クロスセルで活用する2つの分析方法を紹介!メリットや注意点を解説
山田理絵
2024.10.24
クロスセルは、顧客単価の向上や売上の増加、ひいては収益の拡大につながる重要な施策です。しかし、クロスセルを実行するにあたり、「どのようにして顧客を分析すればいいの?」「効果的な進め方を知りたい」とお考えの方も多いはず。本記事では、クロスセルで活用すべき2つの分析方法と、施策を実行するための手順を解説します。
クロスセルとは?
クロスセルとは、商品の購入を検討している顧客に対して、関連商品を提案し一緒に購入してもらうセールス手法のことです。例えば、飲食店で注文する際、ドリンクや期間限定の商品をすすめられた経験がある方も多いはず。実はこれも、クロスセルの一種なのです。クロスセルは、単に関連商品をすすめるのではなく、提案する商品やサービスが顧客のニーズに合っていることが重要です。顧客が実際に欲しいと思える商品やサービスを提案しなければ提案はとおらず、購入に至らないためです。クロスセルは、商品・サービスを提供する企業側のみならず、顧客にとってもメリットがあります。企業は、商品やサービスのセット販売などによって、単価や利益を上げられます。一方顧客は、自分が認知していない商品を提案してもらえるため、新しい商品を見つけられるでしょう。
クロスセルで活用する2つの分析方法
クロスセルで活用する分析方法を2つ紹介します。
- RFM分析
- LWP分析
それぞれ特徴を解説します。
1. RFM分析
RFM分析は、Recency(直近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標で、顧客をグループに分類して分析する方法です。顧客のスコアをもとに、クロスセルやアップセルなどのマーケティング施策を立案します。例えば、直近に注文があり、購入頻度が高く、なおかつ購入金額が多い顧客は、スコアが高い優良顧客と判断できます。一方、最後の注文から期間が経過しており、なおかつ累計の購入金額が多い顧客は、再購入の可能性がある重要度が高い休眠顧客と判断できます。
前者の優良顧客は、ロイヤルティをさらに高めるために、先行して新商品を提案するなどのクロスセル戦略が効果的でしょう。マーケティングやセールスのリソースを大きく割かなくてもリピートする可能性も高いため、見極めながらにはなりますが後者の休眠顧客へのリソースを割いていくケースも少なくありません。
後者の休眠顧客は、購入頻度が低い理由が何かあるはずです。そのため、マーケティングやセールスからアプローチをかけていって再度自社商品・サービスに興味を持ってもらう必要があります。クロスセル戦略を策定する際にRFM分析を用いることで、ターゲットが明確となり実施すべき施策が見えてきます。さらに、顧客グループごとの優先順位が明確になるため、限られた自社のリソースを効率的に投下できるでしょう。
2. LWP分析
LWP分析は、List(顧客リスト)、What(行動内容)、Pace(行動頻度)の観点から、クロスセルを行う顧客を抽出する方法です。LWP分析は下記の手順で行います。
- 顧客分析
- マッピング・ランク付け
- 顧客の選定・アクションプランの立案
初めに、分析対象となる顧客を洗い出し、顧客の状況を判断します。顧客の状況を理解した後、マッピングとランク付けを行います。マッピングでは、拡大余地と実績の2軸を元にA〜Dまでのランクに分類します。ランクの概要は下記のとおりです。
- ランクA:実績も多く拡大余地もある
- ランクB:開拓営業先候補
- ランクC:現状維持が最優先
- ランクD:ビジネスの余地が見込めない顧客
顧客の分類が終わると、顧客の選定とアクションプランの立案を行います。ランクAから順番に売上の貢献が高い営業先です。ランクAを最優先にアクションプランを実施し、新商品の提案やクーポンを配るなどのプランを行いましょう。ランクAから順番にアクションを行うことで、効率的なクロスセルが可能です。
クロスセルを実行するための基本手順3ステップ
クロスセルを実行するための基本手順の3ステップを紹介します。
