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カスタマーサクセスにおけるFAQ活用の重要性

 こんにちは、アディッシュ株式会社で企業のカスタマーサクセス支援の常駐業務に従事している出窪です。

 今回は、カスタマーサクセスにおけるFAQ活用の重要性について、改善のステップとポイントとともにご紹介します。FAQプラットフォームはZendeskを利用していますが、他のツールを利用している場合もお役に立てる内容になっていますので、ご利用ツールの仕様も確認しながら取り組んでみてください。

事例クライアントの概要について

クライアント企業:アパレルプラットフォームを提供する会社

 

主な業務内容:

・Zendeskを利用した問い合わせ対応の代行

・カスタマーサクセスの観点からカスタマーサポート最適化のための施策提案と実行

例:カスタマーサポート業務のフロー整備、マニュアル化、FAQ改善など

 

カスタマーサポート業務で対応する顧客:

 BtoCtoCモデルとBtoBtoCモデルが混在しているため、以下3つの属性の顧客が対象です。

・個人としてプラットフォームを利用するユーザー

・ビジネスとしてプラットフォームを利用するユーザー

・ユーザーが立ち上げた個人ECサイトを利用するコンシューマー

 

なぜFAQ改善が重要なのか?

 まず初めに、そもそもカスタマーサクセスの観点で、なぜFAQ改善が必要なのか考えていきます。

 FAQ改善の目的は、大きく2点あります。
 第一に顧客の自己解決率向上です。

 FAQによって顧客が自ら問題を解決することができれば、サポートへ問い合わせする手間を省くことができます。これは、単にカスタマーサポートの業務負担を減らすだけでなく、顧客が問い合わせをすることで、企業に対して余計なロイヤリティ損失となる機会を作らないことも目的としています。

 なぜ、顧客が問い合わせをすることがロイヤリティ損失を促す機会に繋がるのかについては、顧客の求めるカスタマーサービスが、期待を上回るサービスをしてほしいよりも、何か問題が起きた際に力を貸してほしいという感情が強くあるからです。つまり、ロイヤリティ損失緩和のカギは、感動よりも顧客の手間を省き、顧客努力を軽減することといえます。
 この部分については、「おもてなし幻想」という本が非常に参考になりますので、ぜひご覧ください。

 第二に、売上に繋がる問い合わせを増やすことです。

 FAQが充実していると、顧客はFAQから質の良い情報を得ることができ、システムに対する習熟度も高まります。習熟度が高まると、システムの定着率が向上し、顧客の継続的な利用が見込まれます。そして、習熟度が高まった顧客のなかには、サービスの利用価値を最大化するために、システムや製品に対して要望を伝えてくれるロイヤルカスタマーが存在します。

 その結果、企業は顧客の声を拾い、これまで取り入れていなかったサービス展開を目指すことが可能となります。つまり、FAQは思いがけない問い合わせの機会を顧客に与えることができるツールともいえます。

事例案件の課題と状況

 本事例では、FAQの更新が滞っており、ユーザーに対して信頼性の高い情報を提供できていないという課題がありました。また、ユーザーからの問い合わせはビジネスユース(toB)と個人利用(toC)の問い合わせが混在しており、ビジネスユースの顧客に対しては個別対応も多くフローを確立していなかったため、都度エスカレーションを行う状況が発生していました。

 更に、コンシューマーへの各種案内についてもプラットフォーム側で代行するというサービス内容がユーザーに伝わっていないことが原因で、ユーザーとコンシューマー両者から同じ内容の問い合わせが寄せられるなど、余計に工数がかかってしまうことも度々発生していました。

 これらの課題を解決するため、まずFAQ改善に取り組みました。

FAQ改善のステップと本案件での取り組みのポイント

 faq-importance_1

 FAQ改善の基本的なステップは以下の通りです。

1.顧客からの問い合わせを分類する

 まず、顧客からどのような問い合わせが寄せられているのかを把握します。

1-1.問い合わせ内容の概要を記録する

 日々、様々な問い合わせ対応を行うなかでも、類似する問い合わせは多く存在します。それらを集計するため、各問い合わせの概要を一文に要約し記録します。この際、要約した文章がFAQの記事タイトルとして相応しいか?キーワードを含んでいるか?を基準として行うとセグメント化のステップがスムーズになります。

