前期比で案件連携数は1.5倍に。顧客の成果創出を担うアダプションチーム進化の第一歩 -jinjer株式会社 CSコンサルティング事例
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大西花絵
2026.06.01
はじめに
jinjer株式会社は、人事労務、勤怠管理、給与計算、人事評価、サーベイ、データ分析、採用といった幅広い人事業務を一つのデータベースで管理する統合型人事システム「ジンジャー」を提供しています。同社はアディッシュへCSコンサルティングを依頼し、活動の定義や理想のプロセス設計に取り組みました。
プロジェクトには、アディッシュのコンサルタントと共に『カスタマーサクセス実行戦略』著者で日本カスタマーサクセス協会 代表理事の山田ひさのり氏、そしてTSUMAMI CONSULTING 代表の川村拓司氏が参画。4ヶ月にわたり、CSの役割と成功定義を再整理する取り組みが進められました。
今回は、カスタマーサクセス部 部長/アダプション領域責任者(取材時)である 河村 絢様 に、変革のプロセスとそこから得られた気づきを伺いました。
jinjer株式会社 カスタマーサクセス部 部長/アダプション領域責任者※取材時
河村 絢様
組織の変化が生んだ「原点回帰」のチャンス
──CSコンサルティングを依頼された背景を教えてください。
河村様:当社はいま、第二の創業期として、組織全体のあり方を見直すタイミングを迎えています。
特に大きな転機となったのが、2025年5月にCCO(最高顧客責任者)という役割を新設したことです。「顧客の成功を事業の中心に置く」という経営の意思表示であり、全社的にCS機能を強化する動きが本格化しました。
これに合わせてCS組織も、従来の企業規模別の編成から、「オンボーディング(導入)」と「アダプション(活用促進・顧客の成果創出)」という役割へ再編しました。私はアダプション領域の責任者として、チームを「導入支援のためのチーム」から「顧客の成功を実現するチーム」へ進化させる必要性を強く感じていました。
ただ、社内には十分な知見がなかったので、外部のエキスパートの力をお借りしようと考え、お願いしたのがアディッシュ様のCSコンサルティングでした。
──なぜアディッシュのCSコンサルティングだったのでしょうか。
河村様:私たちにとって今回のプロジェクトは、単なる外部コンサルやBPOとは一線を画す、CSオペレーション基盤を再構築するものでした。そのため「戦略設計」「CSオペレーション設計」「実行力」を一気通貫で提供していただけるかが重要だったのです。
その点、山田様の全体設計力と課題抽出の精度、川村様(元HubSpot Japan社でカスタマーサクセスの実務に精通)の実務設計・運用知見、アディッシュ様の実行力と伴走姿勢。この三位一体の支援体制を備えた今回の座組は、ほかには代え難い最適解でした。
「顧客の成功」を再定義し、リアクティブな支援から一歩踏み込むための組織変革
── マネージャーとして、どのような課題を感じていらっしゃいましたか。
河村様:当時は、多様なニーズを持つお客様への個別対応を重視するあまり、ノウハウが個人に蓄積される『属人化』が課題となっていました。
プロダクトがカバーする領域が広い分、日々の多角的なお問い合わせへの対応が優先され、お客様の将来的な成果に向けた能動的な提案に、組織として十分なリソースを割ききれていない側面があったのです。
そして顧客の成果創出をするための前提として、「顧客の成功」について、その定義が曖昧だったことが問題でした。当時はGRR(解約率)などの指標ばかりにフォーカスしており、「顧客にとっての成功とは何か」をチームで共有できていなかったと感じています。
振り返ると、プロダクトの全機能を活用していただくことを優先し、お客様ごとの成功基準(サクセス)と、提供する価値との結びつきを十分に検証しきれていない部分もありました。指標としてGRR(解約率)を注視していましたが、それはあくまで結果であり、本質的な『顧客にとっての成功』をチーム全体で共通言語化できていなかったことが、真の課題だと痛感しました。
正直なところ「お客様がジンジャーを通じてどのような成果を得るべきか」という一歩踏み込んだ議論が、チーム全体で不足していたと感じています。
そこで、自分たちが理想とする活用方法を提案するだけでなく、お客様が真に求めているメリットと当社の価値を改めて結びつけ、組織として再現性を持って届ける仕組みが必要だと考え、プロジェクトを始動させました。
アウトカムマップに基づいたサクセスプランの提案が成果への道筋に
── プロジェクトの内容についてお聞かせください。
河村様:6月中旬にプロジェクトが始まり、まずは徹底したヒアリングから着手しました。CS部門に限らず、セールス、開発まで関係する全部門へのヒアリングを通じ、業務の全体像と課題の真因を丁寧に紐解いていきました。
その中で浮き彫りになったのは、安定運用フェーズのお客様に対する支援が、ご相談への対応を中心とした『リアクティブ(反応型)』な動きに留まっていた点です。本来、安定的に運用いただいているお客様こそ、次のステップである価値の拡大を提案しやすい状況にあります。そこに対して組織としてより能動的に関与し、さらなる付加価値を提供できるポテンシャルがあることが明確になりました。
そこで実施したのが、「顧客にとっての成功とは何か」を徹底的に議論するワークショップです。事前準備を含めて7時間ほどを費やし、お客様がジンジャーを通じて得たい成果を一つひとつ言語化し、構造的に整理していきました。
その結果、アディッシュさんの支援を受けながら、当社チームで作り上げたのがアウトカムマップ (成果へのロードマップ)です。
