サブスクリプションCSでオンボーディングが重要な理由
サブスクリプションビジネスでは、契約後のオンボーディングが収益を左右します。なぜなら、サブスクリプションは顧客に継続利用してもらうことで収益が積み上がるビジネスモデルだからです。また、次のような理由からもサブスクリプションCSでオンボーディングが重要と言われています。
- 顧客がサービスの価値を早く実感できる
- 解約リスクを減らせる
- 顧客がつまずいているポイントを把握できる
今回は、サブスクリプションCSでオンボーディングが重要な理由から、取り組み方まで詳しく解説します。
サブスクリプションCSにおけるオンボーディングとは
サブスクリプションCSにおけるオンボーディングとは、契約した顧客がサービスを使い始め、期待する価値を得られる状態まで支援する取り組みです。
サービスを契約しただけでは顧客の課題は解決しません。顧客は「業務時間を削減したい」「情報を一元管理したい」など、何らかの目的を持ってサービスを導入しています。そのため「何のために導入したのか」「どの業務で使うのか」を整理し、実際の業務で活用できるところまで支援する役割があります。
主なオンボーディング業務は以下のとおりです。
- 導入目的のヒアリング
- 課題の把握
- 初期設定
- 操作方法の案内
- 活用方法の提案
- 利用状況の確認
- 顧客へのフォロー
例えば、操作方法の案内をしても、その後に顧客がログインしていなければオンボーディングが成功したとは言えません。重要なのは「何を説明したか」ではなく「顧客がサービスを使って価値を得られる状態になったか」です。
サブスクリプションCSでオンボーディングが重要な理由
サブスクリプションCSでオンボーディングが重要な理由は(1)顧客の価値実感を早め(2)解約リスクを減らし(3)つまずきを早期に発見できるためです。
1.顧客がサービスの価値を早く実感できる
オンボーディングの役割は、顧客がサービスの価値を実感するまでの時間を短くすることです。
顧客はサービスを利用するために契約しているわけではありません。「作業時間を削減したい」「情報を一元管理したい」など課題を解決するために契約しています。
しかし、初期設定が終わっていない、必要な機能を知らない状態では課題を解決できません。そこで、CSが顧客の目的から逆算し、ステップを整理します。例えば、情報の一元管理が目的なら、すべての機能を説明するより、データ登録方法や共有方法など、目的達成に直結する機能から案内するほうが価値を感じてもらいやすくなります。
株式会社ACES様は、トライアル体験の顧客のオンボーディングを見直し、導入目的をヒアリングした上で操作や活用方法を案内したところ、顧客の納得感が高まり、トライアルから有償契約への転換率が1.5倍上昇しました。
2.オンボーディングによって解約リスクを下げられる
オンボーディングは、解約を防ぐための顧客維持戦略にもなります。サブスクリプションサービスは、利用されない状態が続くと「なくても困らない」と判断されて解約されてしまいます。そのため、次のような状態ではフォローが欠かせません。
- 初回ログイン後に利用していない
- 初期設定の途中で止まっている
- 主要機能を利用していない
- 一部の人しか利用していない
- 利用頻度が低下している
例えば「契約後14日経っても初期設定が完了していない顧客へ連絡する」と決めておけば、利用が止まった段階で支援できるようになります。
また、ゲシピ株式会社様が実施しているように、併せてFAQページを充実させるとより解約率を下げられます。
3.顧客のつまずきを早期に発見できる
オンボーディングを仕組み化すると、顧客がどこで止まっているかを把握しやすくなります。
なぜなら、最終ログイン日、初期設定の進捗具合、主要機能の利用状況などを確認すれば「使い方がわからない」「社内展開が進んでいない」といった問題に気づけるようになるためです。そのため、オンボーディングの設計段階で、どのデータを確認し、どの状態になったらフォローするかまでを決めておくことをおすすめします。
三菱電機株式会社様では「MelBridge」の利用データを見て、利用頻度が下がっている顧客をフォローしています。その際に顧客と対話して「ここが分かりづらかった」「こういう使い方ができるとは知らなかった」という課題を洗い出して解決しています。その結果、オンボーディング完了率(週3日、3週間連続利用)90%を達成しました。
