カスタマーサポートの簡易集計ダッシュボードをGoogleスプレッドシートで作成する方法
カスタマーサポートの問い合わせデータの集計・分析を始めたいと考えたとき、問い合わせ対応ツールに組み込まれたレポート機能や、専用のBIツールの利用にハードルの高さを感じることはありませんか?
そんなときは、無料で利用できるGoogleスプレッドシートを活用して、お手軽に問い合わせデータを集計・分析してみましょう。
Googleスプレッドシートは、Googleアカウントさえ持っていれば個人でも無料で手軽に使えるツールですが、データの集計・分析を十分に行える機能を備えています。また、企業向けのGoogle Workspaceを利用すれば、高度なセキュリティも保ちつつ、多種多様なGoogleのサービスと連携させることも可能です。特に、予算や時間に制約があるスタートアップ企業や個人事業主にとっては非常に便利なツールといえます。
本記事では、そんなGoogleスプレッドシートを使って問い合わせ対応データを効率的に集計する方法を解説します。
Googleスプレッドシートを集計に用いるメリット
多くの問い合わせ対応ツールには自前のレポート機能が備わっていますが、これらのツールにはプランやアカウント権限の制限があったり、操作に慣れが必要で柔軟に対応しにくかったりする場合があります。また、上長や経営陣といった現場の作業者とは異なるレイヤーにデータを共有しようとすると、閲覧用のアカウントや権限をすぐに用意できず、簡単にデータを見せることが難しい場合もあるでしょう。
こうした課題の解決に向けた一つのアプローチとして、データの集計・分析を行うための専用のBIツール(例:Tableau、Looker、Metabase、Redashなど)を導入することも考えられます。しかし、これらのBIツールはセットアップや習熟に時間がかかることに加え、導入や継続利用に対する費用が発生するものもあるため、導入には慎重な検討が必要です。
それらに対して、Googleスプレッドシートはコストを抑えつつ、基本的な集計を迅速に行える代替手段となります。
また、スプレッドシートを使用した集計のやり方を一度習得してしまえば、複数のツールである程度共通した手順での集計が行えるようになるため、ツールごとの操作を覚える手間も省けます。
Googleスプレッドシートで問い合わせの件数を任意のカテゴリ項目ごとに集計する方法
ここからは、Googleスプレッドシートで問い合わせデータをカテゴリごとに集計する具体的な手順を紹介します。
以下の3ステップを通して、簡単にデータの集計を行ってみましょう。
- 問い合わせ対応ツールからデータをエクスポート
問い合わせ対応ツールから分析したい期間のデータをエクスポートする - スプレッドシートへデータをインポート
CSV形式でエクスポートしたデータをGoogleスプレッドシートに取り込む - 関数やピボットテーブルでデータを集計・可視化
Googleスプレッドシートに取り込んだデータを集計・加工する
ステップ 1:問い合わせ対応ツールからデータをエクスポート
まず、使用している問い合わせ対応ツール(例:Zendeskなど)から、集計したい期間の問い合わせデータをCSVファイルなどの形式でエクスポートします。
このとき、以下のような項目を含むデータを用意すると集計の際に便利です。
- 受信日時
- 問い合わせのID(ツール側で問い合わせに付与される、固有のメールIDやチケットID)
- 問い合わせのカテゴリ(例:問い合わせ内容、受信経路、ユーザー属性などに基づいてカテゴライズ)
- 優先度(例:問い合わせ内容の緊急度などに基づいて、高・中・低の3段階で分類)
- 担当者(例:担当者ごとに分類して、各担当者の件数を集計)
- 対応ステータス(例:未対応、対応中、完了などのステータスで分類し、各ステータスごとの件数を集計)
- 解決時間(例:問い合わせが解決するまでの時間を追跡し、平均対応時間を分析)
例えばZendeskの場合、選択したビューに含まれるチケットのデータをCSVファイルとしてダウンロードする機能があります。集計の際に必要な項目を設定したビューを用意し、チケットのデータをエクスポートしましょう。
今回は事前に本記事のためのダミーデータを用意していたので、以降はこのデータを使用してスプレッドシートでの集計を進めていきます。
※【補足】問い合わせデータのエクスポートについて
問い合わせ対応ツールからデータをエクスポートし、他のツールで集計・分析を行う際には、ユーザーのプライバシーを保護するためのルールを遵守することが求められます。多くの企業では、問い合わせデータの分析目的での使用についてプライバシーポリシー等に記載していますが、外部ツールにデータを扱わせる場合には、社内でのガイドラインやユーザーからの許諾を確認することが重要です。
ステップ 2:スプレッドシートへデータをインポート
次に、Googleスプレッドシートにエクスポートしたデータを取り込みます。
- 新しいスプレッドシートを作成します。
- ファイル → インポート からエクスポートしたファイルを読み込みます。
- インポート場所:「新しいシートを挿入する」を選択することで、現在開いているスプレッドシートにシートを追加できます。
