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【翻訳】SaaSでの顧客データ漏洩を防ぐには──CSチームが実践すべき予防策と対応方法

この記事は著作権を有する Custifyの許可を得て翻訳したものです。
Original article:https://www.custify.com/blog/prevent-customer-data-leaks-saas/

 

顧客のデータに関するセキュリティリスクが、外部のハッカーだけではなく、日常的なカスタマーサクセスのワークフローに潜んでいるとしたらどのように対処するべきでしょうか?

 

カスタマーサクセスチームは、CRM、スプレッドシート、外部ツールなど、さまざまなツールを活用しながらタスクを進めています。その中で、アカウント情報など、機密性の高い情報に日常的にアクセスしています。

 

顧客データの漏洩は、必ずしも大規模なサイバー攻撃から始まるわけではありません。公開権限が誤って設定されたスプレッドシート、転送されたメール、過剰な権限を持つツール連携、あるいは不正アクセスを受けたアカウントなど、日常業務の中にある小さなミスや不備がリスクの兆候になることもあります。

 

本記事では、CSのワークフローのどこに顧客データ漏洩のリスクが生じやすいのか、リスクを軽減するために何をすべきか、そして万一問題が発生した場合にどのように対応すべきかを解説します。

 

SaaSにおける顧客データ漏洩とは

SaaSにおける顧客データ流出とは、顧客データが社内で承認されている権限外で共有、ダウンロード、アクセスされてしまうことを指します。

 

その要因はハッキングや、サイバー攻撃のみとは限りません。CS業務に関わる漏洩は、公開されたスプレッドシートのリンク、転送されたアカウント情報、共有されたパスワード、過剰な権限を持つ外部ツール連携、エクスポートされた顧客リスト、あるいは退職後も顧客情報へのアクセス権を保持している元メンバーなどによって発生することがあります。

 

顧客データの漏洩を防ぐためには、まずはデータがどのサーバーに保存されているのか、誰がアクセスできる権限を持つのか、どういったツールが使われてファイルが操作されているのか、ログを把握することが重要です。そのうえで、カスタマーサクセスチームが顧客データを安全に扱うための明確な施策を、その都度検討する必要があります。

 

SaaSにとって顧客データ保護が重要な理由

信頼の低下や解約、法的リスクにつながる

SaaSは、顧客からの信頼を基盤とするビジネスです。

 

顧客は、業務のワークフロー、ユーザーデータ、運用情報などをSaaS企業に預けています。その背景には、「データの機密性が守られ、適切に管理されている」という信頼があります。

 

もし、そうしたビジネスで顧客データの保護に問題が発生すると、その影響は該当するアカウントだけにとどまりません。紹介予定だった案件、進行中だったアップセルや契約拡大の商談など、顧客との関係性の上に築かれていた信用が失われ、企業に多大な損失を与えます。

 

多くのカスタマーサクセスチームは、顧客との接点を効率的に管理するために、自動化ツールやワークフローを活用しています。しかし、これらのワークフローに適切なセキュリティ対策が組み込まれていない場合、自動化されたプロセスそのものが新たなリスク要因になることもあります。

 

さらに、法的なリスク・賠償請求も現実的な問題となってしまいます。

 

規制・基準

主な義務

想定されるリスク

GDPR

適法なデータ処理、72時間以内の情報漏洩通知

高額な賠償金、信用低下

CCPA

知る権利、削除する権利、オプトアウトする権利への対応

違反時の罰金、訴訟リスク

SOC 2

文書化されたセキュリティ管理体制

認証マークなどの喪失、エンタープライズ取引への影響

 

以前は、「企業が小規模である場合には重篤な問題になりにくい」と考えられることもありました。

 

ですが、昨今では規模に関係なく、SaaS企業には適切なデータ保護が求められています。現在の情勢では、「小規模だから問題になりにくい」という考えが通用する事は断じてないと言えるでしょう。

 

信用面と金銭面の双方に影響する

データ漏洩というと、制裁金や損害賠償に注目が集まりがちです。しかし実際には、制裁金が発生する前の段階から、さまざまなコストが生じます。

 

事例としては、弁護士への相談、フォレンジック調査、顧客への謝罪、信用監視に関する対応、社内外への説明、復旧作業などです。こうなると、状況を見守るよりも、損益防止の為の解約を行う顧客も現れます。

 

さらに、企業は緊急の復旧費用だけでなく、セキュリティ強化に対する投資や、本来予定していたプロダクトの延期なども発生します。準備ではなく事後対応に追われる状態になると、コストは短期間で、想定外の規模に膨らんでいきます。

 

