BPOとは?導入時のメリットや検討時のポイントを紹介
前田千波
2024.11.07
組織活動を効率的なものにするための施策として、近年注目されているのがBPOの導入です。BPOはアウトソーシングの一種とも考えられていますが、具体的にはどの様な点で違いがあるのでしょうか。
この記事では、そんなBPOとはどの様な戦略として広まっているのか、導入で期待できるメリットや検討時に押さえておきたいポイントなどについて、詳しく解説します。
BPOとは
BPOは「Business Process Outsourcing」の略称で、企業が有する業務プロセスを外部委託してしまおうという取り組みです。
これまでの企業のあり方は、事業の継続や成長に必要な業務を全てワンストップで賄うことが一般的でしたが、この方法はコストが大きいことなどが懸念されてきました。そこで台頭しているのがBPOと呼ばれる手法で、コア業務は自社で対応し、ノンコア業務についてはBPO化してしまうことにより、スマート組織運営を実現するケースが増えています。
BPOサービスは多様化しており、あらゆる企業のノンコア業務をカバーできるよう、その領域に特化したBPO会社が次々と現れ、ますますサービスの利用ハードルは下がってきました。
BPOと一般的なアウトソーシングの違い
BPOの概要を聞いて思い出すのが、一般的なアウトソーシングとの違いです。業務の外部委託はこれまでもさまざまな面で活躍してきましたが、BPOはどの様な点で異なるのでしょうか。
BPOもまたアウトソーシングの一種ではありますが、最大の特徴はアドオン型やバイイン型と呼ばれるサービスとなっている点です。
一般的なアウトソーシングは、工数やコストの削減を目指す業務切り離し型のプッシュアウト型と呼ばれるサービスです。業務を部分的に委託したり、一定期間だけサービスを利用したりすることを前提としています。
一方のBPOが提供するアドオン型のサービスは、委託業務領域の専門家に業務を発注し、機能の強化や品質の向上といった新しい価値をもたらすことができます。またバイイン型のBPOであれば、委託業務に対して付加価値を与え、ノンコア業務を強化することで、委託していないコア業務にも良い影響をもたらすことができます。
そのため、BPOはアウトソーシングの一種ではあるものの、利用の際には意図している目的が微妙に異なる点については知っておくと良いでしょう。
BPOとITOの違い
BPOと似たような言葉として、ITOと呼ばれるものもあります。ITOとはInformation Technology Outsourcingの略称で、その名の通りIT領域の業務に特化した業務委託サービスを指します。
IT人材の穴埋めをさまざまな目的で実現することができるサービスであり、システムの構築や維持管理、ヘルプデスクなど、不足しているITリソースを補うことができます。
BPOサービスの中でも、ITに特化しているものであればITOの一種と言えます。BPOで調べても求める様なサービスが出てこない、ITリソースの提供に特化しているサービスを必要としているなどの場合、ITOに限定してリサーチを行うのがおすすめです。
BPOが必要とされる背景
BPOは最近になって注目度が増している経営戦略でもありますが、その背景には以下のような理由が挙げられます。
人材不足の深刻化
BPO需要が高まっている最大の理由は、やはり人材不足の深刻化です。少子高齢化の影響により将来的な労働人口の減少が確定している上、即戦力の人材も少なくなりつつあります。
特にIT関連のノウハウやスキルを持った高度人材や、そのほかの専門職に携われる人材は、多くの企業で慢性的な不足に陥っています。近年は人材サービスの多様化に伴い、人材の流動性も高まり、優れたオファーを提示しないと雇用することは難しくなってきました。
このような問題へ迅速に対処するための手段として、BPOは高い効果を発揮しています。専門スキルを持った人物に自社の業務を丸ごと委託することができるので、すぐに成果を得られる点も強みです。
また、人材獲得のための待遇改善の一環として、働き方改革を進めている組織も少なくありませんが、働き方改革を進めるためのシステム導入などを進める上でも、BPOが活躍します。
ビジネスを取り巻く環境の急速な変化
ビジネスを取り巻く急速な環境変化にキャッチアップするべく、BPOが採用されているケースも見られます。特にデジタル環境の変化は著しく、何が次に必要なスキルやプラットフォームになるのかによって、求められる運用スキルも変わってきます。
このような時代の流れの急速な変化に対応するためには、自社で一から人材を育成する場合、対応できないことも出てくるものです。BPOサービスを利用すれば、こういった時代の急速な流れにもうまく追いつくことができる、柔軟な環境の整備や業務遂行が可能というわけです。
BPOを導入できる業務の主な例
BPOはサービスの多様化によって、さまざまな業務に導入できるよう発展を遂げています。ここでは人気の高い、主なBPO導入が可能な業務を紹介します。
会計
BPOは会社の売り上げに直接影響はしないものの、会社機能を維持するために不可欠な業務、いわゆる間接業務を任せる上で非常に便利な施策です。例えば会計業務はその代表的な例であり、特定の作業だけではなく、会計業務を丸ごと外部に委託できるサービスが増えています。
伝票の入力や経費精算、請求書の作成、固定資産の管理といった業務を、丸ごと外部サービスに委託することができます。会計業務は負荷が大きく、ミスを最小限に抑えたい作業が数多く発生しますが、BPOを会計分野に導入することで、自社のリソースをほかの業務に割り当てる余裕も生まれるでしょう。
人事
人事業務全般も、外部の専門サービスに任せる企業が増えてきました。社内の人事評価などは内部の人間でなければ正しく行えないイメージを抱いてしまいがちですが、これらの業務も会計同様、定型化しやすいことから、BPOの導入が可能です。
また、採用業務においても専門のBPOサービスに委託する企業が増えつつあります。採用活動は専門的なスキルが問われるため、自社に適切のある人材がいないとパフォーマンスが上がらないものですが、BPOの導入により、問題解決が可能です。
