カスタマーサクセスの業務プロセスとは?組織の立ち上げ手順と要点を解説
サブスクリプションの台頭により、カスタマーサクセスが注目されています。しかし、比較的新しい取り組みのため、社内で具体的なプロセスが確立していないケースも多いでしょう。顧客のサービス利用を支援するためにも、組織内で明確なプロセスを確立してカスタマーサクセスをおこないましょう。本記事では、カスタマーサクセスの業務プロセスを、組織の立ち上げ手順やポイントをあわせて解説します。カスタマーサクセスと関わりが深いTHE MODELについても解説しますので、最後まで読んでカスタマーサクセスを実現させましょう。
【基本概要】カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは、企業が「顧客の成功」を支援することを意味します。企業が顧客に対して積極的にアプローチをおこない、顧客が抱く成功を実現できるようにサポートすることが目的です。カスタマーサクセスを実現できれば、顧客の満足度向上・顧客ロイヤリティの強化・LTVの向上・収益の拡大など、幅広いメリットが期待できます。自社のサービスの利用者数・定着率を向上させて業績アップさせるために、カスタマーサクセスの実現が必要です。
カスタマーサクセスとTHE MODELの関係
カスタマーサクセスは「THE MODEL」を説明する際に、よく耳にするビジネス戦略です。カスタマーサクセスとTHE MODELの関係性を理解するためには、「THE MODELとは何か」概要を理解しておく必要があります。カスタマーサクセスを実現させるため、THE MODELとの関係性を理解しておきましょう。
THE MODELとは?
THE MODEL(ザ・モデル)とは、セールスフォース・ジャパンが活用してきた営業プロセスモデルです。THE MODELでは、営業プロセスを4段階に切り分けて顧客獲得から継続的な顧客関係の構築・定着をおこないます。THE MODELとカスタマーサクセスの関係性は、4つに切り分けられた営業プロセスの中にカスタマーサクセスが含まれていることです。カスタマーサクセスを重要なプロセスとして捉えているTHE MODELは、カスタマーサクセスを実現させるために切り離せません。
THE MODELの全体像
THE MODELは以下4つのプロセスから構築されています。
- マーケティング
- インサイドセールス
- フィールドセールス
- カスタマーサクセス
THE MODELの全体像を把握するため、各プロセスの役割を確認しておきましょう。
マーケティング
マーケティングは、ターゲット市場や顧客のニーズを分析し、効果的なマーケティング戦略を立案・実行するプロセスです。広告・プロモーション・ブランド戦略などにより、顧客の興味関心を引いてリード獲得を目指します。主に潜在顧客をターゲットとして、リード獲得によって顧客層を拡大する重要な要素です。THE MODELでは、リード獲得段階ごとに顧客をグループ分けして、ステージに応じたマーケティング戦略を実行します。
インサイドセールス
インサイドセールスは、リモートやオンラインで顧客とコミュニケーションを取り、リードを育成する役割を果たします。電話やメールによるアプローチ、デモンストレーションの実施などにより、製品・サービスの魅力を伝えるプロセスです。マーケティングによって獲得したリードを育成し、顧客の購買意欲を高めるTHE MODELにおいて2段階目のプロセスです。
フィールドセールス
フィールドセールスは、直接顧客と訪問して対面でのセールス活動をおこなう商談管理と受注の役割を担っています。顧客のニーズを理解し、適切なソリューションを提案することで、契約締結・取引成立へつなげるプロセスです。顧客との信頼関係を構築したり顧客のニーズを把握したりと、THE MODELの中で新規顧客の獲得に関わる重要な役割を果たします。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、THE MODELの中でも重要な要素です。顧客の成功を支援するプロセスとして、製品・サービスの導入後の支援をおこないます。カスタマーサクセスは、顧客満足度や成果を最大化して顧客ロイヤリティを向上させることが目的です。そのため、顧客との関係を構築し、サポートやヘルプデスク・トレーニングなど、サービスを利用するにあたって疑問や不安を解消する役割を担います。THE MODELでは、カスタマーサクセスが最も重要なプロセスだと捉えており、積極的に顧客と関わることで顧客満足度・LTVの向上へとつなげます。