中堅規模のSaaS企業が深刻なデータ漏洩に対応する場合、10万ドル以上の費用が発生することも現実的だと説明しています。信用低下による収益への影響は、数字に表れるまでにも、そこから回復するまでにも時間がかかります。

データセキュリティにおけるCSチームの役割

CSチームは重大な機密事項を日常的に扱っている

カスタマーサクセスマネージャー(CSM)は、日々の業務の中で多くの機密情報に触れています。

 

CRMにはアカウント情報や契約ログがあり、ヘルプデスクには請求に関する問い合わせや詳細が記録され、メールスレッドには顧客との重要なやり取りが管理されています。

 

つまり、CSMは一人で多くの機密情報にアクセスできる立場にあり、尚且つ、その権限は、エンジニアリングや情報システム部門ほど厳重に管理されていない場合もあります。

 

CS部署がセキュリティ上の弱点になりやすい理由

カスタマーサクセスの業務は、常に速いペースで進みます。複数の顧客アカウントの管理、エスカレーションへの対応、ビジネスレビューの準備など、多くのタスクが同時に進行します。こうした業務フローにセキュリティ対策を意識的に組み込まなければ、日々の対応の中で後回しになりがちです。その結果、次のような状態が生まれます。

 

  • 複数のツールで同じパスワードを使っている
  • 顧客情報を個人のメモアプリに貼り付けている
  • アクセス権限が適切に管理されていないスプレッドシートが、実質的なCRMとして使われている
  • 外部ツール連携に必要以上の管理権限を付与している
  • 退職者や異動者のアクセス権限がそのまま残っている

 

何らかの不具合や情報漏洩が発生し、原因をたどっていくと、日々のCS業務にセキュリティ対策が十分に組み込まれていなかったことが原因だった、というケースも少なくありません。

 

一番の解決策は、CSのワークフローそのものを見直すことです。役割に基づいたアクセス制御、顧客データの一元管理、定期的なアクセスレビューなどを通じて、日常業務の中にセキュリティ施策を組み込むことが重要です。

 

CSは顧客からの信頼を守る最前線にいる

カスタマーサクセスチームは、社内の中でも顧客との距離が近い存在です。

 

顧客体験への期待が高まる中で、顧客はサービスの利便性だけでなく、自社のデータがどのように扱われているかにも関心を持っています。

 

CSチームは、顧客やアカウントに何らかの異変が起きているとき、顧客側の懸念点に最初に気づくことが多い立場です。また、万一問題が発生した場合には、顧客に対して状況を説明し、信頼回復に向けた対応を行う重大な役割を担います。

 

顧客データに関するリスクに責任を持つことは、問題が発生した後の対応にも責任を持つことを意味します。

 

SaaSにおけるデータ漏洩の主な原因

  • 外部ツール連携に過剰な権限が付与されている
    CSで利用するツールに外部サービスを連携している場合、その一つひとつが情報漏洩の起点になる可能性があります。ベンダーが不要なデータにアクセスできる状態になっており、そのベンダー側でクラッキング等が発生すれば、顧客データも影響を受けます。連携ツールは、一度設定すると権限確認が放棄されがちです。

  • アクセス権限が定期的に確認されていない
    全員に管理者権限を付与することは、一見すると妥当な判断に見えます。しかし、そのうち一つのアカウントが不正アクセスを受けると、大きな問題につながります。必要な人に、必要な範囲の権限だけを付与することが基本です。

  • CS担当者がフィッシングの標的になる
    CS担当者の受信トレイには、顧客やベンダーから多くのメールが届きます。そのため、顧客や取引先を装ったフィッシングメールの標的になりやすいリスクを、恒常的に抱えます。巧妙に作られたメールであれば、経験豊富な担当者でも社内のパスコードを入力してしまうケースがあります。

  • 退職者や業務委託先にデータやアクセス権限が残る
    退職者が事前に顧客リストを持ち出す、業務委託先がプロジェクト終了後も共有フォルダにアクセスできる状態になっている、といったケースもあります。当該の人物が意図していない形でも、顧客データが管轄外に残ることは深刻なリスクです。

  • ログに顧客情報が残っている
    顧客データは、想定以上に頻繁にエラーログやデバッグ情報へ記録されています。これらのログが外部からアクセスできる状態になっていたり、削除されずに長期間放置されていたりすると、気づかないうちにセキュリティリスクが高まり続けるリスクになり得ます。

  • 顧客データがさまざまな場所に分散している
    Googleドライブ、個人のスプレッドシート、転送メール、Notionページなど、顧客データがさまざまな場所に分散していると、データ管理が難しくなります。適切なリンクさえあれば誰でもアクセスできる状態になっている場合、実質的にセキュリティが機能していないことになります。

