、顧客の状況に合わせて臨機応変に対応できるのは大きなメリットです。
一方で時間的・経済的コストがかかりやすいので、オンラインの顧客接点とうまく組み合わせる必要があるでしょう。
オフラインの顧客接点には次のような種類があります。
- 対面営業
- 店頭での接客
- 電話応対
- マス広告(テレビ・ラジオ・新聞)
- チラシ広告
- 郵送のDM
- 展示会・イベント・セミナー
オンライン
オンラインの顧客接点は、インターネット上で顧客と接する場所や手段を指します。オフラインに比べて情報を発信するスピードが圧倒的に速いのがメリットです。
また、ターゲットを細かく絞り込んで集客効果を高めたり、オフラインの施策よりもコストを安く抑えたりと、費用対効果に優れています。
ただし、社内に人材がおらず外注する場合、オフラインの施策よりもかえって費用が高くなる可能性もあり、注意が必要です。
オンラインの代表的な顧客接点は次の通りです。
- オウンドメディア(Webサイト・企業ブログ)
- ECサイト
- SNS
- モバイルアプリ
- Web広告(検索連動型広告・ディスプレイ広告・SNS広告など)
- メールマガジン
- オンラインイベント・セミナー
- メールやチャットでの顧客応対
顧客接点を強化するための5ステップ
顧客接点を強化するステップは次の通りです。
- ブランドイメージの明確化
- ペルソナ設計
- カスタマージャーニーマップ作成
- 社内体制の整備
- 施策の実行・PDCAの回転
それぞれの手順を具体的に解説します。
1. ブランドイメージの明確化
まずは、自社ブランドのイメージを明確にするところから始めましょう。そもそもブランドとは、各接点にてユーザーが抱いたイメージを集積したものだからです。
そのため、顧客接点の個別の施策を考える前に、最終的なゴールとなるブランドイメージを設計しておくことが大切です。
ブランドイメージを設計するためには、自社のターゲットに合うブランドコンセプトを言語化します。
美容院を例に挙げると、手軽さを意識するなら「20分で施術が完了する美容院」や、質の高さをアピールするなら「30代でワンランク上の身だしなみを目指せる美容院」といった形です。
ブランドイメージを明確にするほど理想とする顧客層を集客しやすく、競合他者との差別化にもつながります。
2. ペルソナ設計
次に、ターゲットの属性をより絞り込んだペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、自社における最も重要で象徴的な顧客像のことです。
「20代の女性」といった抽象的なイメージではなく、年齢や居住地、職業、趣味など、本当に実在する1人の人物を想定する形で顧客像を設定します。
ペルソナとして設定できる項目には、次のような種類があります。
- 氏名
- 年齢
- 性別
- 居住地
- 家族構成
- 職業・役職
- 年収
- 趣味
- 人間関係
- 価値観や考え方
- 将来の目標
- 情報収集方法
こうした項目をより詳細に設定するほどターゲットが明確になり、マーケティング活動の精度が高まります。
また、特定の顧客像を組織内で共有しやすくなった結果、部門ごとに足並みを揃えやすくなるのもメリットです。
3. カスタマージャーニーマップ作成
続いては、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。カスタマージャーニーマップとは、認知から購買までのプロセスを図式化したツールです。
購買プロセスのフェーズ毎に、顧客の行動や心理的な変化を可視化することで、適切なマーケティング施策を考案しやすくなります。
また、次の例のように、設定したフェーズごとに顧客接点を記載します。
フェーズ | 顧客接点 |
1.認知・興味 | ・Twitter ・オウンドメディア ・業界のニュースサイト |
2.情報収集 | ・Web検索 ・検索連動型広告 ・知人や家族 |
3.比較・検討 | ・比較サイト ・Web検索 ・YouTube |
4.勾配 | ・ECサイト ・公式サイトの問い合わせ ・電話やメール |
こうして抽出された顧客接点から、より具体的なマーケティング施策を考えましょう。
例えば認知・興味フェーズでは、オウンドメディア内で企業ブログを構築し、継続的な情報発信を行えます。
この段階のターゲットは潜在層であるものの、繰り返し見込み客と接し、価値ある情報を提供すれば、行動意欲を醸成したうえで効果的に購買へと促せるでしょう。
参考記事:カスタマージャーニーとは?ジャーニーマップの作り方と注意点を徹底解説
4. 社内体制の整備
ここまでご紹介した手順は、顧客接点を強化する計画段階です。
計画を立てた後は、その施策を確実に実行できる社内体制を整備する必要があります。
そのためにも、まずは人的リソースを確保しましょう。
実際に顧客とかかわる営業社員やカスタマーサポートの担当者のほか、インサイドセールス担当や顧客行動の分析担当など、業務の種類によって必要な人材が異なります。
不足する箇所があれば、新たに人材を採用するのも手段のひとつです。
ただし、人材の採用には多額のコストがかかることから、業務効率化によってリソース不足を補えないか検討してみるのも大切です。
5. 施策の実行・PDCAの回転
最後に、カスタマージャーニーで考案した施策を実行に移しましょう。
ここで大切なポイントは、必ず定期的な効果検証を行うということです。顧客接点を強化したとしても、必ずしもすべての施策が成功するとは限りません。
そこで、定期的に施策の効果を確認し、必要に応じて改善を行うPDCAが必要です。
仮に新しいチャネルで思うように集客効果が見込めない場合は、露出機会の少なさや予算の不足などの課題を見つけ、それを解決するためのアプローチを考えましょう。
繰り返しPDCAを回転させることで、より良い施策へと生まれ変わります。
顧客接点を強化する具体策4選