カスタマーサクセス実現のための業務プロセス
カスタマーサクセスを実現するためには、業務プロセスを明確にする必要があります。カスタマーサクセス実現のために必要な業務プロセスは、次の通りです。
- 顧客像を整理
- カスタマーサクセスのフェーズと成功を定義
- フェーズごとの施策を策定
- 施策の実行
- 効果の検証
以上のプロセスを適切に実施すれば、顧客の成功を支援して長期的な関係を築けます。カスタマーサクセス実現のために、5つのプロセスを確認しておきましょう。
プロセス1.顧客像を整理
まず、カスタマーサクセスを実現するために、対象となる顧客像を明確にしましょう。顧客となるターゲット層・ニーズ・課題を把握すれば、カスタマーサクセスで実践すべき対応を明確化できます。カスタマーサクセスを実現するため顧客像を整理し、顧客に最適なサービスを提供するための基盤を構築してください。
プロセス2.カスタマーサクセスのフェーズと成功を定義
カスタマーサクセスの対象となる顧客像を整理した後は、フェーズと成功基準を定義します。カスタマーサクセスの進行状況を段階的にわけて、各フェーズごとの成功基準を設定しましょう。なお、カスタマーサクセスのフェーズは、次の通りです。
- オンボーディング(導入支援・立ち上げ)
- アダプション(定着支援)
- リテンション(顧客維持)
- アップセル・クロスセル(更新・販促支援)
各フェーズごとに成功目標を定義しておけば、顧客の成果に合わせた具体的な対策を可視化できます。
プロセス3.フェーズごとの施策を策定
各フェーズで定めた成功目標を達成するために、フェーズごとの施策を策定しましょう。顧客が各フェーズで直面する課題やニーズに応じて、適切なアクションやサポートを提供できるよう施策を考えます。例えば、導入支援ではセットアップやトレーニングを実践し、定着支援のため利用者の口コミを収集・分析しサービス改善をおこないましょう。どのような施策を実践すれば、顧客がサービスを利用しやすくなり問題を解決できるようになるのか、起こり得る課題を洗い出しておくことが大切です。
プロセス4.施策の実行
フェーズごとの施策を策定した後は、実際に施策を実行する段階です。カスタマーサクセスの施策を実行するため、関係部門や担当者に連携を求めましょう。カスタマーサクセスを実現するためのタスクや役割を洗い出し、担当者を割り当てて実行する体制を整えます。プロセス3で策定した施策をいきなり成功させることは難しく、実際に実行してから課題や問題点が浮かび上がるケースが多いです。カスタマーサクセス業務を進めながら課題を見つけて、より質の良いサービスを提供できるよう改善していきましょう。
プロセス5.効果の検証
カスタマーサクセス実現の最終プロセスでは、実行された施策の効果を評価し達成度を検証します。カスタマーサクセスの効果を検証することは、顧客の成功やビジネス目標の達成度を客観的に測定し、改善していく上で必要不可欠です。顧客やカスタマーサクセス業務の担当者から、フィードバックを収集して施策を改善していきましょう。また、高い効果を発揮できた施策と効果が低かった施策を分類して、精度の高いカスタマーサクセスを実現できるよう、効果を分析しておいてください。カスタマーサクセス実現のために施策を実行して効果を検証するプロセスは、何度も繰り返して長期的に改善しなければなりません。定期的に効果を検証して、より質の高いカスタマーサクセスを実行できるよう施策を改善し続けましょう。
カスタマーサクセス組織の立ち上げ手順
カスタマーサクセスを効果的に発揮するには、専任の組織を立ち上げて業務に注力させる必要があります。なお、カスタマーサクセス組織を立ち上げるためには、明確な手順と計画が必要です。カスタマーサクセスを実現させたい企業は、次のカスタマーサクセス組織の立ち上げ手順を確認しておきましょう。
- カスタマーサクセス組織の目的を設定
- 組織に必要な機能を設定
- カスタマーサクセス人材の確保
手順1.カスタマーサクセス組織の目的を設定
カスタマーサクセス組織を立ち上げるために、まずは明確な目的を設定しましょう。チームの足並みが揃わず、思うように成果を上げられません。また関連部門と業務が重複するなどのムダにつながるため、現状の課題や組織体系を考慮しつつ目的を設定します。なお、カスタマーサクセス組織の目的として、以下のようなものが考えられます。
- 顧客満足度の向上
- オンボーディング完了率の向上
- アップセルやクロスセルの促進
- LTVの向上
