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「対応のプロ」から「設計のプロ」へ ── 属人化から脱却し、チームで成果を生む“仕組みCS”のススメ

神対応の先に、何がある?

「顧客が困っている?すぐ対応します!」「定例の準備?全部一人でやります!」


――カスタマーサクセス(以下、CS)歴も3年を超え、顧客との関係が深まるにつれて、“なんとなく”対応できてしまう。チーム内でも「この顧客は◯◯さんじゃないと」と頼られる場面が増えてくる。そんな経験、ありませんか?


それは一見“頼られている証”のように見えますが、実は危険信号でもあります。


属人的な対応は、担当者本人が「休めない」、「引き継げない」、「成長できない」という三重苦をもたらします。休日でも顧客からの連絡が気になって休まらない、急な退職や異動で、引き継ぎに途方もない時間がかかる、そしてルーティンワークに追われ、新しい知識やスキルを学ぶ時間が取れない――。そんな状況に陥るかもしれません。


顧客側から見ると、特定の担当者にしか解決できない状態は、サービスの安定性に不安を与える要因になります。結果として、チーム全体の生産性が低下し、組織としての成長を妨げることにも繋がります。顧客の期待が多様化し、ビジネスの変化が加速する現代において、一人の「神対応」だけでは、もはや対応しきれない時代が来ています。


本記事では、CS中堅層が一度は直面する“属人CS”の壁を乗り越えるために、業務の仕組み化によって、再現性ある価値提供を実現する「仕組みCS」への移行ステップをご紹介します。

 

ステップ1:「全部自分でやる」は卒業しよう

定例MTGの構成、アップセルのトリガー管理、顧客ごとの対応履歴――あなたが“無意識に”やっていることほど、チームの資産になっていないことに注意しましょう。


まずは、自分の業務を棚卸ししてみてください。

 

  • 自分しか知らないSlack DMでのやりとり
  • 顧客の「この発言が危ないな」という違和感感知能力(例:具体的な兆候を言語化し、チェックリストやアラート基準として共有する)
  • 毎月の定例アジェンダを“その場で組み立ててる”癖(例:パターン化したアジェンダのテンプレートを作成し、共有する)

 

これらはCSスキルの一部ですが、同時に“仕組みに落とせる”要素でもあります。あなたの頭の中にある貴重な知見を、チームの共通財産に変える第一歩です。

 

ステップ2:「外注できない仕事」と「再利用できる仕事」を分ける


プロセス最適化の第一歩は、業務の分類です。以下のような視点で仕分けしてみましょう。

分類 内容 対応方針
外注不可 ・顧客の特殊課題の深掘り
・顧客のビジネスモデルに合わせた提案
・イレギュラーなトラブル対応における判断
・顧客の成功を導くための戦略立案
自分でやる・育成していく
再利用可能 ・定例構成
・アップセルトリガー
・課題分類・アラート設計
・新規オンボーディング時の初回説明会アジェンダ
・よくある質問とその回答集
・プロダクトのアップデート情報共有フォーマット
(例:Google スプレッドシートへのエクスポート
   Notionでのドキュメント化など)
テンプレ化・ナレッジ化

CSが“本当にやるべきこと”は、案外多くありません。習慣になっている業務の中に、「そろそろ仕組みに任せられること」が数多く存在します。本当に価値を生む業務に集中するためにも、この仕分けは不可欠です。

 

ステップ3:神対応より「普通にできる」を磨く

「CSのプロ=なんでも即対応できる人」――そう思っていませんか?


しかし本当にプロフェッショナルなCSとは「誰がやっても同じ品質で、顧客を満足させられる仕組みをつくれる人」です。

  • 定例のアジェンダをパターン別に持っている
  • Slack対応をカテゴリ別テンプレで返せる
  • アップセルの兆候が出たら、〇日以内に施策を打つルールを設けている


このように“普通にできる”対応を再現可能にすることが、CSの成熟であり、チーム全体のサービス品質を底上げすることにつながります。

 

ステップ4:ナレッジを“活きたプロセス”に変える

ナレッジ化というと、Wikiに情報を蓄積する作業と思われがちですが、重要なのは“運用の仕方”です。


ナレッジが使われないままだと、結局同じ問題に直面した人がまたゼロから対応することになり、非効率のループに陥ります。

  • テンプレの使いどころを共有会で紹介
  • よく使うドキュメントはSlackのショートカットやNotionのトップに配置
  • 新しいトラブルの対応履歴は「振り返り&汎用化」までがセット


ナレッジは、生きていてこそ意味があります。「書いた」で満足せず、「使われる」「改善される」プロセスにすることで、チームの知見が有機的に育っていきます。

 

ステップ5:仕組みで“向き合う余白”を取り戻す

最後に、仕組み化の最大のメリットは、「余白」が生まれることです。

  • 毎回考えずに済むから、顧客の話をちゃんと“聞ける”(その結果、顧客の潜在的なニーズを発見し、より深い課題解決に繋げられる)
  • イレギュラー対応に時間が回せる
  • チームで属人化せずに回せるから、CSの不在がリスクにならない


これは、顧客にとっても、CSチームにとっても、大きな安心につながります。ルーティンワークから解放されることで、あなたは顧客の真の課題と向き合う時間、そして自身のスキルアップのための時間(これにより、より高度な戦略的業務に挑戦できるようになり、個人のキャリアアップにも繋がる)を手に入れることができるのです。

 

おわりに:「仕組みがCSをプロにする」

仕組みの構築というのは地味かもしれません。でも、だからこそ意味がある。


プロセスの最適化とは、華やかさを競うのではなく、再現性と安定性を磨く作業です。
“自分がいないと無理”を卒業し、“自分が作った仕組みでチームが成果を出している”へ。


華やかさはないかもしれませんが、あなたが築き上げた仕組みは、チーム全体の生産性を飛躍的に高め、顧客への提供価値を最大化します。


例えば、「チーム全員が多様な顧客課題に対応できるようになり、顧客からの信頼が向上した」、「問い合わせ対応時間が30%削減され、本来注力すべきアップセル活動に時間を割けるようになりアップセル率が15%向上した」という成果も出せるはずです。


これは、一人のCS担当としてだけでなく、チームを支える存在としての揺るぎない誇りとなるはずです。


あなたのCS力は、対応力ではなく、まさに「設計力」で評価されるフェーズへと進んでいるのです。


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