カスタマーサポートにおける生成AIとは?活用方法・成功事例を解説!

カスタマーサポートの現場で「対応スピードを上げたい」「顧客満足度を高めたい」と考えたことはありませんか?
多くの企業が、顧客対応の品質と業務効率化といった課題に直面しています。そこで注目されているのが、生成AIです。
今回はカスタマーサポートにおける生成AIの活用方法、成功事例などをご紹介します。生成AIを適切に使えるようにメリットやデメリットも紹介しているため、導入を検討している方は記事を読んでみてください。
カスタマーサポートにおける生成AIの基礎知識
まずは、カスタマーサポートで生成AIを活用する上で知っておきたい基礎知識をご紹介します。
カスタマーサポートにおける生成AI
生成AIとは、データを学習して、文章、画像、音声などを出力する技術をいいます。チャットボットメール返信の自動化、FAQの作成支援などカスタマーサポート業務の効率化に貢献する技術です。
生成AIは顧客一人ひとりの属性に合わせた対応を得意とするため、上手く活用すれば顧客満足度を向上させることもできます。
しかし、生成AIは誤情報を生成するリスクや情報が漏洩するリスクもあるため、適切に使用しましょう。
AIチャットボットとの違い
従来のチャットボットは、データベースの中から回答を探し、そのまま出力するものでした。そのため、定型的な回答しか返すことができず、適切な回答が得られないという問題も発生していました。
一方で、生成AIを搭載したチャットボットは、質問に対する適切な回答文を作ることができます。AIが意図を汲み取り、適切な回答を導き出せることが、従来のチャットボットよりも優れている点です。そのため、チャットボットを導入して顧客対応品質を上げたい方には、AI搭載型のチャットボットを導入することをおすすめします。
カスタマーサポートで生成AIが注目される背景
生成AIはチャットボット、FAQやトークスクリプト作成など、あらゆる業務に活用することができます。カスタマーサポートで生成AIを活用すれば、業務効率化や顧客対応品質の向上など、さまざまな効果が得られます。そのため、カスタマーサポートで生成AIが注目されている状況です。
株式会社PR TIMESが実施した「カスタマーサポート・問い合わせ対応に関するアンケート」では、生成AIについて「既に利用している」「使う予定がある」と回答した企業が36.3%。これは、多くの企業が生成AIの可能性に注目し、導入を進めていることを示しています。
現時点では約3割と生成AIの利用率が低いため、先駆けて利用すれば、競合他社と差別化を図りできるチャンスが得られます。
カスタマーサポートにおける生成AIの活用方法
生成AIをカスタマーサポートで活用すれば、さまざまな業務を効率化できます。ここでは、カスタマーサポートにおける生成AIの活用方法をご紹介します。
パーソナライズされた回答をリアルタイムで提供
生成AIを活用すれば、顧客1人ひとりに最適化した回答をリアルタイムで提供できるようになります。顧客とのやり取りや消費行動、好みなどを参考に、パーソナライズ化して対応すれば、顧客満足度を上げられるでしょう。
また、AIチャットボットを導入すれば、24時間365日対応のサポート窓口を設置できます。深夜や休日に問い合わせできるようになれば、営業時間内に問い合わせできない顧客に喜んでもらえるでしょう。
FAQやトークスクリプトの作成
生成AIを活用すれば、FAQやトークスクリプトを作成する時間を削減できます。
なぜなら、生成AIは問い合わせ内容や会話内容を簡単に解析でき、その結果に基づいた回答文を生成できるためです。
誤情報が出力されていないか担当者が確認して、必要に応じて加筆や修正するなどブラッシュアップが必要ですが、業務負担を軽減できます。
顧客応対品質の改善
生成AIを活用してVOCや会話内容を分析すれば、顧客対応品質を改善できます。
VOCや会話内容には、サービスの改善点など貴重な情報が多く含まれています。これまで、膨大なデータを分析するには膨大な時間が必要でした。
