CSチームの「業務過多問題」をマネージャー視点で解決する方法

A.K
2025.04.23

顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス(CS)」は、企業にとって重要なポジションです。しかし多くの現場で、CSチームが「やることが多すぎて回らない」「メンバーが疲弊している」といった“業務過多問題”に直面しています。
では、なぜCSチームには業務が集中してしまうのか。そしてマネージャーは、どうすればその状態を根本から改善できるのか。本記事では、CSマネージャー視点からの解決アプローチをご紹介します。
1. なぜCSチームに業務が集中するのか?
「CSは何でも屋になりがち」問題
CSは「顧客の成功にコミットする」役割のため、ミッションがやや曖昧なケースが多く、「これもCSがやるべきかも」と判断されやすい側面があります。その結果、以下のような状況に陥りがちです。
- クライアントからの期待が膨らみ、「何かあったらとりあえずCSに聞こう」となりがち
- 社内でも「営業ではないし、サポートでもないから、とりあえずCSに頼むか」という雰囲気が漂う
気づけば、契約、請求、技術的な質問、イベント運営など、本来の範囲を超えた業務がCSに集まり、チームが疲弊していきます。
「優先順位がつけられない」問題
CSの現場では、日々の問い合わせや急な顧客対応が発生します。これらの「緊急対応」に追われるあまり、本来やるべき改善活動や戦略的な取り組みが後回しになることも少なくありません。
- 「とにかく目の前の業務を処理する」ことが目的化
- メンバーごとに「重要」と感じるポイントがバラバラで、チームとして動きに一貫性がない
「仕組みがなく、属人的」問題
CS業務は人に依存しがちです。「この人がいないと対応できない」「あの資料は○○さんしか分からない」という属人化が進むと、業務が効率的に回りません。
- ツールを導入しても定着せず、「結局使ってないよね」と形骸化
- ベテラン頼りになり、新人が育ちにくい
2. 「どこまでがCSの仕事?」業務の線引きを明確にする
CSの業務過多を解消するための第一歩は、業務の棚卸しと再定義です。
業務をすべて洗い出す
まずは、CSチームが現在対応している業務をすべてリストアップします。顧客対応はもちろん、社内調整、資料作成、ミーティングなど、細かい業務まで含めましょう。
- 担当者別に可視化することで、負担の偏りや非効率な部分が見えてきます
業務を仕分ける:CS/他部署/グレーゾーン
次に、それらの業務を以下のように分類します。
- CSが担うべき業務:顧客対応、オンボーディング、エンゲージメント強化、解約防止など
- 他部署に依頼すべき業務:契約や請求(営業・経理)、技術的な問い合わせ(エンジニア)など
- グレーゾーンの業務:どの部署が対応すべきか曖昧な業務は、社内でルールを設けて整理します
「CSがなんでもやる」からの脱却
営業、サポート、プロダクトなど、他部門との役割分担を再確認・明文化することで、CS本来のミッションに集中できる体制を作ることができます。
また、チーム内でも「これは本当にCSがやるべきか?」と問い直す文化を根付かせましょう。
3. 優先順位の付け方:緊急度×重要度マトリクスを活用する
「全部重要に見えて、何から手を付ければいいか分からない」──CSチームあるあるです。これを打破するには、タスクの優先順位付けが欠かせません。
緊急度×重要度のマトリクスで分類する
緊急\重要 |
高 |
低 |
高 |
すぐ対応 (例:契約更新前の顧客対応) |
無駄タスク (例:細かすぎるレポート) |
低 |
計画的に実行 (例:改善施策、プロアクティブ対応) |
やらない (例:意味のない定例会議) |
マネージャーの役割
- チームの時間を「低緊急×高重要」な仕事に振り向けられるよう、ムダな仕事の削減を主導する
- 各タスクの判断基準を明確化し、メンバーが自走できる環境をつくる
このマトリクスをチーム全体で共有することで、「なんとなく忙しい」状態から脱却し、本当にやるべきことに集中できる組織に変わっていきます。
4. CS業務を効率化するツール&仕組み
ツールを活用して「繰り返し」を減らす
- ナレッジ管理:Notion、Confluenceで社内外のFAQを整理
- 問い合わせ対応:Zendesk、Intercomで対応履歴を一元管理
- ヘルススコア管理:Gainsight、HubSpotなどで解約リスクを早期察知
「同じ質問に何度も答える」「情報があちこちに散らばっている」といった非効率を減らすだけで、業務量は大幅に軽減できます。
属人化を防ぐための仕組みづくり
- 業務ルールの明文化:「この対応は営業に、これはCSで対応」といった線引きをルール化
- テンプレートの整備:メール、対応文面などのテンプレートを用意し、新人もすぐ対応できるように
- 情報共有の場を設ける:週1の「困りごと共有MTG」で、知見を横展開&相談しやすい環境を整備
属人化を防ぐことで、誰でも対応できる「仕組みで回るCS組織」へと進化します。
5. まとめ:CSマネージャーがまず取り組むべきこと
- 業務の線引きを行い、CSが担うべき業務を明確化
- 緊急度×重要度で優先順位を整理し、「やるべきこと」に集中
- ツールと仕組みで属人化を防ぎ、効率化を進める
「CSの仕事が多すぎる!」という状況は、仕方のないものではありません。マネージャーが一歩引いて全体を整理し、業務の取捨選択を行うことで、チーム全体のパフォーマンスは劇的に向上します。
まずは、現状の業務を棚卸しするところから始めてみましょう。

この記事を書いたライター
A.K
アディッシュに入社後、監視業務のオペレーターとしてキャリアをスタート。アルバイトから社員へとステップアップし、監視・カスタマーサポート領域でSVとして勤務。その後、カスタマーサクセスのマネージャーとして、メンバーの後方支援に従事。スピード感を強みとし、課題を見つけて改善施策を実行し、必要に応じて現場とも連携しながら柔軟に取り組むことを大切にしている。