「顧客幸福度」とは?CX・マーケティングに活かす方法と成功事例
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武田龍哉
2025.04.24

ファン総合研究所がマーケティングやカスタマーサポートの新たな指標となる「顧客幸福度」を発表しました。
2024年3月に日経クロストレンドとの共同調査により、顧客幸福度を踏まえた施策により購買意欲や推奨機会を増やせることが明らかとなりました。
これらの効果を得るためにも、顧客幸福度について理解を深めておきましょう。今回は顧客幸福度について詳しく解説します。
顧客幸福度とは
顧客幸福度とは、顧客がブランドとの関係でどれだけ幸福を感じているかを測定する指標です。
株式会社ファンベースカンパニーの研究機関「ファン総合研究所」が、2024年3月に日経クロストレンドと共に11業界82ブランドを対象に顧客幸福度に関する調査・分析を行いました。
その結果、顧客幸福度が高いブランドは、購入意向や推奨意向との関係性が高いことが明らかとなり、マーケティングやカスタマーサポートの新たな指標として注目を集めています。
顧客幸福度が注目される理由
顧客幸福度が注目される理由は、消費者の消費行動が「モノ消費」から「コト消費」、さらに「トキ消費」へと変化しているためです。人々の価値観や経験、嗜好が多様化している中で、自分にとって何が幸せかを模索する人が増えてきたことが消費行動の変化に繋がっています。
ファン総合研究所の顧問兼コミュニケーション・ディレクターである佐藤直之氏は、「GDPといった経済指標に変わる新しい指標が必要になっている」と述べています。そして、ファン総合研究所は、ブランドの機能面や品質面だけでなく、情緒的な価値を含めた新たな指標として「顧客幸福度」を発表しました。
顧客幸福度が高いブランドは、購入意向や推奨意向との関係性が高いことが明らかとなり、マーケティングやカスタマーサポートの新しい指標として注目されています。
顧客幸福度の測定方法
顧客幸福度は、以下の3つの設問に回答してもらうことで測定することができます。
<顧客幸福度の3つの設問>
- 「〇〇〇」があることで自分自身は幸せを感じる。
- 「〇〇〇」は顧客や関わる人たちを幸せにしてくれると思える。
- 「〇〇〇」の存在に感謝できる「ありがとう」と思える。
<回答別の得点>
- まったくそう思わない
- そう思わない
- あまりそう思わない
- まあまあそう思う
- そう思う
各回答の点数を集計し、顧客幸福度を評価します。得点が高いほど、顧客幸福度が満たされていると判断できます。
顧客幸福度に関連する因子
ファン総合研究所が日経クロストレンドと共同調査したところ、顧客幸福度が高い企業は「自分らしさ」「心の支え」「心理的安全性」を提供できていることが明らかになっています。これらの因子は、顧客幸福度を向上させるために重要な要素です。それでは、顧客幸福度に関連する3つの因子について詳しく見ていきましょう。
自分らしさ
1つ目の因子は「自分らしさ」です。
多様性が尊重される時代において、「みんなと同じものが欲しい」という価値観は薄れ「自分に合うかどうか」が、商品・サービスを選ぶ際の重要な判断基準となっています。
自分らしさは不可欠だと感じる人が増えており、ブランド、商品が自己表現の手段として捉えられるようになっています。例えば、推し活がブームになっていますが、これも自分らしさを表現する取り組みです。
心の支え
2つ目の因子は「心の支え」です。
心の支えとは、人生で挫けたときに、前向きな気持ちにさせてくれるもののことです。心の支えがないと、失敗や挫折に対して落ち込み立ち直るのが難しくなります。顧客幸福度が高い企業やブランド、商品は、消費者にとって心の支えとなり、前向きな気持ちを引き出しています。
例えば、忙しい仕事に追われてネガティブな気持ちになることがありますが、「今を乗り越えれば、大好きなゲームをプレイできる!ゲームの時間は充実している」と思うことで、仕事を頑張る力が湧いてくるでしょう。このように心の支えとなれば、顧客にリピート購入してもらえるようになります。
心理的安全性
3つ目は「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、企業やブランド、商品に対して深い愛情や信頼を感じ、その感情を周囲に安心して伝えることができる状態を指します。
消費者がブランドに対してポジティブな感情を抱き、自信を持って他の人々にシェアできる状態が整っていると、自然とブランドへの認知度や評判が高めていけます。新規顧客が獲得しやすくなり、ビジネスを有利に進めていけるため、顧客が自信を持って推奨できるブランドを作るようにしましょう。
顧客幸福度を向上させる取り組み
3つの因子をご紹介しましたが、次のような取り組みで顧客幸福度を向上させられます。
セルフプロデュースに役立つ商品・サービスを提供する
自分のライフスタイルや価値観に合った商品やサービスを提供することで、顧客が自分らしさを表現する手段としてブランドを活用できるようになります。これにより、顧客は幸福感を感じることができ、ブランドに対する愛着が深まります。
例えば、ナイキが提供する「ナイキID」では、顧客が自分の好みに合わせてシューズをカスタマイズできるとして好評です。このようなカスタマイズサービスを通じて、顧客は自分らしい製品を手に入れ、個性的なライフスタイルを表現することができます。こうした体験が顧客の幸福感を高め、ブランドへの忠誠心を育む要因となります。
ブランドを通じてポジティブな体験を提供する
ブランドが顧客にポジティブな体験を提供することは、顧客幸福度を向上させるために欠かせません。そのため、ブランドとのあらゆる接点において顧客に良い印象を与えることが大切です。
顧客対応や商品発送時、アフターサービスに至るまで、すべてのプロセスでポジティブな体験を提供することで、顧客はブランドに対して強い信頼感と愛着を持つようになります。