しかし、生成AIを活用すれば、膨大なデータ分析が簡単に行えて、キーワード出現率や相関関係などから課題を発見し施策が打てるようになります。
オペレーターのサポート
生成AIは、オペレーターの業務を多方面からサポートします。
例えば、オペレーターが顧客対応中に必要な情報を取得したい場合も、生成AIに尋ねれば瞬時に求めている回答をもらえます。
また、顧客対応後には会話内容を文字起こし・要約してくれるため、後処理も楽になるでしょう。このように、生成AIを上手く活用すれば、オペレーターの業務負担を軽減しながら、顧客対応の品質を上げていけます。
カスタマーサポートで生成AIを活用するメリット
カスタマーサポートで生成AIを活用するメリットは3つあります。
顧客満足度の向上
生成AIを導入することで顧客対応スピードが向上し、顧客満足度を高めることができます。なぜなら、スムーズな対応が顧客からの信頼獲得に直結するためです。特に、顧客は問題解決までのスピード感、手軽さを重視する傾向があります。
例えば、カスタマーサポートにAIチャットボットを導入すれば24時間365日対応のサポート窓口を設置すれば、便利だと感じてもらえるでしょう。
また、問い合わせが集中する時間帯の一次対応をAIに任せれば、顧客を待たせることもありません。このような対応に切り替えることで顧客満足度を向上させることができます。
採用・教育コストの削減
生成AIを活用すれば、カスタマーサポートのオペレーターの採用・教育にかかるコストを削減することができます。なぜなら、顧客対応の一部を生成AIで自動化できて人員削減ができるためです。
また、オペレーターのトレーニングも生成AIで効率化すれば教育コストも削減できます。
生成AIで顧客応対品質の判定を行えば、オペレーターの言葉遣いや会話スピードなどを分析し、どこに問題があるかを調べてもらえます。この判定結果を参考にしながら、顧客対応を改善していけば、教育担当者は必要ありません。
つまり、生成AIを上手く活用すれば、採用・教育コストを抑えつつ、高いスキルを持ったオペレーターが育成できるようになります。
オペレーター業務の負担軽減
生成AIを導入してカスタマーサポート業務の効率化を図れば、オペレーターの業務負担を軽減できます。なぜなら、生成AIを活用すれば、必要な情報を瞬時に取り出せるようになるためです。
どのように対応すれば良いか悩んだ際にも生成AIに質問できるため、エスカレーションの頻度を減らせるでしょう。
また、顧客との会話を文字起こしして要約することができます。これらを後処理に使用すれば、事務作業も捗ります。このように業務効率化を図れば、オペレーターから働きやすい職場だと感じてもらえるようになり定着するようになるでしょう。
カスタマーサポートで生成AIを活用するデメリット
カスタマーサポートで生成AIを活用するデメリットも3つあります。
顧客に誤情報を提供する恐れがある
生成AIをカスタマーサポートに活用する際は、誤情報が出力されるリスクを意識して、適切な対策を講じなければなりません。
カスタマーサポートで顧客に誤情報を提供してしまうと、クレームや信頼失墜といったトラブルに発展してしまいます。
このようなトラブルを防止するために、RAG(検索拡張生成)を活用しましょう。
RAGとは、データベースを参照して回答を生成する仕組みです。RAGを活用すれば、企業独自のナレッジだけを参照して回答を生成できるようになります。また、併せて人間による最終チェックをするようにしましょう。
セキュリティ対策を講じる必要がある
カスタマーサポートに生成AIを導入する際は、情報漏えいリスクを防ぐために、セキュリティ対策を講じる必要があります。
なぜなら、生成AIはプロンプト(指示文)を学習に利用し、他人の回答に転用してしまう恐れがあるためです。そのため、社内にある機密情報や個人情報を取り扱う業務で生成AIを使う際には、慎重な対応が求められます。
具体的な対策としては、データの暗号化、アクセス権限の制限、API経由での利用が挙げられます。このような対策をして、外部への情報を流出しないように気をつけましょう。
