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ハイタッチ支援で主導権を握るカスタマーサクセスの秘訣

カスタマーサクセスの現場では、企業やプロダクトの特性に応じてさまざまな支援スタイルが取られています。

なかでも日本の企業では、顧客との信頼関係や密なコミュニケーションを重視した「ハイタッチ型」のサポートが多く見られます。

ハイタッチでのカスタマーサクセスは、顧客ごとに状況や課題が異なるため、どのように関わるかによって支援の進み方に大きな差が出てきます。顧客に合わせて柔軟に対応できる一方で、担当者の姿勢や準備の質によって成果が大きく左右されるという難しさもあります。

 

主導権の有無が成果を分ける

特に違いが表れやすいのが、「主導権を握るカスタマーサクセス」と「そうでないカスタマーサクセス」のプロジェクトの進め方です。

 

主導権を握るカスタマーサクセスは、「いつまでにどうなっていたいか」というゴールを明確にし、そこから逆算して計画・対応を組み立てています。

 

 一方で、主導権を握れないカスタマーサクセスは、ゴールや期限が曖昧なまま、その場その場で対応を積み上げていくため、話がぶれたり、進捗が見えにくくなったりしがちです。

 

私が担当しているハイタッチ支援の現場でも、同じ環境・同じ顧客層であっても、担当カスタマーサクセスによってサポートの進み方や顧客のサービス活用度に大きな差があることに気づきました。

 

特に、主導権を握るカスタマーサクセスは、ミーティングや顧客対応の進行がスムーズで、顧客からの信頼も得やすいため、効率よくプロジェクトを進められています。

 

最近、複数のカスタマーサクセスが稼働するチームの中でその「差」をまざまざと実感しました。この記事では、私自身の実体験をもとに、主導権を握るカスタマーサクセスが実践しているミーティングでの工夫をご紹介します。


主導権を握るカスタマーサクセスが実践している6つのポイント

以下に、主導権を握るカスタマーサクセスが実践している具体的な工夫を6つのポイントに整理してご紹介します。

なお、⑤⑥はプロダクト活用に関する内容のため、プロダクト活用に関わらない方は①〜④を中心にご覧ください。


①ミーティング資料の事前準備が徹底されている

主導権を握るカスタマーサクセスは、ミーティングの流れを事前に細かくシミュレーションしています。

資料内には必要な画面キャプチャや説明資料だけでなく、当日使うリンクもすべてスライド内に埋め込み、ワンクリックで参照できる状態に整えています。


こうした準備によって、ミーティング中に「ちょっと待ってくださいね…」と資料を探す時間が一切なくなり、話の流れを止めずに進行できます。

結果として、無駄な間が生まれず、お客様の集中も途切れません。


実はこの「間を作らない」ことが、ミーティングの雰囲気作りにも大きく貢献しています。

リズムよく進むミーティングはお客様に安心感を与え、「この人に任せておけば大丈夫」という信頼の獲得にもつながります。


②仮説を立てた提案で、確認作業をスムーズに

主導権を握るカスタマーサクセスは、お客様の判断が必要な場面において「何を聞くべきか」だけでなく、「どう聞けば早く決まるか」まで考えています。

その鍵となるのが、「事前に仮説を立てて提案する姿勢」です。


たとえば、設定方法についてA案とB案で迷う場合、いきなり「どちらにしますか?」と聞くのではなく、事前に最適と思われる案を選び、こう提案します。


「AかBで迷いましたが、恐らくAが良さそうだったので、一旦Aで登録しておきました。いかがでしょうか?」


このように仮説ベースで“たたき台”を示すことで、お客様の判断も早くなり、実際にこの場面では「はい、それでOKです」と即答いただけました。


このように、仮説を立てて主体的に提案することが、ミーティングをスムーズに進めるための重要なポイントとなっています。

 

③コミュニケーションの使い分けが巧み

主導権を握るカスタマーサクセスは簡単な確認事項はテキストチャットで事前に済ませ、ミーティングでは「会話が必要な難しい確認」や「お客様の考えを聞く時間」に集中しています。

