クロスセル戦略とは?メリットや成功のポイントを解説
クロスセルを行うことで、顧客により多くの商品やサービスを買ってもらい、企業の売り上げを増やすことが可能です。クロスセルを成功させるためには、顧客分析が必要です。本記事では、クロスセル戦略のメリットやデメリット・クロスセル戦略の最適なタイミング・成功のポイントを解説します。クロスセル戦略に不安を抱えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
クロスセルとは?
クロスセルとは、ある商品やサービスを購入する際に、別の商品やサービスを一緒に買ってもらう販売方法です。クロスセルの目的は、顧客により多くの商品やサービスを買ってもらい、企業の売り上げを増やすことです。クロスセルを実施するためには、顧客のニーズを正確に理解しなければなりません。その上で、お客様が関心を持ちそうな商品やサービスを提案することで、より効果的なクロスセルが実現できます。
クロスセルとアップセルの違い
クロスセルは、既に購入された商品やサービスとは別のものを提案することで、顧客により多くのものを買ってもらうことを目的とします。一方、アップセルは、既に購入されたものと関係のある、上位の商品や料金プランを提案する販売手法です。クロスセルは既に購入されたものとは別の商品やサービスを提案し、アップセルは既に購入されたものと関係のあるより上位なものを提案する点が異なります。
クロスセルとダウンセルの違い
ダウンセルとは、既に購入されたものよりも安価なものを提案する販売手法です。せっかくご契約いただいたのに、なぜ価格を下げることを提案するのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。ダウンセルを提案するケースは、既に購入されたものが顧客にとって過剰であった場合です。顧客が「こんなたくさん機能は不要だから、求める機能だけを揃えたより安価な別のものに乗り換えよう」というような場合に、既に購入されたものよりも安価なものもあることを伝えて乗り換えを防ぐためにダウンセルを行います。
クロスセル戦略を実施する4つのメリット
クロスセル戦略を実施するメリットを4つ紹介します。
- リピーターを確保しやすい
- 新規顧客を無理に開拓する必要がなくなる
- 収益性を向上できる
- 単体で売れにくい商品が売れやすい
クロスセル戦略を実施する際の参考にしてください。
リピーターを確保しやすい
クロスセル戦略は、リピーターを確保しやすい点がメリットです。クロスセル戦略を行うことで、顧客が新しい製品やサービスを購入する機会が増え、企業の製品に対して関心を持ちやすくなります。例えば、スマートフォンを購入する顧客に対して、スマートウォッチやヘッドフォンなどの周辺機器を推奨できます。新しい製品に触れることで、企業に関心を持ち、顧客はリピーターになる可能性が高いです。
新規顧客を無理に開拓する必要がなくなる
クロスセル戦略が成功すると、客単価が上がるため、新規顧客を無理に取りに行く必要がなくなります。クロスセル戦略を行うときに、顧客の満足感を上げることが条件です。顧客が企業に対して高い評価を持つことで、自社の製品を購入してくるようになります。例えば、自動車メーカーが顧客に車両購入時にオプションとして提供するカスタマイズパッケージや保険商品を通じて、顧客の満足度を向上できます。クロスセル戦略を行って、顧客を満足させることで、新規顧客を無理に開拓する必要がなくなるでしょう。
収益性を向上できる
クロスセル戦略を取ることで、1人のお客様が購入する商品の金額が上がるため、収益性を向上できるというメリットがあります。上で説明した「新規開拓」とも関わりがありますが、新規でお客様を獲得しようと思うとコストがかかります。リードを獲得するためのマーケティング費用や、受注するまでの商談の過程でセールスの人件費や時間が必要になります。一方でクロスセル戦略を取ると、もちろん新規は必要ですが必要以上にパワーをかける必要がなくなります。既存顧客はすでに自社のことやものを知っていてくれており、また自社としても顧客のことを理解しているため、新規獲得と比較すると受注までにかかるコストを縮小できる可能性があります。
単体で売れにくい商品が売れやすい
クロスセル戦略では、単品で売りにくい商品を提案しやすいです。一度商品の購入を決めている顧客に対して、追加提案をすることで購入してもらいやすくなります。例えば、メガネのレンズや付属品についても、メガネ本体を買うときに一緒におすすめすると、購入してもらえる可能性が高いです。単体で売れにくい商品でも、セットで提案することで売れることがあるため、クロスセル戦略を実施しましょう。
