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OODAループとは?PDCAサイクルとの違い、プロセスや手順を解説

作成者: 武田龍哉|2024.10.16

変化が激しいビジネス環境では、迅速な意思決定が求められています。 そのような状況下で有効なフレームワークとして注目されているのが「OODAループ」です。

一方で、長年活用されている「PDCAサイクル」も、依然として重要なフレームワークとなっています。

今回はOODAループについて解説します。この記事では、PDCAサイクルの違いや手順、活用事例までご紹介しているため、ぜひ参考にしてみて下さい。

OODAループとは


OODAループとは、変化の激しい環境で迅速に意思決定を行い、ビジネスチャンスを掴むためのフレームワークです。

OODAループは「ウーダループ」と読み、「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の頭文字を取っています。4ステップを繰り返すことで、ビジネスチャンスを掴んでいきます。

ステップ 説明 具体例
Observe(観察) 状況を注意深く観察し、情報を集める 顧客の購買履歴を調べる
Orient(状況判断) 状況を理解する 結果から顧客のニーズを特定する
Decide(意思決定) 状況を理解して、最善の行動を決定する 新しい製品を発売する
Act(行動) 行動した結果を評価する 新しい製品の売れ行きを確認する

OODAループの誕生話

OODAループはアメリカ空軍大佐のジョン・ボイド氏が発明した意思決定の方法です。

朝鮮戦争でアメリカ空軍はF-86戦闘機、ソ連軍および中国軍はMiG-15戦闘機で戦いました。アメリカ空軍のF-86戦闘機はMiG-15戦闘機と比較するとスピード、旋回力など劣っていたにも関わらず勝利しました。その勝因は、操縦士の意思決定スピードの速さだったのです。

アメリカ空軍大佐のジョン・ボイド氏がOODAループを発表すると、戦術だけでなくビジネスにも活用できるとして、幅広い分野で使用されるようになりました。

OODAループとPDCAサイクルの違い



  OODAループ PDCAサイクル
目的 素早い意思決定 業務改善・品質管理
自由度 高い 低い
活用場面 変化の激しい環境 変化が少ない環境
手法 とりあえず行動する 計画を立てて行動する

OODAループとPDCAサイクルは「目的」「自由度」「活用場面」「手法」が違います。

PDCAサイクルは変化が少ない環境で業務改善、品質管理を行う際に使用するフレームワークです。

例えば「自社製品の売上を前年比120%にアップさせる」を実現するために計画を立てて実行し、目標を達成できたか確認して、目標未達の場合は改善策を考えます。

一方で、OODAループは変化が激しい環境で、迅速な意思決定するためのフレームワークです。新しい市場に参入する際に「市場調査」「競合分析」「事業計画策定」「プロダクトローンチ」の流れを素早く繰り返すことで、競合を出し抜くことができます。

OODAループが注目を集める理由


OODAループが注目を集める理由は3つあります。

PDCAサイクルが通用しない場面があるため

PDCAサイクルは業務改善や品質改善などの場面で使用されるフレームワークです。

便利なフレームワークですが、計画を立てて実行しなければいけないため、変化が激しい環境には不向きです。

PDCAサイクルでは迅速な意思決定が行えません。計画を立てている最中に、競合他社に出し抜かれる恐れがあります。

このように、PDCAサイクルは万全ではありません。そのため、競合を出し抜くことができるOODAループが注目を集めました。

VUCA時代が到来したため

新型コロナウイルスや震災、AI到来など、予測不能なVUCA時代を迎えました。

VUCA時代とは「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」が高い社会をいいます。そのため、社会の変化を素早くとらえて、それに応じた意思決定を行わなければなりません。

VUCA時代にリスクを最小限に抑えながら、成果を上げるためにOODAループを上手く活用する必要があります。このような理由により、OODAループが注目を集めました。

ビジネス競争が激化しているため

ビジネス環境は激化しているため、現場主体で状況判断しなければ競合他社に出し抜かれる恐れがあります。

例えば、相見積もりになった際に、対応力の速さが勝因となることがあるでしょう。つまり、ビジネス競争が激化する中で、自社製品・サービスを購入してもらうためにOODAループが注目を集めています。

