社員に寄り添った入社オンボーディングを作成してみよう!

安田光希
2025.05.09

入社オンボーディングとは?
入社オンボーディングとは、新しく入社した社員がスムーズに会社や業務に適応し、早期に戦力化するための一連のプロセスや施策をさします。
しかし、「実際に作成しようと思ったけれどどこから手を付けたらいいのかわからない」「作成してみたけれどなんだかしっくりこない」などと思ったことはありませんか?
その「しっくりこない」要因は、大きく分けて以下の3つの課題が考えられます。
- 業務理解のばらつき|同じチーム内でも知識レベルに差が出る
- モチベーションの低下|役割や期待が明確でないことで不安を感じる
- 早期離職のリスク|適応できずに離職を選択する可能性
入社オンボーディングは、新入社員が自社に入って一番最初に目や手に触れるコンテンツになりやすいです。
上記のような課題を阻止し、効率よく組織全体の生産性を上げるためにも入社オンボーディングは必要と考えられます。
では、実際に入社オンボーディングを設計するためにはどのようなことを意識し作成・活用していけばよいのでしょうか?
入社オンボーディングの準備をしよう
入社オンボーディングを利用できるまでは以下の流れに沿って実施します。
- 目的・ゴールの設定(Why)
┗どんな力を身につけてほしいか、何のための研修かを明確にする
- 研修内容の設計(What)
┗必要な知識・スキルを洗い出し、カリキュラムを組み立てる
- 研修方法の選定(How)
┗座学/OJT/eラーニング/グループワーク/動画など、最適な形式を決める
プログラムの設計
①|目的・ゴールの設定(Why)
実際に入社オンボーディングを作成する前に、「そもそもなぜ作成するのか」「作成した入社オンボーディングを経て何を習得してほしいのか」等の「目的・ゴール」を明確にします。
「目的・ゴール」が明確でないと、以下の課題が生じる可能性が考えられます。
- 研修内容がぼやける/方向性が定まらない
- 受講者が“なぜ学ぶのか”わからず、モチベーションが上がらない
- 効果測定ができない
- 時間やリソースの無駄が発生する
- 現場配属後にギャップが生じる
「目的・ゴール」を明確にすることで研修内容だけでなく、作成中に方向性がずれたり思うように進んでいない時でも道をただすことができるので、作業自体をスムーズに進めることができます。
②|研修内容の設計(What)
「目的・ゴール」が明確になったら、今度は具体的にどんな内容を学んでほしいのか、研修の内容を設計する必要があります。
設計することで、効率よく学べるだけでなく指導者が変わったりしても学ぶ内容のギャップも生まれづらくなり、安定して生産性を上げることも可能です。
自社の会社概要の理解や研修受講者の業務に関わるシステムの理解、スキルの習得など、実際にどのような内容の習得、学びが必要なのかこのタイミングで整理しておくことが大切です。
【例】
- 会社概要の理解|自社の掲げている「ミッション」や「ビジョン」等の理解や共有
- 業務フローの説明|各部門の役割や業務全体のプロセスの説明を行います
- 使用ツールの習得|自社で利用しているツールやシステム・業務で利用するツール等
- FAQの提供|よくある質問と対応方法のまとめ
- 整理した内容を基に、分かりやすくまた効率よく段階的に学べる環境に整えていきましょう。
上記はあくまで参考例です。
前段で決めた「目的・ゴール」に基づいた上で、自社のシステムやフロー・営業などに合わせたカテゴリを洗い出すことが大切となります。
③|研修方法の選定(How)
どのような形で学んでもらうのがいいのか、どのような環境だとインプットしやすいのかを考えていきます。
また、単に形式を選ぶだけでなく、初めに設定した「目的」や「研修を受ける対象者」「設計した研修内容に最適な手段」に沿った研修方法を選定しましょう。
また、研修方法を選定する際は、「座学研修」と「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」を組み合わせて設計することでより実践的な学習を行うことができます。
- 座学研修
講義形式で行う知識習得型の研修を指します。
インプット中心の研修のため、基本的な知識や業務の背景などに向いています。 - OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)
実際の業務を通じ学ぶスタイルのため「仕事をしながら仕事をする」研修とも言えます。
スキルや知識のキャッチアップに向いています。
「座学研修」「OJT」以外にも「動画」や「クイズ形式」「ロールプレイ」など、研修内容に合わせて様々な研修方法を組み合わせることで、よりベストな構成に仕上げていくことも可能となります。
【おすすめな組み合わせの一例】
- 会社や業界の理解|座学+動画+クイズ形式での復習
- 業務フローの習得|座学+OJT+演習問題
- 顧客対応スキルの向上|ロールプレイ+フィードバック
- ツール操作|動画マニュアル+実践演習+チェックテスト
コンテンツの作成
1- ③で決めた研修方法を実際に準備・作成を行います。
準備・作成する際に一番考えなければいけないのは、
- 分かりやすさ
- 活用のしやすさ
- アップデートのしやすさ
になります。
研修の対象者はこれから学ぶ内容を全く知らない状態で、専門用語や難しい用語ばかりのコンテンツだと伝わりづらいのはもちろんですが、具体的にどのような点に気を付けなければいけないのでしょうか。
作成時にたった5つの点を意識することで、「分かりやすくて、活用しやすい、アップデートも簡単」なコンテンツを作ることができます。
- 【目的】に合っているか?