クロスセル戦略のデメリット2選
クロスセル戦略のデメリットを2つ紹介します。
- 押し売りされたと感じる
- 提案に失敗すると客離れにつながる
クロスセル戦略に失敗すると、売上の向上ができなくなるため、デメリットを理解しておきましょう。
押し売りされたと感じる
クロスセル戦略は、顧客が購入する商品とは別に関連商品を進めるため、押し売りされたと感じる顧客がいる可能性があります。クロスセル戦略は、顧客に関連する商品やサービスを提供することで、売上を増やすことを目的としています。しかし、顧客にとって、提案された関連商品は必要ないかもしれません。必要ない商品を提案された場合、顧客は押し売りされたと感じる可能性が高いです。クロスセル戦略は、企業にとって利益を上げるための戦略ですが、顧客が押し売りされたと感じることがあるため注意が必要です。
提案に失敗すると客離れにつながる
クロスセル戦略を実施する企業は、提案に失敗すると顧客が離れてしまう可能性があります。クロスセル戦略では、企業が顧客に関連する商品やサービスを提案する必要があります。顧客が提案された商品やサービスを必要としていない場合、企業に対していい印象を持ちません。また、関連商品を進められることで、予算をオーバーするようなこと自体が起こり、購入自体ができなくなるかもしれません。クロスセル戦略を実施する企業は、提案に失敗しないように、顧客のニーズを十分に理解しなければなりません。顧客にニーズにあった商品の提案を行い、顧客離れにつながらない工夫が求められます。
クロスセル戦略の最適なタイミングとは?
クロスセル戦略に最適なタイミングを「toB」「toC」向けにわけて解説します。toBとtoCでは、顧客のニーズや提案するタイミングが異なるため、適切なタイミングで行うことが大切です。クロスセル戦略の最適なタイミングを掴んで、売上を上げましょう。
toBの最適なタイミング
クロスセル戦略をtoB向けに行うときの最適なタイミングは下記の3つです。
- 契約更新のタイミング
- 予算捻出のタイミング
- 課題が判明したタイミング
上記3つの中でもクロスセルが成功するタイミングは、契約更新のタイミングが多い傾向にあります。契約更新のときに、今まで実施してきた戦略を振り返り、利益があったかどうかを判断します。企業が利益を向上できたと感じて満足している場合、クロスセル戦略の提案は成功しやすいです。しかし、企業は予算捻出のタイミングで契約するかどうかを決めるため、予算を考えるタイミングで行う必要もあります。顧客に満足してもらう必要があるため、顧客の課題を発見し解決することも行いましょう。
toCの最適なタイミング
クロスセルの適切なタイミングとは、商品の購入を決めて財布のひもがゆるんでいるときです。顧客は、購入の決断をした際に、購買意欲が高くなる傾向にあります。Amazonが商品の購入を進めていく途中に関連商品をおすすめするのはこのためです。また、ファーストフード店で商品を購入する際に、サイズの変更やサイドメニューを提案することもこれに当てはまります。顧客がどのタイミングで購入してくれるのかを判断しましょう。
クロスセル戦略を実践する4つの手順
クロスセル戦略を実践する手順は下記の4つです。
- 既存顧客のデータ分析
- 販促のシナリオを設計
- 施策の実行
- 効果検証と改善
クロスセル戦略を適切な手順で進めることで、成功確率が格段に向上します。
既存顧客のデータを分析
1つ目の手順は、既存顧客のデータを分析することです。既存顧客のデータを分析することで、顧客の好みやニーズを把握し、データに基づいてクロスセルの提案を実施できます。例えば、オンラインショッピングサイトでは、顧客の過去の購入履歴を分析し、似たような商品をおすすめすることでクロスセルを実践しています。クロスセル戦略を実践するためには、既存顧客のデータを分析することが大切であり、その上で適切な提案を行いましょう。
販促のシナリオを設計
2つ目の手順は、販促のシナリオを設計することです。販促のシナリオを設計することで、クロスセルで提案する商品の種類や提案するタイミングを具体的に決められます。提案する商品の種類やタイミング以外にも、提案する頻度や価格なども考え直す必要があります。クロスセル戦略を実践するためには、販促のシナリオを設計し、具体的な提案内容を決めることが大切であり、提案内容に基づいて顧客に提案しましょう。
施策を実行
