【翻訳】プロダクト・アダプションガイドおよびカスタマーサクセスマネージャーが注意すべき理由

Custify
2025.06.09

この記事は著作権を有する Custifyの許可を得て翻訳したものです。
Original article: https://www.custify.com/blog/product-adoption-guide/
SaaSを成功させる要素とは何でしょうか?好評なレビューでしょうか?市場投入時の話題性でしょうか?あるいは、収益グラフの急上昇でしょうか?これらは確かに重要ですが、持続的な成功の本質にはなり得ません。事実、持続的な成功を定義する指標はないと主張する人もいます。
しかし、ビジネスのほぼすべての目標を達成するために欠かせない要素が1つあります。それは、「プロダクト・アダプション」(Product Adoption、導入もしくは導入後の製品活用) です。プロダクト・アダプションが達成されれば、解約率の低減、収益の増加、顧客生涯価値(CLV)の向上など、あらゆる指標を大幅に改善できます。
成功している SaaS を見れば、その会社では製品やサービスが単に提供されるだけでなく、それらサービスが顧客に積極的に受け入れられていることがわかります。
では、SaaSの成功を左右するプロダクト・アダプションとは何なのか、詳しく見ていきましょう。
プロダクト・アダプションとは?
プロダクト・アダプションとユーザー獲得の違い
プロダクト・アダプションは、単なるユーザー獲得とは異なります。注意すべきことは、これらを混同してはいけないという事です。
プロダクト・アダプションとは、製品を購入・サブスクライブ(ユーザー獲得)しただけではなく、顧客が製品を日常的に使用し、その価値を引き出すプロセスを指します。つまりは、顧客が製品を日常生活に取り入れ始める事を指します。
つまりは、企業がユーザーに対して示す配慮こそがただの取引とは一線を画す、より隆盛的なパートナーシップの締結を生みます。
プロダクト・アダプションですが、どの企業でも同じ基準とは限りません。例えば、SaaS企業Custifyでは、ユーザーがプラットフォームを自社ニーズに合わせてカスタマイズした顧客が彼らに関してアプローチをかけ、近い未来にCustifyのソフトウェアを使用しています。このようにプラットフォームを分析する機能を活用することがプロダクト・アダプションの指標となります。そして、共通しているのはユーザーが積極的に製品を利用すること です。この「積極的な」利用により、企業によってユーザーは「アダプター」(製品の日常利用者)と見なされます。
ユーザー・アダプションとカスタマー・アダプションの違い
SaaS業界では、ユーザー・アダプション(User Adoption、ユーザーが製品を導入する事) と カスタマー・アダプション(Customer Adoption) という2つの用語が使われます。この2つには、微妙な違いがある事を知っておく必要があります。
SaaSの専門用語では、ユーザー・アダプションは個々のユーザーが製品を採用することで、カスタマー・アダプションは企業やチーム単位で製品が採用される事を指します。
たとえば、企業向けSaaSの場合、ある1人の社員が使い始めるのがユーザー・アダプション、社内の複数人が連携して利用するのがカスタマー・アダプションです。
重ねて、ユーザー・アダプションは個人のユーザーを指します。対照的に、カスタマー・アダプションは複数人が共有するアカウントでの採用、あるいは複数のユーザーが共有する可能性があるもの(それぞれにニーズが違います)を指します。
プロダクト・アダプションのステージ
製品の導入プロセスには明確な戦略が必要です。製品をまったく知らない人を、日常に取り入れるほど熱心なユーザーに変えるには、偶然に任せて進むのではなく、計画的に進める必要があります。
幸いにも、この戦略をゼロから構築する必要はありません。一般的に、見込み顧客(想定しているユーザー)を段階的に移行させることが重要とされています。一部では5つのステップが必要だとされますが、その5つでは、顧客のライフサイクルにおける重要な要素である「製品の活性化(プロダクト・アクティベーション)」が抜け落ちるという意見もあります。
筆者は上記の5つに加え、「製品の活性化」を含めた計6つのステップのプロセスが最も包括的だと考えていますので、以下で詳しく解説していきます。
1. 製品認知フェーズ
「千里の道も一歩から」と言われるように、最初のステップは、ユーザーに製品の存在を知ってもらうことです。しかし、これは決して簡単なことではありません。数多くのSaaS製品が市場に存在する中で、顧客に自社製品を認知させるのは容易ではありません。
では、どのようにして認知度を高めればよいのでしょうか?
その鍵は、ターゲットとなるユーザーがいる適切な場所で、適切なタイミングに想定したユーザーに向けて訴求することです。例えば、Zapierは、SEO(検索エンジン最適化)を活用して、検索エンジンに自社のアプリ連携やワークフロー自動化ソフトウェアの記述について、インプレッションを増やしつつ広報しました。その結果、25,000以上のページを作成し、ユーザーが必要とするウェブアプリ統合について見込み顧客の注意に留まりやすいように紹介しました。
2. 製品への関心フェーズ
見込み顧客があなたの製品の存在を認識した後、次に求めるのはさらなる情報です。
すべての見込み顧客が同じニーズを持っているわけではなく、それぞれのニーズとその製品で達成したい仕事は異なります。その為、あらゆる使用ケースに対応できるように十分な情報を提供する必要があります。
ウェビナーやデモ、魅力的なコンテンツ記事、無料のガイドやテンプレート、さらにはインフルエンサーとのコラボレーションを検討してみましょう。たとえば、Kissmetricsは、ウェビナーを活用して製品への関心を高めると同時に、リードを獲得する(見込み顧客の発見)という戦略を成功させています。
Kissmetricsは、ユーザーがそのウェビナーを視聴する事で得られるメリットを告知しています。段落を簡潔にし、見出し、太字のテキストを活用して視覚的に分かりやすい階層を提供しています。
3. 製品評価フェーズ
この段階に入ると、見込み顧客は本格的に製品に興味を持ち始め、競合製品と比較したり、レビューを読んだりしながら、長所と短所を検討します。
このフェーズでは、競合他社との違いを明確にする事が不可欠です。特定の機能、優れたカスタマーサポート、競争力のある価格など、競合他社と差別化している要素を告知しましょう。
この段階で有力となる施策の一つは、顧客の成功事例(カスタマーサクセスストーリー)を紹介する事です。その製品がユーザーにどのような変化をもたらしたかを示すことで、躊躇している見込み顧客を後押しできます。CoScheduleは、こうした顧客の成功事例を使用して、購入を迷っている見込み顧客を説得する手法を取っています。
4. 製品の試用フェーズ
おめでとうございます。最初の3つのステージをクリアし、見込み顧客は製品を試す準備が整いました。
この段階では、無料トライアルに登録する、デモを申し込む、あるいは初回購入をするなど、ユーザーが製品の価値を実感しようとします。
では、製品の価値を納得してもらう為にはどうしたらいいでしょうか?