1-2.問い合わせ件数を集計する

 このステップは1-1と同時に進めていくことが望ましく、顧客ごとの特異的な条件は考慮せず類似している問い合わせは同じ問い合わせとして件数をカウントします。

1-3.問い合わせ内容をセグメント化する

 Zendeskのへルプセンター機能では、カテゴリ>セクション>記事の順に階層を作成することができます(本案件ではカテゴリをヘルプと設定)。1-1で記録した問い合わせ内容がどのセクションに該当するかを分類し、各セクション名を決定します。

2.現行FAQの状態を知る

 次に、現行FAQが顧客にどのように活用されているかを調査し分析します。

2-1.現行FAQの閲覧数を集計する

 ZendeskのGuide機能を使用し各記事の閲覧数データを抽出します。

 閲覧数の多い記事は、顧客がシステムを使用する上で躓きやすい箇所、もしくは関心の高い内容であることが分かります。反対に、閲覧数の少ない記事は、顧客からの需要や関心がない記事であるともいえますが、これは顧客からの問い合わせ件数と複合的に判断する必要があります。

2-2.現行FAQの課題を見つける

 顧客から寄せられている問い合わせ件数(1-2)と現行FAQの閲覧数(2-1)をもとに、現状の課題を抽出します。

 例えば、閲覧数が多く問い合わせ件数も多い記事は、現行FAQの内容が分かりにくい可能性が高いことが分かります。FAQを閲覧しても解決しなかったために、問い合わせを寄せる顧客は比較的良い方で、問題が解決できず問い合わせは手間が掛かるため退会に踏み切る顧客も多くいます。実際に、本案件の退会理由として「利用しないから」の次に「不具合(問題)が解消されないから」が結果として多く寄せられていました。

 また、閲覧数が少なく問い合わせ件数が多い記事は、FAQの掲載場所が適切でない可能性があり、閲覧数が少なく問い合わせ件数も少ない記事については、思い切って記事を非公開にすることも検討すべきといえるでしょう。

3.現行FAQを修正する

 次に、現行FAQに修正を加え、記事を公開します。

3-1.「よくある問い合わせ」を選定する

 顧客から頻繁に寄せられる問い合わせについては、FAQの先頭ページにセクション名「よくある質問」として表示させます。このステップでは、集計した期間内での問い合わせ数を上位の記事から順に並べるのではなく、日々カスタマーサポート業務を行っているスタッフの感覚値も1つの判断基準として加味することで妥当性が強まるかもしれません。

 少ない問い合わせでも、顧客が知っておくとメリットが大きい記事を選びましょう。

3-2.記事の表示順を決める

 FAQのデザインによっては、クリックなしで画面に表示できる記事の最大数に既定があるため、3-1と同様に優先度を検討し表示順を決定します。

3-3.記事の可読性と判読性を高める

 記事の内容は、文字の羅列にならないよう段落を増やし、必要に応じてキャプチャを挿入します。敬語表現は長文となり文章が読みづらくなってしまうため、不要な語句や接続詞は省き、丁寧語に近い文体でトーン&マナーを揃えます。また、解決に至らなかった場合の問い合わせフォームは記事内に配置し、解決しなかった場合に別ページを開くことなく辿り着けるよう導線を整理します。更に、各記事に関連記事を載せることで、閲覧した記事で解決できなかった場合の問題を解決できる可能性を高めます。

4.FAQの更新サイクルを回す

 FAQは一度改善して完了ではなく、効果を最大限発揮するためには持続的なメンテナンスが不可欠となります。システムや方針に変更があった場合はもちろん、特定の頻度で定期的に閲覧数を集計し、問い合わせ件数から解決率を測定した結果をもとに更新するといったような見直しサイクルを決めて行うことが重要です。

 

  本案件では、ここまでの基本的なFAQ改善を実施後、ユーザーに認知を広げるため、メールでの一次対応時にFAQのリンクを送付するオペレーションをカスタマーサクセス業務として新たに取り入れました。

 また、問い合わせの集計についても、初回に行っていた方法(各問い合わせの概要を一文に要約し記録)では、カスタマーサポートの運用負担が大きいため、Zendesk上のチケットに問い合わせカテゴリをタグとして紐づけ、タグを用いて検索をすることで、効率よく収集できるよう改善しました。

