入社してわかったカスタマーサクセス――「提案」だけでは見えない現場の仕事

大宮桃香
2026.10.27
カスタマーサクセスは、「顧客の成功を支援する仕事」「解約を防止する仕事」「アップセル・クロスセルを実現する仕事」「LTVを向上させる仕事」などと説明されることが多いと感じています。
私自身も入社前は、カスタマーサクセスに対してそのようなイメージを持っていました。
お客様の課題を聞き、その課題を解決するためにサービスの活用方法を提案し、そして、サービスを使いこなしてもらうことで、解約を防ぎ、最終的には契約の拡大につなげていく。
もちろん、これらはカスタマーサクセスにおいて重要な仕事だと思います。
しかし、実際に現場で業務を経験すると、それだけでは表現しきれない仕事が数多くあることに気づきました。
・問い合わせに一つずつ対応すること。
・お客様が言葉にできていない課題を整理すること。
・営業やサポート、開発などの社内メンバーを巻き込むこと。
そして、こうした活動を通じて、お客様自身もまだ明確にできていない「どうなれば成功なのか」を一緒に考えること。
日々の小さな活動の積み重ねこそが、カスタマーサクセスの仕事なのではないかと、現在は考えています。
本記事では、入社前に抱いていたカスタマーサクセスのイメージと、実際に現場で働く中で感じた違いを振り返りながら、私が考えるカスタマーサクセスの仕事についてご紹介します。
入社前に抱いていたカスタマーサクセスのイメージ
入社前の私は、カスタマーサクセスを「お客様にサービスの活用方法を提案し、サービスを使いこなしてもらう仕事」だと考えていました。
例えば、
「この機能を使えば業務を効率化できます」
「このような使い方がおすすめです」
「別の機能も組み合わせると、さらに○○ができます」
といった提案を行い、お客様の成果につなげる仕事だと思っていたのです。
また、既存顧客との関係を深めることで、解約を防いだり、アップセル・クロスセルにつなげたりすることも重要な役割だと認識していました。
つまり、私の中では、
お客様の課題を聞く → サービスの活用方法を提案する → 成果を出してもらう
という流れが、カスタマーサクセスの中心だと思っていました。
しかし、実際に仕事を始めてみると、この「提案する」という行為にたどり着くまでに、多くの仕事があることに気づいたのです。
一般的に語られるカスタマーサクセスと、現場で感じた違い
書籍やインターネットでは、カスタマーサクセスは「顧客の成功を支援すること」を中心として説明されます。
その具体的な活動として、チャーン防止、サービスの活用促進、オンボーディング、アップセル・クロスセル、LTV向上などが挙げられます。
これらを見ていると、カスタマーサクセスは「顧客に対して積極的に提案し、成果を生み出す仕事」という印象を持ちやすいかもしれません。
しかし、現場に入って感じたのは、むしろその前段階に多くの時間を使うということでした。
「そもそも、このお客様は何に困っているのか?」
「なぜ今、その問題が起きているのか?」
「お客様が本当に実現したい状態は何なのか?」
これを理解しないまま提案をしても、本当の意味での成功にはつながりません。
「○○の使い方が分からない」の裏側にあるもの
実際の業務では、お客様から「○○の機能の使い方が分からない」といった問い合わせをいただくことがあります。最初にこのような問い合わせを受けたとき、私は「操作方法を説明すれば解決する」と考えていました。
しかし、話を聞いていくと、単純に操作方法が分からないのではなく、その機能を使って実現したい業務そのものが整理できていないケースがあることに気づきました。
例えば、
「この機能はどうやって使うのでしょうか?」
という質問に対して、使い方だけを説明することはできます。
しかし、
「そもそも、なぜこの機能を使いたいのでしょうか?」
「現在はどのような方法で業務をしていますか?」
「その業務の中で、どこに一番時間がかかっていますか?」
と聞いていくと、最初の問い合わせとは別の課題が見えてくることがあります。
実際には「機能の使い方が分からない」のではなく、「現在の業務をもっと効率化したい」ということが本当の目的だった、というケースです。
この経験から、私はカスタマーサクセスにおいて重要なのは、質問されたことに正しく答えることだけではないと考えるようになりました。
その質問が生まれた背景まで理解し、お客様が本当に解決したいことを整理することも重要なのです。
お客様によって「成功」の定義は違う
「顧客の成功」という言葉も、現場に出ると非常に曖昧な言葉だと感じます。
なぜなら、お客様によって成功の定義がまったく違うからです。
例えば、あるお客様にとっては「毎日の作業時間を減らすこと」が成功かもしれません。
一方で、別のお客様にとっては「担当者が変わっても同じ品質で業務を行えること」が成功かもしれません。
また、別のお客様にとっては「サービスを問題なく利用でき、問い合わせをしなくても自分たちで業務を進められる状態」が成功の場合もあります。
同じサービスを利用していても、目的が違えば支援方法も変わります。
そのため、
「この機能を使ってください」
と一律に案内するだけでは、顧客の成功にはつながりません。
大切なのは、
「このお客様にとって、何が実現できれば成功なのか?」
を考えることです。
問い合わせ対応も、実は成功支援の一部
カスタマーサクセスというと、定例会や活用提案など、比較的大きな活動をイメージしやすいかもしれません。しかし、実際には問い合わせ対応のような日々の小さな仕事も、顧客の成功に大きく関係しています。
例えば、お客様がサービスを使っている中で、
「この操作ができない」
「エラーが出てしまう」
「この設定はどうすればいいのか」
と困っていたとします。
