チャーンレート(解約率)改善のために押さえておきたい顧客行動やシグナル
武田龍哉
2024.09.30
カスタマーサクセスにとって重要な指標の一つであるチャーンレート。特に、SaaS企業においてはLTVの低下につながるため、チャーンレートをいかに低く抑えるかが重要な課題です。 本記事では、チャーンに繋がる可能性がある顧客行動やシグナルについて、対応策と合わせて解説しています。チャーンレートの改善にぜひお役立てください。
チャーンレートとは?
チャーンレートとは「解約率」のことで、一定期間のうちに会社と取引を中止した顧客の割合を指します。
チャーンレートを測定する頻度は非常に多岐にわたり、1年、半年、四半期、1カ月などビジネスやサービスによって最適な測定期間が異なります。業種によっては毎日測定している企業も存在しています。
チャーンに繋がる可能性がある顧客行動やシグナル
利用頻度の低下
顧客がサービスをあまり使わなくなることは、非常に重要なシグナルです。
特にSaaS製品の場合、利用が習慣化されている顧客ほど、継続的にサービスを使用し続ける可能性が高いです。利用頻度が減少する理由としては、サービスが顧客の期待に応えられていない、機能の使い方がわからない、もしくは顧客のビジネスニーズが変化したという可能性があります。この状態が放置されると、顧客は徐々に価値を感じなくなり、最終的にサービスを解約するリスクが高まります。
対応策
利用頻度のモニタリングを強化し、減少傾向が見られた顧客には、積極的にフォローアップの連絡を行います。例えば、「この機能を活用しているでしょうか?」という提案型のメールやチュートリアル動画を提供し、顧客がサービスの価値を再認識できるように支援します。また、機能に関するウェビナーやトレーニングセッションを実施することで、顧客がサービスを最大限に活用できるようサポートすることが効果的です。
サポートへの問い合わせ頻度の増加
サポートへの問い合わせが急増することは、顧客がサービスに何らかの問題を感じているサインです。特に、同じ問題やバグについて繰り返し問い合わせる場合、根本的な解決がされていない可能性が高く、その顧客は次第にフラストレーションを溜め込んでいきます。また、サポート対応が遅い場合や不十分である場合は、顧客の信頼を失い、他のサービスに移行するリスクが高まります。
対応策
顧客サポートのプロセスを見直し、問い合わせに迅速かつ的確に対応できる体制を整えます。加えて、問い合わせ内容を定期的に分析し、よくある質問や問題に対しては、FAQや自動化されたヘルプ機能を強化することが重要です。問題解決までのスピードを上げるため、プロアクティブなサポート(たとえば、チャットボットやインアプリ通知によるサポート)も活用し、顧客が抱える不満を迅速に解消します。
長期間の非アクティブ状態
長期間サービスを利用しない顧客は、サービスへの関心を失ったか、あるいは他のツールを使用し始めた可能性があります。特に、新規顧客がサインアップ後すぐに非アクティブになる場合は、オンボーディングプロセスに問題があるか、顧客の期待に答えられていない可能性があります。このような非アクティブ状態は、早期に対応しないと離脱に直結します。
対応策
非アクティブな顧客を見逃さないよう、定期的に利用状況を監視し、長期間非アクティブな顧客にはターゲットを絞った再利用を促す施策を実施しましょう。例えば、「〇〇機能を使ってビジネスをさらに強化しましょう」といった具体的な提案を含むメールを送信し、顧客に興味を再喚起します。また、期間限定のプロモーションや特典を提供し、サービスの再利用を促進することも効果的です。
契約更新の遅延や未確認
顧客が契約更新を迷っている場合、離脱のリスクが高まっている兆候です。特に自動更新ではないサブスクリプションモデルの場合、顧客が更新手続きを行わないのは、サービスに満足していないか、他のオプションを検討していることが考えられます。多くの場合、顧客が契約更新を行わないのは、価格や価値に不満があるからです。
対応策
更新期日が近づいた顧客に対しては、事前にリマインダーを送ると同時に、更新手続きを簡略化するための方法を提供します。また、特典や割引を付けることで、更新を促進します。さらに、顧客が更新を迷う理由をヒアリングし、適切な解決策を提案することで、離脱のリスクを低減させます。
価格に関する不満の表明
顧客がコストに対して不満を感じている場合、サービスの価値が価格に見合わないと考えている可能性があります。特に競合他社のサービスが安価で提供されている場合、顧客が乗り換えを検討することも少なくありません。このシグナルは、顧客のROI(投資対効果)を最大化するためのサポートが必要であることを示しています。
対応策
まず、顧客にサービスが提供する価値を再認識してもらうためのアクションを取ります。これには、ROIを視覚化したレポートや、具体的な成功事例を提供することが含まれます。また、価格に柔軟性を持たせるため、使用頻度やニーズに応じたカスタマイズプランを用意し、顧客の支払い負担を軽減することで、顧客満足度を高め、離脱を防ぎます。
機能の不満や競合比較の意見
顧客がサービスの機能に対して不満を持っている、または競合製品との機能比較を行っている場合、顧客がサービスの価値に疑問を持ち始めている可能性があります。競合製品がより優れた機能や価格を提供していると顧客が感じると、乗り換えが起こりやすくなります。
対応策
