デジタルリテラシーとは?高めるための教育方法や関連資格を紹介
武田龍哉
2024.11.20
「デジタル人材はどのように育てればよいのだろうか…」「さまざまなデジタル技術がある中で、どのような順番で教育すべきなのだろうか…」とお悩みを抱えていませんか?
今回はデジタルリテラシーについて解説します。この記事では、独立行政法人情報処理推進機構や経済産業省の見解をもとに、デジタルリテラシーの教育方法をご紹介しています。そのため、デジタルリテラシー水準を定める際にお役立てください。
デジタルリテラシーとは
デジタルリテラシーとは、“デジタル技術に関する知識”や“デジタル技術を活用する能力”を指します。あらゆる分野でデジタル技術が活用され始めているため、ビジネスパーソンにはデジタルリテラシーが求められるようになりました。
デジタルリテラシーの具体例
- デジタルに取り組むスタンスやマインドの一部
- デジタル知識
- デジタル活用事例
- デジタルデバイスの使い方など
デジタル技術に関する知識
デジタル技術に関する知識は広範囲に渡ります。
・デジタル技術の範囲
ハードウェア、ミドルウェア、ソフトウェア、プログラミング、データベース、ネットワーク、情報セキュリティ、Web、AI、IoTなど
デジタル技術に関する知識を習得しておくことで、ビジネスに役立てることができます。「書籍」「学習サイト」「スクール」「研修」「実践」で学習できます。
デジタル技術に関する知識があることを客観的に証明したい場合は、ITパスポートや基本情報技術者など資格の取得がおすすめです。
デジタル技術を活用する能力
デジタル技術を活用する能力とは、デジタルでビジネス課題を解決することをいいます。
例えば、業務負荷が重たい場合は、デジタル技術で業務効率化すれば解決できます。新しいサービスを提供したい場合も、デジタル技術で生み出せるかもしれません。
デジタル技術を活用する能力を高めるには、同業界でデジタル技術がどのように活用されているか情報を収集しましょう。また、自社でデジタル技術を活用することができないかを考えることが大切となります。
デジタルリテラシーとITリテラシーの違い
デジタルリテラシーとITリテラシーの違いは「対象範囲」です。
ITリテラシーとは、コンピュータやネットーワークの知識を指します。そのため、ハードウェアやソフトウェアが対象範囲です。
一方でデジタルリテラシーは、ハードウェアやソフトウェアの他、Web、AI、IoTも対象範囲となります。つまり、デジタルリテラシーの中にITリテラシーが含まれています。
デジタルリテラシーはなぜ必要なのか?
デジタルリテラシーが必要な理由は2つあります。
デジタル化に対する不安を軽減するため
社会全体でデジタル化が進んでいる一方で、デジタルに対する不安を抱く人も増えました。
情報漏洩やサイバー攻撃、データ改竄などのニュースが報道されることで「デジタルサービスを利用して大丈夫なのだろうか?」と考えてしまう人が増えているのです。このような考えを持つ方が、デジタルリテラシーを習得すれば、デジタル利用に対する不安を軽減できます。
社会全体でデジタル化が進んでいますが、そのスピードに人間が追い付いていない現状です。このような現状を打破するためにも、デジタルリテラシーを習得してデジタル利用に対する不安を軽減する必要があります。
DX推進にデジタル技術を活用するため
2つ目がDX推進などにデジタル技術を活用するためです。デジタルリテラシーを習得すれば、自社でどのようにデジタル技術を活用すべきか思い浮かぶようになります。
社内のデータ、インターネット、AIなどデジタル技術を活用していけば、業務効率化や新サービス創出が実現できるようになります。
出典元:「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書(総務省)」(2024年10月24日利用)
総務省の独自調査でも、DX推進の課題や障壁として「人材不足」「デジタル技術の知識・リテラシー不足」が挙げられています。つまり、企業がDX推進を加速するために、従業員にデジタルリテラシーを習得してもらう必要があります。
デジタルリテラシーが低いリスク
デジタルリテラシーが低いと企業に悪影響を及ぼします。ここでは、デジタルリテラシーが低い場合のリスクを5つご紹介します。
生産性が低下する
デジタルリテラシーが低いと、デジタルを使いこなせずに生産性が低下してしまいます。
デジタルを使いこなせなければ、データを手入力しなければなりません。データの手入力はミスが発生しがちです。
また書類を電子化しなければ紛失してしまいかねません。紙の書類は探索に時間がかかります。
問題を解決するためにデジタルツールを導入しても、上手く使いこなせる人がいなければ無駄な投資となります。
企業競争力が低下する
デジタルリテラシーが低いと、新たなデジタル技術を理解ができず競合他社に遅れが取り、企業競争力が低下してしまいます。またイノベーションが起きづらくなります。
例えば、DVDはデジタル技術により、レンタルではなくサブスクリプションで利用できるようになりました。店舗に出向かずに、好きなDVDを低価格で視聴できるようになりました。
近年はサブスクリプション限定のオリジナルDVDの配給もされており、DVDレンタルショップは窮地に立たされています。このように、デジタルリテラシーが低いと競合他社より遅れ、窮地に立たされていまします。
DX推進が停滞する
日本は労働者人材不足が深刻な問題となっているため、デジタル技術を活用して業務効率化を図る必要があります。そのため、さまざまな企業がDXに取り組んでいるのです。
しかし、デジタルリテラシーが低いと、DX推進が停滞してしまいます。
経営陣がDX推進しようとしても、従業員が既存の方法を変えたくないと反発し非協力的になります。
情報漏洩など事故が発生する
従業員の情報リテラシーが低いと情報漏洩などの事故が発生しやすくなります。
例えば、安全性の低いWebサイトにアクセスしてしまい個人情報が抜き取られてしまうことがあります。また、見知らぬ相手のメールの添付ファイルを開いてマルウェアに感染してしまうこともあるでしょう。
