フィードバックとはどうやるの?意味や役割、実施方法を解説
武田龍哉
2024.11.07
組織力の向上や個人のスキルアップを促進する上で、効果的とされるのがフィードバックです。
ただ、フィードバックとは言っても具体的にどうやれば良いのか、何を目指せば良いのかなど、分からないことは考えてみると意外と多いのではないでしょうか。
この記事では、フィードバックとはどのような意味があるのか、実施によってどんな効果が得られるのか、どのようにフィードバックを実施すれば良いのかについて、解説します。
フィードバックとは
フィードバックは、相手の言動に対して改善点を指摘したり、評価を与えたりすることを言います。基本的には立場が上の人間から下の人間に行うことをフィードバックと呼びますが、同僚同士でフィードバックを実施するケースも増えてきました。場合によっては、部下から上司へフィードバックを送るということもあります。
フィードバックは元々工学分野で用いられてきた言葉ですが、最近ではビジネスの現場でも広く用いられています。
簡単に言えば、フィードバックは「振り返り」の時間のことを指します。なぜ失敗したのか、あるいは成功したのか、あの時のあの判断やアクションは正しかったのかなどを評価してもらいつつ、改善のための方向づけを行う工程を含む時間です。
フィードバックのタイミングは多様で、プロジェクトが終了したタイミングや、重要な施策が行われた後、人事評価や1on1ミーティングの時などが代表例として挙げられます。
なぜフィードバックをやるのか
フィードバックを実施する主な目的は、
- 能力の向上
- ミスの再発防止
の2つがあります。それぞれについて、詳しく解説します。
能力の向上
フィードバックの実施は、対象者のスキルアップにおいて非常に重要な意味を持ちます。直近の取り組みから改善のポイントを的確に指摘して、どうすればよりよい成果が得られるようになるかをピンポイントに把握してもらえるからです。
個人のスキルアップを考える上では、何からスタートすれば良いのか分からない、あるいは自分の改善点について自覚を持つのが難しいということもあるものです。
フィードバックは定期的に自身の伸び代について把握する時間を設ける貴重な機会となるため、正しく実施することが重要です。
ミスの再発防止
フィードバックはスキルアップだけでなく、ミスの防止を促す上でも重要な取り組みです。単にミスがあったことを咎めるだけでなく、なぜミスがあったのか、どうすればミスを回避できたのか、今後どうやってミスがないように取り組むかを建設的に説明できるからです。
その場その場でミスを指摘するだけでは、抜本的な再発防止にはつながらないことが多々あります。フィードバックはそのような場当たり的な指導のあり方を刷新し、質の高い人材育成を促すことが可能です。
フィードバックとフィードフォワードの違い
フィードバックと似たような取り組みとして、企業によっては実施されているのがフィードフォワードです。
フィードバックの場合、焦点が当たるのは過去の出来事ですが、フィードフォワードの場合は未来の事象に対してフォーカスし、話し合いを進めます。
目標をどのように達成するか、将来どのようなスキルを身に付けたいか、どのように活躍したいのかといったことについて建設的に議論し、具体的な達成方法について指導側が提案や指導を行うような手法です。
フィードバックはすでに起こったことを元にアドバイスや評価を下すので、フィードフォワードとは役割やテーマが異なる点を知っておくと良いでしょう。
フィードバックの種類
フィードバックは大きく分けて、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの2種類が存在します。それぞれでどのように役割が異なるのか、確認しておきましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、基本的に評価対象者を褒め、前向きな気持ちを与えるために実行するためのフィードバックです。
フィードバックとはできない部分を指摘するばかりではなく、対象者の良い点や頑張っている点、成長した点などを客観的に評価することも含まれます。感謝している部分なども具体的に伝えることで、個人の成長を促します。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは、今後改善してほしい点を建設的に伝えるフィードバックです。
評価対象者の良くない部分、改善点を指摘することが主体となるネガティブフィードバックですが、頭ごなしに注意点を伝えるわけではありません。あくまでも個人の成長につながるよう、前向きに改善点と向き合ってもらえるような評価の伝え方が重要です。
フィードバックに期待できる効果
フィードバックは評価対象者のスキルアップとミスの防止だけでなく、以下のメリットももたらされることが期待できます。
モチベーションの向上
フィードバックは単に個人の能力を伸ばすだけにとどまらず、評価対象者のモチベーション向上において効果を発揮します。
何をすれば今後自分はもっと優れたパフォーマンスを発揮できるのか、ということを建設的に伝えてもらえるので、働きがいや頑張り方を取得しやすいためです。
高いモチベーションで業務に臨めるようになれば、自然と自身の課題をクリアしたり、さらに得意を活かした活動に従事してもらえるでしょう。また、モチベーションの向上により離職率の低下にも期待が持てます。
組織的な目標の達成
フィードバックによって個人能力を効果的に伸ばすことができれば、組織全体の生産性の向上や、目標達成を促進するのにも繋がります。
単に与えられた役割をこなしてもらうだけでなく、主体的に業務へ従事できたり、担える役割を増やしたりすることで、事業の成長促進が期待できるでしょう。
そのため、従業員数の多い企業はもちろん、少数精鋭のベンチャー企業においても適切なフィードバックを実施できる環境は重要です。
信頼関係の強化
フィードバックは単に情報共有の場であるだけでなく、指導者と評価対象者が正直に意見を伝え合う場としても意味を持ちます。
建設的なコミュニケーションをフィードバックを通じて実現することにより、お互いに信頼し合える人間関係を養い、チームワークを強化することにつながるからです。
フィードバックは評価対象者に対して「あなたのことをきちんと評価している」ということを伝える上でも、重要な取り組みと言えます。
フィードバックを実施しないとどうなる?