目的を明確にし具体的な目標を設定すれば、取り組むべき業務プロセスを可視化できます。カスタマーサクセスの目的を定めて、組織が一丸となり業務プロセスを実行しましょう。
手順2.組織に必要な機能を設定
目的を設定した後は、カスタマーサクセス組織に必要な機能を設定します。カスタマーサクセスの目的を達成するために必要な役割や業務を明確にしておかなければ、組織の人選や施策の考案ができません。どのような人材・役割が必要になるのか、組織に取り入れるべき人選を考えておきましょう。また、必要なツールやシステムも考慮し、効果的なサポートを提供できるよう準備しておいてください。
手順3.カスタマーサクセス人材の確保
カスタマーサクセス組織の立ち上げには、適切な人材の確保が欠かせません。そのため、採用プロセスやトレーニングプログラムを整えて、カスタマーサクセス実現に向けて適切な人材を確保しましょう。カスタマーサクセスの知見がある人材が社内にいる場合は、組織メンバーに任命しやすいです。また、知見がない場合でも、行動力やコミュニケーション力などの能力面が優れた人材は組織を牽引してくれる可能性が高いため、積極的に確保すると良いでしょう。社内に適任者がいない場合は、新たにカスタマーサクセス人材を採用するか外部の企業への委託を検討しましょう。
カスタマーサクセスの組織を立ち上げる際のポイント
カスタマーサクセスの組織を立ち上げる際には、成功するためのポイントを押さえることが重要です。カスタマーサクセス組織を立ち上げる際のポイントは、以下の通りです。
- タイムリーな評価体制を構築
- 他部門と連携し全社で取り組む
- まずは小さく始め都度修正を繰り返す
- ナレッジを蓄積し業務の属人化を排除
それぞれのポイントを押さえて、カスタマーサクセスを成功させましょう。
タイムリーな評価体制を構築
カスタマーサクセス組織を立ち上げる際には、タイムリーな評価体制の構築が重要です。顧客のニーズや課題は日々変化していますので、組織の効果を定期的に評価し、改善・改良をおこなわなければなりません。定期的な評価やミーティングの機会を設けて、顧客のフィードバックや運営データから現状の課題を見つけましょう。タイムリーな評価体制を構築して、顧客のリアルな声を反映した改善策を実施することが大切です。
他部門と連携し全社で取り組む
カスタマーサクセスは、単独の組織だけではなく他部門と連携して実現させるビジネス戦略です。カスタマーサクセスの組織を立ち上げる際には、他部門と連携し全社で取り組んでください。営業・マーケティング・プロダクト開発など異なる部門が連携して、情報共有や協力体制を確立させることが大切です。社内全体でカスタマーサクセス組織を立ち上げれば、顧客に対する一貫したサポートを実現できます。
まずは小さく始め都度修正を繰り返す
カスタマーサクセス組織の立ち上げは、まず小さく始めることが大切です。大規模な一斉導入よりも、限られたリソースで試行錯誤をおこないながら、着実に進めていきましょう。初期段階では、効果のある施策やプロセスを特定し、都度修正を加えながら組織を立ち上げていってください。施策の策定・フィードバックの分析・業務プロセスの改善を繰り返しながら、組織を段階的に拡大して、より効果的なカスタマーサクセスを実現できる組織へと成長させていきます。
ナレッジを蓄積し業務の属人化を排除
カスタマーサクセス組織の立ち上げにおいて、ナレッジの蓄積と共有は非常に重要です。個々のメンバーが持つ知識や経験を組織全体で共有すれば、業務の属人化を排除して一貫性のあるサポートを提供できます。ナレッジ管理システムの導入やドキュメント整備、定期的な情報共有ミーティングを実施して、組織内のコミュニケーションを向上させ業務の標準化をはかりましょう。さらに、顧客のフィードバックや成功事例を分析して、課題解決や成果向上ができるよう業務プロセスを見直してください。
まとめ:自社に適したカスタマーサクセスを立ち上げよう
カスタマーサクセスのプロセスを策定するには、まずTHE MODELとの関係性を理解しておきましょう。
THE MODELの4つに分類されたプロセスの中で、最終プロセスとなるカスタマーサクセスが重要視されています。カスタマーサクセスの業務プロセスは、顧客像を整理しフェーズと成功を定義することから始まるものです。
フェーズごとの施策を実行して効果の検証を繰り返しながら、より精度の高いカスタマーサクセスのプロセスを確立してください。カスタマーサクセスを実現させるには、社内全体で取り組みナレッジを蓄積して業務の属人化を排除する努力が必要です。
最適な業務プロセスを策定して、業務効率・顧客満足度を向上させましょう。