例えば、アップルは商品の購入からサポートまで、全てのプロセスで高い顧客体験を提供しています。アップルストアでの親切で迅速なサポートや、製品の使い方を丁寧に説明するスタッフの対応など、顧客に良い印象を与えています。こうした体験が顧客の満足度を高め、ブランドロイヤルティを生むことにつながります。
社会的意義のある取り組みを発信する
ブランドが社会問題や環境問題への取り組みを積極的に発信し、顧客にそのブランドの価値を伝えることは、ますます重要になっています。
例えば、パタゴニアは環境保護をテーマにした活動を積極的に行っており、その姿勢が顧客に強く共感されています。ブランドが社会的意義のある活動を行うことで、顧客はそのブランドに対して感情的なつながりを感じブランドへのロイヤルティを高めることに成功しているのです。
ブランドストーリーを発信する
ブランドのビジョンや歴史、背景などを伝えることは、顧客との絆を深めるために非常に効果的です。共感できるストーリーや信念を持つブランドは、顧客に強い印象を与え、心に残ります。
例えば、アップルは創業者スティーブ・ジョブズの理念や挑戦的な精神を前面に出し、そのストーリーが多くの人々に感動と共感を与えました。顧客がブランドのストーリーに共鳴すると、深い絆が生まれ、ブランドへの信頼感が強化されます。
このような絆が構築されると、長期的な顧客ロイヤルティが生まれ、ブランドへの継続的な支持を得ることができます。そのため、自社のブランドストーリーを積極的に発信することで、顧客とのつながりを深め、信頼を築いていきましょう。
ファンイベントやコミュニティを運営する
ブランドのファンを集めたイベントやコミュニティを開催することは、顧客同士のつながりを生み出し、ブランドへの愛情を深められます。
ファン同士との交流を通じて共通の価値観を再確認し、ブランドへの信頼や情熱がより強固なものとなります。また、ブランドとの一体感を感じることで、顧客幸福度が高まり、ブランドの価値を一層実感してもらえるようになるのです。そのため、ファンイベントやコミュニティの運営も検討してみましょう。
顧客幸福度ランキングTOP3の企業の取り組み事例
ファン総合研究所は日経クロストレンドと共に82ブランドを対象に調査・分析を行い、顧客幸福度ランキングを発表しました。
<顧客幸福度ランキング2024>
- 第1位 モスバーガー
- 第2位 カルビー
- 第3位 オリオンビール
- 第4位 ケンタッキーフライドチキン
- 第5位 スターバックスコーヒー
- 第6位 バーガーキング
- 第7位 レクサス
- 第8位 トヨタ自動車
- 第9位 キリンビール
- 第10位 THE NORTH FACE
ここでは、TOP3の企業の取り組みをご紹介します。
モスバーガー
モスバーガーは「家族みんながワクワクする、モスらしい感動体験を提供する」というテーマのもと、マーケティング戦略を展開して既存店舗の売上アップを実現しました。
まず、利便性向上を目指して「フルセルフレジ」「テーブルオーダー」「パーキングオーダー」などのシステムを導入しました。これにより、顧客はより快適に注文できるようになりました。注文状況を確認できる番号表示ボードはテイクアウト希望者に好評です。
さらに、地域の農家生産者や団体と連携し、地元名産品を使用した地域限定商品の販売も行っています。 また、社会貢献の施策としては、ハンディキャップ分身ロボット「OriHime」の導入や、VR上で製造体験ができる新しい体験型サービスもあります。
これらの施策を通じて、モスバーガーは顧客に応援されるようになり顧客幸福度ランキングで1位を獲得しました。
カルビー
カルビーは「顧客、取引先、従業員、コミュニティ、そして株主から尊敬され、愛される会社になる」というビジョンを掲げ、その達成に向けて尽力しています。
カルビーは量的な拡大から脱却し、マーケティングやブランド強化による付加価値向上に取り組んでいます。特に、お客様との積極的な接点を持ち、サービスや商品を共に作り上げることを大切にしている模様です。
現在では、スナック菓子のニーズが多様化しており、携帯性に優れた製品やヘルシー志向の機能性表示食品の開発が求められています。顧客ニーズをしっかりとリサーチし、商品開発に反映させています。こうした姿勢が評価され、顧客幸福度ランキングで2位を獲得しました。
オリオンビール
オリオンビールは、広告予算が大手ビール会社の1/100しかないにもかかわらず、沖縄県ではシェア1位、全国では5位という高いシェア率を誇っています。
その成功の理由は、沖縄が好きな人をターゲットに絞り込み、オリオンビールを通じて心地よい時間や空間を提供したいという想いが実現したことです。
沖縄県民を対象にアンケート調査を実施し、地元の人々がどのような味わいのビールを好むのかを調べた結果を基に、「オリオンザ・ドラフト」のリニューアルを実施しました。
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さらに、沖縄の思い出を作ってもらうために、SNS映えするパッケージやオリオンビールのTシャツを作成するなど、地域文化や観光とも関連づけた取り組みも行っています。このような戦略が顧客からの高い支持を集め、顧客幸福度ランキングで3位を獲得しました。
まとめ
顧客幸福度とは、顧客がブランドとの関わりにおいてどれだけ幸福を感じているかを測る指標です。
顧客幸福度が高いブランドは、顧客の推奨意向や購入意向が高まることが分かっており、現在、マーケティングやカスタマーサポートの新たな指標として注目されています。
この記事では、顧客幸福度の測定方法や、その向上方法について解説しました。ぜひ、この機会に顧客幸福度を意識した事業活動を行い、ブランドの価値をさらに高めてみてください。
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この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。