OODAループのメリット

OODAループには3つのメリットがあります。

迅速な意思決定ができる

OODAループは現状を把握して、最適な行動、意思決定をするためのフレームワークです。

環境変化が激しく、計画通りに物事が進まない場合でも状況に適応できます。

現場の判断で迅速に、かつ臨機応変に行動を起こし、意思決定の遅れを防ぐことでビジネスチャンスを得ることが可能です。

OODAループは変化の激しいビジネス環境において、組織が生き抜くための強力な武器となります。 

主体的な行動を促せる

OODAループは、現場の判断で迅速に、かつ臨機応変に行動を起こして最適化する方法です。つまり、各メンバーが主体的に行動しなければなりません。

上司からの指示を待つのではなく、自ら状況を判断して行動するようになるため、主体性と責任感を高められます。 

組織を活性化させられる

OODAループを用いて、試行錯誤を繰りかえすことで組織内にノウハウが蓄積されていきます。そして、勝利のパターンを見つけることができます。

また、OODAループを浸透させれば、変化を恐れずに新しいことに挑戦する風土を醸成することも可能です。そのため、活気が溢れる組織を作ることができます。

OODAループのデメリット

OODAループにはデメリットも3つあります。

統率が取れなくなる恐れがある

OODAループは現場の人に権限委譲するため、組織全体が同じ方向へ動けなくなる恐れがあります。個々の解釈の違いから、矛盾が生じたりするかもしれません。

例えば、大規模プロジェクトにおいて、各メンバーが自主的に行動した結果、全体目標から逸脱してしまうこともあります。

このような失敗を防ぐために、組織全体の目標を定めて共有しておくようにしましょう。 

短期的視点に陥る

OODAループは迅速な意思決定ができますが、長期的な視点が欠如してしまう恐れがあります。

目先の課題の解決ばかりに目が向いてしまい長期的な視点が欠如してしまうのです。そのため、OODAループを活用する前に、中長期の戦略も立てるようにしましょう。

情報過多により混乱を招く

OODAループは情報収集を行い意思決定しますが、情報過多に陥りがちです。

どの情報が正しいか判断できなければ、間違った意思決定をしてしまいかねません。そのため、ITリテラシーを身につけて、膨大な情報の中から、本当に重要な情報を収集できる力を養いましょう。

OODAループのプロセス・手順


OODAループは4STEPで取り組みます。

  • Observe(観察)
  • Orient(状況判断)
  • Decide(意思決定)
  • Act(実行)

ここでは、各手順について解説します。 

Observe(観察)

まず状況を注意深く観察して情報を集めます。「現状把握」「情報収集」「パターン認識」を行いましょう。大切なことは、経験や勘を頼りにせず現状をありのまま受け入れることです。 

・マーケターの場合

現状把握

・競合他社の情報を収集する
・顧客情報を収集する
・社会情勢や技術動向など環境を分析する

情報収集

・顧客インタビューを行う
・アンケート調査を行う
・SNS分析を行う

パターン認識 情報からパターンや傾向を見つける

Orient(状況判断)


状況を理解して意味づけをします。現状から良い結果へ繋げられないかを考えて、どのように行動するかを決めます。

・マーケターの場合

意味づけ

・顧客情報から、自社製品を選んでもらうための方法を考える
・競合他社と自社を比較して、自社の強み・弱みを評価する

状況評価 ・目標と現状の差を把握する

Decide(意思決定)

状況判断し、最善の行動を決定します。現状を打開する手段がないかを考えて、どのように行動をするか決めます。

複数のアイデアが出た場合は、メリット・デメリットを評価して優先順位をつけて行動します。

・マーケターの場合

選択肢の検討 Twitter運用:A
Instagram運用:B 
Facebook運用:A
TikTok運用:C
YouTube運用:C
ディスプレイ広告:A

Act(実行)

決定した行動を実行して結果を評価していきます。OODAをスピーディーに回せば、より成果を得ることができます。

・マーケターの場合

実行・評価 Twitter運用  
⇒情報拡散力が高い、より良いコンテンツを制作する
Instagram運用
⇒写真映えしないため反応率が悪い

OODAループ活用のポイント



OODAループを活用する際は3つポイントを押さえておきましょう。
 

OODAループの回転速度を上げる

OODAループを活用するメリットは意思決定を迅速に行えることです。そのため、OODAループを素早く回転させる必要があります。

OODAループを素早く回転させるために、チームメンバー間で情報を円滑に共有し、状況を把握できるようにしておきましょう。

また、失敗を恐れずに行動できる風土の醸成も必要です。
 

現場メンバーに権限を委譲する

OODAループを高速に回転させるためには、現場のメンバーに権限を委譲することが大切です。

トップダウン型の組織では意思決定に時間がかかり、変化に対応することが難しくなります。そのため、メンバーに権限を委譲しましょう。

メンバーの業務内容や能力により権限委譲する範囲を決めると安心してもらえます。

チーム全体の目標を立てる

OODAループは変化の激しい時代に迅速に意思決定を行うためのフレームワークです。

意思決定を速めるためには現場の人に権限委譲してOODAループを回してもらいますが、方向がバラバラになる恐れがあります。そのため、チーム全体の目標を立てましょう。

チーム全体の目標は可能な限り、具体的なもの、数値化できるものにして測定できるようにしてください。

そして、各メンバーに周知して目標達成への意識を高めましょう。

OODAループの活用事例


OODAループの手順をご紹介しますが、事例を併せて確認しましょう。

新規事業の立ち上げ

Observe 市場調査を行い、顧客ニーズや競合状況を把握する
Orient 自社の強み、弱みを把握して新規事業のコンセプトを決める
Decide 新規事業の目標を設定して、アクションプランを策定する
Act 新製品の開発、マーケティング活動などを実施・改善する

危機管理

Observe 危機発生時の状況を迅速に把握し、情報収集を行う
Orient 危機の深刻度を評価し、影響範囲を予測する
Decide 対応策を検討して優先順位をつける
Act 決定した対応策を実行し、状況を改善する

組織改革

Observe 組織の現状を分析し、課題を特定する
Orient 課題解決のために、組織構造や業務プロセスを見直す
Decide 組織改革の方向性を決定し、具体的な施策を計画する
Act 組織改革を実行し、新しい組織文化を醸成する

まとめ

OODAループとは、変化の激しい環境で迅速に意思決定を行い、ビジネスチャンスを掴むためのフレームワークです。

OODAループを活用すれば、迅速な意思決定やメンバーの主体的な行動の促進ができます。この記事ではOODAループのプロセス・手順をご紹介しましたので、これを機会にぜひ取り組んでみてください。