- 顧客情報を分析する
- 提案する商品を決める
- シナリオプランを考える
基本の手順を踏み、顧客の満足度を高めるクロスセルを実行しましょう。
1. 顧客情報を分析する
まずは、既存顧客の属性や購買履歴、問い合わせ内容を分析します。クロスセルを実行するためには、顧客情報を分析することが重要です。顧客情報を分析することで、顧客のニーズや好みを理解でき、顧客に合わせた商品やサービスを提供できます。購買履歴のデータを分析することで、どの商品がよく売れているか、どの商品がセット販売に適しているかなどを把握可能です。顧客情報を分析して、企業の売上につながる効果的なクロスセル施策を実施しましょう。
2. 提案する商品を決める
クロスセルを実行するときには、ユーザーの課題やニーズに沿った商品を選定することが重要です。ターゲットごとに、提案する商品を決めることで、顧客に適した商品を提案できます。クロスセルでは関連商品を提案するため、顧客が新しい商品を購入できます。提案する商品を決めることで、顧客のニーズに合わせた商品を提供し、より満足度の高い買い物体験を提供可能です。
3. シナリオプランを考える
クロスセルを実行するためには、シナリオプランを考えましょう。シナリオプランを考えることで、顧客が商品を購入するタイミングや購入経路を予測し、効果的な提案方法を検討できます。シナリオプランは、顧客のニーズに合う商品の提案が可能です。顧客に効果的な提案をするために、顧客のニーズを考えなければなりません。顧客が商品を購入する際に必要な情報を提供することで、クロスセル施策の効果を高めることができます。
クロスセルを行うメリット5選
クロスセルを行うメリットを4つ紹介します。
- リピーターを確保しやすい
- 新規顧客を無理に開拓する必要がなくなる
- 収益性を向上できる
- 単体で売れにくい商品が売れやすい
1. リピーターを確保しやすい
クロスセル戦略は、リピーターを確保しやすい点がメリットです。クロスセル戦略を行うことで、顧客が新しい製品やサービスを購入する機会が増え、企業の製品に対して関心を持ちやすくなります。例えば、スマートフォンを購入する顧客に対して、スマートウォッチやヘッドフォンなどの周辺機器を推奨できます。新しい製品に触れることで、企業に関心を持ち、顧客はリピーターになる可能性が高いです。
2. 新規顧客を無理に開拓する必要がなくなる
クロスセル戦略が成功すると、客単価が上がるため、新規顧客を無理に取りに行く必要がなくなります。クロスセル戦略を行うときに、顧客の満足感を上げることが条件です。顧客が企業に対して高い評価を持つことで、自社の製品を購入してくれるようになります。例えば、自動車メーカーが顧客に車両購入時にオプションとして提供するカスタマイズパッケージは保険商品を通じて、顧客の満足度を向上できます。クロスセル戦略を行って、顧客を満足させることで、新規顧客を無理に開拓する必要がなくなるでしょう。
3. 収益性を向上できる客単価を上げられる
クロスセル戦略を取ることで、1人のお客様が購入する商品の金額が上がるため、収益性を向上できるというメリットがあります。上で説明した「新規開拓」とも関わりがありますが、新規でお客様を獲得しようと思うとコストがかかります。リードを獲得するためのマーケティング費用や、受注するまでの商談の過程でセールスの人件費や時間が必要になります。一方でクロスセル戦略を取ると、もちろん新規は必要ですが必要以上にパワーをかける必要がなくなります。既存顧客はすでに自社のことやものを知っていてくれており、また自社としても顧客のことを理解しているため、新規獲得と比較すると受注までにかかるコストを縮小できる可能性があります。
4. 単体で売れにくい商品が売れやすい
クロスセル戦略では、単品で売りにくい商品を提案しやすいです。一度商品の購入を決めている顧客に対して、追加提案をすることで購入してもらいやすくなります。例えば、メガネのレンズや付属品についても、メガネ本単を買うときに一緒におすすめすると、購入してもらえる可能性が高いです。単体で売れにくい商品でも、セットで提案することで売れることがあるため、クロスセル戦略を実施しましょう。