サブスクリプションCSでオンボーディングがうまくいっていない状態とは
オンボーディングでは(1)すべての顧客に同じ説明をしている(2)完了条件が決まっていない(3)フォロー対象を把握できていないなどの失敗をしてしまいます。これらは、CS都合でオンボーディングを実施している状態といえます。
すべての顧客に同じ説明をしている
すべての顧客へ同じ説明をしている場合は、オンボーディングを見直す必要があります。なぜなら、顧客によってサービス導入目的が異なるためです。例えば、業務効率化を目的とする企業と情報一元管理が目的の企業では、優先して案内すべき内容が異なります。そのため、最初に顧客が抱えている課題を把握して、必要なことから案内することが大切です。
完了条件が決まっていない
サービスの説明会を行ったら、オンボーディング完了としている場合も改善が必要です。なぜなら、サービスの説明会を終えても、顧客がサービスを利用できるとは限らないためです。一般的にオンボーディング完了条件は、顧客の行動を基準に決めます。
- 初期設定が完了した
- 機能を利用した
- 複数ユーザーが利用を開始した
- 一定期間継続して利用した
- 導入目的を達成した
例えば、アディッシュが支援したMelBridgeでは「週3日以上×3週連続」を基準にしています。つまり、オンボーディング完了の基準は、顧客が価値を得るために必要な行動を取れているかで決めましょう。
フォロー対象を把握できていない
サービス利用が止まっている顧客を把握できていない場合も注意が必要です。顧客数が増えるほど、担当者の記憶だけで状況を管理することは難しくなります。
最終ログイン、初期設定の進捗状況、機能の利用状況などを可視化し「7日間ログインがない」などのフォロー条件を決めておきましょう。担当者の経験だけに頼らず、顧客の行動データから支援が必要な顧客を判断できる状態をつくることが大切です。
サブスクリプションCSのオンボーディングはどう設計する?
オンボーディングは、「事業とサービスの理解」「顧客体験の可視化」「ゴール設定」「ギャップ分析」「施策実行」「型化」「振り返り」の順で設計すると進めやすくなります。
1.提供する事業とサービスの理解の特徴を理解する

最初に、担当サービスへの理解を深めます。
オンボーディング施策は、事業目標やサービス特性によって適切な形が変わるためです。アディッシュ株式会社では、施策を考える前に以下の情報を整理します。
- 商品サービス情報
- 課題
- チームの構成や役割
- KGI・KPI
- CSに求められる役割
- サービスの特徴
- サービスの機能
- ターゲット顧客
- 利用シーン
例えば、設定項目が多いサービスなら初期設定支援が重要になり、複数部署で利用するサービスなら社内展開の支援が重要になります。
2.カスタマージャーニーマップを作成する

次に、顧客が契約前から継続利用に至るまでの体験をカスタマージャーニーマップで作成します。
なぜなら、契約前の期待と導入後の体験に差がある場合、解約されてしまう恐れがあるためです。そのため、次の内容を整理しましょう。
- 顧客の行動
- 顧客が抱える課題
- 顧客の感情
- 顧客との接点
- CSが行うべきアクション
顧客の行動・感情とCSのアクションを並べることで、「いつ、どのような支援が必要か」を把握しやすくなります。
3.オンボーディングのゴールを定義する

カスタマージャーニーを整理したら、オンボーディングのゴールを定義します。ゴールが曖昧では、どの顧客を完了と判断するのか、何を改善すべきか決められないためです。サービスを使えるようになるではなく、顧客の行動で表現しましょう。
例えば、「初期設定完了」「主要機能の利用」「〇名以上のユーザーの利用開始」「継続利用」などです。
また、「トライアル」「契約直後」「導入期」「活用開始」「自走」のようにフェーズごとにゴールを設定すると、必要な施策が明確になります。
4.理想と現状を比較する
ゴールを定義したら、理想と現状を比較し、改善すべきギャップを洗い出します。
例えば、理想が初回ログインから1週間以内に主要機能を利用できる状態で、現状は3週間かかっているなら、その差が改善対象です。
このとき、できている・できていないだけで判断せず、原因まで整理しましょう。なぜなら、顧客側の理解不足だけでなく、マニュアルがわかりにくい、案内が遅いなど、CS側に原因がある可能性もあるためです。
5.施策を検討し、優先順位を決める
