インサイドセールスとカスタマーサクセスの違い|営業分業化の豆知識
新規開拓や顧客育成、商談、契約、フォローアップと一気通貫型の営業が主流でしたが、営業効率化が図れるとして分業化型営業が主流となってきています。
- マーケティング部門:見込み顧客の開拓
- インサイドセールス部門:見込み顧客の育成
- フィールドセールス部門:商談・契約
- カスタマーサクセス部門:フォローアップ
インサイドセールス部門とカスタマーサクセス部門を立ち上げる必要がありますが、2つ部門の違いは何なのでしょうか?営業分業化を成功させるためにも、部門の特徴を確認しておきましょう。今回はインサイドセールス部門とカスタマーサクセス部門の違いをご紹介します。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの違い
インサイドセールス部門 | カスタマーサクセス部門 | |
目的 | 見込み顧客の育成 | LTVの最大化 |
KPI | ・架電数 ・架電率 ・着電率 ・メール開封率 ・商談数 ・商談化率など |
・解約率 ・顧客維持率 ・オンボーディング完了率 ・アップセル・クロスセル ・LTV ・NRR(売上継続率) |
役割 | 見込み顧客の関係構築 | 既存顧客との関係構築 |
業務内容 | ・ヒアリング ・情報提供 |
・サービス導入支援 ・業務プロセス改善の提案 ・サポート |
スキル | ・ヒアリングスキル ・信頼関係構築スキル ・自社商品の知識 ・情報収集力 ・チームワーク力 |
・コミュニケーションスキル ・分野に特化した専門知識 ・分析スキル ・コンサルティングスキル ・ファシリテーションスキル |
インサイドセールスとカスタマーサクセスは「目的」「役割」「KPI」「業務内容」「スキル」が違います。 以下で詳しく解説いたします。
目的
インサイドセールスの目的は見込み顧客の育成です。見込み顧客に対してメールや電話でアプローチを図り、購買意欲を高めます。見込み顧客の購買行動プロセスの段階(認知・興味・関心・比較・検討・商談)を踏まえて最適なアプローチを図り商談化を目指します。
その一方で、カスタマーサクセスはLTV(顧客生涯価値)の最大化です。自社の商品・サービスを購入してくれた顧客のフォローを行い、信頼関係を構築して長期的に取引してもらうことを目指します。既存顧客との信頼関係を深めれば、アップセル(ランクが上の商品を購入してもらうこと)やクロスセル(別の商品を購入してもらうこと)も期待できます。
KPI
2つ目がKPI(重要業績評価指標)です。つまり、評価の指標です。
インサイドセールス部門のKPI
架電数 | インサイドセールスの電話件数 |
CPH(Cost Per Hour) | 1時間あたりの電話件数 計算式:1時間の対応件数÷稼働時間 |
コンタクト率 | 電話をかけて顧客につながった割合 計算式:つながった件数÷コール数 |
メール開封率 | メールが開封された割合 計算式:開封したメール件数÷送信メール数 |
商談数 | インサイドセールスの商談数 |
ATT(平均通話時間) | 顧客対応の電話にかかった時間 通話時間の合計÷総コール数 |
AHT(平均処理時間) | 電話がつながるまでの時間や通話記録などの処理時間 計算式:平均通話時間+平均処理時間 |
インサイドセールス部門を評価するためのKPIには「架電数」「CPH」「コンタクト率」「メール開封率」「商談数」「ATT」「AHT」があります。
インサイドセールスの行動量や商談数で上手く機能しているか評価します。
カスタマーサクセス部門のKPI
解約率 | 顧客が契約中のサービスを解約した割合 計算式:解約者数 ÷ 総顧客数 × 100 |
顧客維持率 | 一定期間中に契約している顧客の割合 計算式:(期間終了時の顧客数 - 期間中の獲得顧客数) ÷ 期間開始時の顧客 × 100 |
オンボーディング完了率 | 顧客がサービスを導入・運用を始めてから定着するまでの期間 計算式:オンボーディングが完了した企業数 ÷ オンボーディング期間の全企業数× 100 |
アップセル・クロスセル | アップセルやクロスセルの件数 |
LTV | 顧客が自社にもたらす利益 計算式:平均顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間 |
NRR(売上継続率) | 既存顧客の売上と前年度と比べた際の増減 計算式:前年度の顧客の今月のMRR ÷ 前年度の顧客の同月のMRR × 100 |
その一方で、カスタマーサクセス部門を評価するためのKPIは「解約率」「顧客維持率」「オンボーディング完了率」「アップセル・クロスセル」「LTV」「NRR(売上継続率)」などです。自社の商品・サービスを継続して利用してもらえているか、顧客の信頼を獲得できているかを評価します。
役割
3つ目が役割です。
インサイドセールスの役割は、見込み顧客に対してメールや電話でコミュニケーションを取り、購買意欲を高めて商談化させることです。その一方で、カスタマーサクセスの役割は既存顧客との関係構築です。顧客をサポートして、ファンになってもらうことを目指します。
