イベント型セミナーとロータッチCS型セミナーの違いから学ぶ、成功への心得

島田 映美
2026.01.13
はじめに
カスタマーサクセス(以下、CS)におけるロータッチ施策の一環として、セミナーは非常に重要な役割を担います。特に、顧客との接点が少ないロータッチ型のCSでは、セミナーを通じて製品やサービスの価値を伝え、利用促進を図ることが求められます。なぜなら、セミナーは社内のリソース負担を抑えつつ、多数の顧客へ同時にアプローチできる効率的な手法だからです。
しかしながら、セミナーを単なる「イベント」として実施するのか、あるいはCS施策の一環として戦略的に設計するのかによって、得られる成果は大きく異なります。
例えば、単なる「イベント型」セミナーは、主にプロダクトの認知拡大を目的とし、「まずプロダクトについて知りたい」「使い方を知りたい」「まだ導入していないがどんなものか知りたい」といった潜在顧客や導入初期層を対象とします。
一方、「ロータッチCS型」セミナーは、既存顧客の成功体験の創出を目的とし、「導入して間もない企業」へのオンボーディング支援や、「導入済みでさらに活用を促進したい」「もっと効果的にツールを使いたい」と考える顧客への具体的な活用方法の提示など、より深いエンゲージメントを目指します。
ここでいう「戦略的」とは、単に情報を伝えるだけでなく、参加者がサービスをより効果的に活用できるように導くことを意味します。
本記事では、対象者や目的が異なるイベント型セミナーとロータッチCS型セミナーの違いを比較し、それぞれの特性を理解した上で、CS施策としてのセミナーを成功に導くための心得を整理します。
比較1:目的の違い
セミナーの成果を左右する最初の分かれ道は、その「目的」の設定にあります。目的は単なる形式や内容以上に、セミナー全体の設計思想に影響を与えます。
イベント型セミナーのゴール
イベント型セミナーは、文字通り「その場で知識や情報を伝える」ことが目的です。
例えば、新機能リリースのお知らせや、業界動向の解説などが該当します。この場合、講師は専門知識を整理して分かりやすく伝えることが中心であり、セミナー後の顧客行動に直接入ることは少ないです。参加者にとっては有益な情報提供の場ではありますが、その後の利用定着や行動変容には必ずしも結びつきません。
ロータッチCS型セミナーのゴール
一方、ロータッチCS型セミナーは、参加者がサービスや製品を実際に活用するきっかけをつくる」ことを主目的とします。
つまり、単に情報を伝えるだけではなく、参加者が学んだ内容を自社の業務や生活に落とし込み、次のアクションに結びつけられるように設計します。
例えば、操作手順のハンズオンや、活用事例の紹介、質問への丁寧な対応などがこれに含まれます。この目的設定の違いは、セミナーの準備段階から内容設計、当日の進行、さらには終了後のフォローアップまで、すべての行動に直結します。
比較2:参加者への関わり方の違い
セミナー当日の運営スタンスにも明確な違いが現れます。ここでいう運営スタンスとは、講師や主催者がどのように参加者と関わるかの姿勢を指します。
イベント型
イベント型セミナーでは、講師が中心となって説明を行う一方向形式が一般的です。参加者は受け手として話を聞く時間が多く、双方向のやり取りは少ない傾向があります。そのため、参加者がどの程度理解しているか、実際に活用できる状態になっているかを把握することが難しい場合があります。講師は知識伝達の精度に注力しますが、参加者の行動変容を促す仕組みはあまりありません。
ロータッチCS型
ロータッチCS型セミナーでは、参加者の反応を観察しながら、その理解度に応じて柔軟に進行します。たとえば、質問が出ない場合でも「理解しているのか、それともわからないけど質問しにくいのか」を推測し、能動的に関与を促すことが重要です。具体的には、参加者に簡単な確認質問を投げかけたり、操作を一緒に行ったりすることで理解を確認します。
また、セミナー中に得られた参加者の疑問や課題は、後続の個別フォローや資料提供に活かされます。こうしたスタンスは、単なる情報提供に留まらず、顧客の行動を変えることを意識した運営につながります。
比較3:セミナー後の関係構築
セミナーの真価が問われるのは、終了後のフォローアップ、すなわち「関係構築」においてです。セミナー(という施策)がもたらす最終的な価値は、この関係構築の質によって決定的に異なり、顧客にとって「価値のある体験」となるかどうかは、終了後のフォローによって決まるといっても過言ではありません。
イベント型
イベント型セミナーでは、セミナー終了と同時に関係性も途切れやすい傾向があります。
参加者が資料を持ち帰った後、特に温度感の低い層への継続的なフォローが手薄になる結果、その後の活用状況や課題を把握しきれないことが多くなります。そのため、知識は得られても、実務での活用やサービス利用の定着にはつながりにくく、結果としてセミナーの効果は一過性になりがちです。
ロータッチCS型
ロータッチCS型セミナーでは、セミナー後も顧客との関係を継続的に維持します。
具体的には、FAQや録画データの共有、追加資料の提供、さらには個別相談への誘導などが行われます。こうしたアフターフォローを通じて、顧客がサービスを活用できる状態になるまで伴走することが求められます。このプロセスを設計できるかどうかが、セミナーの真価を決める重要なポイントです。
まとめ
セミナーを単なる一過性の「イベント」として捉えるか、それとも「ロータッチCS施策」として戦略的に設計するかによって、顧客にもたらす価値には大きな差が生まれます。成功の鍵は、次の3つの要素を常にカスタマーサクセスの視点で捉え直すことです。
- 目的: 単なる知識提供か、行動変容を促すきっかけづくりか。
- 運営スタンス: 講師中心の一方通行か、参加者の理解度に応じた双方向型か。
- その後のつながり: セミナー後の関係をどう維持し、活用促進につなげるか。
ロータッチCS型セミナーは、準備・運営・フォローアップのすべてにおいて「顧客がサービスを活用できる状態に導く」ことを意識した設計が求められます。
この視点を持つことで、セミナーは単なる情報提供の場にとどまらず、顧客にとって意味のある価値体験となり、長期的な成功につながるのです。

この記事を書いたライター
島田 映美
新卒でWebエンジニアとして業務システム開発に携わり、SaaSプラットフォームの業務開発やセミナー講師も経験。 2024年にアディッシュへ入社し、ITスキルと丁寧な説明力を活かして、顧客接点の質を高めるカスタマーサクセスに取り組んでいる。