 

顧客データ漏洩を防ぐ7つの方法

1. 役割に基づいたアクセス権限を設定する

顧客データへのアクセス権限は、担当者の役割や業務内容に応じて設定する必要があります。

たとえば、経験の浅いCSMが請求情報のすべてを見る必要はないと言えます。オンボーディング担当者が、顧客の解約履歴すべてにアクセスする権限も、必ずしも要るとは言えないでしょう。

アクセス権限は、業務上必要な範囲に限定することが重要です。また、異動や退職があった場合には、速やかに権限を更新・削除する必要があります。

 

2. すべてのツールに多段階認証を設定する

パスワードは複数のサービスで使い回されることがあり、フィッシングによって盗まれる可能性があります。また、別のサービスで発生した情報漏洩により、パスワードやセキュリティ情報が流出することもあります。

 

多要素認証(MFA)は、こうしたリスクを軽減する有効な手段です。CSチームが利用するCRM、ヘルプデスク、CSプラットフォーム、ドキュメントツールなど、すべての業務ツールに対して適用することが望ましいです。

 

3. 通信時と保存時の暗号化を確認する

システム間を移動するデータには、TLSなどによって通信時に暗号化する必要があります。また、ストレージに保存されているデータについても、保存時の暗号化が必要です。

 

ベンダーが適切に対応しているはずだと決めつけるのではなく、直接データの経路を確認することが重要です。回答が不明確な場合は、セキュリティ担当者や上位の担当者に確認を依頼する必要があります。

 

4. 収集する個人データを最小限にする

連携ツールが顧客情報を40項目取得しているにもかかわらず、実際にチームが利用しているのが10項目だけであれば、取得するデータの範疇を精査すべきです。

 

取得していないデータは、漏洩する危険性もありません。GDPRではこの考え方を「データ最小化」と呼びます。必要以上のデータを取得しない方針は、セキュリティ施策において重要な考え方です。

 

5. DLPツールを活用する

DLP(Data Loss Prevention、データ損失防止)ツールは、機密データがシステム間をどのように移動しているかを監視するための仕組みです。

 

DLPツールを利用すると、大量のデータエクスポート、メールで外部へ送信される個人情報、本来送信されるべきではない場所へのデータ転送などを検知できます。

 

多くのCSプラットフォームには、このような機能が標準搭載されている場合や、専用ツールと連携できるケースがあります。自社の環境でどこまで対応できているかを確認し、不足している場合は導入を検討する必要があるでしょう。

 

6. 外部ツール連携を四半期ごとに見直す

CSの業務環境に接続されているすべての外部ツールを定期的に確認し、それぞれのツールが最小限のアクセス連携に留まっているかを点検しましょう。

 

可能な限り権限を縮小し、誰も利用していない連携は削除します。使われていないまま接続されているツールは、誰も鍵をかけていないドアと同じです。

 

7. 顧客データを一つのツールまたはCSプラットフォームに集約する

この施策は、データの流出を防止するうえで、最も効果的です。

 

顧客データがGoogleドライブのフォルダ、公開リンクが設定されたスプレッドシート、転送されたメールなどに分散していると、十分なセキュリティを確保することが難しくなります。

 

そのため、顧客データを1つのプラットフォームに集約することは、データ流出リスクを減らすうえで効果的です。顧客情報、アカウントの状態、タスク、メモ、プレイブック、フォローアップ履歴などを一元管理できれば、CSチームやIT部門にとっても、監査・アクセス管理がしやすくなります。

 

カスタマーサクセスプラットフォームが役立つ場面

顧客データの漏洩は、CS業務が複数のツールに分散していることによって発生する場合があります。

 

たとえば、アカウントに関するメモはドキュメントに保存され、契約更新に関する経緯はメールの受信トレイに残り、プロダクトの利用状況はスプレッドシートにエクスポートされ、フォローアップのタスクは個人用のタスク管理ツールに登録されている、といった状態です。

 

このケースの場合、カスタマーサクセスプラットフォームは、CSチームがアカウントの進捗情報、プレイブックなどを1か所で管理できるようにすることで、データの分散を抑える役割を果たします。

 

これは、DLP、IAM、SIEM、エンドポイント保護といったセキュリティツールの代わりとして機能する手段ではありません。しかし、CSチームの業務基盤を整理することで、機密性の高い顧客情報が、外部のストレージにコピーされ、追跡不可能になるリスクを減らすことができます。

 

顧客データ漏洩が発生した場合の対応

データ漏洩の兆候を早期に把握する

顧客データ漏洩と思わしき痕跡がある場合、まずは兆候を見逃さないことが重要です。

 