この問題を放置すれば、お客様はサービスを使うこと自体を諦めてしまうかもしれません。逆に、そこで迅速に問題を解決できれば、「このサービスを使えば業務を進められる」という安心感につながります。
つまり、問い合わせ一件を解決することは、単なるサポートではありません。
お客様がサービスを使い続け、目的を達成するうえでの障害を一つ取り除くことでもあるのです。
こう考えると、問い合わせ対応もカスタマーサクセスの重要な活動の一つだと感じます。
「提案力」だけではなく「聞く力」が必要
入社前は、カスタマーサクセスに必要な能力として「提案力」をイメージしていました。
しかし、実際に仕事をしてみると、提案する力と同じくらい、いや、それ以上に「聞く力」が重要だと感じるようになりました。
なぜなら、課題を正しく理解できなければ、どれだけ良い提案をしても意味がないからです。
お客様から、
「○○ができません」
と言われたときに、
「では、この機能を使ってください」
とすぐに答えるのではなく、
「なぜ○○をしたいのでしょうか?」
「現在はどのような方法で対応していますか?」
「一番困っているのはどの部分でしょうか?」
「理想的には、どういう状態になればよいでしょうか?」
と掘り下げていきます。
そうすることで、「表面的な要望」と「本当の課題」が違うことに気づく場合があります。
カスタマーサクセスにとって、提案はゴールではありません。
お客様の状況を理解し、解決すべき課題を整理したうえで、適切な提案をすること。
そのためには、まずお客様の話を聞く必要があります。
カスタマーサクセスは社内とお客様をつなぐ仕事でもある
もう一つ、入社前にはあまり意識していなかったのが、社内連携の重要性。お客様の課題は、カスタマーサクセスだけで解決できるとは限りません。
例えば、契約に関する内容であれば営業との連携が必要になります。操作や不具合であればサポートチームに相談することもあります。サービス自体の改善が必要であれば、開発チームに相談する必要があります。
つまり、カスタマーサクセスは「自分一人でお客様の問題を解決する人」ではありません。
お客様の課題を整理し、必要な人を巻き込み、解決までつなげる人でもあるのです。
ここで重要なのは、単に、
「お客様から○○という要望がありました」
と社内に伝えるだけではないことです。
「なぜその要望が出ているのか」
「その背景にはどのような業務上の課題があるのか」
「それが解決されると、お客様にどのようなメリットがあるのか」
まで整理して伝える必要があります。
お客様の言葉を、そのまま社内に伝えるだけではなく、社内で解決できる形に翻訳することも、カスタマーサクセスの役割だと感じています。
私が考える「伴走型カスタマーサクセス」
こうした経験を通して、私はカスタマーサクセスを「提案して終わり」の仕事ではなく、お客様の成功に向けて継続的に伴走する仕事だと考えるようになりました。
私が考える伴走型カスタマーサクセスには、次の5つのステップがあります。
① お客様の成功を定義する
まず、「このサービスを使うことで、何を実現したいのか」を理解します。
単にサービスを利用している状態ではなく、お客様にとってどのような状態になれば成功なのかを考えます。
② 業務を理解し、本当の課題を整理する
お客様から言われたことをそのまま課題として捉えるのではなく、その背景にある業務や困りごとまで理解します。
「何が問題なのか」だけではなく、「なぜ問題なのか」「本当はどうなりたいのか」まで考えます。
③ 活用方法を提案し、定着まで支援する
課題が分かったら、サービスをどのように活用すれば解決できるのかを提案します。
ただし、提案して終わりではありません。
実際にお客様がその方法を使えるようになるまで支援し、日々の業務に定着させるところまでが重要です。
④ 社内と連携しながら課題を解決する
自分だけでは解決できない問題も多いため、営業、サポート、開発など、それぞれの専門性を持つメンバーと連携します。
お客様と社内の間に立ち、課題解決を前に進めます。
⑤ 継続的に振り返り、次の成功につなげる
一つの課題が解決したからといって、それで終わりではありません。
「実際に目的は達成できたのか」
「他に困っていることはないか」
「次に改善できることは何か」
を確認します。
一度の提案で大きな成果を出すのではなく、小さな改善を積み重ねながら、次の成功につなげていきます。
まとめ
入社前の私は、カスタマーサクセスを「お客様にサービスの活用方法を提案する仕事」だと考えていました。
しかし、実際に業務を経験してみると、提案はカスタマーサクセスの仕事の一部に過ぎないことが分かりました。
・お客様からの問い合わせに対応する。
・課題を整理する。
・話を聞いて、本当の目的を理解する。
・社内のメンバーを巻き込む。
・サービスの利用を定着させる。
そして、成果が出た後も次の課題を探していく。
こうした一つひとつの活動が積み重なって、最終的な「顧客の成功」につながっていく。だからこそ、私にとってカスタマーサクセスとは、単に「売る」「提案する」「解約を防ぐ」仕事ではありません。
お客様ごとに異なる「成功」を理解し、その実現に向けて、お客様と社内の双方をつなぎながら伴走する仕事です。
そして、日々の小さな課題を一つずつ解決していくこと。
その積み重ねの先に、お客様の成功があり、結果として継続利用やアップセル、LTV向上といった事業の成果にもつながっていくのだと考えています。
これが、実際に現場で働いてみて感じた、私にとってのカスタマーサクセスです。

この記事を書いたライター
大宮桃香
接客業にて8年間の経験を持ち、化粧品販売およびアパレル業界での販売を担当。現在はカスタマーサクセスとして、これまでの販売経験を活かし、お客様が安心してサービスを活用できるよう導入支援や継続的なサポートを行っている。
