PaaSとは?代表サービスから活用例までわかりやすく解説!
武田龍哉
2024.11.07
「クラウドサービスのPaaSとは、どのようなサービスなのだろうか…」「PaaSを上手く活用するためにはどうすればよいのだろうか…」とお悩みを抱えていませんか?そのような方向けに、PaaSについて詳しく解説します。
この記事ではPaaSの活用事例、代表サービスまでご紹介しているため、PaaSを検討する際にお役立てください。
PaaSとは
PaaSとは、Platform as a Serviceの略称で、クラウド上にあるプラットフォームを利用できるサービスです。
アプリケーションを稼働させる際に必要となる「ミドルウェア」「OS」「ハードウェア」が提供されています。
通常の場合、ソフトウェアを開発する前に、プログラム動作に悪影響が出ないようなCPUやメモリ、ストレージのスペックを選定して環境を構築しなければいけません。
しかし、PaaSを利用すれば、ゼロから環境を構築する必要がなくなります。
PaaSとSaaS、IaaSの違い
SaaS | PaaS | IaaS | |
アプリケーション | 〇 | × | × |
ミドルウェア | 〇 | 〇 | × |
OS | 〇 | 〇 | × |
ハードウェア | 〇 | 〇 |
「PaaS」「SaaS」「IaaS」は、クラウドサービスです。クラウドサービスで提供するサービス内容によってサービス名が変わります。
PaaSのメリット
PaaSのメリットは4つあります。
即座に開発に取り組める
PaaSを利用すれば、ソフトウェア開発環境を構築する負担が減らせます。
開発環境の選定から環境構築までは数日から数週間程度かかることがあります。そのため、すぐにソフトウェア開発は行えません。
しかし、PaaSを利用すれば、ソフトウェア開発環境が入手できるため、すぐにソフトウェア開発ができます。つまり、ソフトウェア開発に集中できます。
初期コストを抑えられる
PaaSを利用すれば、開発環境の初期コストを抑えられます。
環境を構築する場合は、「ハードウェア」「ソフトウェア」「外部サービス代金」などを支払わなければいけません。
スペックにもよりますが、数十万円から数千万円することもあります。そのため、初期コストが高くなりがちです。
一方で、PaaSは従量課金型で利用した分を支払えば済むため、環境を構築するための初期コストを安く抑えられます。
運用・保守の負担が減らせる
PaaSを利用すれば、ソフトウェアを安定稼働させるための運用・保守の負担が減らせます。
例えば、OSのバージョンアップやセキュリティパッチの適用などはPaaSサービス提供者が行ってくれます。また、ハードウェアの交換なども必要ありません。
自社で行うべき運用・保守は、修正保守(ソフトウェアに発生したバグや不具合の修正)のみで済むため、運用・保守の負担が減らせます。
拡張性が高い
PaaSであれば、CPU、メモリ、ストレージなど必要に応じて拡張ができます。そのため、アプリのユーザートラフィックが急増したときに動作を安定させるためにスケールアップすることも可能です。
ユーザートラフィックの増減は予測できないケースもありますが、PaaSを利用すれば迅速に対応できます。
このように、スケールアップやスケールダウンが自在にできる拡張性の高さも魅力です。
PaaSのデメリット
PaaSのデメリットも3つあります。
開発自由度が低い
PaaSとオンプレミス環境を比較すると開発環境の自由度が低くなります。なぜなら、ストレージやCPU、ミドルウェアなどを自由に選択できないためです。
その結果、プログラミング言語の選択の幅が狭まったり、特別な製品がインストールできなかったりします。
障害発生時の対応も再起動のみなど作業が制限されてしまいます。
一般的に開発の自由度と運用負荷は比例するものです。そのため、開発の自由度を求めたい場合は、オンプレミスやIaaSを検討してみることをおすすめします。
ベンダー依存のセキュリティ
PaaSは「ミドルウェア」「OS」「ハードウェア」の管理をベンダーにお任せすることになります。そのため、セキュリティ対策がベンダー依存になってしまいます。
セキュリティの高さはベンダーにより変わります。そのため、ベンダーの資料を良く読んだ上で、気になる箇所は質問しておきましょう。
また、ベンダーの資料だけでなく第三者認証を受けているサービスであるか確認することも大切です。
有名な認証制度には、国際標準化機構(ISO)が策定した「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」の国際基準規格ISO 27001、ISMSクラウドセキュリティ認証などがあります。
セキュリティが気になる場合は第三者認証を受けているサービスを選ぶことをおすすめします。
環境移行が難しくなる
PaaSを利用すると環境移行が難しくなります。
なぜなら、環境を移行する際には、データベースとOSの相性、フレームワークとの統合性、開発環境の検証などバージョンとの統合性を検証しながら最適化しなければいけないためです。
PaaSを利用すると、ベンダー依存となるため、オンプレミスへの移行が難しくなります。
PaaSが向いているケース
PaaSのメリット・デメリットをご紹介しましたが、向いているケースは「アプリ開発」と「データ分析」です。
アプリ開発
PaaSはアプリケーションを稼働させる際に必要となる「ミドルウェア」「OS」「ハードウェア」が提供されているサービスです。
ソフトウェア開発環境が整っているため、自社独自のアプリを短期間で開発したい方はPaaSが向いています。
開発環境の選定から構築までは数日から数週間程度かかることがありますが、PaaSを利用すれば、すぐにソフトウェア開発を始められます。
アプリ開発に必要な機能が一通り揃っているため、スムーズに開発に専念することも可能です。
データ分析
ビッグデータの分析など大量のデータを取り扱うときもPaaSは役立ちます。
なぜなら、CPUやメモリ、ストレージをスケールアップできるためです。