ここで重要なのは、スムーズなオンボーディングを提供することです。ユーザーインターフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)、そしてオンボーディングのプロセス全てが、ユーザー体験を最適化する為に注目すべき要素です。
トライアルユーザーに感激する体験をしてもらう為に、Canvaはウェルカム画面にUIモデルを採用し、新規ユーザーがどんな目標を持っているかを把握できるように設計しています。これにより、ユーザーが「何を達成したいのか、何の作業を実行するのか」を明確にし、スムーズにフォローをかけられるようになります。
これにより、顧客満足度の持続と製品の継続的な導入への道を促します。
5. 製品のアクティベーションフェーズ
このフェーズを見落としがちな企業もありますが、私たちは「製品の試用」と「長期的な利用」の段階には大きな壁があると考えています。そのため、このフェーズはその壁を壊し、本格的な導入へと橋渡しをする重要な役割を果たします。
では、その大きな壁を壊すにはどうすればよいのでしょうか?
重要なのは、ユーザーに「そうか!」と気づかせる体験を提供し、製品の真の価値を実感させることです。この瞬間を早く迎えられるようにするために、以下の方法を活用できます。
- 教育コンテンツを提供します。ユーザーをニーズに基づいてセグメント化し、チュートリアルやヘルプセンターを充実させる。コンタクトを取って進捗確認をしたり、課題を解決してあげたり、プロフェッショナルな利用のヒントを提供します。マイルストーンの通過を祝い、成果を認めます。
- Fitbitが顧客のマイルストーン通過を祝う方法を見てみましょう。ユーザーが進捗を追跡できるようにしお祝いの証を提供する事で、ユーザーがトレーニングをするためにFitbitの製品を使い続ける意思を固めます。
6. 製品導入フェーズ
この最終フェーズでは、5.製品アクティベーションのフェーズで構築した勢いを維持し、ユーザーの継続利用を促します。利用を継続するメリットを思い出させ、ユーザーの変化するニーズをどのように満たし続けるかを提示します。
Textureには「今年のレビュー」という形式で、一年の利用状況を振り返る機能があります。
他のユーザーと比較してのランキングや、節約できた金額と木々の数(環境貢献度)などを可視化し、ユーザーの満足度を高めています。
これらは導入段階の施策の一つにすぎません。他にも方法はあります。
他の例を挙げるなら、ユーザーが専門知識を深めるための上級トレーニングを紹介することができます。これには、専門的なワークショップ、マスタークラス、認定プログラムなどが含まれます。
もう一つの施策として、堅牢なパフォーマンス分析とフィードバックループを実装します。ユーザーが製品をどのように使用しているかを分析し(想定外の利用方法に驚くかもしれません)、驚くべき使用例を見つけたら、コミュニティ内でそれを共有してみて、使用に関する新たな洞察を提供します。それにより、ユーザーとの協力的な関係が生まれます。
製品の使用経験に関するフィードバックと、その改善に関わるフィードバックを積極的に求め、ユーザーの意見を製品の改善に反映させることが、長期的な成功への鍵となります。
製品導入の普及曲線
私たちが持つ欲求やニーズが異なるように、製品を導入するペースも人によって異なります。製品を試す機会があれば、すぐに購入を決定する「早期導入者」もいれば、安定性や長期的なメリットを慎重に見極めてから導入を決める人もいます。
例えばAppleやPlayStationのようなブランドは誠実な顧客基盤を築いており、新製品が発売される際には、いち早く手に入れるために何日も前から店舗の前に並ぶユーザーもいます。一方で、新しい製品に対して慎重な態度を取る人々も多く、彼らは製品の安定性と長期的なメリットが提示されるまで、俯瞰します。
1962年に、この行動パターンを研究したエベレット・ロジャース(Everett Rogers)博士が「イノベーション普及理論(Diffusion of Innovation Theory)」を提唱しました。この理論は、新しい製品やアイデアがどのように人々に広がるのかを理解するためのものです。ロジャース博士は、製品の採用に関するユーザーを以下の5つのグループに分類しました。
- イノベーター(Innovators)
イノベーターは、新しい技術や製品を積極的に試すリスクテイカー(リスクを恐れない人々)です。彼らは経済的余裕があり教育レベルも高く、最新のテクノロジーを試すことを好み、躊躇しません。市場において最も先進的なユーザー層です。 - アーリーアダプター(Early Adopters)
アーリーアダプターはコミュニティのリーダーであり、周囲からの信頼が厚いグループです。彼らがコミュニティ内で新しい技術、製品を導入し、意見を浸透させる事でその製品が市場に広まるきっかけを作る重要な役割を果たします。 - アーリーマジョリティ(Early Majority)
このグループの人々は、新しい技術に慎重な姿勢を取りつつ、最終的には採用するユーザー層です。彼らは市場での反応やアーリーアダプターが製品をどう活用するかを確認した後、自身が導入するかの意思決定を行います。十分な情報が得られれば、製品を導入することに前向きです。 - レイトマジョリティ(Late Majority)
レイトマジョリティは、新しい技術を試すのに時間がかかる慎重派です。彼らはすでに市場で普及していることを認知してから導入を決定します。洗練された機能や最新のテクノロジーよりも、コストパフォーマンスやシンプルさを重視する傾向があります。 - ラガード(Laggards)
ラガードは、従来の製品や方法を好む層です。彼らは市場の変化に対して最も抵抗感を持ち、新しい製品が完全に普及してからでなければ導入しません。彼らが新しい技術を受け入れる頃には、多くのユーザーはすでに次世代の革新的な製品へと移行していることが一般的です。
プロダクト・アダプションに影響を与える要因
ロジャース博士は5つのユーザーグループだけでなく、プロダクト・アダプションを促進する5つの要因も提唱しています。この要因を考慮することで、市場に新しい製品を投入する際の障壁を特定し、改善の方向性を見出すことができます。
特に「相対的優位性、適合性、複雑さ」の3つの要因は、イノベーション(製品の導入における革新の事項)の採用プロセスにおいて最も影響力があるとされています。
- 相対的優位性(Relative Advantage)
製品が既存のソリューションよりも優れた点を持っている場合、顧客に導入されやすくなります。この優位性にはいくつかの定義があり、その1つには金銭的な価値の比較があります。つまり、コストの削減によってその新製品が従来の製品よりも安価であれば、導入の可能性が高まります。
別の方法としては、利便性が優れているかです。革新的な製品が、より簡単かつ迅速にニーズを達成できれば、ユーザーは積極的に導入します。
最後に、顧客によって社会的ステータスが比較されます。製品のデザインやブランド価値が高く、利用することで自身のステータス(社会における自身の状態)が向上したり、自身のタイプ(趣向)について表明できると感じた場合、導入が進みます。 - 適合性(Compatibility)
イノベーション(革新の事項)が、市場の現在の習慣や価値観とどれだけ一致しているかは、採用に大きな影響を与えます。
企業が業務向けのリモートコラボレーション・プロジェクト管理ツールを開発したとすれば、パンデミック前であれば、オフィス勤務が一般的という習慣だったため、製品が採用されるのは難しかったでしょう。しかし、パンデミックを経てリモートワークが一般化したことで、このツールは現在の働き方に適合し、「貴重なリソース」と認識され受け入れられやすくなりました。
このように、提示するイノベーションが現代の認識や価値観に適合しているかは、顧客が製品を導入するかにおいて重要な観点となります。 - 複雑さ(Complexity)
製品が直感的で使いやすいほど、顧客が採用しやすくなります。新しい製品や機能を発表する際には、以下の点を考慮する必要があります。
・製品の操作が直感的で分かりやすいか?
