ITに不慣れな担当者へのサービス導入:カスタマーサクセスの対応策と課題

活用に一定のITリテラシーを求めるサービスやツールの場合、導入する側の担当者のリテラシーが高ければ良いのですが、必ずしもそうとは限りません。
ITに不慣れな担当者にも、どうにかサービスを導入してもらおうと、営業がやや過剰なセールストークで受注してきて、いざ利用開始しようと思ったらうまくいかず、そのフォローにカスタマーサクセスが奮闘する、というケースも多いのではないでしょうか?
そういったケースでは、どういった施策を講じるかを検討することも大切ですが、そもそもどういうスタンスや体制でカスタマーサクセスを行うか方針を決めておくと良いでしょう。
今回の記事では、導入担当者がITに不慣れな場合に発生しがちな問題点と、その対応策について、メリット・デメリットを併せてご紹介いたします。
サービス・ツールに対して導入担当者がITに不慣れな場合に起こりやすい問題
ITに不慣れな担当者にサービスを導入する際、以下のような問題が発生することがあります。
- 理解不足
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- 新しいシステムやツールの機能や利点を理解できず、導入の効果を実感できない。
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- 操作ミス
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- システムの操作に不慣れなため、誤った使い方をしてしまう。
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- コミュニケーションの障壁
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- IT用語や専門用語が多く担当者が理解できないため、サポートを受ける際に困難を感じる。
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- 抵抗感
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- 新しい技術やツールに対する抵抗感が強く、導入に対して消極的になる。
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- トレーニング不足
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- 十分なトレーニングが行われない場合、担当者が自信を持ってシステムを使えない。
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このような状態を放置しておくと、ツールを使うのを諦めて、元々の手段(それはエクセルであったり、紙であったり、、)に戻ってしまいツールも解約されてします。
それでは、これらの問題に対してどのような手段で解決に導くと良いのでしょうか?
いくつかの手段とそれぞれのメリットとデメリットをご紹介いたします。
カスタマーサクセスの対応策とメリット・デメリット
カスタマーサクセスが個別対応を柔軟に行う
例えば、「この機能をもっと活用したいので、使いやすいように仕様を変更して欲しい!」であったり、「サービスを利用するにあたって業務効率化を図るために、データを一括でダウンロードするような機能を追加して欲しい」といった具体的な要望に、カスタマーサクセス担当者が自身のリソースをつかって個別に対応する方法があります。
メリット
- 顧客満足度の向上
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- 個別対応により、顧客のニーズや問題に対して迅速かつ的確に対応できるため、顧客満足度が向上する。
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- 解約率の低下
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- 顧客が抱える問題を早期に解決することで、解約のリスクが減少する。
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- 信頼関係の構築
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- 顧客の要望を受けてあげることで、信頼関係を築くことができ、長期的な関係を維持しやすくなる。
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- 追加収入の機会
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- 有償での個別対応を行う場合、追加の収入が得られる。
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デメリット
- 工数の増加
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- 各クライアントに対して個別に対応するため、対応にかかる工数が増加し、リソースが逼迫する可能性がある。
- 個別対応に必要な人員や時間が増えるため、運営コストも増大する。
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- 属人化のリスク
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- 特定の担当者に依存する形になると、属人化が進み、担当者が不在の際に対応が難しくなる。
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- スケーラビリティの欠如
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- 個別対応が多くなると、同じ手法を他のクライアントに適用することが難しくなり、スケーラビリティが低下する。
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- 標準化の難しさ
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- 各顧客に対して異なる対応を行うため、サービスの標準化が難しくなる。
- 特に、ITに不慣れな担当者に対しては、個別のサポートが必要な場合が多く、標準化が難しい。
- 標準化に対して従業員が抵抗を示すことがある。特に、従来のやり方に慣れている場合、新しいプロセスや手順に対する不安や不満が生じる。
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- チームの負担増
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- 個別対応が増えることで、カスタマーサクセスチームのメンバーに対する負担が増加し、モチベーションやパフォーマンスに影響を及ぼす。
- 個別対応が増えることで、カスタマーサクセスチームのメンバーに対する負担が増加し、モチベーションやパフォーマンスに影響を及ぼす。
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際に個別対応を行うと、顧客のニーズに一致したサービス提供ができるため、顧客から「安心して今後もサービスを活用できる」といったポジティブな評価をいただけました。
しかしながら、顧客の使用用途に沿ったシステムのカスタマイズを行っていたり、特別価格で提供していたりする場合、担当者の不在時や、予期せぬ不具合が発生した際の対応が困難でした。
また、特別対応の内容が口約束であったり、書面に残されていない場合は、社内確認に時間を要して顧客を待たせてしまうといった場面が発生しました。
そのため、特別対応を行う場合は、どのような内容を何のためにどういう方法で行っているか、引き継ぎ書を作成しておくと良いでしょう。
対応範囲を決めて、対応しないことを決める
例えば、「ツールを代行で操作して欲しい」といった要望に対しては一律にお断りするなど、対応範囲をあらかじめ定める方法があります。
上記の例の場合、業務を代行するというイレギュラー対応が発生しないため、カスタマーサクセスのリソースが圧迫されることはありません。
しかしながら、ITに不慣れな担当者からは、「不親切だ」という声があがる懸念もあります。
対応範囲を決めることで発生するメリットとデメリットについてご紹介いたします。
メリット
- リソースの最適化
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- 対応範囲を明確にすることで、限られたリソースを最も重要な業務に集中させることができ、効率的な運用が可能になる。
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- 期待値の管理
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- どの範囲に対してサポートを行うかを明示することで、顧客の期待値を適切に管理でき、誤解や不満を減少させることができる。
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- プロセスの標準化(属人化の防止)
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- 対応範囲を決めることで、標準化されたプロセスを構築しやすくなり、チーム全体での一貫した対応が可能になる。
