クロスセルとは?販売で有効なマーケティング手法│実行するメリットと手順、事例を解説
山田理絵
2024.09.24
クロスセルは、顧客が商品を購入する際、他の商品などを一緒に購入してもらうことを指します。新規顧客の獲得は多くの費用と手間がかかります。クロスセルを活用すれば、顧客を増やさずに、顧客単価を上げることができ、売上の増加につながります。
「そもそもクロスセルとは?」
「クロスセルを活用するメリットは?」
「クロスセルってどう取り入れれば良い?」
本記事では、クロスセルを現場で活用できるよう、メリット・デメリットから具体的な提案までの手順を解説します。顧客単価を高めさせ、売上を向上させたい方はぜひ参考にしてください。
クロスセルマーケティングの概要
クロスセルの基本的な説明から、混同されがちなダウンセル・アップセルとの違いを解説します。
- クロスセルとは?
- クロスセルの重要性
- ダウンセル・アップセルとの違い
それぞれ見ていきましょう。
クロスセルとは?
クロスセルとは、顧客が購入する商品にあわせて、関連する製品を購入してもらうよう促進することです。例えばスマートフォンを購入した際、スマートフォンケースや液晶カバーなどを併せて勧められた経験はないでしょうか?
また、オンラインショップで買い物をする際、関連商品をおすすめしてくるレコメンド機能もクロスセルです。関連商品を同時に購入してもらうことで、顧客単価が増加します。新規集客にコストをかけることなく売上の増加を狙えることから、多くの企業が導入しているマーケティング手法です。
クロスセルの重要性
クロスセルを活用するとLTV(Life Time Value)の上昇が期待できます。LTVとは、顧客が特定のブランド製品の購入を始めてから、全く購入しなくなるまで、つまり生涯で、どれだけの利益をもたらすかを算出したものです。
LTV=平均購入単価 × 平均購入回数 × 利益率
関連製品をあわせて売ることで、平均購入単価が増加。また、他にも魅力的な製品があることを伝えられます。結果、顧客のファン化や購入回数の増加につながり、LTVが向上することが期待できます。
ダウンセル・アップセルとクロスセルの違い
クロスセルに関連する手法として、ダウンセル・アップセルがあります。ダウンセルとは、下位モデルの低価格品を販売する手法です。例えば、iPhone12ではなく、価格の抑えられたiPhoneSEを販売するイメージです。
販売単価を下げてでも「とにかく何かを買ってほしい」といった場合に使います。当然ですが、価格を下げる分利益も下がります。
一方、アップセルは、ダウンセルの逆で上位モデルをおすすめする手法です。「iPhoneSEをもとめる顧客に、iPhone12を提案する」、「現在の月額プランよりワンランク上のプランを提案する」などが該当します。成功すれば大きな効果が期待できます。ただし、顧客がメリットを感じなければただの押し売りになってしまうので、提案のタイミングや内容には注意が必要です。
クロスセルを実行する3つのメリット
クロスセルを実行するメリットは3つあります。
- 顧客単価増加
- リピーター増加
- 営業の効率化
実際にクロスセルを実行する場合のメリットと注意点をあわせて解説していきます。
顧客単価増加
本来販売したい商品に加えて、関連商品を追加で販売するので、顧客単価の向上が目的のクロスセル。新規獲得のための広告費等のマーケティングコストと比較すると、必要経費も少額になるケースが多いです。そのため、獲得した売上に対して原価があまり引かれることなく、会社の利益につながりやすいのです。販売促進に向けて費用負担が大きい場合など、クロスセルは有効な手段となります。
リピーター増加
リピーター増加が見込めることもクロスセルのメリットです。おすすめする関連商品が、顧客にとって利益のあるものだと、単体で製品を買うよりも顧客満足度が高くなります。結果として、ブランドへの信頼度やイメージが向上し、リピーターの増加につながるでしょう。
営業の効率化
クロスセルは、売上増加だけでなく営業効率をアップさせることも可能です。通常であれば、それぞれの商材ごとに営業をする必要がありますが、クロスセルを行う場合、信頼構築を最初から行う必要はありません。もし提案したものが成約に至らなかったとしても、提案した商材を認知させることができるので、今後の売り上げにつながる可能性もあります。
クロスセルを実行するための3つの手順
ここからは、クロスセルを実際に実行する際の手順の一例を解説します。
- LWP分析
- 関連商品の設計
- 顧客選定とアクション
むやみに関連商材を提案しても高い効果は望めません。売上を最大化するためには分析や設計をする必要があります。それぞれどのように行うのか、具体的に見ていきましょう。
手順1. LWP分析
LWPとは、List(顧客リスト)・What(行動内容)・Pace(頻度)の頭文字をとった思考のフレームワークです。3つの項目、それぞれを整理する必要があります。