・同じく、ユーザーインターフェース(UI)は直観的か?
・製品を使いこなすまでの学習コストが高くないか?
・利用開始からどれくらいの時間で製品を使いこなし、その価値を実感できるか? - 試用可能性(Trialability)
製品を無料で試せるかは、製品を導入するかにおいて大きな影響を与えます。ユーザーがリスクなしに製品の価値を実感できるようにすることで、製品に対する抵抗感を緩和させます。期間限定の無料トライアル、返金保証や製品デモを実装し、顧客がコストフリーで製品を試せる機会を与えてみましょう。 - 可視性(Observability)
製品の認知度が高いほど、顧客が導入するか検討し易く、ヒットしやすくなります。広告を活用したり、既存ユーザーの口コミを広めたり、ケーススタディを公開することで認知度を向上し、コミュニティ独自の話題を生み出し成功を収めます。
プロダクト・アダプションの測定と分析
これまで、プロダクト・アダプション(製品を日常的に取り入れる事)について多くのことを解説してきましたが、ここではその計算方式について掘り下げていきます。
製品導入率の計算方法
プロダクト・アダプションのレート(割合)を測定する方法には様々な見解があり、統一された基準はありません。数学の公式で求める人々もいますが、製品の利用状況やアクティベーション(活用度)を考慮しなければならないと主張する人も一定数います。そこで代表的な測定方法を個々に説明する事で、整理していきます。
基本的な計算式
プロダクト・アダプション・レート(Product Adoption Rate、製品に対しての新規ユーザーと、それを日常に取り入れているユーザーの割合)を計算するためには、次の2つのデータが必要です。
- 新規アクティブユーザー数(特定の期間内に一定の主要なアクション(製品の主な用途に関する操作)を実行したユーザーの数)
- 新規登録ユーザー数(同じ期間内に製品に登録(サインアップ)またはサブスクライブしたユーザーの数)
このデータを基に、以下の数式で導入率を求めます。
この方法は、製品を実際に利用し始めたユーザーの割合を簡単に把握するのに適しています。
別のアプローチとして、以下の数式もあります。今までのユーザ数と新規ユーザー数で計算する方法です。
この方法ではユーザーの利用状況や製品を有効に利用しているかどうかは考慮されていません。そのため、詳細な導入状況を把握するのは難しいでしょう。
適切な製品導入率の基準とは?
プロダクト・アダプション・レートは、数値が高いほど良いとされています。業界やプラットフォームによって理想的な数値は異なります。
2019年にMixpanelは、製品の業界やプラットフォームを問わずに、ユーザーが最初の1週間で製品の価値を感じるかを調査しました。そしてその割合は、業界や製品によって大きく異なることが示されました。
https://discover.mixpanel.com/rs/461-OYV-624/images/2019-Mixpanel-Product-Benchmarks-Report.pdf
では、どのようにして担当者は業界ごとの現実的な導入目標を設定し、導入率(Product Adoption Rate)が良い方向に向かっているのか判断すればよいでしょうか?
まずは業界のベンチマーク(比較対象の数値)を参考にしながら、現実的な目標を設定してみましょう。
例えば、毎月1,000人の新規ユーザーが登録している場合、3か月後に85%の製品導入率(85%が日常に取り入れる)を達成するのは現実的でしょうか? それは状況によるので、過去のデータを分析し、現状を把握した上で基準(過去と比較し、どのラインを達成すれば成功か)を設定することが重要です。
製品導入を追跡する主要な指標とKPI
プロダクト・アダプション・レートを適切に評価するためには、単なる計算式だけではなく、特定の指標とKPI(プロジェクトが順調に進んでいるかを示す目標)を追跡する必要があります。ここでは、それぞれのKPIについて説明します。
- 最初のキーアクションまでの時間(Time-to-first key action)
ユーザーが初回にキーアクション(主要な機能を利用する事)を行うまでの間隔を計測します。これは導入の成功度を示す重要な指標です。利用までの間隔(期間)が長すぎる場合 、 ユーザーは製品の価値を感じる前に離脱する可能性があります。また、間隔が短すぎる場合もそれはオンボーディングをスキップしたユーザーだという事が分かる為、機能についてよく分からないまま製品を利用し始めてしまう可能性も否めません。 - 初めてキーアクションを実行したユーザーの割合
単に登録しただけのユーザーと、実際に製品を使用し始めたユーザーを区別するための指標です。SaaSツールなら「レポートの作成」や「ダッシュボードのカスタマイズ」など、キーアクションの明確な定義を設定します。
ここでは、一度実行したユーザーが「そうか!(この機能は革新的だな、使いやすいな)」と納得する瞬間に対して、そこに辿り着いたユーザーが何人いるかを確認します。
カスタマーサクセスソフトウェア(例:Custify)**を活用すると、製品分析コンポーネントが主要機能の利用状況を明確に示します。 - 利用頻度(Usage Frequency)
利用頻度は、オンボーディングを完了したユーザーの中で、どれだけの人が継続的に製品を利用しているかを明確にする指標です。具体的には、多ければ多いほど良いとされます。
これを計算するには、1日のアクティブユーザー数(DAU)、1週間のアクティブユーザー数(WAU)、1ヶ月のアクティブユーザー(MAU)のいずれかを調べ、その数値を全体のユーザー数と比較し、割合を求めます。これで、1日、あるいは1週間、1ヶ月間の利用頻度を調べ、製品が継続的に価値を提供できているかを確認します。 - 製品の粘着性指標(Product Stickiness)
これは、製品がどれだけユーザーにとって価値があるかを測定する指標です。これを計算すれば、ユーザーが製品を繰り返し利用する傾向が分かります。その数値が大きければ大きいほど、製品導入が成功しているといえます。 - 機能別のサポートチケット
製品の開発チームが機能のワークフロー(動作手順)を綿密に計画したにも関わらず、ユーザーが意図しないアクションを起こしエラーになったり、進行不能になったりした場合、どうすればいいでしょうか。
新しい機能がうまく利用されていない場合、ユーザーが混乱してサポートを必要とするケースが増えます。最終的に、不満を感じ解約する人もいるかもしれません。
そのため、サポートチームが受け取った問い合わせの件数と、その内容を追跡することで、改善すべきポイントを特定できます。問い合わせが多い機能は使いづらい可能性が高く、製品の欠陥となる可能性があります。それに気付く事は、欠陥を修正するための第一歩です。 - アップセル率(Upsell Rate)
製品を高額プランに移行しているかどうかは、導入率の指標として重要です。人々は関心や価値を見いだしたりしない限り、何かに繰り返し投資することはありません。言い換えると、製品の価値を理解したユーザーは、より高機能なプランに投資します。
アップセル率は製品の導入率(日常的に使用しているか)を示す優れた指標です。
逆に、アップセルが全く行われていない場合は、ユーザーにとって価値が十分に伝わっていないかもしれません。 - 平均セッション継続時間(Average Session Duration)
平均セッション継続時間は、製品を利用する際の1回あたりの平均滞在時間を測定する指標です。言い換えるなら、一度の使用でユーザーがどれだけ製品に没頭しているかを把握する為の指標です。継続時間が長い場合、ユーザーが製品の使い方を熟知しており、その人物にとって製品が有用である可能性が高い事を意味します。そして、短い場合はユーザーが使いにくさを感じていたり、何らかの障害にぶつかっている可能性があります。