例えば、「勤怠・給与のデジタル化による業務効率化」を確実な成功体験として最初の土台にし、そこで蓄積されたデータを活用して、評価や労務管理といった「人事業務全体の高度化」へとつなげていく。こうした、統合データベースを持つジンジャーだからこそ提供できる「お客様の進化のプロセス」を理想の流れとして可視化しました。
これにより、各プロダクトの価値を「成果のインパクト」と「実現までの時間軸(短期・中期・長期)」で再整理でき、各顧客に対して「今、どの価値を届けるべきか」という判断基準が明確になりました。
── 完成したアウトカムマップはどのように活用したのでしょうか。
河村様:アウトカムマップで描いた「顧客の成功の流れ」を基盤にし、そこから具体的な「サクセスプラン(目標達成に向けた実行計画)」へと落とし込んでいます。
お客様と「目指すべきゴール」を合意し、その達成に向けて新しいソリューションが必要になれば、スムーズにセールスへ連携する体制が整えられます。単なる追加機能の紹介ではなく、合意した「サクセスプラン」を共に進めるための「解決策の提案」へと変化したことで、提案の質も、お客様からの信頼も各段に高まったと感じています。
プロジェクト終了後、1ヶ月でセールスへの案件連携数が1.5倍に
── 早速ですが、定量的な成果はいかがでしょうか。
河村様:プロジェクト直後からまだ1ヶ月程度ですが、すでにセールスへの案件連携数は約1.5倍に増加しました。これは単に提案数が増えただけではなく、サクセスプランを通じてお客様の潜在的な課題を共に可視化できた結果だと考えています。
『今の自社に必要なのはこのステップだ』という合意があるからこそ、追加のソリューション提案もスムーズに受け入れていただけるようになりました。お客様と能動的に関わることで、『自分たちのことを考えてくれている』という信頼感が生まれ、こちらの提案に耳を傾けていただける機会が増えてきたと実感しています。
── 組織全体での連携強化も進んでいるそうですね。
河村様:はい。特にオンボーディングチーム(万代氏管掌)が、過去の膨大な支援実績を分析し、「どのような導入プロセスを辿れば最大限の成果が出るか」という『成功パターン』を可視化・言語化してくれたことが非常に大きいです。
これまでは、現場の担当者が培ってきた「経験知」に頼っていた部分もありましたが、それがデータとして体系化されたことで、CS全体がより確かな根拠を持ってお客様に向き合えるようになりました。
この「成功パターン」がセールス段階から共通言語として共有されているおかげで、アダプションチームにバトンが渡された時点で、お客様との目線合わせが完了しています。そのため、導入後の早い段階から「最短ルートで成果を出すための具体的な提案」に集中してスタートが切れるようになりました。
── 数字以外の変化についてはいかがでしょうか。改めて、プロジェクトを通じて感じられたことがあればお聞かせください。
河村様:プロジェクトを通じて学びや気づきは想像以上に多く、課題特定から施策設計、そして現場への実行支援に至るまで、そのスピードと精度には非常に刺激を受けました。このプロセスを経て、チームの視座と行動が大きく変わり始めています。
以前から「お客様のために」という想いが強い組織ではありましたが、当時はどうしても「目の前の困りごとを解決する」という、点でのサポートが中心でした。しかしプロジェクトを経て、お客様自身もまだ気づけていない課題をジンジャーを通して顕在化し、中長期的な成功を見据えてプランニングから実行までを共に行うスタイルへと変化しています。
例えば、当初の導入目的であった「給与計算の効率化」を叶えるだけでなく、そこから得られたデータをどのように次なる組織改善に活用していくのか、といった業務のより深い部分まで切り込んで伴走できるようになっていると思います。
特に印象的だったのは、アウトカムマップやサクセスプランを練り上げる過程で徹底された「顧客視点」の追求です。山田様から繰り返し投げかけられた「それは本当にお客様のメリットに繋がるのか」という問いかけは、今やチームの判断基準として深く根付いています。
さらに、組織として「業務の型化」→「改善」→「再現性のある仕組み化」というサイクルが回り始めたことも大きな前進です。提案の型が明確になったことで、個人の経験値に頼りすぎることなく、チーム全体の支援クオリティを底上げすることができました。
今回の成果によって、チームとしての基盤が強化され、CS全体の生産性やお客様への価値提供の質をさらに高めていけると、確かな手ごたえを感じています。
お客様と未来を描くCSチームへ
── 今後取り組みたいことを教えてください。
河村様:まずはGainsight(顧客状況を可視化するCSプラットフォーム)を活用してヘルススコアを設計し、サクセスプランをデジタル上で可視化することを進めたいと考えています。チームの誰もが、お客様にとって最適なタイミングでより最適な支援ができるような仕組みや体制作りは意識的に注力していきます。
ジンジャーは、人事データの蓄積と活用によって企業の意思決定を支援するプラットフォームです。その価値をしっかり届けるためにも、業務効率化に留まらず、経営判断につながる成功体験をお客様に提供できるよう、今後も顧客への理解を深め、より質の高い提案活動を追求していきます。
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この記事を書いたライター
大西花絵
IT業界で営業・マーケティングを経験後、2016年よりフリーランスとして活動。イベント企画・運営やWebコンテンツ制作を通じて企業のマーケティング支援に従事。近年はCS関連の取材・コンテンツ制作にも携わる。北海道で三姉妹を育てながら、民泊事業も運営中。
