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【翻訳】追跡すべきカスタマーサクセス指標──成果を可視化するための指標

この記事は著作権を有する Custifyの許可を得て翻訳したものです。
Original article:https://www.custify.com/blog/customer-success-metrics-cs/


カスタマーサクセス指標は、チームが顧客から発せられるさまざまなシグナルを整理し、収益、顧客維持、コスト、成長、解約といったビジネス成果や目標を追跡するために欠かせないものです。

近年では、カスタマーサクセス指標は、顧客価値の実現や目標達成をより重視する方針へと変化しています。特に、感情分析や顧客体験ベースの指標に対して、注目が高まっています。


本記事では、カスタマーサクセスにおいて重要な指標を詳しく見ていきます。
解約率、顧客維持率、製品導入率といった従来の基本指標に加え、近年注目されている顧客感情、プロアクティブなエンゲージメント、顧客努力度などの指標も取り上げます。

 

本記事で紹介する指標は、関連する情報の種類に応じて、(維持率、ビジネス成果、コスト、時間、エンゲージメントなどの)カテゴリに分けて整理しています。また、それぞれの指標について、重要度や複雑さに応じた位置づけ、計算式、活用時のポイントも紹介します。

記事内では、CSリーダーによるコメントも交えながら、各指標の見方や活用のポイントを紹介します。実務経験にもとづく視点として、ぜひ参考にしてください。 

 

私はデータや指標が好きです。なぜなら、それらは偏見を取り除いてくれるからです。ただし、測定のための計算方法に偏りがある場合には、それが誤った解釈につながることがあります。
— Chris Otenbaker, Director of Client Success PlanITROI

 

 

1. 顧客維持に関する指標

 

1. 解約率

基本指標

解約率とは、一定期間内に失った顧客数、または減収の割合を示す指標です。

「解約」という言葉は、顧客数の減少を指す場合もあれば、収益の減少を指す場合もあります。SaaS領域では、顧客解約を指すことが多いものの、収益解約もカスタマーサクセスにおいて重要な指標です。

解約率は、大きく「総解約率」と「純解約率」に分けられます。顧客解約の場合、総解約率は解約の全体を示し、純解約率は顧客の意思による自主的な解約に着目します。

 

解約率は、すでに発生した問題だけでなく、企業が適切なタイミングで把握できなかった課題点を示唆する指標でもあります。
解約率の上昇は、単一の問題だけを意味することは少なく、契約当初に起きたミスマッチ、オンボーディングの不備、プロダクト利用頻度の低さ、顧客価値の不明瞭さなど、複数の要因が重なっているケースが多くあります。

だからこそ、解約率は有用な指標です。失った顧客アカウントだけでなく、その損失を生み出した仕組み全体を見直すきっかけになるためです。
– Vicky Kalbande, General Manager, Sleek Bill

 

一方、収益における総解約率は、失われた収益全体を示します。これに対して、純収益解約率は、同じ期間に既存の顧客から得た、アップセルやクロスセルなどの拡張収益も加味するため、収益がどれだけ減ったのか、あるいは増えたのかをより現実に近い形で捉えることができます。

 

解約率の計算方法

 


顧客解約率を計算するには、一定期間における解約顧客数を、同期間の顧客数で割ります。その結果に100を掛けることで、解約率をパーセンテージで算出できます。

 

顧客解約率の計算式

顧客解約率 =(期間中の解約顧客数 ÷ 期間中の顧客数)× 100

収益解約率を計算するには、一定の期間に失われた経常収益を、その期間の開始時点の経常収益で割ります。最後に100を掛けることで、収益解約率を算出できます。


 

収益解約率の計算式

収益解約率 =(期間中に失われた経常収益 ÷ 期間開始時の経常収益)× 100


解約率を算出・確認する際は、以下のようなツールも活用できます。


顧客解約率・顧客成長率の計算シート
顧客成長率を計算するためのスプレッドシートを活用すれば、必要な数値を入力するだけで、現在の顧客解約率や顧客成長率を確認できます。Googleドライブにコピーして、自社の数値に置き換えて使用できます。

SaaS解約率の計算ツール
現在の解約率を入力することで、今後12か月間で失われる可能性のある顧客数を試算できます。

 

2. 顧客維持率


基本指標

顧客維持率とは、一定期間内に維持した顧客の割合を示す指標です。
顧客維持率は、顧客解約率の反対に位置づけられる指標であり、顧客基盤(既に取引している顧客)を別の視点から捉えるために役立ちます。