専門のスキルを持った人物が採用業務を担当し、最終決定のみ社内の責任者が担当することで、大幅なリソースの節約が実現するでしょう。
コールセンター
コールセンター業務は、近年BPOの導入が著しく進んでいる分野の一つです。カスタマーサポート対応はもちろん、テレアポなどの営業活動についても外部に委託し、業務のスマート化を進めることができます。
コールセンター業務は実際の顧客とのコミュニケーションが発生する分野ですが、実際には定型化されている業務が多く発生するため、比較的委託しやすい領域です。テレアポなども営業活動ではあるものの、シナリオに則ってアポイントを獲得するので、やはり外部委託ができます。
コア業務を一部強化するという意味でも、コールセンターのBPO導入は非常に有効です。
その他事務・受付
上記に該当しないノンコア業務も、ほとんどはBPO導入による生産性の向上が期待できます。社内の軽作業やヘルプデスク、オフィスの受付業務などは、社外の専門企業から派遣されてくるケースが増えています。
作業労働が社内で複数発生しており、なおかつルーティンワークとなっている場合は、BPOの導入を検討してみましょう。
BPOの委託形態
BPOの利用を検討している場合、その委託形態には以下の種類が存在します。自社の必要に応じて、使い分けのポイントを理解しておくと良いでしょう。
オンサイト型
オンサイト型は、自社に外部から委託されたスタッフを迎え、社内で業務を遂行してもらうというものです。これまで社内リソースで対応していた業務を、丸ごと外部人員に入れ替えるような方法です。
口頭でのコミュニケーションが可能であるため連携が取りやすいのが特徴ですが、環境の整備のためのコストが発生する点は注意が必要です。
オフサイト型
オフサイト型は、完全に社外に業務を持ち出し委託するタイプのBPOです。国内の専門会社に委託する場合はニアショアBPO、海外の専門事業者の場合はオフショアBPOと呼ばれることもあります。
本社とは完全に分離した形で委託業務を任せられるため、BCP対策の観点からも有効性が高いものの、コミュニケーションコストが高くなってしまったり、緊急時の対応にタイムラグが生まれたりするリスクがあります。
BPOから得られるメリット
BPOを実現することは、具体的に現場へどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでその利点を改めて整理しておきましょう。
コスト削減につながる
BPOの導入は、まずコスト削減において高い効果を発揮します。ノンコア業務に割り当てるための人材を確保する必要がないので、そのための人件費や採用コストをカットすることができるからです。
また、システムの立ち上げや維持管理にかかるコストも削減することができるので、中長期的な負担の軽減においても役立ちます。
コア業務にリソースを集中できる
人材不足をBPOによって補うことで、これまでノンコア業務に割り当てていた人材を、コア業務に集中させられるのも強みです。
コア業務における人材不足を素早く解消し、機会損失を最小限に抑え、事業の成長を加速させることができるでしょう。
業務品質向上が期待できる
BPOで業務をカバーすることで、自社で対応するよりも品質が高まることも期待できます。業務の委託先はいずれもその領域における専門家が揃っているため、高いスキルを発揮してもらえるからです。
自社のノンコア業務の品質が安定しない場合も、BPOの導入を検討すると良いでしょう。
BPO導入時のデメリット
BPO導入は魅力的なメリットに期待できる一方、注意しておきたいデメリットもあります。
委託に伴うコストが発生する
まず、当たり前ですがBPO導入の際には委託コストが発生します。どれくらいの費用がかかるかについては委託先の質や委託する業務の範囲にもよるため、確認が必要です。
そのため、場合によってはBPOの導入が思わぬ負担増加を招く可能性があります。
外部に業務が依存するリスクがある
BPOは業務を丸ごと外部に委託することとなるため、社内でその業務に触れる機会はほぼ無くなると言えます。
そのため、自社にその業務を遂行できるノウハウを蓄積することが難しく、委託先に業務が依存してしまうのは回避できません。信頼のできる委託先や費用対効果について確認しておかないと、思わぬ損失やトラブルを招く可能性があります。
BPO導入時に検討したいポイント
上記のようなリスクやデメリットを回避する上では、以下の3つのポイントを事前に確認しておくことが大切です。
費用対効果を見極める
BPO導入の際は、まず費用対効果を正しく見極めることが大切です。複数の委託候補先をリストアップした上で、想定予算内でサービスを利用できる企業への発注を検討しましょう。
セキュリティ対策を徹底する
委託先に業務の全てを任せることになる以上、自社ではカバーしきれないトラブルに巻き込まれるリスクもあります。特にサイバー攻撃などは委託先にその対応を任せなければならず、自社のセキュリティ要件を満たしていない場合直接被害を受ける場合もあるでしょう。
委託先のセキュリティ対策状況を確認し、潜在リスクの回避を実現することが大切です。
委託先の専門性を確認する
自社の業務課題を解消できるBPO導入を実現するには、適切な委託先選びが求められます。委託先の専門性を丁寧に確認し、自社の課題解決に応えてくれそうか、選定を進めましょう。
まとめ
この記事では、BPOとはどのような経営戦略なのか、導入によってどんな恩恵を受けられるのかについて解説しました。
BPOから得られるメリットは大きい一方、利用によって起こりうるリスクも把握しておかないと、思わぬ損失を被ることもあります。委託先選びのポイントも確認の上、丁寧な検討を進めましょう。
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この記事を書いたライター
前田千波
前職のITベンチャーにてインサイドセールスの立ち上げに参画し、SDR・BDR共に経験。特にSNSを活用したアポ創出を行う。 アディッシュではインサイドセールスの新規開拓推進担当として、カスタマーサクセス商材を中心にアポ創出やチーム構築に携わる。大分県在住