ただし、「時間を短縮することが価値の製品」(例:効率化ツール)では、長すぎるセッション時間は、ユーザーが製品を十分に利用できていないことを示します。そのため、ユーザーが適切に利用しているセッションの時間を設定する事が推奨されます。 - 顧客生涯価値(Customer Lifetime Value, CLV)
ユーザーがSaaSに費やす総額は、製品導入が成功しているかを示す重要な指標です。
CLTV(顧客が支払った料金の総額)が高いほど、ユーザーは製品の価値を長期的に認識しており、SaaSにとってはより多くの収益を生み出します。一方、CLTVが低い場合、ユーザーが早期に離脱している可能性があります。
ユーザー行動と導入パターンを理解するための分析アプローチ
製品分析に取り掛かる前に、まずSaaSにおけるプロダクト・アダプション(製品を日常的に導入する事)は何を基準とするのか理解することが重要です。利用頻度が多ければプロダクト・アダプションと見なされるのか、それとも主要機能を活用する事に関連するのか、日常業務へ統合して、初めて見なされるのかは企業ごとに異なります。そのため、成功の基準を明確に定義する事が効果的な分析に繋がります。予測分析(Predictive Analytics)を活用することで、過去の履歴データに基づいて将来のユーザー行動を予測できます。このアプローチによりユーザーの傾向を把握し、製品の改善や満足度の向上につながる意思決定を行うことができます。そして市場の変化に先手を打ち、変化するユーザーのニーズに対応しましょう。
KPI(通過すべき目標)を設定したら、プロダクト・アダプションの詳細な分析に取り組みましょう。重要なのは、設定したKPIがビジネス目標とユーザーの期待に合致しているかどうかです。
例えば、プロダクト・アダプションの成功を「利用頻度の多さ」で定義した場合、製品がユーザーにとって、日常の中で不可欠な存在であるかを把握しなければなりません。ユーザーは製品を毎日利用しているか、週1回、 それとも不定期にログインしているかなどのデータを追跡し、ユーザーの行動パターンを可視化します。
そして製品分析を活用して、製品を導入したユーザー、導入しなかったユーザーの行動パターンを分析し、製品を導入した(しなかった)ユーザーがどのような行動していたかを特定してみましょう。以下のような視点から考察すると、より知見を得られます。
- 最も収益を出してくれる顧客は、どの機能を多く利用しているのか?
- どの機能がプロダクト・アダプション(製品導入)の決め手になったのか?
- 導入を躊躇しているユーザーには、どのような行動の傾向があるか?
- カスタマージャーニー(商品を見つけてから導入、更新までの過程)のどの段階で、ユーザーのエンゲージメント(製品との繋がり)が増加しているか?
- 異なる顧客セグメント(区分)間で、導入パターンに違いはあるか?
-
アップデートで特定の機能を追加した後、導入率に変化はあったか?
カスタマーサクセスソフトウェア を活用すれば、こうした疑問点を迅速に解消できます。Custifyの分析機能を使えば、製品の特定のアクションに対するデータの可視化、ユーザーのセグメント(年齢、世代などに分けた区分)化、パーソナライズされたユーザーの行動パターンを把握するなど、プロダクト・アダプションの改善に貢献します。
CSM(カスタマーサクセスマネージャー)に向けたプロダクト・アダプションを向上させるための戦略
顧客が製品を導入するだけでなく、導入する事でその価値を引き出し成功できるように導く役割を担うのがカスタマーサクセスマネージャー(CSM)です。
https://www.custify.com/blog/career-path-guide/customer-success-manager-job-description/
CSMの働き次第で、製品の導入率や定着率を大きく向上させられます。ここでは、製品導入を促すための具体的な方法を紹介します。
製品のオンボーディングを優先する
第一印象は重要であり、多くの専門家が「適切なオンボーディング戦略の実施が、プロダクト・アダプションの導入の成功に直結する」と主張しています。しかし、SaaS企業の中には適切なオンボーディングを実施できていないケースも多々あります。
そこで、いくつかのオンボーディング成功事例を紹介します。是非、企業の戦略に取り入れてみてください。
例えば、Waveのオンボーディング段階では製品の機能ではなく「ユーザーが受けられるメリット」に焦点を当てています。
Waveのウェルカムページでは、「このアプリを使うことで、請求書の支払いが3倍早くなる」や「すでに240億件の請求書が送信された」といったメッセージが表示されます。
このように、オンボーディングを実施する際には常に「ユーザーにとってのメリット」を念頭に置く必要があります。最終的な目標は、あなたの製品がユーザーの人生にどう変化を与えるかを理解してもらう事です。そのためには、ユーザーのニーズに応えなければなりません。
そのため、この段階ではユーザーの不安を緩和し、あなたのソリューションがユーザーの問題を解決する鍵である事をユーザーに認識させる事も重要です。
HelpScoutのオンボーディングでは、製品の学習コスト(学習に費やす労力)を最小限に抑えています。
HelpScoutは、ツァイガルニク効果(終わらせていないタスクに対して「最後までやりたい」とする執着心)を利用しています。ユーザーに「やるべきタスク一覧(オンボーディングチェックリスト)」を提示し、「未完了のタスクを完了させたい!」という心理を刺激します。 これにより、ユーザーは自発的に機能を試し、製品の価値を理解しやすくなります。構造化されたオンボーディングチェックリストは、ユーザーが重要な機能を理解し、製品の機能とメリットを把握するのに役立ちます。
オンボーディングチェックリストはタスクが多すぎると負担がかかるため、キャパシティを考慮する必要があります。
Lyftのオンボーディング段階では、「好意(Liking)」と「協力(Cooperation)」の原則が活用されています。
チャルディーニの説によると、人は「自分に親しみを感じさせる企業」に対して好意を持ちやすい傾向があります。85%の人が「導入後にウェルカムコンテンツ(歓迎、教育などの要素)が充実している企業を継続利用したい」と回答しており、Lyftはこの情報を活かし、ユーザーを歓迎するメールを送信しています。オンボーディングメールの効果は絶大です。
もし、さらにオンボーディングを強化したい場合は、SaaSカスタマーオンボーディングの詳細ガイドを参考にすると良いでしょう。
https://www.custify.com/blog/saas-customer-onboarding-guide/
導入初期における教育コンテンツとトレーニング資料の重要性
SaaS企業の多くは、ユーザーが製品を活用するためのガイダンスが必要不可欠であることを認識しています。しかし、実際にはユーザー向けの教育コンテンツの製作が後回しにされがちです。これは、非常に問題です。
ユーザーが製品の使い方を理解できなければ、やがてフラストレーションを感じるようになります。「この製品は本当に価値があるのか?」と疑問を抱き、競合製品と比較し始めるかもしれません。最終的には、製品の利用をやめてしまうでしょう。
こうした事態を防ぐためにも、ユーザーを導く教育コンテンツの提供は欠かせません。ここでは、ユーザーにスムーズに受け入れられる教育コンテンツの種類を紹介します。
アプリ内ガイド(In-App Guides)