業務内容
4つ目が業務内容です。
インサイドセールスの業務内容は「ヒアリング」「情報提供」です。メールや電話を活用して、見込み顧客の購買フェーズ(認知・興味・関心・比較・検討・商談)を踏まえてコミュニケーションを取り、商談化を目指します。
その一方で、カスタマーサクセスの業務内容は「サービス導入支援」「業務プロセス改善の提案」「サポート」です。お客様が商品・サービスを購入してメリットが得られるように能動的に働きかけていき、顧客満足度を高めていきます。
スキル
最後はスキルです。
インサイドセールスの役割は見込み顧客の育成のため、ヒアリングスキルや信頼関係構築スキルが求められます。また、見込み顧客が求めている情報を提供するために、自社商品や他社商品の情報収集力も欠かせません。
商談化した見込み顧客を営業部門に引き渡すため、チームで目標を達成する意識が高いチームワークを大切にする人が向いています。
カスタマーサクセスの役割は、既存顧客と信頼関係を構築することであるため、コミュニケーションスキルや専門知識が求められます。既存顧客に対して、どのような支援を行えば喜んでもらえるか計画を立てるため、分析スキルやコンサルティングスキル、ファシリテーションスキルなども求められます。
インサイドセールスとカスタマーサクセスで成果を出すコツ
次にインサイドセールス部門やカスタマーサクセス部門を立ち上げて成果を出すコツをご紹介します。
部門間連携の仕組みを整える
営業プロセスの分業化では、部門間連携が欠かせません。部門間が分断されると、案件の取りこぼしなど弊害が生まれます。
そのため、部門間で定期的に情報共有する仕組みを整えておきましょう。
【参考例】
マーケティング部門 | 今後のマーケティング施策を共有し、どのような顧客を獲得するか話し合う |
インサイドセールス部門 | 見込み顧客の育成の進捗状況や温度感、課題点を共有する |
フィールドセールス部門 | 顧客への営業進捗状況やヒアリングすべき課題点を共有する 受注や失注から成功要因や失敗要因を確認し、今後の施策に反映する |
カスタマーサクセス部門 |
支援顧客の成功要因や現状のサポート状況を共有する今後の施策に反映する |
The Modelを導入する
営業プロセスの分業化の成功させるために、組織全体の目標と各部門の目標を設定しましょう。目標設定する際はTheModelを導入しましょう。
【The Model】
マーケティング部門 | 来訪者数×獲得率=見込顧客数 |
インサイドセールス部門 | 見込顧客数×商談化率=商談数 |
フィールドセールス部門 | 商談数×受注率=受注数 |
カスタマーサクセス部門 | 受注数×更新率=継続数 |
The Modelを導入すれば組織全体の目標を達成するための各部門の役割が明確になり、他部門との連携が強化できます。
また、どの部門の数値が達成できていないかを測定すれば、営業プロセスの中の弱点がわかるようになります。
顧客情報の共有
顧客情報は氏名や電話番号、購入実績などの基本情報だけでなく、やりとりの履歴を残しておくようにしましょう。
CRMやSFAのツールで情報管理する際は入力が簡単で、リアルタイムで情報共有できるものを選ぶと部門間連携が上手くいきます。
支援会社の活用
営業プロセスの分業体制を整えるためにはノウハウが必要です。
インサイドセールス部門の立ち上げ方やトークスクリプトの作成など、分業体制の構築に悩んだら支援会社を利用することをおすすめします。
支援会社は、営業プロセスの分業化の支援実績を豊富に持っているため、どのようなフローで営業プロセスを切り替えればよいかサポートします。
そのため、社内で完結が難しそうと感じたら、支援会社へ相談してみてください。
インサイドセールスとカスタマーサクセスに関する質問
最後に、インサイドセールスとカスタマーサクセスの違いに関する質問をご紹介します。
Q.インサイドセールスとカスタマーサクセスの定義は?
インサイドセールスは、電話やメールを用いて見込み顧客とコミュニケーションをとる内勤営業です。カスタマーサクセスは、サービス導入支援などを通じて、既存顧客との信頼関係を構築していく仕事です。
Q. インサイドセールスとカスタマーサクセスの平均給与は?
インサイドセールスとカスタマーサクセスの平均給与は同じぐらいです。
Indeedが公表している給与額は、インサイドセールスが約458万円、カスタマーサクセスが約504万円です。コンサルティングスキルが求められるカスタマーサクセスの年収の方が少し高くなっています。
インサイドセールスとカスタマーサクセスの違いを理解しておこう
業務属人化や営業効率化により分業化型営業が主流となってきています。インサイドセールス部門やカスタマーサクセス部門を立ち上げる企業が増えてきていますが、2つの部門は「目的」「KPI」「役割」「業務内容」「スキル」が異なります。そのため、それぞれの特徴を理解した上で、営業プロセスの分業化を行いましょう。