公衆Wi-fiは通信暗号化されていないため、情報が盗まれてしまう恐れがあります。これらを知らずに情報漏洩してしまう危険性があります。
企業イメージがダウンする
従業員のデジタルリテラシーが低いと、情報漏洩の事故を起こしたり、SNS上で不適切な情報を発信したりして企業のイメージが悪化します。
近年、SNS上の不適切な情報発信でビジネス活動が停止されることも珍しいことではなくなりました。
企業のイメージが悪化すると、顧客や取引先からの信用がなくなり、ビジネス機会が得られなくなるため注意しましょう。
デジタルリテラシーを高める方法
デジタルリテラシーは6STEPで高められます。
1.目標を立てる
まずは、デジタルリテラシーを向上させて、どのような目標を達成するのかを明らかにしましょう。
具体的な目標を設定することで、従業員はどのようなスキルを取得すべきか、何を優先すべきかがわかるようになります。
例えば、情報漏洩リスクを低下させたい場合は、情報漏洩の事故発生件数を0にするなど具体的な数値を示しましょう。
2.現状を把握する
次に、組織全体のデジタルリテラシーを把握します。組織にはデジタルを得意とする人もいれば、不得意とする人もいます。そのため、各自のレベルを把握した上で適した教育を行うことが大切です。
各自のデジタルリテラシーレベルを把握する方法には、次のような方法があります。
- ITパスポート試験の問題を解いてもらう
- 業務プロセスを洗い出して、どこに課題があるかを特定する
- 従業員にデジタルツールの利用状況に関するアンケートを実施する
- スキルマップを作成して、従業員のデジタルリテラシーレベルを可視化する
- 1on1を実施して、どのようなスキルを習得したいかをヒアリングする
3.従業員に学習の機会を与える
次に、従業員に学習機会を与えます。各自のレベルに合った学習機会を提供しましょう。学習機会の提供方法には、次のような方法があります。
- OJT:実務の現場でデジタルリテラシーを教える
- OFF-JT:研修施設でデジタルリテラシーを教える
- eラーニング:PCやスマートフォンで動画を見ながら学習する
- 書籍:書籍でマイペースに学習する
デジタルリテラシーレベルを客観的に証明したい場合は資格を取得しましょう。
デジタルリテラシー関連の資格
デジタルリテラシー関連の資格には、次のようなものがあります。
ITパスポート試験
出典元:『ITパスポート試験』
ITパスポート試験は、社会人が身に付けておくべきITに関する基礎知識を証明できる国家試験です。
IT技術に関する知識をはじめ、AIやビッグデータなど新技術に関する知識など幅広い分野の知識を問う試験となっています。ITをビジネスに利活用できる力が身につくため、ITを正しく理解したいとお考えの方におすすめの試験です。
G検定
出典元:『G検定』
G検定とは、AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための検定試験です。AIやディープラーニングに関する技術的な手法やビジネス活用方法が理解できているか力を試せます。
「AIで何ができて、何ができないのか」「どこにAIを活用すればよいか」「AIを活用するためには何が必要か」が理解できれば、DX推進に取り組めるようになります。そのため、AI・ディープラーニングをビジネスに活かしたいとお考えの方におすすめの試験です。
データサイエンティスト検定
出典元:『データサイエンティスト検定』
データサイエンティスト検定は、データサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力を有していることを証明できる検定試験です。
データサイエンティストを目指す人の指針となるように、4つのレベルが用意されています。そのため、これからデータサイエンティストを目指そうとしている方におすすめの試験です。
4.人事評価にデジタルリテラシーの項目を組み込む
従業員に積極的に学習するように、人事評価にデジタルリテラシーの項目を組み込みましょう。
人事評価の項目にデジタルリテラシー(ITスキル・デジタルツールの活用能力・情報セキュリティ・デジタル化への貢献度)を含めることで、従業員が積極的に学習するようになります。
5.デジタルリテラシーを実践する場を提供する
デジタルリテラシーを学習し終えたら、実践の場を提供しましょう。例えば、アイデアコンテストを実施して、業務デジタル化に関するアイデアを募り、実現可能なものはチームを結成してやり遂げてもらいます。
従業員から意見を出してもらうために、失敗を恐れずに挑戦できる風土を醸成しておきましょう。また、挑戦した際に困ったことが出た場合は相談できる体制を整えておくことが大切です。
6.1on1を実施してフィードバックする
最後に上司と部下で1on1を行います。1on1は、従業員一人ひとりと話し成長を支援する機会です。
部下にフィードバックをする際は「デジタルツールを上手く活用しているね」と抽象的な表現ではなく「デジタルツールを作成して請求業務を1/5程度に効率化してくれたね」と具体的に評価をしてあげましょう。
従業員が努力していることや、成長したことを伝えてモチベーションを上げましょう。また、改善点がある場合は、具体的なアクションプランを提案してあげます。このような工夫をすることで、部下が成長できます。
部下を育成するフィードバックについて詳しく知りたい方は、下記の記事をお読みください。
関連記事:『フィードバックとはどうやるの?意味や役割、実施方法を解説』
まとめ
デジタルリテラシーとは、“デジタル技術に関する知識”や“デジタル技術を活用する能力”を指します。デジタルリテラシーを身に付ければ、デジタル化に対する不安を軽減でき、積極的にDX推進ができるようになります。
この記事では、従業員にデジタルリテラシーを教育する方法をご紹介しました。企業競争力に直結するものなので、これを機会にデジタルリテラシーを教育してみてください。
この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。