生成AIを取り扱うための知識が必要である
生成AIを効果的に活用するためには、適切なプロンプト(指示文)を作成するスキルを磨きましょう。なぜなら、正確で実用的な回答を引き出すためには、プロンプト(指示文)が重要だからです。
例えば、「トラブルが発生したので解決したい」とだけ入力すると、関係のないトラブル解決策も出力される可能性があります。一方で「〇〇のトラブルが発生したので解決したい」と入力すると、抱えている問題の解決策を得ることができます。
このように、プロンプトにより生成AIの回答が変わるため、知識を身に付けるようにしましょう。また、社内の人が安心して生成Aiを活用できるようにガイドラインを作成することをおすすめします。
カスタマーサポートで生成AIを導入するステップ
カスタマーサポートで生成AIを導入するステップは、以下の通りです。
- 業務の棚卸しをする
- 導入目的とKPIを設定する
- 生成AIの業務範囲を決める
- ベンダーを選定する
- ルールを整備する
- PDCAサイクルを回して改善する
ここでは、各手順について詳しく解説します。
業務の棚卸しをする
まずは、生成AIを導入するために、現在のカスタマーサポート業務の棚卸しをしましょう。
業務の棚卸しをせずにAIを導入すると、どの工程に適用すべきか判断できなくなり、効果が得られなくなります。現在のカスタマーサポートの業務を整理することで、初めてどの箇所を生成AIで改善すべきか判断できるようになります。
そのため、「問い合わせの受付」「一次対応」「エスカレーション」「FAQ更新」などの業務を棚卸しして、どこに課題があるかを特定しましょう。
導入目的とKPIを設定する
次に、カスタマーサポートで生成AIを導入する目的とKPIを定めましょう。
なぜなら、生成AIを導入する目的が曖昧だと「何を達成したいのか」が不明瞭になり、自社が求めているものと導入したものがズレてしまう恐れがあるためです。
例えば、「問い合わせ対応の一次対応をAIに任せて、難しい回答は人間が担当する」と決めておくと、どのようなチャットボットを搭載すべきかを判断するだけで済むようになります。
また、「応答速度を30%向上させる」「夜間対応率を90%にする」などのKPIを設定しておけば、ツール選定や運用方法が適切かどうかを判断できるようになります。
生成AIの業務範囲を決める
次に、生成AIに担当させる業務範囲を決めましょう。
なぜなら、業務範囲が曖昧なままだと、「どこまでAIに任せるべきか」「どこから人間が対応すべきか」という線引きができず、現場での混乱を招く恐れがあるためです。
生成AIには向いている業務とそうでない業務があります。たとえば、定型的な問い合わせ対応や情報検索、文書作成などは生成AIに適していますが、複雑な感情対応や高度な判断を要するクレーム対応などは人間が担当すべき領域です。
どの業務をAIに任せ、どの業務は人間が担当するかを明確に決めることで役割分担がはっきりし、運用フローをスムーズに作成・定着させられるようになります。
ベンダーを選定する
生成AIを導入する際には、自社が抱えている課題の解決を得意とするベンダーに相談しましょう。なぜなら、適切なベンダーを選定できなければ、AIを安心して利用できないためです。
そのため、「自社の課題を解決できるか」「サポート体制が充実しているか」という観点で評価して、ベンダーを選ぶことが大切です。ベンダー選定でミスすると、情報漏洩など重大なトラブルに発展するため慎重に選ぶようにしましょう。
ルールを整備する
生成AIを活用するために、ルールを整備しておきましょう。
ルールを整備することで、生成AI導入後に、どのように利用すればよいか混乱を防げて、誰もが安心して利用できるようになります。
ITリテラシーが低い従業員でも安心して利用できるように、「利用できる業務内容を限定する」「社内の機密情報を安易に入力しない」「生成AIが出力した内容をそのまま鵜呑みにせず、必ずファクトチェックを行う」といった具体的なルールを設けると良いでしょう。
ルールがあることで、「これなら自分でも正しく使える」と従業員の心理的ハードルが下がり、積極的に活用してもらえるようになります。