例えるなら、解約率が顧客基盤の「失われた部分」を示すのに対し、顧客維持率は「維持できている部分」を見る指標です。


顧客維持率の計算方法

顧客維持率を計算するには、期末の顧客数から期間中に新たに獲得した顧客数を差し引き、その値を期間が始まった時点の顧客数で割ります。最後に100を掛けることで、顧客維持率を算出できます。

 


 
顧客維持率の計算式

顧客維持率 =[(期末の顧客数 − 期中に獲得した顧客数)÷ 期初の顧客数]× 100


3. 収益維持率

基本指標

収益維持率は、企業が毎月どれだけの経常収益を維持できているかを示す指標です。

サブスクリプションビジネスにおいては、自社の健全性やカスタマーサクセスチームの有効性を測るうえで、非常に重要な指標の一つです。

収益維持率は、一般的にGRR(Gross Revenue Retention:総収益維持率)とNRR(Net Revenue Retention:純収益維持率)に分けられます。NRRには、アップセルやクロスセルなどによる拡張MRRも含まれます。

 

なぜGRRやNRRを見るのか。それは、取締役会や経営層がその指標で会話するからです。
— Jeff Kushmerek, CEO and Founder, Infinite Renewals

 
GRR/NRRの計算方法

GRR(総収益維持率)を計算するには、開始時点のMRRから解約によって失われたMRRを差し引き、その値を開始時点のMRRで割ります。最後に100を掛けることでパーセンテージを算出できます。


 

総収益維持率(GRR)の計算式

GRR =[(開始MRR − 解約MRR)÷ 開始MRR]× 100
NRR(純収益維持率)を計算するには、開始MRRから解約MRRを差し引き、さらに拡張MRRを加えます。その結果を開始MRRで割り、100を掛けます。



純収益維持率(NRR)の計算式

NRR =[(開始MRR − 解約MRR + 拡張MRR)÷ 開始MRR]× 100
また、収益維持を見るうえでは、GPR(Gross Profit Ratio:粗利益比率)もあわせて確認することが重要です。

 

GPR(粗利益率)は、売上だけでなく売上原価も考慮する指標です。維持している収益が、実際に利益を生み出しているかどうかを確認するために役立ちます。

顧客維持率が高く見えても、利益率の低い顧客のみを維持し、収益性の高い顧客が離脱している可能性もあります。そのため、GRRとあわせてGPRを見ることが重要です。

— David Farrell, Manager of Account Management, Maxio

 

GPRは、期間開始時の粗利益から期間中に失われた粗利益を差し引き、その値を期間開始時の粗利益で割って算出します。最後に100を掛けることで、パーセンテージとして表せます。

 


粗利益率(GPR)の計算式

GPR =[(開始時の粗利益 − 損失した粗利益)÷ 開始時の粗利益]× 100

 

 

2. ビジネスの成果に関する指標

 

4. 経常収益


基本指標

経常収益は、カスタマーサクセスの成果を測るうえで重要な指標の一つです。

これは、特定期間における継続的な収益を示す指標で、月次ではMRR、年次ではARRとして表されます。

他のカスタマーサクセス指標と同様に、拡張収益や解約での減収を加味した純収益に注意することも重要です。


MRR/ARRの計算方法

MRR(月間経常収益)を計算するには、アクティブアカウント数に、アカウントあたりの平均月間収益を掛けます。

 

 
MRRの計算式

MRR = アクティブアカウント数 × アカウントあたりの平均月間収益
純MRR(純月間経常収益)を計算するには、MRRに拡張MRR(拡張収益)を加え、解約MRR(解約収益)を差し引きます。この計算式によって、より厳密に月間収益を把握できます。

 


 

純MRRの計算式

純MRR =(アクティブアカウント数 × アカウントあたりの平均月間収益)+ 拡張MRR − 解約MRR
ARR(年間経常収益)は、MRRを12倍することで算出できます。

つまり、「アクティブアカウント数 × アカウントあたりの平均月間収益」に12を掛けることでARRを求められます。

 



 
ARRの計算式

ARR =(アクティブアカウント数 × アカウントあたりの平均月間収益)× 12
純ARRを計算するには、ARRに拡張ARRを加え、解約ARRを差し引きます。


 