では、具体的にどのように顧客接点を強化すれば良いのでしょうか。
ここでは、顧客接点を強化するための具体策を4つご紹介します。
1.新たな 顧客接点の創出
1つ目は、顧客接点を新たに生み出す方法です。
いままで活用してこなかったチャネルや窓口を導入することで、新しい見込み客の獲得につながる可能性があります。
まったく異なる顧客層にアプローチすべく、イベントやキャンペーンを開催するのも方法のひとつです。
顧客接点を新たに創出する場合、ノウハウを習得するまでに時間がかかるのが難点です。予算や人的リソースに余裕がなければ、次にご紹介する「顧客接点を拡大する方法」から先に試すと良いでしょう。
2. 顧客接点の拡大
顧客接点の拡大とは、既存の施策を拡張する形で接点を広げる方法です。
同じブランドの店舗を横展開するのが代表的な施策といえます。
この方法では次の2つの戦略が活用できます。
- 市場浸透戦略:同じマーケットに経営資源を集中して徐々に範囲を拡大する方法
- 市場開拓戦略:新規マーケットに進出してスピーディに接点を拡大する方法
顧客接点を創出する際に比べて、拡大する方法では既存のリソースやノウハウを活用できるため、よりスムーズに顧客接点を強化できます。
ただし、そのメリットが生まれるのは、あくまで既存の方法で成果をあげている場合のみです。顧客接点を拡大する以前に成果が悪ければ、損失が膨らむリスクがあるので注意が必要です。
3. O2Oマーケティング
O2O(Online To Offline)マーケティングとは、オンラインからオフラインへと消費活動を促進する方法です。
例えば、実店舗で使えるクーポンをメールマガジンで配信することで、オンラインからオフライン上の店舗へと来店を促せます。
実店舗での売上を向上させたい、または実店舗における顧客体験で満足度を高めたい場合に有効な施策です。
O2Oマーケティングを効果的に実施すれば、新規顧客の獲得や再来店率の向上に結び付くでしょう。
一方、来店を促すためにクーポンの配布や値引きの提案を行うケースが多いため、顧客単価を上げるための別の施策を考える必要があります。
4. OMOマーケティング
OMO(Online Merges with Offline)マーケティングとは、顧客に最適な商品やサービスを提供する目的で、オンラインとオフラインを融合させる方法です。
店舗カードとオンライン会員の顧客データを統合し、よりパーソナライズ化された提案を行う方法はOMOマーケティングの一環だといえます。
O2Oマーケティングの場合は、あくまで実店舗のパフォーマンスを向上させるためにデジタル接点を活用しますが、OMOマーケティングにはオンラインとオフラインに垣根がありません。
オンラインとオフラインをうまく統合させることで、顧客のニーズを的確に読み取り、顧客満足度やLTVを最大化できるメリットが生まれます。
ただし、成果が現れるまでに時間がかかりやすい点には注意が必要です。短期的な施策も念頭に入れたうえで粘り強く継続する必要があるでしょう。
顧客接点を強化した成功企業の事例
顧客接点を強化する際は、ベンチマークとなる企業を参考にすることで、具体的な施策の内容をイメージしやすくなります。
ここでは、ダイソーと明治安田生命保険の成功事例をご紹介します。
ダイソー
全国で100円ショップを展開するダイソーは、O2Oマーケティングの施策の一環として顧客接点の強化をはかっています。
顧客接点として新たに創出したのはLINEの企業用アカウントです。本来、O2Oマーケティングでは、オンライン上でクーポンを配布して実店舗への来店を促すのが一般的です。
一方のダイソーはあえてクーポンを配布せず、商品情報の提供のみに絞り込みます。
具体的には、LINEの公式アカウントに登録すると、ダイソーから定期的に新商品の入荷情報やお得な使い方に関するメッセージが届く仕組みです。
その結果、店頭への商品に関する問い合わせ件数や、実店舗で商品をチェックする消費者の数が増加しました。
クーポン配布や値引きを行わずに実店舗への集客が成功したことで、顧客単価の維持につながっています。
明治安田生命保険
明治安田生命保険は、既存の顧客接点に利便性を付与して強化をはかりました。
顧客専用Webサイト「MYほけんページ」の操作性を高めるため、「Techtouch(テックタッチ)」という操作ガイドを表示させるサービスを実装しています。
Techtouchを導入したことで、ログイン画面のパスワード欄をマウスクリックすると、ポップアップ型のガイド文章が表示されるようになりました。
顧客がパスワードを忘れた場合、ガイドに表示されているリンクをクリックするだけで簡単に再設定を行えるため、利便性の向上につながります。
こうした小さな取り組みが顧客満足度の向上に寄与するケースも珍しくありません。既存の顧客接点に工夫を凝らした好事例だといえるでしょう。
まとめ:顧客接点を強化して満足度を高めよう
Webやスマートフォンの普及により、顧客と接する機会が多様化する現代において、顧客接点の強化は企業にとって喫緊の課題だといえます。
特に、これまでアナログ接点の拡充を重視してきた企業にとっては、デジタル接点を強化する対策が急務でしょう。
とはいえ、企業が活用できる顧客接点の種類は時代の変化とともに増えています。さまざまな選択肢があるからこそ、顧客接点を強化する目的を明確にし、その内容に合う適切な施策を考えることが大切です。
効果的に顧客接点を強化できれば顧客満足度や売上の向上が見込めます。今回ご紹介した具体策や手順を参考に、顧客接点の強化をはかりましょう。
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この記事を書いたライター
山田理絵
不動産営業を経験後、アディッシュにて、カスタマーサクセス関連商材のインサイドセールスを担当し、初期接点から課題の顕在化をし機会創出を行う。 趣味はポールダンスと料理。