チャットは手軽に送れる反面、認識のズレが起きやすく、逆にミーティングは相互理解が深まる一方で時間コストがかかります。

このようなメリット・デメリットを意識した使い分けによって、ミーティングの時間を最大限に活かし、効率よく話を進めています。


④次回ミーティングのテーマを事前に伝える

こうしてスムーズな進行ができると、全体の進捗度合いも明確なので、次回ミーティングのテーマも事前に伝えることができ、お客様も準備をして次回ミーティングに臨んでくださることが多い印象です。

進捗度合いも明確になるとお客様も準備の上で参加いただけるため、「いつまでにこの資料を用意しておこう」と、自発的に考えて動いてくださっています。


⑤余ったミーティング時間を「操作レクチャー」に活用

主導権を握るカスタマーサクセスは、確認事項が少なくミーティングの時間が予定より余ることがしばしばあります。

その余った時間を活用し、サービスの操作レクチャーやお困りごとのヒアリングを行うなど、顧客にとって価値のある時間に変えています。

レクチャー内容は資料として事前に準備し、お客様が後から確認できる環境も整えています。

こうした取り組みによって、問い合わせ件数の減少や顧客の自立促進といった好循環が生まれています。


⑥お客様の利用機能が増え、活用度が高まる

こうした日々の準備や丁寧な対応の積み重ねが、顧客の「もっと機能を使いこなそう」という意欲を引き出します。

結果として、担当する顧客はどんどん新しい機能に挑戦し、製品の価値を最大限に引き出している印象です。


パフォーマンスが低いケースにみられる課題

一方で、支援がスムーズに進まないケースでは、チャットで済ませられるような簡単な確認もミーティング中に発生し、質疑応答で多くの時間を使ってしまうことがあります。

 

そしてミーティングの途中にも「えーと、ちょっと待ってくださいね…」と資料を探す場面が続き、気がつけば1時間のミーティングが「確認だけで終わってしまった」という状態になります。終了後にはお客様から「スケジュールが遅延していますが大丈夫ですか?」と心配される言葉が出てしまうこともあります。

 

こうしたミーティングでは「進めるべきこと」が進まず、お客様の中にも「次回は本当に進むのだろうか?」という不安が生まれて、信頼関係にも影響を及ぼしかねません。


見過ごされた違和感と“作業屋”化のリスク

さらに、確認に時間を取られすぎると、本来拾うべき小さな違和感に目が行き届かなくなります。

実際に、ある案件で「ここの動作が想定とは異なるかもしれない」と感じたものの、資料が整理されておらず深掘りする余裕もなく、流してしまったことがありました。

 

結果的に、この“違和感”が大きな仕様ミスの見逃しであることが後から発覚し、「ここ、最初に気づいてなかったんですか?」とクライアントから指摘を受け、関係性の修復に時間がかかってしまいました。

 

また、こうした場当たり的な対応が続くと、いつの間にか「ただ設定を代行してくれる人=作業屋」として見られてしまうリスクもあります。

 

カスタマーサクセスの介在価値が見えなくなると「この人である必要があるのか?」という視点で見られてしまい、契約継続にも影響する可能性があると感じています。


私自身の取り組みとこれから

私も「主導権を握るカスタマーサクセス」になるべく、以下の工夫を継続しています。

    •  ミーティングの流れを事前に想定し、当日使用する資料やリンクを準備してスムーズに切り替えられるようにする
    •  お客様の選択肢を想定し、仮説ベースで提案を行う
    •  簡単な確認事項はテキストで事前に解消し、MTGでは会話に集中できるようにする
    •  MTGのアジェンダを事前に共有し、お客様の事前準備を促す

これらはすべて、「段取り力」や「進める力」といった再現性のあるスキルだと感じています。


おわりに

カスタマーサクセスにおいて、主導権を握ってプロジェクトを進めることは、単に能力の問題ではなく、「準備」と「コミュニケーションの使い分け」の積み重ねで実現可能なことです。

 

ちょっとした工夫や事前準備が、お客様の自立や活用度の向上につながり、結果的にカスタマーサクセスもお客様も双方が成長できる好循環を生み出します。

 

あなたの現場でも、まずは小さな一歩から試してみてはいかがでしょうか。


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