List(顧客リスト)
まずは対象となり得る顧客リストを漏れなく洗い出しましょう。クロスセルの対象者を漏れなく抽出することが目的です。
What(行動内容)
次に、顧客との接触内容を洗い出しましょう。具体的には以下のようなものです。
- 現在のアプローチに対する顧客の反応
- 直近数か月の購買行動
- 顧客が抱えている課題
Pace(頻度)
最後に、顧客との接触頻度の抽出をしましょう。セールス担当者がどれだけの頻度で顧客と接し、リアクションを得られているかを数値化します。
ここまで洗い出しができたら、マッピングをしましょう。マッピングは4象限で実施していきます。
それぞれのカテゴリーの定義は以下の通りで、Aの優先度が一番高いです。
A:取引実績が多く拡大余地も大きい
B:取引実績は少ないが拡大余地が大きい(開拓営業先候補)
C:取引実績は多いが拡大余地が少ない(現状維持が最優先)
D:取引実績も拡大余地も少ない(ビジネスの余地が見込めない顧客)
List(顧客リスト)に対し、What(行動内容)・Pace(頻度)で洗い出した要素を加味して、4つに分類していきます。ここまですると、どの層にアプローチをするべきかが明確になります。
手順2. 関連商品の設計
次はクロスセルで販売する関連商品の設計です。関連性の低い商品を売っても、顧客の興味を惹くことはできず、売上アップにつながりません。ユーザーのニーズに沿った商品プランの設計が重要です。どのような課題を解決したいと思っているのか、ヒアリングをして顧客の潜在ニーズを分析した上で、設計しましょう。
手順3. 顧客選定とアクション
LWPのマッピング、関連商品の設計ができたらアクションに移っていきましょう。先ほどマッピングしたAから攻めつつ、Bで開拓を狙うのが王道です。ここまでの手順を実行すれば、以下のような問題を未然に防げます。
- やみくもな営業活動で時間を無駄にする
- 引き合いの確率が落ちる
複雑な手順に見えますが、これが最短で効率の良いやり方です。ぜひ実践してみてください。
マーケティングにおいてクロスセルを成功させるためのコツ
クロスセルを成功させるうえで、役立つコツを2つご紹介します。
- 価格設定にはお得感を
- 顧客によって設計を調整する
扱う商材によって、使えるかどうかが変わる点もありますが、はまれば成功率が格段に上がるはずです。それぞれ見ていきましょう。
価格設定にはお得感を
クロスセル成功には、「お得感」が必要です。例えば、PCとマウスをセットで買ってもらった場合は〇%OFF、といったセット割。シンプルな方法ではありますが、顧客にお得だと感じてもらえる有効な方法です。ただし、割引価格の設定は慎重に行う必要があります。またブランディング戦略によっても変わってくるため、一概に価格を下げれば良いという訳ではありません。
顧客によって設計を調整する
もう一つは、顧客にあわせた設計の調整です。先ほどのクロスセル実行手順で洗い出した4象限を思い出してください。どこの顧客に対する施策かによっても、提案タイミングや、価格、提案の仕方が変わってきます。
クロスセルマーケティングの成功事例2選
最後に、クロスセルマーケティングの成功事例を2つご紹介します。
- マクドナルド
- Amazon
それぞれ見ていきましょう。
事例1.マクドナルド
マクドナルドでは、クロスセルやアップセルが活用されています。
クロスセル
ハンバーガーを注文した際に、「お飲み物はいかがでしょうか?」と聞かれたことがある人も多いのではないでしょうか?この一言が正にクロスセルです。セットメニューも広い意味で見るとクロスセルといえます。セットにすると割引が効くクーポンなども、クロスセルの効果を上げるためのコツです。
アップセル
また、ポテトを注文した際、「+50円でLサイズにできますよ」という提案はアップセルです。
事例2.Amazon
Amazonもクロスセルを有効に活用している企業です。欲しいものをカートに入れたり、クリックをすると、「関連製品」や「よく一緒に購入されている商品」としてレコメンドされます。これがクロスセルです。
こちらは身近で想像がつきやすいのではないでしょうか?あらためてAmazonの公式サイトも見てみると学びがあります。このように、普段意識していないけれども、当たり前に行われているのがクロスセルです。
効果的なクロスセル施策を実行しマーケティングの効果を高めよう
クロスセルとは、顧客が購入する商品にあわせて、関連する製品を購入してもらうよう促進することです。いたって普通のマーケティング戦略ですが、効果的に実施するには分析が必要不可欠です。
本記事で紹介したクロスセルの手順を参考に、顧客を分析し、効果の高いクロスセルで売上を向上させましょう。早速クロスセル戦略を自社商品で実施してみてください。
この記事を書いたライター
山田理絵
不動産営業を経験後、アディッシュにて、カスタマーサクセス関連商材のインサイドセールスを担当し、初期接点から課題の顕在化をし機会創出を行う。 趣味はポールダンスと料理。