既存顧客のデータ分析とシナリオを設計したあとは、施策を実行しましょう。仮に保険会社であれば、自動車保険に加入している顧客に対して、住宅保険の提案をするクロスセルを実践可能です。データ分析によって、自動車保険に加入している顧客の中で、住宅を持っている人を特定し、顧客に対して住宅保険の案内をする販促シナリオを設計します。販促シナリオに基づいて、顧客に対して実際に住宅保険の提案を行います。既存顧客のデータ分析とシナリオを設計しても、実行しなければ意味がないため、顧客にクロスセルを提案する必要があります。
効果検証と改善
クロスセル戦略は1回の施策実行で終わるわけではないため、検証・改善を行うことが大切です。クロスセル戦略を実践したあと、施策がうまくいっているかどうかを検証しなければいけません。施策を実行した上で、顧客の反応が予想と異なる場合改善する必要があります。例えば、商品のクロスセル戦略を実施した場合、商品の売上が増えたかどうかを確認します。もし、売上が増えていなければ、販促の内容を見直して改善しなければなりません。クロスセル戦略を実施する場合、効果検証と改善を繰り返すことで、効果的な施策を実行可能です。
クロスセル戦略を成功させる2つのポイント
クロスセル戦略を成功させるポイントは下記の2つです。
- 顧客のニーズを理解する
- 自社商品の理解を深める
成功させるポイントを抑えることで、顧客を満足させることができ、企業の売上アップに繋がります。
顧客のニーズを理解する
クロスセル戦略を成功させるためには、顧客のニーズをよく理解することが大切です。顧客のニーズを把握することで、顧客が求めている商品やサービスを提供できます。顧客が本当に買いたいものを知らなければ、関連商品を紹介しても購入してもらえません。顧客のニーズを理解することがクロスセル戦略の成功につながります。顧客が求めている商品やサービスを提供することで、顧客の満足度を高め、クロスセル戦略を成功させましょう。
自社商品の理解を深める
クロスセル戦略を成功させるためには、自社の商品について深く理解することが重要です。顧客は商品に価値を感じないと購入しないため、自社商品の理解を深めて、価値をアピールしなければなりません。例えば、食品を販売している場合、自社商品の理解を深めるためには、商品の特徴やおいしさ、どのような人に向いているのかを調べることが大切です。クロスセル戦略を成功させるためには、自社商品について深く理解し、顧客のニーズに合わせた商品提案を行いましょう。
クロスセル戦略の3つの事例
クロスセル戦略を行っている企業の事例を3つ紹介します。
- Amazon
- Uber Eats
- マクドナルド
紹介する企業を参考にクロスセル戦略を考えてみましょう。
Amazon
Amazonはサイト上で購入しようとしている顧客に対して、「よく一緒に購入されている商品」や「関連するスポンサー商品」を提案して、クロスセルを実践しています。例えば、書籍を購入しようとすると、同じ著者の書籍や同じジャンルの書籍が表示される仕組みです。Amazonはレコメンドエンジンによって最適な提案をすることで、クロスセルに成功しています。ECサイトを運営している場合、参考にしましょう。
Uber Eats
Uber Eatsは、フードデリバリーサービスを展開しています。Uber Eatsで購入画面に遷移する際、サイドメニューを直前に表示することで、購入を促すクロスセル戦略を実践しています。顧客が商品を購入するときに、クロスセル戦略を実践することで、関連商品を購入してもらいやすくなります。
マクドナルド
マクドナルドは、世界的に人気なファストフード店です。マクドナルドでは、商品の注文を受けるときに、「一緒にポテトはいかがでしょうか」と提案し、クロスセル戦略を行っています。Uber Eatsと同様、顧客が商品を購入するときに、クロスセル戦略を実践することで、関連商品を購入してもらいやすくなるでしょう。どの飲食店でも活用できる方法のため、参考にできる点が多数あります。
顧客理解を深めてクロスセル戦略を実践しよう
クロスセル戦略のメリットやデメリット・クロスセル戦略の最適なタイミング・成功のポイントなどについて解説しました。クロスセル戦略を成功させるポイントは下記の3つです。
-
顧客のニーズを理解する
-
自社商品の理解を深める
-
押し売りを避ける
上記の3つを意識することで、顧客の満足度を高めしし、企業の売上向上を目指せます。顧客の満足度を上げるためには、顧客の好みやニーズ・提案の最適なタイミングを分析する必要があります。顧客の分析を丁寧に行い、クロスセル提案を行いましょう。