最も効果的なガイダンスの場は、ユーザーが実際に製品を使用している瞬間です。インターフェース上に固定されたメッセージや、ポップアップを表示することで、ユーザーが迷わず機能を活用できるように促します。
Insight Timer は新機能が追加された際にアプリ内で通知を送り、ユーザーに変更点をチェックさせています。ニュースレターやドキュメントを見なくても良いのです。
製品ドキュメント
「この機能はどうやって使うのだろう?」と、アプリのインターフェース内を細かく探した経験はありませんか? あなたの製品のユーザーも同じ事をしているかもしれません。
そのため、製品の使用方法について詳細なドキュメントを用意する必要があります。セットアップ手順や、基本的又は高度な機能の利用方法、トラブルシューティングの方法は明確に示しておく必要があります。
SaaS企業の多くは、こうしたドキュメントをナレッジベース(知見を纏めたデータベース)として整理し、オンラインで公開しています。例えば、Lyft はモバイルでも読みやすくデザインされたナレッジベースを提供しています。
ビデオコンテンツ
テキストの説明より、動画の方が簡単に目を通しやすく、魅力的です。
そのため、教育として動画ライブラリを構築するのは非常に有効です。ユーザーのスキルレベルや関心に応じて分類し、都合に合わせてナビゲートします。基本操作チュートリアルから上級者向けの応用まで、習熟度に応じて内容を変化させます。
例えば、Canva のYouTubeチャンネルでは、多くの動画チュートリアルを公開しています。これらは、視覚的にナビゲートできる包括的なリソースです。
ウェビナー
ウェビナーは、ユーザーが専門家から直接学ぶことができる貴重な機会です。
参加するユーザーはリアルタイムで質問したり、疑問点を送ったり、プレゼンターと交流するメリットを得られ、コミュニティ意識を高められます。
ウェビナーの活用方法は無限にあります。Custify では自社製品の使い方だけでなく、ユーザーが関心を持ったトピックについても取り上げています。
https://www.custify.com/customer-success-resources
ユーザーとの対話を促進する効果的なエンゲージメント戦略
SaaSビジネスにおいて、エンゲージメント(顧客との繋がり) は成功を左右する重要な要素です。エンゲージメントを成功させる技術を習得している企業は、長期的に成功を収めています。逆に無視したり過小評価したりすると、ユーザーを失うリスクは高まります。
それでは、具体的にどのような戦略を用いれば、ユーザーとのエンゲージメントを強化できるのでしょうか?
コンテンツのパーソナライズ
パーソナライズ(顧客一人一人に最適化)されたコンテンツを提供することで、44%の顧客がブランドに対して、ロイヤリティ(誠実な感情)が高まるというデータがあります。
パーソナライズされたコンテンツに対しては、ニュースレターにユーザーの名前を追加してみたらどうか、という考えもあります。勿論、同じようにテキストをローカライズし文化的な齟齬や不快な用語を避ける事も重要ですが、それ以上に顧客をセグメント化し、特定のニーズや嗜好に合わせたメッセージを作成する戦略の方がより有用です。
例えば、Booking.com では、リピーターのユーザーに対して「サインインすると50%オフのセールが表示されます」などメリットを明示したパーソナライズメッセージを送信し、その行動データを収集することで、より高いエンゲージメントを得ています。
ライブチャットの活用
ユーザーの中には、メールやFAQではなく、リアルタイムでのサポートを求める人もいます。即時対応が求められる現代において、待たされることは大きなフラストレーションになります。
このようなニーズに対応するため、ライブエージェントを活用しパーソナライズされたガイダンスを提供します。リアルタイムで相談に乗ることで、ユーザーとの関係を強化したり、フィードバックを共有してコミュニティを構築する事ができます。
顧客からのフィードバックを活用する
ユーザーからの意見を収集し、フィードバックを得る事で関心を持ってもらい、エンゲージメントを飛躍的に向上させられます。フィードバック収集に参加する事で、ユーザーの意見が反映され、製品への関与(ネットワークでの推奨、コミュニティの活性)が高まります。
A.C.A.F.(Ask, Categorize, Act, Follow-up)フィードバックループを活用することで、ユーザーの意見を継続して収集し、改善へ導くことが可能です。
プロダクト・アダプションにおけるカスタマーサクセスマネージャー(CSM)の役割
2000年代初頭、Dellはパソコンメーカーとして市場を席巻していました。毎日、PCの使い方に関する膨大な問い合わせが寄せられ、カスタマーサポートのコールセンターは忙しく稼働していました。ある日、一人の顧客が「PCに付属していたコーヒーホルダーが壊れた」と不満を訴えました。この珍しい苦情に対し、経験豊富なエージェントでさえ困惑しました。どのPCモデルにも、「コーヒーホルダー」が搭載されている記載はありません。エージェントが諦めずに詳細を尋ねると、顧客は「ボタンを押すと開閉する装置」の説明を始めました。そう、顧客が「コーヒーホルダー」として認識していたのはCDトレイだったのです。さらに、この顧客は「中央の穴を大きくすれば、より安定してカップが置けるのではないか」と提案しました。
CSMがプロダクト・アダプションを促進する戦略的重要性
この逸話から分かるのは、製品の使い方は企業が意図した通りになるとは限らないということです。企業が新しい機能を導入する際、「こう使ってほしい」と想定した機能でも、ユーザーは全く異なる方法で利用することがあります。
ここで重要な役割を果たすのが カスタマーサクセスマネージャー(CSM)です。CSM は企業の認識と顧客の現実を繋ぐ役割を担います。彼らは製品に関する専門知識とユーザーのニーズに対して深く理解している為、新しい機能やサービスがどのように受け入れられるかを理解しながら、ユーザーがスムーズに活用できるようにガイドを行います。
CSMがいれば、先程の逸話も顧客が「CDトレイ=コーヒーホルダー」と考えていることに気づき、それを是正する為の説明を提供できたでしょう。CSM は単にサポートを提供するだけではなく、ユーザーとの積極的な関与を通じて、顧客と機能との仲介の役割を担っているのです。これは企業にとっても機能の使用例という洞察を収集し、パーソナライズされたガイダンスを提供する助けになります。
CSMがプロダクト・アダプションを最大化する実践的アプローチ
あるSaaS企業がプロジェクト管理を効率化する革新的なコラボレーションツールを開発し、市場に投入したとします。社内の活気も高く、マーケティングチームも大規模なキャンペーンを展開しました。しかし、ユーザーが実際に使用してみると、予想とは異なる問題が浮上しました。想定していたほど機能が使われておらず、一部の機能が見落とされていたため、製品の影響について懸念が残る結果となりました。
このような状況こそ CSMの出番です。CSMは、戦略的にユーザーに介入していきます。 ユーザーフィードバックを収集し、プロダクトアナリティクス(製品のデータ分析)を活用し、どの機能が利用されていないのか、どこで躓いているのかを分析します。
得られた洞察を理解し、CSMはユーザーの課題に応じたターゲット別のトレーニングコンテンツを提供します。動画チュートリアルやウェビナー、ワークショップを通じてユーザーの課題ごとにコンテンツを提供する事で、ユーザーの多様なニーズを解決しプロダクト・アダプション(製品の導入)を加速させます。