また、OSのバージョンアップやセキュリティパッチの適用などはサービス提供者が行ってくれるため、データ分析に注力できます。
PaaSはビッグデータ分析に欠かせないものとなっています。
PaaSの活用事例
PaaSについて理解できたと思いますが、どのように利用されているのでしょうか?ここでは、PaaSの活用事例をご紹介します。
オンラインサービス事業者
A社はオンラインフォトブックサービスを提供しており、オンプレミス環境をクラウド環境へ移行することにしました。
なぜなら、多くの人にサービスを利用してもらいアクセスが増加、データ要領の増加などでパフォーマンスが低下してきたためです。
また、サーバー周りの運用・管理の工数が社内で割けないという状況になりました。
2つの問題を解決するために、オンプレミス環境をクラウド環境へ移行し、サービスのパフォーマンスを上げることに成功しました。
大手百貨店
B社は大手百貨店です。デジタル時代の顧客体験の創造に向けて、オムニチャネル化に取り組みました。
百貨店の来店前にコミュニケーションを深めることで、Webメンバーやハウスカードの会員などロイヤルティーの高いお客様になっていただく仕組みを考えました。
この仕組みを実現するために、スマートフォンアプリを開発。スマートフォンアプリでは「ウォーキングコイン」と呼ばれる、百貨店を歩いた分だけコインを提供するサービスなども用意されています。
また、AIがおすすめショップを提案する機能を搭載しました。スマートフォンアプリに機能を追加するには、サーバーの拡張が欠かせません。
B社は、PaaSを利用してスケールアップを自由自在にできる状態にして画期的なアプリの開発に成功しています。
大手保険会社
C社は大手保険会社で、代理店も含めて約35万人に保険代理店向けシステムを提供していました。
保険代理店向けシステムには、顧客関係管理(CRM)や帳票作成、カレンダーなど、保険業務に必要な機能が搭載されています。
従来の保険代理店システムは、いくつかのSaaSを組み合わせて構築していましたが、SaaSはユーザ1名単位の課金体系で、エンドユーザーが増加すると割高になりました。
このような課題を解決するために、PaaSで保険代理店システムを開発したのです。
PaaSを利用することで、運用・保守の手間を省きながらシステムが利用できるようになりました。
代表的なPaaSサービス
代表的なPaaSサービスを3つご紹介します。
AWS:Elastic Beanstalk
引用:『AWS Elastic Beanstalk』
AWS(Amazon Web Services)には200近くのサービスがありますが、代表的なPaaSサービスがElastic Beanstalkです。
Elastic BeanstalkはWebアプリケーションを最速で立ち上げられます。
Webアプリケーションのコードをアップロードするだけで、プロビジョニング、ロードバランシング、オートスケーリング、モニタリングなどを自動で処理してくれます。
大きな特徴は、Java.NET、Node.js、PHP、Ruby、Python、Go、Dockerなど、さまざまなプログラミング言語を利用できることです。
また、アプリケーションの状態のモニタリングと管理のための統一されたユーザーインターフェースが用意されています。そのため、速やかにWebアプリケーションを開発したいとお考えの方におすすめのサービスです。
Microsoft Azure: App Service
引用:『App Service』
Microsoft社のPaaSサービス「App Service」もWebアプリケーションを最速で立ち上げられます。
Azure App Serviceの大きな特徴は、Azure Marketplaceから有名なアプリケーション(WordPress 、 Joomla 、 Drupal など)を選択してテンプレートで活用できることです。
Azure Marketplaceでは3,500種類以上のサービスが提供されています。
外部サービスへの接続ができるため、Webアプリケーション開発でテンプレートなどを活用したいとお考えの方におすすめのサービスです。
Google:Google Cloud Platform
引用:『Google Cloud』
Google社のPaaSサービス「Google Cloud Platform」を利用すれば、インフラのコストを安く抑えられます。
App Engineなどの機能を上手く活用している人は「毎月10万円以上かかっていたシステムのインフラ費用が抑えられた」という声も上がっています。
Google Cloud Platform はElastic BeanstalkやApp Serviceみたいに複雑なソフトウェア開発は行えません。
しかし、シンプルなアプリで、インフラコストを極力抑えたいとお考えの方にはおすすめのサービスです。
まとめ
PaaSとは、Platform as a Serviceの略称で、クラウド上にあるプラットフォームを利用できるサービスです。
アプリケーションを稼働させる際に必要となる「ミドルウェア」「OS」「ハードウェア」が提供されています。
ソフトウェア環境を構築する必要なく、すぐに開発できたりサーバーの運用保守の負担がなかったりすることがメリットです。
また、スケールアップやスケールダウンもしやすいです。
PaaSサービスを上手く活用すれば、インフラコストを削減することも可能です。そのため、PaaSを上手く使いこなしましょう。もし、PaaSについて質問したい場合はアディッシュにご相談ください。
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この記事を書いたライター
武田龍哉
Web制作会社、広告代理店を経験後、アディッシュに入社。 マーケティング担当としてリード獲得やナーチャリングの施策立案、実行を担当した後、インサイドセールスチームへ参画。 インサイドセールスチームでは、主にカスタマーサクセスの関連商材を担当し、商談機会創出とチーム体制構築に携わる。