- 今から作成するコンテンツは、そもそも当初設定した【目的】にあったコンテンツ・資料なのか?何のために必要なコンテンツ・資料なのか?
- このコンテンツ・資料でどの「ゴール」を迎えることができるのか?
- 【内容】は正確で必要十分になっているか?
- 余計な情報や必要以上の情報が入っていて伝えたい情報が埋もれていないか?
- このコンテンツ・資料で伝えたい「目的・ゴール」に向けて寄り道ばかりで統一性がなくごちゃついたコンテンツ・資料になっていないか?
- 一目で理解できる【見やすさ】なのか?
- 1ページに詰め詰めになりすぎて情報が入りづらいページになっていないか?
- 利用しているツールを活用して目的や詳細が伝わる資料になっているか?
- 学習者が次に何をすべきか【アクション】が明確になっているか?
- 「コンテンツ・資料に触れて終わり」ではなく、触れたことで次にどのような行動をすべきか、何を次に学んだらいいのかなどのアクションが迷子にならずに明確になっているか?
- 次のアクションはわかっていてもそのアクション先がどこなのか、明確に指示で来ているか?
- 最新のコンテンツ・資料にアップデートしやすい【更新性】になっているか?
- 1度作って終わりではなく、定期的に更新することが前提で作成できているか?
- このコンテンツ・資料は最終いつ更新したのか明確になっているか?
この【目的】→【内容】→【見やすさ】→【アクション】→【更新性】の順番でチェックを行うことで、よりスムーズに作成ができるだけでなく、作成時から「分かりやすく、見やすく、アップデートしやすい」コンテンツを作成することもできます。
準備したオンボーディングを運営しよう!
準備が完了したら、実際に運営を開始していきます。
入社オンボーディングは作成が完了したら対応終了ではなく、「実際に利用してもらいレビューをもらって改善」を繰り返すことで、より良い入社オンボーディングとなっていきます。
【入社オンボーディングの運用イメージ】
- 実施・運用
研修をスムーズに進めるためのスケジュール管理、進捗チェック、質問対応等を行います。
実施方法は、「1on1ミーティング」や「アンケート」「OJT内容の見直し」等があります。
自社の社内体制などに合わせて事前に設定しておくとスムーズです。
- フィードバックと評価
研修後の理解度チェックやアンケートを通じて改善点を把握します。
【例】- 「FAQや資料の更新」|新しい課題に即応できるように内容を見直し
- 「OJT内容の見直し」|最新現場に合わせたトレーニング内容に更新
- 「動画やコンテンツのリニューアル」|業務プロセスの変更を反映
- 振り返りと改善
参加者の声や成果をもとに、次回に向けて内容や進め方のブラッシュアップを行います。
より「分かりやすく、見やすく、アップデートしやすい」入社オンボーディングの内容に日々更新できるように振り返りと改善を繰り返していきます。
まとめ
入社オンボーディングは「1度作成したら終わり」ではなく、常に自社や現場の最新状況だったり、研修受講対象者の状態に合わせたコンテンツでなくてはいけません。
しかし、作成する側は自社の業務やシステムに一定理解がある自分たちが作成します。
どうしても一定理解してしまうと、何をどのようにかみ砕くことで「分かりやすく、見やすい」そして「離脱せず学びきりたい」となるコンテンツにすることができるかの判断基準が難しくなっていきます。
常にアップデートを行うことで、入社オンボーディングとして少しでも早く自社の生産性を上げることができますし、入社オンボーディングの対象者も目標を見失わずに前進して新たな目標を見つけやすくなります。
既に作成されている方も、これから作成される方も、ぜひ「社員に寄り添った」入社オンボーディングを作成・見直ししてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたライター
安田光希
接客業(toC)にて店長としてスタッフのマネジメント・複数店舗の運営管理などを経験。より相手のために人のために自分ができる事をしたいと思いカスタマーサクセスとしてアディッシュに入社。