さらにCSMは 継続的なフィードバックループを構築し、ユーザーに「この機能があったらいいのに」といったリクエストを促しながら、製品の改善に反映させます。CSMはこれらの経験を将来の機能リリースの準備として取り入れます。これは、ユーザーとの協力がいかに重要かを理解している為です。
プロダクトの成功はその新しい機能によって決まるのではなく、ユーザーがその機能を使いこなし、いかに日常に変化を与えるかで決まります。
日々の「そうか!(この機能はこう使うんだな)」という瞬間、製品に対する適切なトレーニング、そしてユーザーの定着性の向上を与える事によって、プロダクトは成功したと言えるでしょう。
CSMとSaaSマネージャーが直面するプロダクト・アダプションの主な障壁とその解決策
既にご存知の通り、プロダクト・アダプション(製品の導入)の道のりは多くの障壁に満ちています。ユーザーの抵抗から市場の動向など、多くの要因がアダプションを妨げる可能性があります。こうした課題には、CSMとSaaSマネージャーによる的確な市場理解と、積極的なアプローチを取る事が不可欠です。
当然ですが、アダプションの行く手を阻む障害の存在を認識する事が克服の第一歩です。このセクションでは予期できる具体的な障壁を分析し、それを克服するための解決策と洞察を見ていきましょう。
- そもそも製品の認知度が低い
考えてみましょう。もし見知らぬ人が突然あなたに新しい製品やサービスを勧めてきたら、すぐに導入してみますか?殆どの人は信頼できるブランドでない限り、購入を検討しません。実際、81%の顧客は、ブランドに対する信頼がなければ購入を検討しないというデータがあります(出典:explodingtopics.com(https://explodingtopics.com/blog/branding-stats ))。つまり、ブランドの認知度が低い状態は、プロダクト・アダプションの大きな障壁となり得ます。
解決策: クリエイティブなマーケティング戦略を展開する
では、ブランドの認知度を高めるにはどうしたら良いでしょうか?その問題に向かう前に、先ずはブランドアイデンティティ(企業の理念や価値観)、ターゲット顧客層、製品の独自価値(競合他社と違う箇所)を明確にする必要があります。それらを行った上で初めて、マーケティング戦略を展開する事が可能です。
https://marketingcatalyst.net/best-online-marketing-strategies-to-grow-your-business/
最初に紹介するのは、パートナーシップ戦略です。ベンダー(販売者)、インフルエンサーと協力する事によって製品の認知度を飛躍的に高められます。パートナーシップ戦略の成功事例を見ていきましょう。
Canva は創業当初、ブランドの認知度向上のために、著名なマーケティングエキスパート Guy Kawasaki(ガイ・カワサキ)と提携し、ソーシャルプラットフォームでモチベーションを高めるための動画シリーズ「Wise Guy」を制作しました。
https://youtu.be/rTWFnAeiAWQ
その結果、わずか8か月で400万ユーザーを獲得しました。2015年8月までにアクティブユーザーは400万人にまで増加し、戦略的パートナーシップと効果的なコンテンツマーケティングの影響を実証しました。
もう一つの事例はHipChatです。自身の存在を知ってもらうためには、世間の風潮に逆らう事も要素の一つではないかと考案しました。
そのアイデアが以下の広告です。
ユーモアを交え、人気のインターネットミームを使用した看板広告を設置した結果、TwitterやTumblr、TechCrunchなどで話題になり、Hipchatは検索数が300%増加し急速に反映するSaaSへと変化しました。このように、ターゲットに適したクリエイティブなマーケティングを実施することで、ブランドの認知度を向上させることができます。 - プロダクト・マーケットフィットが不十分
知名度の問題は解決しましたが、新しい製品や機能が市場のニーズと合致しなければ、アダプションは成功しません。驚くべきことですが、多くのプロダクトマネージャー(製品マネージャー)は、リリースする製品や機能について市場調査を十分に行っていません。
ソフトウェア製品の成功の秘訣とは、何でしょうか?それは世の中に存在するニーズを満たす事です。ユーザーは、自身に関連する問題をその製品で解決できると感じたときに、導入を受け入れます。そうでなければ、わざわざ時間をかけて学習し、日々のワークフローに組み込もうとは思いません。プロダクト・マーケットフィット(Product-Market Fit、製品が市場に適合している状態)とは、製品の価値がターゲットとするユーザーのニーズと一致する状態を指します。
http://productplan.com/
プロダクト・マーケットフィットはシンプルな状態ですが、これを意識し、達成できるのはごく僅かなSaaS企業となっています。スタートアップが失敗する2番目の要因は「市場ニーズに合わなかったこと」だと報告されています(出典:CBinsights)。彼らは自身のアイデアに夢中になり、市場のニーズを誤解している事が多々あるとされています。
解決策: 継続的な市場調査を実施する
SaaSにとって、 プロダクト・マーケットフィットの欠如に対処する姿勢は重要です。方法としては、以下の手段があります。
a.市場調査を行い、製品がユーザーに受け入れられているかどうかを継続的に調査します。
市場調査には、定量調査(データ分析)と定性調査(ユーザーインタビュー)の両方を活用します。
- 定量調査: Paddle, Heap, Custifyなどの分析ツールを使用し、ユーザーの行動データを収集します。Custifyの調査ではカスタマーサクセスプラットフォーム(https://www.custify.com/customer-success-platform )を活用した企業は解約率を最大40%削減できるとされています。(https://www.custify.com/churn-calculator )このツールにより、ユーザーが機能を積極的に利用しているか、あるいは利用頻度が低下しているのは何故かが分かり、製品が市場のニーズを満たしているかが把握できます。
- 定性調査:ユーザーからのフィードバックにより、製品のニーズに関する洞察を得ます。
方法には次のものがあります。
・顧客調査:ユーザーインタビューやアンケートを用い、体験と製品への期待について具体的に質問します。
・ソーシャルメディアでのエンゲージメント分析:TwiiterやLinkedInなどのプラットフォームの会話を分析し、フィードバックに還元します。
・サポートによるやり取り:サポートチームとサクセスチームを活用し、ユーザーとの会話を記録してフィードバックに組み込みます。
・レビューサイトのモニタリング:Trustpilotや Capterraなどのサイトをチェックし、率直な意見を分析します。
・提案ボックスの設置: ウェブサイトにユーザーが求める機能や改善点を提案できるインターフェースを設けます。
b. インサイトを基に適応・方向転換する:
収集したデータやフィードバックを活用し、製品を継続的に改良します。Gartnerのレポートによると、ユーザーのフィードバックをもとに製品を適応させる企業は、顧客満足度が20%向上しています。
c. ケーススタディ: Slackの成功例
Slack はもともとゲーム会社のコミュニケーションツールでしたが、多数の顧客インタビューを実施した結果、企業向けのチームコミュニケーションツールとして幅広い市場ニーズがあることを発見しました。そして方針転換を行い、現在では業界を代表するSaaSプロダクトとなっています。
https://youtu.be/PVohJpvS-IU
