カスタマーサクセス業務においてロープレが機能しなかった要因と、実践を通じて得た改善策
レクチャー/キックオフミーティングにおける「効果的なロープレ」の考え方
カスタマーサクセスのオンボーディングにおける、レクチャーおよびキックオフミーティング(以下、KOM)では、正確な情報提供に加え、相手の理解度や状況に応じて説明を構成し、次の行動につなげる説明力が求められます。そのスキルを養成する手段として、ロープレは重要な位置づけにあります。
一方で、ロープレを繰り返しているにもかかわらず、説明力の向上を実感できない、あるいは同様の指摘を受け続けてしまうといったケースも少なくありません。形式的にロープレを実施しているものの、「何を目的に行っているのか」「どこを改善すべきなのか」が不明確なまま進んでしまうことで、成長実感を得られない状態に陥ることもあります。
本記事では、レクチャー/KOM業務に向けたロープレの中で実際に直面した課題を整理し、その改善プロセスを共有することで、今後ロープレに取り組むメンバーがより効果的に活用するための参考とすることを目的としています。
※弊社、アディッシュはカスタマーサクセスの業務委託・BPOをサービス提供しており、私自身はカスタマーサクセス業務を実行する役割を担っています。
業務背景とロープレの位置づけ
担当業務は主に以下の二つです。
レクチャー業務
クライアントに対して、サービスの操作方法や運用方法を説明し、導入および活用を支援する業務です。説明対象は機能理解に留まらず、「なぜその操作が必要なのか」「どの業務で使うのか」といった背景まで含まれるため、相手の業務理解を前提とした説明力が求められます。
KOM業務
プロジェクト開始時に、目的、進行方法、役割分担などを整理し、クライアントおよび社内メンバー間の認識を統一する業務です。ここでの説明が曖昧な場合、後工程での認識齟齬や手戻りにつながる可能性が高くなります。
これらの業務に共通するのは、「正しい内容を説明すること」自体がゴールではなく、「相手が理解し、次に取るべき行動が明確になる状態を作ること」が求められる点です。そのためロープレは、知識確認の場ではなく、実務を想定した説明設計を検証する重要な訓練プロセスとして位置づけられます。
課題① インプット量に対処できず、暗記中心の学習になっていた
業務習得は、以下の流れで進行しました。
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STEP1:ワーク・動画による事前学習
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STEP2:ロープレ練習
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STEP3:ロープレテスト
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この中で大きな課題となったのが、Q&A集や各種資料のインプット量です。短期間での習得を求められる中で、「誤った説明をしてはいけない」「質問に即答できるようにならなければならない」という意識が強まり、内容の背景理解よりも文言の暗記を優先する学習になっていました。
その結果、ロープレでは以下のような事象が頻発しました。
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想定外の質問への対応ができない
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質問の意図を十分に汲み取れない
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聞き方が変わると説明が滞る
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知識としては把握しているものの、それを状況に応じて組み替え、相手に合わせて説明する力が不足していたと考えられます。
改善策:背景理解を軸とした知識整理
改善にあたっては、「覚える」ことを目的とするのではなく、「なぜその説明が必要なのか」「どの場面で使われる知識なのか」を起点に、情報を再整理することを意識しました。
具体的には、Q&Aや資料を確認する際に、
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この質問が発生する業務背景
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クライアントが直面している課題
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どの利用シーンを想定した説明か
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を必ずセットで考えるようにしました。
加えて、常駐先の先輩社員にヒアリングを行い、実際の商談やレクチャーの中でどのような説明が求められているかを把握しました。これにより、知識が単独で存在するのではなく、業務フローの中で意味を持つ形で整理され、ロープレにおいても柔軟な対応が可能となりました。
課題② 説明が台本の読み上げになっていた
ロープレにおいて、「説明が伝わりづらい」「一方的に感じる」といった指摘を受けることが多くありました。要因を分析すると、
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台本への依存度が高い
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抑揚や間がなく、単調な説明になっている
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理解が浅い箇所ほど、不自然な話し方になる
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といった傾向が見られました。
特に、内容理解が不十分な箇所では、相手の反応を見る余裕がなく、文章を正確に再現すること自体が目的化していました。
改善策:台本の役割を「原稿」から「設計図」に変える
改善のため、台本を「そのまま読むもの」ではなく、「説明の流れと意図を確認するための設計図」として扱うようにしました。
具体的な取り組みとして、
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台本を見ず、要点のみで説明する練習
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説明の中で特に重要なポイントの明確化
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相手の理解を待つための意図的な間の設定
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を実施しました。
この取り組みにより、説明の抑揚や話すスピードが安定し、相手の反応を見ながら補足や言い換えを行う余裕が生まれました。結果として、双方向の説明に近い形でロープレを実施できるようになりました。
課題③ フィードバックを改善行動に結びつけられていなかった
ロープレの実施回数は増加していたものの、同様の指摘を繰り返し受ける状態が続いていました。これは、フィードバックを受けても「次に何を変えるか」が曖昧なまま練習を重ねていたことが要因であると考えられます。
改善策:フィードバックの構造化と優先順位付け
この課題に対して、
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自社メンバーを含め、複数の視点でフィードバックを受ける
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複数回指摘される項目を優先課題として設定する
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ロープレごとに改善テーマを一つに絞る
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といった対応を行いました。
フィードバックを具体的な行動レベルに落とし込むことで、ロープレの目的が明確になり、改善の手応えを得られるようになりました。
ロープレを通じて得られた示唆
ロープレは成果を評価する場ではなく、理解不足や説明の弱点を事前に可視化するためのプロセスです。説明が詰まる箇所や曖昧になる部分は、そのまま実務上のリスクポイントを示しています。
ロープレでの失敗を早期に把握し、改善につなげることが、結果として実務での品質向上やトラブル防止につながります。
まとめ
ロープレが十分に機能していなかった要因は、
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暗記中心の学習
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理解不足のままの説明
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フィードバックの活用不足
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にありました。
一方で、理解を重視した学習と、フィードバックを行動レベルに落とし込むことで、説明力および対応力の向上が確認できました。
ロープレは、正しく設計・活用することで、実務に直結する有効な育成手段となります。本記事が、今後ロープレに取り組む際の一つの指針となれば幸いです。