純ARRの計算式

純ARR =[(アクティブアカウント数 × アカウントあたりの平均月間収益)× 12]+ 拡張ARR − 解約ARR


5. プロダクト導入率


基本指標

プロダクト導入率は、新規ユーザーがプロダクトをどれだけ早く導入し、使い始めているかを示すカスタマーサクセスの基本指標です。オンボーディングプロセスの有効性を見るうえでも重要です。
ただし、より本質的に確認すべきなのは、アクティベーション率です。

アクティベーション率は、ユーザーがプロダクトを効果的に使い、価値を得られる状態に到達したかどうかを測る指標です。何をもって「アクティベーション」とするかは、企業やプロダクトによって異なります。


一般的な計算式はレポート作成に役立ちますが、より実務に即した指標を作るには、ログイン頻度やコア機能の利用状況など、複数のプロダクト利用シグナルを組み合わせた高度な指標を設計することも推奨されます。

 

私たちは当時のニーズに合わせて、複数のプロダクト利用指標を組み合わせた導入率指標を設定しました。その結果、顧客がプロダクトをどのように使っているのか、どの顧客層に注力すべきかを理解できるようになりました。
– Irina Vatafu, Head of Customer Success, Custify

 

プロダクト導入率とアクティベーション率の計算方法

プロダクト導入率を計算するには、一定期間の新規アクティブユーザー数を同期間の総登録者数で割ります。その結果に100を掛けることで、パーセンテージを算出できます。

 



プロダクト導入率の計算式

プロダクト導入率 =(新規アクティブユーザー数 ÷ 総登録者数)× 100

 

アクティベーション率を計算するには、まずアクティベーションのマイルストーンを設定します。たとえば、特定の機能の利用、初回設定の完了、一定回数以上の利用などが該当します。

 

そのうえで、マイルストーンに到達したユーザー数を、同期間の新規登録者数で割ります。

 



アクティベーション率の計算式

アクティベーション率 =(アクティベーションのマイルストーンに到達したユーザー数 ÷ 総サインアップ数)× 100

 

6. 顧客価値

高度な指標

顧客価値を測る方法は複数あります。代表的なものに、顧客生涯価値(CLV/LTV)、ユーザーあたりの平均収益(ARPU)、アカウントあたりの平均収益(ARPA)、年間契約額(ACV)があります。

 

顧客生涯価値((CLVまたはLTV)は、契約期間全体を通じて、1つの顧客アカウントが企業にもたらす平均的な価値を示す指標です。

 

ARPU(平均収益)は、特定期間においてユーザー1人あたりが企業にもたらす平均収益を示します。ARPAは、アカウント単位で見た平均収益を示す指標です。

 

年間契約額(ACV)は、顧客との契約額を年単位で平均化した指標です。顧客ごとの契約規模を把握し、顧客価値を比較する際に役立ちます。

 

CLV/ARPU/ACVの計算方法

顧客生涯価値(CLV)は、ユーザーあたりの平均収益(ARPU)に、顧客との平均契約期間(月数)を掛けることで算出できます。これにより、1人の顧客が契約期間全体を通じてどれだけの収益をもたらすかを把握できます。

 

 

顧客生涯価値(CLV)の計算式

CLV = ユーザーあたりの平均収益(ARPU)× 顧客関係の平均期間(月数)

CLVを算出する際は、専用のスプレッドシートを活用すると、必要な数値を整理しながら確認できます。

ユーザーあたりの平均収益(ARPU)を算出するには、1か月間の総収益を同期間の顧客数で割ります。

 

 

ARPUの計算式

ARPU = 1か月間の総収益 ÷ 1か月間の顧客数

年間契約額(ACV)は、顧客との契約総額を契約年数で割ることで算出できます。これにより、1年あたりの平均契約額を把握できます。

 

 
ACVの計算式

ACV = 総契約額 ÷ 契約年数

 

 

3. 調査に関する指標

 

7. ネットプロモータースコア(NPS)

カスタマーサクセスをサポートする指標

NPSは、顧客満足度や推奨意向(プロダクトを他者に勧めるか)を測る代表的な指標です。

NPS調査では、ユーザーに「この企業やプロダクトを友人や同僚に勧める可能性はどの程度ありますか」と尋ねます。NPSの回答は主観の影響を受ける場合がありますが、回答数が増えるほど、顧客全体の推奨意向やロイヤルティの傾向を把握しやすくなります。

 