これらのアプローチを組み合わせる事で、市場ニーズを満たす以上に、ユーザーに合わせて進歩する製品を開発する事ができ、持続的な成長と顧客の離脱削減を実施できます。 - 製品の価値が顧客に伝わっていない
あなたの会社はリサーチを終えて、大きな成果が期待できるようになったとします。その上で、この問題は致命的な障壁になりかねません。ユーザーがプロダクトの価値を理解できなければ、アダプションは起こらないからです。実際、多くのユーザーは40秒以内に「この製品を使い続けるかどうか」を判断しています。
https://knowledgeone.ca/attention-in-numbers/
顧客がサインアップしても、製品の価値が理解されなければ、使用は放棄されてしまいます。その為、最初から製品の価値を明確にすることが、あらゆるSaaSにとって必要不可欠です。解決策としては、次の方法があります。
解決策: 行動モデリングの科学を利用する
行動科学者 BJ Foggによると、行動の発生には「動機・能力・トリガー(きっかけ)」の3つの要素が必要と述べています。
動機は、ユーザーが行動を起こす(製品を使いたくなる)理由を指します。能力は、使いこなせるだけのスキルや時間があるか(それが可能か)を示し、トリガーは、実際に使用し始めるきっかけになります。いかなる行動もそれが起こるには、これらの要素が組み合わさる必要があるとも述べています。
これが40秒以内に製品の価値を示すこととどう関係するのでしょうか?ユーザーが製品を最も便利に感じるタイミングや、不満を感じるタイミングに注目してみてください。
例えば、ユーザーがより長い試用期間を欲している、多くの機能を望んでいる、オンボーディング中に、より便利に扱えるデモ動画やインタラクティブガイドを必要としている事が明らかになります。これは上記の「動機・能力・トリガー」の要素に当てはめる事ができます。また、ユーザー行動分析などのツールはそのデータの理解に貢献します。
つまりは、ユーザーの行動を分析し上記の要素を組み合わせたオンボーディングを設計することでユーザーがすぐに価値を実感できるようになります。 - モチベーションの欠如
「犬は忠実だが、顧客はそうではない。」 – フィリップ・グレイブス
この言葉は、顧客に対する意識を常に割くべき理由を的確に表しています。犬のように揺るぎない忠義心を持つ顧客はほとんど存在しません。顧客はさまざまな要因によって影響を受け、必ずしも長く留まるわけではないのです。
そのため、企業は顧客に対してロイヤリティ(信頼)を得て、それを維持するための新たな方法を見つける必要があります。その解決策のひとつが、報酬制度の活用です。
解決策:リワード(報酬)を最大限活用する
無条件の信頼は獲得できませんが、人間が「報酬」を好むことは間違いありません。そのため、ロイヤリティプログラムや紹介プログラムを活用することが、顧客の離脱を防ぐ有効な手段となります。
例えば、新しいサービスの早期導入者(アーリーアダプター)に対して報酬を提供し、積極的な利用を促すことができます。報酬の例には、パーソナライズされた特別割引、次回リリースされる有料機能への無料アクセス、限定コンテストへの参加権の他、ギフトカードや特典ポイントの付与などがあります。こうした取り組みによって、ユーザーに「このブランドの一員である」という帰属意識を持たせ、感謝の気持ちを生み出すことができます。
また、満足度の高い顧客を活用した紹介プログラムを導入するのも効果的です。既存顧客に友人・家族・同僚を紹介してもらうことで、新規顧客を獲得すると同時に、紹介者自身のロイヤリティも強化できます。 - ユーザーは変化を嫌う
SaaSの世界でも、新しい製品を導入する際の最大の障害の一つは(現実と同様に)、人々が変化を嫌うことです。特にB2Bの分野では、新しいソリューションの導入に対する投資対効果(ROI)への影響や、既存のワークフローが乱れる懸念から、企業の意思決定者が導入に慎重になるケースが多く見られます。
新しいソフトウェアへの移行がためらわれる理由として、多くの場合、データ損失のリスク、ワークフローの混乱、新しいツールの学習コストの負担が挙げられます。McKinsey & Companyの調査によると、70%の企業が新しい製品を導入してプログラムを変更した後、目標を達成できていないと報告されています。その主な要因は変更に対する従業員の抵抗意識と経営層のサポート不足によるものです。このデータは、新製品導入(つまりは、プログラム変更)への抵抗や懸念を取り払う事がいかに重要かを示しています。
解決策:スムーズな移行を実現する
こうした変化への懸念を払拭し、ソフトウェアの導入をシームレスに進めるには、リスクを最小限に抑えた移行ソリューションを設計することが不可欠です。以下に、具体的な戦略を紹介します。
a. データ移行ツールの提供
・既存システムのデータを安全・簡単に移行できるツールを提供します。
・例として、他のプロジェクト管理ツールからのインポートを簡素化するAsanaのCSVインポート機能は、移行のプロセスを容易にする優れたケースです。
b. 教育とトレーニングの強化
・包括的な教育コンテンツやトレーニングプログラムを提供し、ユーザーがスムーズに新しいツールを使えるようにします。
・ウェビナーの開催(リアルタイムでの質問対応が可能)、チュートリアル動画の提供(視覚的に理解しやすい)、詳細な製品ドキュメントを用意して、学習コストを下げます。
リソースページを参考にしてください。
https://www.custify.com/customer-success-resources
c. 無料トライアルやデモの提供
・ユーザーが実際に製品を使いながら、その価値を確認できる無料トライアル期間やインタラクティブなデモを提供します。
・このアプローチは、導入の影響によりROI(投資対効果)の変動とワークフローの変更・中断の可能性を懸念する企業へ行う事で導入を促す事ができます。
d. カスタマーサクセスチームのサポート
・新規ユーザーの移行をサポートする、専任のカスタマーサクセスチームを配置します。
https://www.custify.com/blog/career-path-guide/
・ユーザーごとにパーソナライズされた活用方法をサポートします。CSMがアクティビティ(行動)をサポートするツールがある場合、フォローアップは数ヶ月で効果が得られるでしょう。
適切なカスタマーサクセス戦略を導入することで、ユーザーの変化に対する不安を軽減し、製品の定着率を向上させることができます。
e. フィードバックループの構築
製品の移行プロセスを改善するためには、ユーザーからのフィードバックを継続的に収集し、それを反映させる仕組みが必要です。
・フィードバックフォームを設置し、ユーザーからの意見に基づいて移行プロセスを継続的に改善する
・このフィードバックに基づいて製品を定期的に更新し、顧客のニーズをより良く満たせるようにする
以上の施策を講じ、具体的なソリューションを提供することで、ユーザーの不安を最小限に抑え、スムーズな導入と長期的な製品導入を促進することができます。重要なのは、変化に対する抵抗を理解し、それに応じてアプローチを調整する事です。
プロダクト・アダプションを支援するツールとテクノロジー
プロダクト・アダプションの件数を増やすには、市場にあるさまざまなツールや技術を活用することが不可欠です。
カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)やカスタマーサクセスソフトウェア(CSS)は、顧客データを一元管理し、パーソナライズされたやり取りを可能にし、カスタマージャーニー(顧客が製品上で辿る過程)を追跡するのに役立ちます。
