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「引き止め」から「再提案」への転換 ―数百社を担当するカスタマーサクセス担当者が実践する、プロダクトに固執しない「接点維持」戦略

カスタマーサクセス(CS)として「解約」の二文字に直面したとき、反射的に「なんとかして止めなければ」と身構えてしまう方は多いのではないでしょうか。特に、一人で多くの顧客を担当し、かつ一社一社と向き合うハイタッチ体制を維持している環境では、そのプレッシャーは計り知れません。

 

私は現在、CSとして常駐し、数百社の顧客を担当しています。1日最大6件の商談をこなす日々の中で、ある「しんどさ」を抱えていました。それは、「プロダクト自体は良いものだが、今の顧客の業務にはフィットしていない」と分かっていながら、目標達成のために解約を阻止し続けなければならない瞬間です。

 

一度離反の意思が固まった顧客に対して同一製品の別プランを提案し、冷ややかな反応をいただく……。そんな経験を経てたどり着いたのが、「プロダクトの維持に固執せず、顧客との接点を守り抜く」という戦略的な潔さでした。

 

本記事では、解約の危機を「関係の断絶」にさせないために、あえて無理な引き止めをせず、クロスセル商材への切り替えによって「目標の達成」と「顧客との関係維持」を両立させる実践術をご紹介します。

 

数百社の顧客を担当するCSが直面した「取捨選択」の難しさ

私が現在担当している顧客数は、一人で約400社にのぼります。この規模でありながら、支援のスタイルは「打ち合わせを組んで対話する」ハイタッチと電話やメールで支援するロータッチが中心です。1日30分の商談を6件こなすのが限界という日々の中で、常に突きつけられていたのがリソースの「取捨選択」でした。

 

ハイタッチ支援をしても「解約」を止めるのは限界がある

約400社を抱えながら1件ずつの商談に全力を注いでも、物理的な限界はすぐにやってきます。商談をこなすだけで精一杯の状態でした。

 

また、解約の意思を固めて商談に臨まれる顧客に対し、限られた時間の中でその決断を覆すのは至難の業です。正直なところ、「すでに意思が固まっている顧客」の解約を無理に止めようとすることに、限界を感じていました。

 

「解約阻止」という概念が、かえって顧客体験を損なう

以前の私は「解約を止めること」をゴールに置いていましたが、プロダクトが顧客の現在の業務にフィットしていない場合、無理な引き止めは逆効果になります。

 

例えば、主力製品の付随機能を組み合わせた代替案を提示した際、顧客から冷ややかな声で「いらない」「提案は不要です」と拒絶されたことがありました。一度プロダクトへの期待値が下がった状態で、同一製品内での「改善案」を押し出すことは、顧客にとって「しつこい売り込み」と受け取られ、かえって心象を悪くしてしまったのです。

 

この経験から、私は「プロダクトの契約維持(=解約阻止)」に固執することをやめました。その代わりに意識し始めたのが、プロダクトの枠を超えて「このお客さんの業務に、今本当に合う解決策は何か?」をフラットに考える「接点維持」への転換でした。

 

「解約希望」顧客との接点維持するために工夫したこと

解約を希望される顧客に対し、単なる「引き止め」ではなく「接点の維持」を図るためには、事前の予兆検知と、それに基づく精度の高い準備、そして当日の振る舞いが重要になります。

 

顧客の「解約予兆」を利用歴とインサイドセールスからのトスアップで見つける

常駐先の組織は分業制をとっており、既存顧客との打ち合わせ設定はインサイドセールス(IS)が担当します。商談に臨む前、私はISがヒアリングしてくれた「解約理由」と、プロダクトの「利用ログ」を掛け合わせて分析します。

 

特に注視するのは、ログイン率の推移と特定機能の利用状況です。契約開始月からログイン率が右肩下がりに落ちている場合や、他の機能は動いているのに特定の重要機能だけ利用率が極端に下がっている場合は、強い解約予兆と判断します。「この機能は使いにくい、あるいは自社には合わない」という負の判断が顧客の中で下されている可能性が高いからです。

 