回答は0〜10点で測定され、回答者は以下の3つに分類されます。

  • 推奨者:9〜10点
  • 中立者:7〜8点
  • 批判者:0〜6点

NPSの計算方法

NPSを測定するには、調査を実施して、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて算出します。

推奨者の割合が多く、批判者の割合が少ないほど、NPSは高くなります。批判者が0の場合、スコアは最大で100になります。

 

 

NPSの計算式

NPS = 推奨者の割合 − 批判者の割合

 

8. 顧客満足度スコア(CSAT)

カスタマーサクセスをサポートする指標

 

CSAT(顧客満足度スコア)は、プロダクトや企業に対しての顧客満足度を測定する調査指標です。
一般的には、ユーザーに1〜5段階で満足度を評価してもらい、その結果からスコアを算出します。

 

CSATの計算方法

CSATを計算するには、肯定的な回答数を回答総数で割ります。多くの場合、4点または5点の回答を肯定的な回答として扱います。最後に100を掛けることで、パーセンテージを算出します。

 

 
CSATの計算式

CSAT =(肯定的な回答数 ÷ 回答総数)× 100

 

9. 顧客努力スコア(CES)

高度な指標

顧客努力スコア(CES)は、顧客がプロダクトやサービスを利用したり、企業とやり取りしたりする際に、どの程度の労力を要していると感じているかを測る指標です。

 

一般的にCES調査は、顧客が問い合わせを送信した直後、連携機能を追加した直後、取引を完了した直後など、特定のインタラクションの直後に実施されます。

 

顧客努力スコアが有効なのは、その体験が顧客にどれだけの負担を求めているかを明らかにできるからです。サポート対応が迅速であれば、使いづらい体験であっても顧客満足度は一時的に高く見えることがあります。しかし、顧客努力度を見ることで、その裏側にある設計やプロセス上の課題を把握できます。不満や解約につながる前に摩擦を見つけるうえで、非常に有効な指標です。

– Andrei Blaj, Managing Partner, Atta Systems

 

CESの計算方法

顧客努力スコア(CES)は、特定のインタラクションやプロダクトに関するアンケートを実施し、すべての回答スコアの合計を回答数で割ることで算出できます。

 

また、NPSやCSATと同様に、低評価の割合を高評価の割合から差し引く方法や、肯定的な回答数を回答総数で割って100を掛ける方法で算出することもできます。

 

 

CESの計算式

CES = 顧客努力評価の合計 ÷ 回答総数

 

 

4. ビジネスコストに関する指標

 

10. 顧客獲得コスト(CAC)

カスタマーサクセスをサポートする指標

顧客獲得コスト(CAC)は、新規の顧客を獲得するためにかかったコストを測定する指標です。

一般的には営業費とマーケティング費が含まれていますが、必要に応じて、カスタム実装や連携開発などにかかるカスタマーサクセス関連コストを加えることも可能です。

 

顧客獲得コスト(CAC)は、顧客維持率やアップセル・クロスセルによる拡張率とあわせて見ることで、より意味を持つ指標になります。CACが低いことは一見良い状態に見えるかもしれません。しかし、獲得した顧客に関して、企業側が十分な収益を得られず、獲得コストを回収する前に解約してしまうのであれば、健全な顧客獲得とはいえません。だからこそ、CACは単なるマーケティング指標ではなく、ビジネスの質を測る指標として捉えることが重要です。

– Philipp Wolf, Founder & CEO, Custify

 

CACの計算方法

CACは営業やマーケティングなど、顧客獲得に費やしたコストの合計を、同じ期間に獲得した新規顧客数で割って算出します。

 

 

CACの計算式

CAC =(営業コスト + マーケティングコスト)÷ 新規顧客数

 

11. 顧客維持コスト(CRC)

高度な指標

顧客維持コスト(CRC)は、顧客を維持するためにかかるコストの総額を示す指標です。

一般的には、アカウント管理、カスタマーサクセス、カスタマーサポート、顧客エンゲージメント、オンボーディング、トレーニング、プロフェッショナルサービスなどに関するコストが含まれます。

 

CRCの計算方法

CAC(顧客獲得コスト)は、顧客1社あたりの獲得にかかったコストとして算出されます。一方、CRC(顧客維持コスト)は、既存顧客の維持に関わる費用全体を合計して算出します。

 

そのうえで、顧客1社あたりの維持コストを把握したい場合は、その合計額を顧客数で割ります。

CRCを計算するには、顧客維持に関連する各種コストを合計します。

 