クロスセルの3つの注意点
クロスセルの注意点は下記の2つです。
- 顧客目線で考える
- 顧客満足度の向上を重視する
クロスセルを行う際の参考にしてください。
1. 顧客目線で考える
必要性を感じない商品・サービスを提案され続けると「押し売りされている」という印象が強くなります。クロスセル提案をする際には、顧客のニーズを考慮し、顧客目線で提案することが重要です。顧客が商品やサービスを購入する際には、自分自身の利益やニーズに合わせて選択を行います。クロスセル提案をする際には、顧客目線で考え、顧客が求めているメリットや利便性を重視した提案を行いましょう。顧客目線で提案することで、顧客の信頼を得ることができ、クロスセルの提案が成功する可能性が高まります。
2. 顧客満足度の向上を重視する
目先の売上だけにとらわれず、「クロスセルによって顧客満足度が高まるか」という観点から戦略を決めることが大切です。クロスセルを提案する際、顧客は新しいものを提案されるわけですから、「本当に自分にとって必要なものなのか」を検討します。その際、現在の課題や悩みからかけ離れたものを提案されると「本当に自分たちのことをわかっているのか」と不安や疑問が生まれかねません。顧客の課題や悩みに沿ったものを提案することで、仮にクロスセルが達成されなくても、顧客にとっては自分たちを理解して提案してくれていることがプラスに捉えることができます。
クロスセルの成功事例3選
クロスセルの成功事例を3つ紹介します。
- マクドナルド
- Salesforce
- パナソニック
自社でクロスセルを行うときの参考にしてください。
1. マクドナルド
マクドナルドは、世界的に人気なファストフード店です。マクドナルドは、商品を購入する際に「一緒にポテトはいかがでしょうか」と提案を行います。商品を購入するときに、新しい提案を受けることで、顧客は提案を受け入れやすいです。飲食店で活用できる方法のため、マクドナルドを参考にしてクロスセルを実践しましょう。
2. Salesforce
Salesforceは、SFAやMAツールを提供している会社です。Salesforceは様々な機能を、それぞれ購入することができるため、顧客によっては機能の一部のみを購入するケースも多いです。クロスセルの方向性としては例えば、顧客管理の機能をはじめに購入した顧客に対して、顧客情報が溜まってきたタイミングでMAの機能を提案するようなイメージです。ツール内に蓄積している顧客メールアドレスに対して、メールを送れるようになります。他ツールで実施している顧客の場合でも、Salesforce内で完結できるためメルマガの開封状況などがシームレスに顧客情報に連携できるため、無駄な工数がなく効率的にかつ効果的に顧客管理を実施できるメリットを訴求して、自社への切り替えを促すことができます。
3. パナソニック
パナソニックは、CLUB Panasonicの会員情報を活用し、クロスセル施策を実施しています。例えば、閲覧履歴を基にしたレコメンドメールの配信を行っています。閲覧履歴から顧客にアプローチすることで、顧客のニーズに適した提案が可能です。顧客の満足度を高めたい場合は、パナソニックの施策を参考にしましょう。
LTVを向上させるクロスセルを実践しましょう
クロスセルを実行する手順やメリット・注意点・成功事例について解説しました。クロスセルを実行するための基本手順の3ステップを紹介します。
- 顧客情報を分析する
- 提案する商品を決める
- シナリオプランを考える
上記の手順通りに進めることで、顧客の満足度を高めつつ、クロスセルの成功確率が上がります。顧客の満足度を高めるためには、顧客情報の分析を行わなければなりません。顧客情報の分析をすることで、顧客に満足してもらえる提案ができるため、LTVを向上させるクロスセル提案が可能になります。
この記事を書いたライター
山田理絵
不動産営業を経験後、アディッシュにて、カスタマーサクセス関連商材のインサイドセールスを担当し、初期接点から課題の顕在化をし機会創出を行う。 趣味はポールダンスと料理。