- 区切り文字の種類:CSVファイルを読み込む場合、基本的に自動検出のままで大丈夫です。
・例えば、データがタブやスペースで区切られているテキストファイルを読み込みたいときは、そのファイル内で区切りとして使用されている文字に合わせて区切り文字を選択しましょう。 - テキストを数値、日付、数式に変換する:データの性質に合わせてチェックを付けてください
・このオプションを有効にすると、日時や数値がスプレッドシート上で扱いやすい形式に変換されるので、基本的にはチェックを付けておくことをお勧めします。
・例外としては、例えば先頭がゼロから始まる数字をそのまま扱いたい場合に、先頭のゼロが落ちるのを回避するためにチェックを外すことがあります。
スプレッドシートにデータをインポートした後は、読み込んだデータが意図した通りの形式になっているか必ず確認しましょう。データの修正や整形が必要な場合は、この段階で修正しておくことで以降の集計作業がスムーズになります。
ステップ 3:関数やピボットテーブルでデータを集計・可視化
スプレッドシートにデータを取り込んだら、次は集計です。ここではピボットテーブルを使って、問い合わせのカテゴリごとの件数を簡単に集計してみましょう。
- インポートしたデータのすべての列を選択し、挿入 → ピボットテーブルを選択します。ピボットテーブルの挿入先は、今回は「新しいシートに追加」を選択してください。
- ピボットテーブルの項目を設定します。
行:今回はカテゴリごとの件数を集計するため、「問い合わせカテゴリ」を選択します。
値:「問い合わせID」を選択し、COUNTAで集計します。
フィルタ:空白行のデータを除外するため、「問い合わせID」を指定し「条件でフィルタ」へ「空白ではない」を選択します。
以上の設定を行うことで、カテゴリごとの問い合わせ件数を集計することができました。
また、他にも特定の観点からの集計が必要な場合は、Googleスプレッドシートの関数を活用してデータを加工することができます。
例えば、ある時間帯にどのくらいの問い合わせが発生しているかや、ある特定の曜日に問い合わせが集中していないかなど、さらに深い分析が可能になります。
今回の集計に用いたサンプルデータの場合、A列の受信日時が時刻まで含んだ値になっているため、そのままだと日付や時間帯ごとの集計をピボットテーブルでうまく行うことができません。
元データを取り込んだシートに以下のような関数を追加することで、新しく集計用に加工した値の列を用意してみましょう。
-
- 日付ごとに集計:データを日付のみで集計します。
- 関数サンプル:=ARRAYFORMULA(DATE(YEAR(A2:A), MONTH(A2:A), DAY(A2:A)))
- 時間帯で集計:受信時間ごとに集計し、どの時間帯に問い合わせが多いかを分析できます。
- 関数サンプル:=ARRAYFORMULA(HOUR(A2:A, "HH"))
- 曜日別に集計:曜日ごとに問い合わせの件数を集計し、パターンを見つけるのに役立ちます。
- 関数サンプル:=ARRAYFORMULA(TEXT(A2:A, "ddd"))
- 関数サンプル:=ARRAYFORMULA(TEXT(A2:A, "ddd"))
- 日付ごとに集計:データを日付のみで集計します。
集計用の列が追加できたらピボットテーブルの参照範囲も調整し、必要に応じてピボットテーブルの項目を設定し直してください。
※【補足】関数サンプルについて
サンプルのARRAYFORMULA関数のみでは空白行が 0 という値として認識されてしまい、シート末尾に余計なデータが入ってしまいます。関数で加工したデータの集計を実際に行う場合、事前に空白行を除外しておくか、IF関数やFILTER関数、ARRAY_CONSTRAIN関数などを組み合わせて不要なデータを除外するようにしましょう。
集計結果のグラフ化
一通りの集計が完了したら、集計結果をグラフで可視化するのも効果的です。
データを視覚的に把握可能にすることで、直感的に理解しやすい形で情報を共有することができます。
- 作成したピボットテーブルから必要な範囲を選択し、挿入 → グラフを選びます。
- グラフの種類は集計目的に応じて選択します。
-
- 棒グラフ:カテゴリごとの比較を行うのに適しています。
- 円グラフ:割合を可視化したい場合に使用します。
- 折れ線グラフ:時系列に沿った推移を示す場合に最適です。
- 棒グラフ:カテゴリごとの比較を行うのに適しています。
-
追加したグラフは色やスタイルを適宜調整することで、より見やすく分かりやすい形にすることも重要です。
例えば、問い合わせのカテゴリごとの違いを強調するために色分けを行ったり、目盛の単位やスケールを適切に設定して値の意味を分かりやすくしたりすることで、見る人が理解しやすいグラフを作るようにしましょう。
まとめ
一度集計のフォーマットを作成してしまえば、あとはデータを更新するだけで繰り返し集計・可視化が可能です。
Googleスプレッドシートを利用すれば、少ないコストで手軽に問い合わせデータを集計・分析できます。
さらに詳細な分析が必要な場合は、問い合わせ対応ツールの専用のレポート機能の活用や、より高度なBIツールの導入も検討していくと良いでしょう。
カスタマーサポートのデータ分析についてお悩みの方は、ぜひ弊社にご相談ください。