 

CRCの計算式

CRC = アカウント管理コスト + カスタマーサクセスコスト + 顧客エンゲージメントコスト + オンボーディングコスト + トレーニングコスト + カスタマーサポートコスト + 顧客マーケティングコスト + その他関連コスト

 

顧客1人あたりの年間CRCを算出する場合は、その年にかかったCRCを年間のアクティブ顧客数で割ります。

 

 

顧客あたりの年間CRCの計算式

顧客あたりの年間CRC = 年間CRC ÷ アクティブ顧客数

 

12. LTV:CAC

高度な指標

LTV:CAC比率は、顧客の生涯価値と顧客の獲得コストに関して、費用対効果のバランスを見る指標です。


平均的な顧客が、獲得コストに対してどれだけの価値をもたらしているかを確認できます。

 

この指標を見ることで、価格設定を見直すべきか、顧客獲得コストを抑えるべきか、あるいは顧客価値を高めるべきかを判断しやすくなります。通常は、次に紹介するCAC回収期間とあわせて確認されます。

 

LTV:CACの計算方法

LTV:CAC比率は、LTV(顧客生涯価値)をCAC(顧客獲得コスト)で割って算出します。たとえば、LTVが300万円、CACが100万円であれば、LTV:CACは3:1となります。

 

 

LTV:CACの計算式

LTV:CAC = LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得コスト)

 

 

13. CAC回収期間

高度な指標

CAC回収期間は、企業が顧客の獲得にかけたコストを回収するまでに、どの程度の時間を費やしたのかを示す指標です。

 

概念としてはやや発展的ですが、計算式は比較的シンプルです。LTV:CACとあわせて確認することで、企業の収益性をより明確に把握できます。

 

CAC回収期間の計算方法

CAC(顧客獲得コスト)の回収期間を計算するには、CAC(顧客獲得コスト)をMRR(月間経常収益)で割ります。その結果が、顧客獲得コストを回収するのにかかる月数となります。

 

 

CAC回収期間の計算式

CAC回収期間 = 顧客獲得コスト(CAC)÷ 月間経常収益(MRR)

 

14. 価値実現までの時間(TTV)

サポート指標

価値実現までの時間(TTV)は、顧客がプロダクトやサービスに登録してから、求めていた価値を得るまでにかかる時間を示す指標です。
つまり、顧客がサービスに加入してから、目的を達成するまでにどれだけ時間がかかっているかを示す指標です。

 

SaaSでは、特に「初回価値実現までの時間(Time to First Value:TTFV)」も重要なカスタマーサクセス指標として扱われます。TTFVは、顧客が製品やサービスから最初の価値を得るまでの時間を示します。

 

初年度の顧客における価値実現までの時間と、初年度の顧客維持率は、CS組織全体の成功を示す重要な指標です。
– Leah Gelblat, Direct Client Experience – Amazon, at Movable Ink

 

顧客にとっての、価値が実現されるまでの時間は、顧客の利用体験によって異なります。そのため、顧客体験の中で「重要な瞬間」を特定することが重要です。
これらの瞬間は、顧客固有のKPIによって定義されます。SMART目標に基づいてマイルストーンを設定することで、顧客にとって意味のある価値提供につなげることができます。

– De’Edra Williams, Chief Customer Officer at Customer Success Revenue Frontier, during our webinar,ROI Unpacked: Proving the Revenue-driven Value of CS

 

TTVの測定方法

TTVは単純な計算式で算出するというよりは、通常はカスタマーサクセスのダッシュボード上で測定されます。
目的を達成した顧客ごとに、その価値を得られるまでにかかった時間を集計し、その平均値を確認することで、平均TTVを把握できます。TTFVについても同様です。

 

15. 平均解決時間 (TTR)

カスタマーサクセスをサポートする指標

TTR (平均解決時間)は、顧客からの問い合わせや疑問点、問題が解決するまでにかかる平均時間を示す指標です。
主にカスタマーサポート領域のKPIですが、顧客満足度や解約率に直接影響するため、カスタマーサクセスにおいても重要な指標です。

TTRの精度は、問題が解決した時点で、サポートリクエストが正確に「解決済み」として記録されているかに大きく左右されます。

 

TTRは、顧客に問題が発生した際に、チームがどれだけ迅速に解決できるかを示す明確な運用指標です。ただし、重要なのはスピードだけではありません。TTRが高いスコアの状態が続く場合、プロダクトが複雑であることや内部プロセスの不備など、サービスにより根深い課題がある場合があります。
– Vlad Bodea, Co-Founder, Bento MDM