フィードバックの重要性については広く知られるようになってきましたが、逆にフィードバックを実施しないことで、どのようなリスクが懸念されるのでしょうか。
生産性の停滞
まず懸念されるのが、業務効率化の停滞です。フィードバックは社員の効率的なスキルアップを促す優れた手段であるにもかかわらず、これを実行しないとなるといつまでも個人のパフォーマンスが上がらない問題に直面するかもしれません。
もちろん、フィードバックの機会を組織として設けなくとも、自力で成長ができる人物もいるものです。ただ、個人でできることには限界がありますし、当人が気づいていない改善点はいつまでも解消が見込めません。
フィードバックという建設的な機会を設けることで、効率的な生産性向上が期待できます。
より大きなリスクの発生
フィードバックを怠ることで、個人や所属している会社全体にとって、より大きなリスクをもたらす可能性も出てきます。
小さなミスを指摘しないまま放置しておくと、そのミスがより重要性の高い場面で再発してしまい、重大な損失を招いてしまう懸念があるからです。
大きなリスクをもたらさないためには、定期的なフィードバックを実行することが大切です。ミスの原因を早期の段階で指摘し、改善に努めてもらうことで、大きなミスに発展することを回避できます。
フィードバックの主な実施方法
フィードバックは場当たり的に実施するよりも、広く普及しているフォーマットを取り入れることで、高い効果を発揮します。以下は、フィードバックに活用できる主な実施方法です。
サンドイッチ型
サンドイッチ型は、ポジティブフィードバックを主体として実施することを基調とした方法です。進め方の手順は
- 評価対象者を褒める
- 改善点を指摘する
- 再度評価対象者を褒める
となっており、ポジティブフィードバックで改善点をサンドイッチすることから、この名前が付けられています。
ネガティブフィードバックを実施した時に起こりやすいモチベーションの低下を最小限に抑えられることから、フィードバック手法として広く普及しているのが特徴です。
SBI型
SBI型は、評価対象者の具体的な行動に関するフィードバックを実施する上で活躍しているフィードバック手法です。主な進め方は、
- Situation:フィードバックしたいことが「いつ」「どこで」起きたのかを具体的に伝える
- Behavior:その時の評価対象者の行動を、客観的に伝える
- Impact:その行動がどのような印象や結果をもたらしたか、具体的に伝える
という3ステップです。
この手法の強みは、過去の事象についての解像度が高い状態で情報共有や意見の交換、指導を行えることです。
そのため、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの両方で活躍します。
ペンドルトン型
ペンドルトン型は、評価対象者と評価者の相互なコミュニケーションに重点を置いたフィードバック手法です。主な進め方は、
- テーマの確認
- 良かった点の共有
- 改善点の共有
- 今後の行動計画の策定
- まとめ
という5ステップで、双方向の意見交換の余白を残しているのが特徴です。
評価対象者へ評価者から改善点を指摘しながら、具体的なアクションの進め方もともに検討するという手順を設けていることで、より行動を促しやすい手法と言えます。
こちらもポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの両方に対応している手法です。
フィードバックの効果を実感できない時に見直すべきポイント
フィードバックの効果を実感できない場合、以下の点を見直してみることで成果に改善を期待できるかもしません。
フィードバックを定期的に実施する
フィードバックは気が向いたら行うのではなく、定期的に行うことで改善のサイクルを構築することをおすすめします
1回目の改善点を指摘した後、2回目以降のフィードバックで改善点の進捗確認や、さらに高い成果を得るために何をすべきかなどを話すことで、改善や成長を強力に促すことが可能です。
フィードバックの手法を変えてみる
フィードバックの手法は、状況に応じて色々と変えてみることが大切です。人によって最も伝わりやすい伝え方というのも異なるため、反応や結果を見ながらフィードバック手法を切り替えてみましょう。
日常のコミュニケーションを活性化させておく
日頃から信頼関係を構築しておくことで、フィードバックの効果も高いものとなりやすいのがポイントです。
フィードバックの時しかコミュニケーションの機会がない場合、実りのある対話や改善点の共有が難しくなるため、節度を持って会話をする習慣を保ち続けるよう心がけましょう。
質の高いフィードバックを実現するためのスキル
フィードバックの良し悪しは、評価者の持つスキルによっても異なります。フィードバックの改善を進める上で有効なスキルとしては、
- ティーチング
- コーチング
という2つの能力があります。状況に応じて2つのスキルを使い分けられるようになれば、高い指導力を発揮することができるでしょう。
ティーチング
ティーチングは、主に評価対象者に対しての知識や技術の取得を促すための技術です。特定の技能やタスクについての答えを直接的に伝えるためのスキルであり、評価者の持つ能力を伝授するための力が問われます。
コーチング
コーチングは、評価対象者の目標達成を促すための技術です。評価者が持っている答えを伝授するのではなく、評価者が自身で考え、答えを導くための問いかけ、考えるきっかけを与えることに重きを置きます。
まとめ
この記事ではフィードバックとは何か、どうすれば優れたフィードバックができるのかについて解説しました。
フィードバックには多様な手法がありますが、状況に応じてそれぞれを使い分けたり、評価者が評価対象者の得手不得手や改善点を正しく見抜いたりする力も求められます。
フィードバックの対象者だけでなく、フィードバックをする側も常に改善のための取り組みを継続し、質の高い人材育成が実現できる環境づくりを進めましょう。
優れたフィードバック環境を整えるには?
この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。