 更に、タグの付与についても、人的なテキスト入力ではなく、種別>大分類>中分類>小分類(例:ユーザー>問い合わせ>注文>納期確認)として適切なタグを選択肢から選び、受信したチケットをタイプごとに分類できるよう設計しました。

 このように、定期的な見直しサイクルと見直しに必要な情報をどのように収集するかを検討し、実際に運用するまでがFAQ改善ステップといえます。

 

問い合わせ分析を通してわかったこと・FAQ改善

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 本案件の基本的なビジネスモデルはBtoCtoC、カスタマーサポートで対応するユーザー属性も「個人としてプラットフォームを利用するユーザー」と「ユーザーが立ち上げた個人ECサイトを利用するコンシューマー」の2パターンが大半であると考えられていました。そのためビジネスユース向けの利用ガイドは公開しておらず、問い合わせが入った都度エスカレーションをして個別対応を行っていました。

 ところが、今回のFAQ改善に伴い、問い合わせ内容の分析を行ったことで、想定していた以上にビジネスユースを検討している潜在層が多く存在することが明らかとなりました。

 そこで、潜在層に向け、ビジネスユースを開始しやすくなるよう「全ユーザーへビジネスユース向けの利用ガイドの公開」というFAQ改善を行いました。

 具体的には、ビジネスユース向け内容である副資材(ネームタグなどメインとなる生地以外のものすべて)のオリジナルカスタマイズ、ボリュームディスカウントなどのhow toを全ユーザー向けの利用ガイドに表示させることで、ユーザーに「こんな活用してもいいんだ!」という気づきを与え、相談間口を広げました。

 それにより、大口注文やOEM製造を期待できるビジネスユースの顧客から寄せられた要望に対しては、詳細をヒアリングし具体的な案を提案するなど、企業として新たな取り組みを目指すきっかけに繋げることができました。

今後の取り組み

 一方で、エンドユーザーであるコンシューマー向けのFAQ作成については課題が残る結果となりました。クリアできない要因としては、アパレルプラットフォームの立場でコンシューマーの対応にあたることができないという点が挙げられます。

 本案件では、製造元としてコンシューマーに企業名を公開はしているものの、問い合わせがあった際には、購入先ユーザーのオリジナルストアとして対応を行っています。また、ユーザーのなかには、独自のブランド価値を高く提供するために、製造元の非公開を希望するユーザーも多く、現状のFAQについては、公然とコンシューマーへ周知できない状態となっています。プラットフォーム側からコンシューマーへの情報提供をどのように行うか、各ユーザーのECサイト内でFAQを作成するシステム構築がBtoBtoCモデルの更なる展開において今後の課題といえます。

まとめ

 実案件のケースを交えたFAQ活用と課題について解説しました。

本案件のようにBtoCtoCからBtoBtoCのモデル展開を目指す企業では、個人利用からビジネスユースに顧客を仕向ける施策としても、FAQ改善のステップは有効的な手段であると考えます。

 近年の顧客の動きは、口コミなどを見ても明らかなように、サービスが優れた会社を褒めるより、サービスの粗末な会社を切り捨てることの方が多く、そのサービスというのは、商品やブランドの差ではなく、カスタマーサービスの差で図るといいます。

  顧客努力という観点から考えると、顧客満足度調査やユーザーインタビューは、顧客努力を有する部分が大きく、思うような回答率が得られなかったり、アンケートからではニーズを深堀することも難しく、本質的な問題に触れることができないという懸念があります。そのなかで、日々の問い合わせから拾えるニーズは、最も本音に近い顧客の生の声といえるのではないでしょうか。

 今や、顧客満足度の向上とコスト削減のために当たり前となっているFAQですが、顧客のニーズに寄り添った内容で更新・構築ができているか?改善するために必要なステップが踏めているか?日々の問い合わせに目を向けることで、カスタマーサクセスとして、企業の新たな取り組みに対して支援の幅が広がると考えます。

  本記事については、どのビジネスモデルであっても取り入れることが可能な内容となっておりますので、効率的かつ効果的なFAQ改善のお役に立てれば幸いです。


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