 

TTRの計算方法

TTRは、解決済みのサポートリクエストについて、すべての解決時間を合計し、その合計を解決済みリクエスト数で割って算出します。

 

 
TTRの計算式

TTR = 総解決時間 ÷ 解決済みリクエスト数

 

 

5. 感情分析とエンゲージメントに関する指標

 

16. 顧客エンゲージメントスコア

高度な指標

顧客エンゲージメントスコアは、顧客がプロダクト、サービス、企業に対してどれだけ関心を持ち、関わっているかを示す指標です。

 

これは、顧客とのさまざまなインタラクションをスコア化し、合計して算出する複合的な指標です。プロダクト利用、トレーニング参加、QBRへの出席、メールへの反応、サポート利用など、さまざまな接点をもとに評価します。

 

私にとって、エンゲージメントスコアは特に重要な指標の一つです。「この顧客は自社から価値を得ているのか」「今後も取引を継続してくれる可能性があるのか」を判断する手がかりになるからです。

たとえば、3年契約中の1年目を迎えた顧客の場合、契約をアップデートするかをすぐに判断することはできません。また、顧客によってはアップセルの余地が少なく、新たな契約の機会が見えにくいこともあります。そのような場合、アップグレードやアップセルの有無だけで顧客の状態を判断すると、実態を見誤る可能性があります。

そこで重要になるのが、(利用状況、イベントやミーティングへの参加状況、トレーニングへの反応、QBRへの参加状況など)、複数のアクションをもとにしたエンゲージメントスコアです。これらのスコアから前向きなコンタクトが確認できるのであれば、顧客との関係性は良好であり、長期的なパートナーシップにも期待が持てると判断できます。
– Chris Otenbaker, Director of Client Success, PlanITROI

 

顧客エンゲージメントスコアの計算方法

顧客エンゲージメントスコアを計算するには、まず顧客が自社とどのような種類のインタラクションを持っているかを特定します。

 

次に、それぞれのインタラクションに重要度を設定します。重要なインタラクションほど高い重みを付け、その値にインタラクションの回数、つまり頻度を掛けます。

 

最後に、それぞれのインタラクションスコアを合計することで、顧客エンゲージメントスコアを算出します。

 

顧客エンゲージメントスコアの計算式


顧客エンゲージメントスコア =
(インタラクション1の重要度 × 頻度)+(インタラクション2の重要度 × 頻度)+ … +(インタラクションXの重要度 × 頻度)

 

17. 顧客感情スコア

高度な指標

顧客感情スコアは、顧客が製品、サービス、企業に対してどのような感情を抱いているかを示すスコアです。
他の指標と異なり、顧客感情スコアは多くの場合、カスタマーサクセスプラットフォームやカスタマーサポートプラットフォーム、または専用の感情分析ツールによって算出されます。

こうしたツールは、(顧客とのやり取り、メール、通話記録、チャット、アンケート結果など、)複数の顧客に対するシグナルをもとに感情スコアを算出します。

 

顧客感情は、利用データだけでは見逃してしまう兆候を捉えることができます。顧客は、ログインしたり、データ上は活発に見えていても、会話のトーンや発言、対応の様子に不満の兆候が表れている場合があります。 だからこそ感情分析は、レポート作成のためだけでなく、リスクを早期に検知し、そのアカウントにどのようなフォローが必要なのかを理解するうえでも有効です。
– Anca Radosu, Customer Success, Medicai

 

顧客感情スコアの測定方法

感情分析は、自然言語処理(NLP)に大きく依存します。そのため、顧客感情スコアを算出するには、NLP機能を備えたツールの活用が一般的です。

 

 

6. ビジネス成長に関する指標

 

18. アップセル率/拡張コンバージョン率

高度な指標

アップセル率、または拡張コンバージョン率とは、アップセル提案を受けた顧客のうち、実際に提案を受け入れた顧客の割合を示す指標です。

 

シンプルな指標ですが、アップセル戦略の有効性、カスタマーサクセスチームが拡張機会を見極める力、顧客のアップグレード意向を把握するうえで重要です。

 