ギャップの原因がわかったら、課題を解決するための施策を検討します。
例えば、初期設定で顧客がつまずいているなら、初期設定ガイドの改善、説明会の開催などが考えられます。すべてを同時に実施するのは難しいため、次の観点で優先順位を決めましょう。
- 顧客への影響度
- 課題の緊急性
- 期待できる効果
- 必要な工数やコスト
- 実行のしやすさ
効果が大きく、実行しやすい施策から着手すると改善を進めやすくなります。
6.実行計画を作成する
施策を決めたら、実行計画を作成します。誰が、いつまでに、何をするかを明確にします。
施策ごとに「実施内容」「担当者」「実施予定日」「完了予定日」「確認するKPI」「期待する結果」を設定しましょう。評価指標まで決めておけば、実施したが効果がわからないという状態を防げます。
7.効果があった施策を型化する
効果が確認できた施策は、再現できる型として整理しましょう。型化は品質の安定だけでなく、新しいメンバーの教育にも役立ちます。
例えば、オンボーディングミーティングで成果が出たなら、アジェンダや確認項目、トークスクリプトを整理します。
8.KPTで振り返る

最後に、実施した施策を振り返り、次の改善につなげます。
オンボーディングは一度設計したら終わりではありません。顧客の利用状況やサービスの変化に合わせて改善する必要があります。
振り返りにはKPTが活用できます。
- Keep:継続したいこと、うまくいったこと
- Problem:課題や改善すべきこと
- Try:次に試したいこと
例えば、資料変更後に初期設定の問い合わせが減ったならKeep、説明会の参加率が低いならProblemとして原因を確認し、案内方法の変更をTryにします。
週1回、月1回など定期的に振り返り、新しい課題が見つかったら再び「理想と現状の比較」に戻ります。「現状把握→施策検討→実行→型化→振り返り」を繰り返すことが、オンボーディング改善の基本です。
※アディッシュ「CS STUDIO」の支援手順「顧客オンボーディングを成功させるために
サブスクリプションCSに関するよくある質問
最後にサブスクリプションCSに関するよくある質問をご紹介します。
オンボーディングでは、どのようなKPIを設定すべき?
オンボーディングのKPIは、顧客がサービスを利用し、価値を実感できる状態になっているかを確認できる指標を設定することが大切です。例えば、次のようなKPIが考えられます。
- 初回ログイン率
- 初期設定の完了率
- 主要機能の利用率
- オンボーディング完了率
- オンボーディング完了までの日数
- 一定期間内の利用頻度
- 複数ユーザーの利用開始率
- サービス利用継続率
限られたリソースでオンボーディングを実施するにはどうすればいい?
結論として、顧客の契約規模や難易度に応じたハイタッチ・テックタッチの使い分け(セグメンテーション)が有効です。すべての顧客に同じ支援を行うのではなく、顧客の状況に応じて支援方法を分けましょう。例えば、契約金額が大きい顧客や導入難易度が高い顧客には個別支援を行い、比較的スムーズに利用を開始できる顧客には、ガイドラインブックを送るなど支援方法を変えるのは有効です。
オンボーディングは外部委託できますか?
オンボーディングは、一部または全体を外部委託できます。例えば、次のような業務を外部へ委託できます。
- 初期設定
- 操作方法の案内
- オンボーディングミーティングの実施
- 利用状況に応じた顧客フォロー
- FAQの作成
- マニュアルの作成
- オンボーディングフローの設計
- ヘルススコアの設計
- オンボーディング施策の改善
まとめ
サブスクリプションCSでオンボーディングが重要な理由は(1)顧客の価値実感を早め(2)解約リスクを減らし(3)つまずきを早期に発見できるためです。そのため、次のステップで実施しましょう。
- 顧客の導入目的を確認する
- 価値実感までのプロセスを整理する
- 完了条件を顧客の行動で設定する
- 理想と現状のギャップを確認する
- 改善施策を実行し、効果を測定する
- 効果のあった施策を型化する
- 定期的に振り返り、改善を続ける
アディッシュ「CS STUDIO」では、オンボーディング設計、運用改善まで、企業の課題に応じた支援を提供しています。サブスクリプションサービスの利用定着やカスタマーサクセス体制に課題がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。