PDCAサイクルを回して改善する
生成AIツールを導入した後は、PDCAサイクル(計画・実行・検証・改善)を回しながら、継続的に改善していきましょう。改善を繰り返すことで、自社に最適な運用方法を見つけ、生産性をさらに高めることができます。
「導入前の課題が解決されたか」「新たな問題が発生していないか」「顧客満足度に変化があったか」「オペレーターの業務効率はどれだけ向上したか」などを定期的にチェックしすることが大切です。
これらの結果を踏まえ、生成AIの設定調整や対応フローの見直し、トレーニング内容の更新を行い、より良い体制へとブラッシュアップしていくことができます。
カスタマーサポートで生成AIを活用している企業事例
先駆けてカスタマーサポートで生成AIを活用している企業は、どのような効果が見込めているのでしょうか?ここでは、カスタマーサポートで生成AIを活用している企業事例を3つご紹介します。
【JALカード】FAQページの生成で顧客満足度アップ
出典:『JAPAN AIRLINES』
JALカードは、カスタマーサポートの品質向上を目的として、AI搭載FAQ検索システム『sAI Search』を導入しました。同社はお客様から入会方法やマイル・付帯サービスなどのお問い合わせが多く寄せられており、お客様自身で自己解決できる環境を整えることにしました。
AI搭載FAQ検索システム『sAI Search』は、自然文検索やタグ検索機能を備えており、誰でも直感的に情報を検索できるようになっています。また、チャットボットを使用するほど回答精度が上がる仕組みです。
また同社は、AI搭載FAQ検索システム『sAI Search』を提供するサイシード社のコンサルティングを受けており、FAQの改善をして使いやすいものに改善しています。このような工夫をして、より良い顧客体験を実現しています。
【明治安田生命】応対メモを自動生成し業務効率化
出典:『明治安田』
明治安田生命は、カスタマーサポート業務の効率化を目指し、生成AIで応対メモを生成し始めました。AIカンパニーのELYZA社と共に、過去の応対メモ12万5,000件を学習させることで、通話のテキストデータから応対メモを自動生成するシステムを開発しました。
これにより、年間約55万件の問い合わせに対応するコミュニケーションセンターにおいて、応対メモ作成業務時間を約30%削減することができました。また、作成者によって微妙に異なっていた対応メモの表現が統一され、わかりやすくなるなど業務の質の向上にも寄与しています。
【星野リゾート】新人オペレーター教育を自動化
出典:『星野リゾート 界』
星野リゾートでは、新人オペレーターの早期戦力化を目的に、生成AI搭載のオペレーター支援ツール「KARAKURI assist」を導入しました。
同社の宿泊予約センターでは、5,000以上のメール返信テンプレートが存在し、新人オペレーターが適切なテンプレートを見つけ出すのに時間がかかるという課題がありました。
そのため、「KARAKURI assist」の導入し、テンプレートの検索が容易にしたのです。生成AIが返信文のドラフトを自動生成することで、新人オペレーターでも迅速かつ正確な対応が可能となりました。
とくに「OMO」「界」「BEB」などのブランドでは、食事の時間や施設の営業時間といった普遍的な内容の問い合わせに対して、生成AIによる自動返信を目指しており、正答率80%を目標に掲げています。この取り組みにより、カスタマーサポートの対応品質を上げています。
まとめ
カスタマーサポートで生成AIを上手く活用すれば、対応スピードの向上や業務効率化、顧客満足度の向上などのあらゆる効果が見込めます。
チャットボットで顧客対応の自動化やFAQの生成、オペレーター支援などさまざまなことができ、生成AIを活用する企業が増えてきました。
今先駆けて、カスタマーサポートで生成AIを活用すれば差別化も期待できるでしょう。そのため、この記事を読み興味を持った方は、カスタマーサポートへの生成AI導入を検討してみてください。