拡張コンバージョン率は、顧客が自社と共に成長する価値を感じているかどうかを示します。チームはアップセルを説得の問題として捉えがちですが、実際には導入状況とタイミングの問題であることが多いのです。顧客が継続的にプロダクトを利用し、成果を感じられていない場合、提案内容が適切であってもアップセルにはつながらない可能性があります。

– Irina Vatafu, Head of Customer Success, Custify

 

アップセル率の計算方法

アップセル率を計算するには、アップセルを受け入れた顧客数を、アップセルを提案した顧客数で割ります。最後に100を掛けることで、パーセンテージを算出できます。

 

 

アップセル率の計算式

アップセル率 =(アップセルを受け入れた顧客数 ÷ アップセルを提案した顧客数)× 100

 

19. 顧客成長率(CGR)

高度な指標

CGR(顧客成長率)は、一定期間における顧客数の増減を、期間開始時の顧客数と比較した指標です。


CGRは企業の健全性やプロダクトの評価度合いを測るうえで重要な指標です。

 

通常は四半期や年単位で測定されますが、月次の指標として確認することも可能です。ただし、月次では変動が大きく、結論を出しにくい場合もあります。

 

初年度の顧客については、顧客維持率と成長率を必ず把握することをおすすめします。これは、より広範な指標群を収集するうえでも重要です。
– Leah Gelblat, Direct Client Experience – Amazon, at Movable Ink

 

顧客成長率の計算方法

顧客成長率を計算する方法は2つあります。

 

基本の計算式では、調べたい期間の期末の顧客数から期初の顧客数を差し引き、その値を期初の顧客数で割ります。最後に100を掛けることで、顧客成長率を算出できます。

 

 
顧客成長率の計算式

顧客成長率 =[(期末の顧客数 − 期初の顧客数)÷ 期初の顧客数]× 100

 

もう一つの方法として、純顧客成長率を算出する計算式もあります。これは、期間中に獲得した顧客数と失った顧客数の両方を計算に含めるため、顧客数の増減要因をより明確に把握できます。

 

計算する際は、期間中に獲得した顧客数から、同期間に失った顧客数を差し引き、その値を期初の顧客数で割ります。最後に100を掛けることで、純顧客成長率を算出できます。なお、結果としては基本の計算式と同じ値になります。

 

 

純顧客成長率の計算式
純顧客成長率 =[(期間中に獲得した顧客数 − 期間中に失った顧客数)÷ 期初の顧客数]× 100

 

カスタマーサクセス指標に関するよくある質問

 

1. カスタマーサクセス指標とは何ですか?

カスタマーサクセス指標とは、特にSaaS企業において、企業の健全性や顧客との関係性を把握するための指標です。

一般的には、顧客維持率、解約率、顧客満足度、エンゲージメント、経常収益、顧客成長率などがカスタマーサクセス指標として用いられます。

 

2. 企業はカスタマーサクセス指標をどのようにベンチマークしていますか?

カスタマーサクセス指標のベンチマークを行う際は、業界レポートや専門メディア、ベンチマークデータを公開している各種サービスを参照する方法があります。

 

  • BenchmarkITは、SaaS企業のパフォーマンス指標やベンチマークに関するレポートを公開しており、業界水準を把握する際の参考になります。
  • そのほか、ベンチマークを確認する際の参考情報としては、Paddleの年次ベンチマークレポート、Lennyのニュースレター、Baremetricsなどが挙げられます。

3. カスタマーサクセスで追跡すべき指標は何ですか?

カスタマーサクセスにおいて追跡すべき指標は、事業内容やKPIによって異なります。

多くの企業では、解約率と顧客維持率を基本指標として追跡しています。その他、MRR、ARR、NRR、GRR、顧客エンゲージメントスコア、NPS、顧客感情スコアなどもよく使われます。

本記事で紹介したその他の指標も、自社の事業特性やカスタマーサクセスの目的に応じて、有益な示唆を与えてくれます。

 

4. カスタマーサクセス指標はどのように測定しますか?

カスタマーサクセス指標を正確に測定するには、カスタマーサクセスプラットフォームの活用が有効です。

カスタマーサクセスプラットフォームでは、関連するデータソースを統合し、カスタムダッシュボードを設定することで、重要なKPI、顧客ヘルススコア、自動的に計算された指標を継続的に追跡できます。

 

また、ほとんどのプラットフォームにおいては、特定の指標に基づいて顧客にアクションを実行する、自動的なプロセスを設定することで、データを単なるレポートにとどめず、実際の顧客支援につなげることができます。


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