たとえば、通常とは異なる場所や時間帯からログインされていないかを確認します。顧客から「他社のデータを受け取った」と連絡があった場合も、データ漏洩を示す重要な兆候です。

 

また、外部ツール連携が通常の範囲を超えたデータを取得し始めていないか、CS担当者が担当範囲外のアカウントにアクセスしていないかも確認することは重要です。

 

直ちにアクセスを遮断し、関係部門へ連絡する

情報漏洩が疑われる場合は、関係するシステムやアカウントへのアクセスを直ちに遮断します。

 

そのうえで、何が起こったのか(判明していること)、どのデータが影響を受けたかの時系列を正確に記録します。法務部門とセキュリティチームには、早い段階で連絡を取り、対応方針を協議することが重要です。

 

通知要件についても、早めに確認しておく必要があります。GDPRでは、個人データ侵害が個人の権利や自由にリスクをもたらす可能性がある場合、原則として侵害を認識してから72時間以内に監督機関へ通知する必要があります。

 

調査が完了するまではログを保持し、証拠や原因の特定に影響を与える可能性があるため、関係するシステムを不用意に変更しないようにします。

 

影響を受けた顧客へ説明し、再発防止策を講じる

顧客に対しては、次の内容を説明する必要があります。

 

  • 何が起きたのか
  • どのデータが影響を受けたのか
  • 企業側ですでに実施した対応
  • 顧客側で必要な対応があるか
  • 今後、どのような変更や再発防止策を講じるのか

 

データ漏洩後も顧客との信頼関係を維持できる企業は、例外なく、実際の事実を正直に説明した企業です。顧客は、企業が自社の都合を優先しているのか、顧客を守るために行動しているのかを考えています。

 

事態を封じ込めた後は、インシデント発生後の検証を徹底します。どの管理策が機能しなかったのかを特定し、修正したうえで記録を残し、事案をクローズすることが重要です。

 

CSチームのためのデータセキュリティチェックリスト

以下のチェックリストは、入社時のオリエンテーションで一度実施して終わりにするのではなく、四半期ごとに再確認することが望ましい内容です。

 

アクセスと認証
  • すべてのCSツールに、役割に基づいたアクセス制御(RBAC)が設定されているか
  • すべてのプラットフォームで、全メンバーに多要素認証(MFA)が適用されているか
  • 役割変更や退職時に、アクセス権限を更新・削除しているか
  • チーム内で共有パスワードを使用していないか

 

データの取り扱い
  • 通信時および保存時の暗号化を確認しているか
  • 外部ツール連携が取得するデータを、チームに必要な項目だけに限定しているか
  • 個人用アプリや公開設定のスプレッドシートに顧客データを保存していないか
  • データ保持ポリシーをドキュメント化し、実際の運用で順守しているか

 

外部ツール連携
  • 有効になっている外部ツール連携を四半期ごとに確認しているか
  • 使用していない外部ツール連携を削除しているか
  • 外部ベンダーが現在のセキュリティ基準を満たしているか確認しているか
  • ログに意図しない個人情報が記録されていないか確認しているか

 

インシデント対応の準備
  • インシデント対応のドキュメントを作成し、チームに共有しているか
  • フィッシングを見分けるための研修を少なくとも年に1回は実施しているか
  • 情報漏洩が疑われる場合のエスカレーション・報告ルートが明確になっているか
  • インシデント発生後の検証プロセスを事前に整備しているか

 

データの一元管理
  • すべての顧客データを一つのCSプラットフォームで管理しているか
  • 機密情報を管理するためのスプレッドシート型CRMが残っていないか
  • 監査証跡が記録され、必要に応じて確認できる状態になっているか

 

データセキュリティは継続的に取り組むべき責務

データセキュリティは、一度対策すれば終わりというものではありません。

 

カスタマーサクセスと強固なデータセキュリティは、どちらも顧客に敬意を払う姿勢から生じます。顧客の成功を支援するのであれば、顧客から預かったデータを安全に扱うことも、CSチームが担うべき重要な責務です。

 

データ漏洩リスクに適切に向き合っているチームは、コンプライアンス監査に合格しただけのチームではありません。顧客や規制当局から監査・指摘される前に、自社のワークフローを見直し、どこにリスクがあるのかを確認することは重要です。

 

まずは、自社のCS業務における顧客データの流れを確認し、リスクのある箇所を精査することから始めましょう。問題が見つかった場合は放置せず、アクセス権限、外部ツール連携、データの保存場所、運用ルールなどの修正につなげます。そして、この考え方を、顧客データを扱うすべてのメンバーに共有することが重要です。

 


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