また、ISには事前に「類似の他社製品を検討・契約していないか」を確認してもらうよう連携しています。これらの情報が一つあるだけで、当日「主力製品の修正案を出すべきか、即座にクロスセル提案に切り替えるべきか」の判断精度が劇的に上がります。

 

重要なのは事前準備|顧客理解を深めてから提案を考える

約400社を担当する中で最も大事にしているのは、商談前の事前準備です。ISからの情報に加え、顧客の公式HPや直近のインタビュー記事、過去の議事録を確認し、「その顧客が今、何に注力しているのか」「そもそもどんな目的で製品を導入したのか」を把握します。

 

業務内容を理解した上でログと照らし合わせることで、「主力製品を今の業務に合う形に再構成して提案すべきか」、あるいは「主力製品は潔く引き下げ、別商材をメインに据えるべきか」という、顧客に刺さるシナリオを構築できるようになります。

 

クロスセル商材の提供は「情報交換」のスタンスで|解約阻止に固執しないのがカギ

最後に重要なのは、商談当日のマインドセットです。私は顧客に対して「売り込みに来た人」と思われないよう、あくまで「情報提供者」のスタンスを貫きます。

 

解約の意向を伺った後は、「承知いたしました。せっかくお時間をいただきましたので、一つ情報共有として、今の御社の業務内容であればこちらの方がお役に立てるかもしれません」と、クロスセル商材をフラットに紹介します。

 

もちろん、中には「提案は不要」と打ち合わせを切り上げようとする方もいます。しかし、無理に引き止めない姿勢を示すことで、先方の警戒心がやわらぎ、「検討してみる」と前向きな回答をいただけることもあります。その場で成約しなくても、心象を悪くせずに終わることで、将来また別の課題が出た時に「一度相談してみよう」と思ってもらえる関係性を築くことができるのです。

 

攻めの提案には組織連携を活かすことが大切

数百社もの顧客を一人で担当しながら、質の高い提案を維持し続けるには、分業制の仕組みをフル活用することが不可欠です。私の常駐先では、インサイドセールス(IS)が既存顧客との商談設定を担っています。こうした分業体制においては、「トスアップ」の質を最大化させることが、CSの成果に直結します。

 

ISとの連携において最も重要なのは、商談の「目的」の共有です。なぜ打ち合わせが設定されたのか、解約希望であればその理由は何か。これらが明確になっていることで、初めて精度の高い事前準備が可能になります。

 

商談の目的をあらかじめ3つ程度に整理して共有することで、連携はよりスムーズになります。例えば、以下のような目的です。

  • 契約更新の確認    
  • 解約理由の確認     
  • アップセル・クロスセル提案

商談の目的を事前に設定しておくことで、短い準備時間でも顧客理解の解像度を高めることができます。

 

また、分業制を単なる作業分担に終わらせないためには、CS側から「どんな情報が事前にそろっていると、提案の精度が上がるか」をISチームへ発信し、共通認識を揃えておくことも重要です。組織として連携の質を高めることが、結果として個人のパフォーマンスを支え、目標の達成にも繋がっていくのです。

 

まとめ:「解約」ではなく顧客の「今」に寄り添う

CSにとって、プロダクトはあくまで顧客の課題を解決するための「手段」に過ぎません。私たちの真の目的は、顧客のビジネスを成功に導くことであり、そのための接点を持ち続けること自体に大きな価値があります。

 

担当する数百社の中には、どうしても今のプロダクトがフィットしなくなるフェーズの顧客も現れます。そこで無理な引き止めに固執して信頼を損なうのではなく、戦略的に「潔く引き下がり、別の解決策を提示する」という選択肢を持つこと。

 

短期的な解約の数字だけに一喜一憂するのではなく、長期的な信頼関係を見据えて行動すること。それこそが、多くの顧客を担当しながらも、顧客と会社の両方に貢献し続けるCSに必要なマインドセットだと信じています。


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<はじめに> 当社では現在もカスタマーサクセス活動の一環として、多くの顧客に対してオンボーディングを実施しています。
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この記事は著作権を有する Custifyの許可を得て翻訳したものです。 Original article:https://www.custify.com/blog/customer-success-trends-2026/
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