顧客からのフィードバックを迅速に収集し、不満点や改善要望をプロダクトチームに伝え、機能の改善や追加を検討します。特に重要な顧客には、機能改善の進捗状況を逐一報告し、対応中であることを知らせると効果的です。また、競合との差別化を強調し、自社製品が提供する独自の価値を顧客に認識させるためのマーケティング活動を強化します。
ネガティブなフィードバックやNPSスコアの低下
顧客がネガティブなフィードバックを提供したり、NPS(ネット・プロモーター・スコア)が低下している場合、サービスに対する満足度が低下していることを示します。特に、顧客が自発的に不満を表明する場合、そのフラストレーションは大きい可能性があります。これらのシグナルは、チャーンのリスクが高い顧客を識別するための重要な指標です。
対応策
ネガティブなフィードバックを迅速に分析し、個別に対応することで、顧客の不満を解消します。また、NPSが低下している場合は、詳細な調査を実施し、顧客が不満を抱く具体的な理由を特定します。顧客に対しては、改善策を提案し、積極的に問題を解決する姿勢を示すことで、満足度の向上を図ります。さらに、定期的にNPSや満足度調査を実施し、問題が顕在化する前に対応策を講じることも重要です。
顧客の役職や担当者の変更
SaaSの利用決定者や主要な担当者が会社内で変更された場合、新しい担当者が既存のサービスに対して興味や理解を持たない可能性があります。特に、新しい担当者が以前から別のツールを使い慣れている場合、乗り換えのリスクが高まります。また、新しい担当者がサービスのメリットを理解していない場合、契約更新に対して消極的になることがあります。
対応策
顧客の担当者変更があった際には、速やかに連絡を取り、新しい担当者に対してサービスの価値や使い方を丁寧に説明する機会を設けます。オンボーディングやトレーニングセッションを再度提供し、スムーズに業務に導入できるよう支援します。さらに、顧客との関係を再構築し、長期的なパートナーシップを提案することが有効です。
カスタマーサクセス担当とのコミュニケーション頻度の低下
カスタマーサクセス担当者との定期的なミーティングやコミュニケーションが減少した場合、顧客がサービスの活用に積極的でないか、サポートを必要としていない可能性があります。コミュニケーションが途絶えると、顧客のニーズや不満に気付く機会を失い、結果的に離脱のリスクが高まります。
対応策
顧客との定期的なコミュニケーションを維持し、顧客のニーズや課題を継続的に把握することが重要です。特にコミュニケーションが減少した場合は、顧客に連絡を取り、最近の利用状況やサポートが必要かどうかを確認します。顧客のビジネスに適した提案を行い、カスタマイズされたサポートを提供することで、関係を強化します。
アカウントの複数ユーザーによる利用減少
SaaSサービスが複数のチームメンバーや部門で利用されている場合、特定のユーザーグループや部門がサービスの利用を減らすことは、チーム全体でサービスの価値が低下している兆候です。特に主要な利用者が使用を控える場合、他のメンバーにも影響が広がり、最終的には契約全体が見直される可能性があります。
対応策
各ユーザーグループの利用状況をモニタリングし、特定の部門やグループで利用が減少している場合は、早期にフォローアップします。チーム全体に対して再度のトレーニングセッションや、サービスを最大限に活用できる方法を提案します。また、利用減少の原因をヒアリングし、ユーザーのニーズに応じた機能やサポートを提供することで、全体的なエンゲージメントを回復させます。
契約プランのダウングレードのリクエスト
顧客が現在の契約プランから、より安価なプランへの変更をリクエストする場合、サービスの価値を以前ほど感じていない可能性があります。これにより、最終的にはさらにコスト削減を図って完全に解約を検討するケースも考えられます。ダウングレードは一時的な対策であり、顧客が離脱する前兆として捉えるべきです。
対応策
ダウングレードのリクエストを受けた際には、顧客が抱える問題点や不満点を詳しくヒアリングし、その解決策を提案します。また、顧客に対して現在のプランで得られる利点や、サービスのさらなる活用方法を再提案します。特典を付けたプロモーションやプランのカスタマイズ提案を行うことで、顧客が満足できる契約内容に調整することが重要です。
競合他社の新機能発表後の反応
競合他社が新しい機能や革新的なサービスを発表した後、顧客がその機能について話題にする場合、競合の製品に強い関心を持っている可能性があります。特に、自社製品で対応できていないニーズに対して競合が応えている場合、顧客の離脱リスクが高まります。
対応策
競合の動向をモニタリングし、顧客からのフィードバックを即座に収集する体制を整えます。自社の製品開発チームにフィードバックを共有し、機能強化や改善に繋げるとともに、競合との差別化ポイントを明確にしたマーケティング資料を顧客に提供します。また、重要顧客には個別に競合比較の機会を設け、自社サービスの価値を改めて伝えることが有効です。
まとめ
これらの顧客行動やシグナルを早期にキャッチし、適切に対応することは、チャーンレート改善の重要な鍵です。顧客がサービスに不満や疑問を感じ始める兆候を見逃さず、迅速かつ丁寧に対応することで、顧客満足度を向上させ、離脱を防ぐことが可能です。
特に、プロアクティブなカスタマーサポートやオンボーディングの強化、競合分析を通じた価値提案の再確認が効果的です。継続的なモニタリングと顧客へのアプローチでチャーンレートの低減に繋げていきましょう。
この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。