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- トレーニングの効率化
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- 対応しない範囲が明確になることで、必要なトレーニングや教育を特定しやすくなり、効率的にスキル向上を図ることができる。
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- 顧客との信頼関係の構築
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- 明確な対応方針を持つことで、顧客に対して透明性を持ったコミュニケーションが可能になり、信頼関係を築く助けとなる。
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デメリット
- 顧客満足度の低下
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- 顧客が求めるサポートを受けられず、満足度が低下する。
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- 解約リスクの増加
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- 顧客が必要なサポートを受けられない場合、解約を検討する要因となる。
- 特にITに不慣れな担当者は、問題解決に苦労し、最終的にサービスを手放す可能性が高まる。
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- ブランドイメージの悪化
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- 顧客からのフィードバックが悪化することで、企業のブランドイメージに悪影響を及ぼす。
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- 顧客との関係性の悪化
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- 顧客が、自身のニーズが無視されていると感じると、企業に対する信頼を失い、長期的な関係構築が難しくなる。
- 顧客が、自身のニーズが無視されていると感じると、企業に対する信頼を失い、長期的な関係構築が難しくなる。
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また、今までに経験がない事例が発生した際は、以下のポイントに沿って対応方針を相談すると良いでしょう。
- 重要度
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- 必須の対応かどうか、対応する・しないことによる損失を軸に検討する。
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- 汎用性
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- 対応することで、他の顧客の対応にも活用できるか、既存の仕様や顧客に支障がないかを検討する。
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- 優先度
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- 「〇日までに対応していなければ解約される懸念がある」、「この機能がなければ他の競合他社と契約する可能性がある」、など優先度を検討。
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基本的に人的な対応を希望されるケースは機能の不足が原因です。
相談が多いような内容は機能実装することが最適解であることもあるため、開発やプロダクトマネージャーと相談することが必要です。
アウトソースする
専門的な知識が求められる業務がある場合、その業務を得意とする企業や専門家にアウトソースする方法があります。
メリット
- 専門知識の活用
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- アウトソース先の企業や専門家が持つ専門知識や技術を活用できるため、質の高いサービスを受けられる。
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- コスト削減
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- 内部で人材を雇用するよりも、必要な時に必要な分だけ外部に依頼することで、コストを抑えることができる。特に短期的なプロジェクトや業務では、固定費を削減できる。
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- 業務の効率化
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- アウトソースすることで、内部リソースをコア業務に集中させることができ、全体の業務効率が向上する。
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- 柔軟な対応
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- 業務量の変動に応じて、アウトソース先のリソースを調整できるため、柔軟な対応が可能になる。
- 市場や業務ニーズに迅速に対応できる。
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- リスク分散
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- 特定の業務を外部に委託することで、内部の技術的な問題や人材の流動性に関するリスクを分散し、業務の安定性を高められる。
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デメリット
- セキュリティリスク
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- 業務をアウトソースすることで、機密情報やデータが外部に流出するリスクがある。
- 特に、情報セキュリティに対する対策が不十分な場合、重大な問題を引き起こす可能性がある。
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- コミュニケーションの課題
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- 外部の業者との連携が必要なため、情報共有やコミュニケーションにおいて課題が生じる。
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- 依存度の増加
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- 特定の業務を外部に委託することで、その業務に対する依存度が高まる。これにより、アウトソース先の企業の状況やパフォーマンスに大きく影響される可能性がある。
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- 品質のばらつき
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- アウトソース先の業者によってサービスの品質が異なるため、期待通りの結果が得られない。
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- 社風との不一致
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- アウトソース先の企業文化や価値観が自社と合わない場合、業務の進行に影響を及ぼす。
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問題を自社で解決しようとすると、解決までに時間を要する可能性があるため、短期間で解決に導くためにアウトソースを検討するのもひとつの方法ではないでしょうか。
弊社アディッシュではSaaS企業と連携してBPaaSを提供する仕組みを進めています。
通常、顧客が使いこなせないところをカスタマーサクセスで支援していきますが、使いこなせないのであれば、そのツールを運用するところもサービスで提供してしまおう、という考え方です。
アディッシュの方でSaaSに紐づくBPOサービスを開発し、そちらを提供していくことで、仮にITに明るくない企業であってもSaaSのメリットを享受できるようになります。
詳しくは下記記事に記載されているのでご参照ください。
SaaS企業の救世主なるか? 「解約率を下げたい」「導入先を増やしたい」広がり始めたBPaaSのメリット | Business Insider Japan
https://www.businessinsider.jp/article/291485/
まとめ
ご紹介した方法はいかがでしたでしょうか。
どの方法にもメリットとデメリットがあります。
最終的に、ITに不慣れな担当者でも安心してサービスの利用を開始できる環境を整えることが、顧客の満足度向上や信頼関係の構築につながるのではないでしょうか。
その時の状況に沿った方法を提案して、顧客の成長を支えるパートナーを目指していきましょう。