また、MixpanelやGoogle Analytics などのユーザー分析ツールを活用すれば、ユーザーの行動に関する洞察を得て、課題や改善点を特定できます。
AppcuesやUserpilot などの自動化されたオンボーディングソリューションは、新規ユーザーがスムーズに製品を導入できるようにサポートし、Zendeskなどのコミュニケーションツールを導入すれば、リアルタイムの問い合わせに迅速に対応できます。
ここでは、プロダクト・アダプションをサポートする主要なツールについて詳しく見ていきます。
Custify(カスタマーサクセスソフトウェア)
CRMはプロダクト・アダプションのための強力なツールですが、より深い分析と顧客成功の最大化を目指すなら、カスタマーサクセスソフトウェア(CSS) を導入することが重要です。CSSは、顧客とのエンゲージメントや満足度の向上において円滑に機能し、その導入により極めて高い成果と効率を生み出します。
(https://www.custify.com/ )
(※ここではCRMとCSSの違いについては説明しません。詳しくは
https://www.custify.com/blog/crm-vs-customer-success/ )
その代表例がCustify です。Custifyは、ユーザーのカスタマーヘルススコア(製品の継続利用に関する予測値)をリアルタイムで監視し、解約リスクのあるユーザーを特定し、その懸念に対する適切な介入を行うことが可能になります。
また、自動化されたプレイブックを活用することで、ユーザーの製品利用を促し、カスタマージャーニー(ユーザーの製品利用における過程)の重要なステージへと進められます。
https://www.custify.com/blog/ebook-improve-customer-journey-customer-success-platform/
オンボーディングや機能導入、特定の顧客ニーズへの対応など、Custifyはコミュニケーションとユーザーへの介入を効率化し、適切なガイダンスを送ります。
さらに、顧客を細かくセグメント化し、それぞれのニーズに合わせたキャンペーンやメッセージを展開することができるため、ターゲットに応じた最適なアプローチを実施できます。加えて、NPS調査や詳細なフィードバックフォーム を活用し、ユーザーフィードバックを製品改善に役立て、企業のリソースへと変換します。
分析面でも優れており、ユーザー行動データ、機能導入率、全体的な顧客満足度を可視化し、それを俯瞰で見る事のできるデータを提供します。
Custifyは包括的なアプローチを駆使し、製品の導入を成功させるためのパートナーとして役立ちます。
Userpilot(オンボーディングソフトウェア)
オンボーディング(https://www.custify.com/customer-onboarding-software )はプロダクト・アダプションの基盤となるプロセスですが、その成功を支えるのがUserpilot です。
Userpilotの最大の特徴は、パーソナライズされたオンボーディングフローを簡単に作成できる点 にあります。直感的なインターフェースを備えており、インタラクティブなガイド、ツールチップ、モーダルウィンドウ などを設計し、新規ユーザーが製品の機能を理解し、すぐに価値を感じられるようにします。
また、Userpilotはオンボーディングだけでなく、アプリ内メッセージング機能も提供しており、アップデート情報やアナウンスをユーザーに直接届けることができます。このコミュニケーションによりユーザーのエンゲージメント(繋がり)が向上し、顧客は製品を継続利用する価値を感じられるようになります。
Zendesk(カスタマーサポートツール)
Zendeskは、カスタマーサポートを通じてプロダクト・アダプションを促進するための強力なプラットフォーム です。
特に優れた機能の一つが、チケット管理システムです。これにより、ユーザーの問い合わせ、フィードバックを一元管理し、ユーザーの懸念に迅速に対応できます。このレスポンスの速さにより肯定的なユーザーの反応を得られ、製品の導入を促します。
さらに、Zendeskはリアルタイムチャット機能も提供している為、サポートを求めるために製品のインターフェースから離れずに済みます。このような迅速かつパーソナライズされたサポートがユーザーの製品への信頼を高め、長期のエンゲージメントに繋がります。
Zendeskのような顧客サポートツール(https://www.custify.com/blog/the-top-best-customer-support-software-solutions/ )を統合し、企業が効率的なサポートを提供するとともに問題を効率的に解決し、貴重なフィードバックを収集し続けてエクスペリエンス(ユーザー体験)を向上できます。
まとめ
- プロダクト・アダプション(製品の導入)は、SaaSビジネスの全体の核となる要素です。
- カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の役割は、ユーザーに製品の更なる価値を体験させ、「そうか!」という瞬間を実現できるようにサポートすることです。
- プロダクト・アダプションのプロセスは複雑であり、顧客が新しい製品を受け入れるかどうかは個人の好みやニーズ、期待により異なります。製品との出会いから、顧客の求める要件に合致し日常のワークフローに適応すれば、カスタマージャーニー(製品使用の過程)が形作られます。
- エベレット・ロジャース教授の理論によれば、プロダクト・アダプションには5つの要因が大きく影響します。相対的優位性(Relative Advantage)、適合性(Compatibility)、複雑さ(Complexity)、試用のしやすさ(Trialability)、可視性(Observability) です。これら5つの要素によって、市場において成功しているかが決定付けられます。
- 特に相対的優位性、適合性、複雑さの3つを意識することで、潜在的なアダプション(導入)の障害を特定し、改善の余地を見極め、革新的な製品の市場投入とその定着をスムーズに進められます。
- プロダクト・アダプションの測定には、さまざまな手法を活用しながら、その背後にある数式あるいは指標(KPI、頻度などの計算方式)を理解する必要があります。
- 指標を定めましょう。定量的な分析を行う前に、自社のSaaSにとって「プロダクト・アダプション」(製品の導入)とは、何を意味するのかを明確に定義することが不可欠です。
最後に
お疲れ様でした。この記事はマラソンのように長かったでしょう。ですが、プロダクト・アダプションの複雑さを十分に理解いただけたと思います。これより短ければ、この重要なテーマを十分に説明する事は難しかったと思います。
ご覧のとおり、プロダクト・アダプションはSaaSビジネスの成否を左右する重要な要素です。そして、このプロセスは今もなお変化を続けています。技術は発展し、ユーザーの行動も変わり続けます。しかし、変わらないものもあります。それは企業が適応性を持っていること、ユーザーを深く理解すること、そして継続的な改善に取り組み続ける必要性です。
プロダクト・アダプションの領域は常に変化し続けますが、その中で、あなたのSaaSのジャーニーがより多くのユーザーに受け入れられ、長期的に成功を収めることを願っています。

この記事を書いたライター
Custify
本記事は、ヨーロッパのカスタマーサクセスベンダー「Custify」が運営する「The Custify Blog」(https://www.custify.com/blog/)にて作成された記事です。 アディッシュはCustifyに許諾を得て、翻訳記事を作成・掲載しています。